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3章
乗り込む船
しおりを挟む「まあ、楽しいお茶会(ティーパーティー)になりそうね」
そう、彼らにとっては痛い思いでもある「お茶会事件」の始まりだ。
あの騒動から2週間後。船の出航や、クリークの書類からの下調べを経て、場所や日時を特定。
今日は、その船が出航する日。その船を抑えて、現行犯としてとらえるために、私たちは行動に出る。
私とミシェウと、アルル。それから集めてきた兵士の人が十数人。兵士は、秘密を知られても問題ないような信頼できるような人で固めている。
ローラシア王都にある港。マーシャル港。
王都という立地と港として使用するのに恵まれた地形条件から、ここから国内や時には海外に向けた大きな船が飛び交っている。
貿易目的で他国へ向かおうとするガレオン船が何隻もあり──。
「とりあえず、まずはどの船がソボロフ──に行く船なんだっけ?」
「えーと、調べた限り一番奥にある船です」
「じゃあ、行きましょ」
兵士の人に資料を見せてもらい、私達は港を歩いていく。大丈夫だとは思うが、周囲から見られるとどうしても緊張してしまう。
もっとも査察という名目だから問題はないし、キョドキョドした態度をとっていたら逆に怪しまれる。冷静さを保たないと。
下調べは済んでいる。いちばん奥に着くと、大きな船。
その近くで、肌が焼けた筋肉質な船乗りたちが船の中に何かを運んでいるのがわかる。
四角くて茶色い布でできた何かを船の中へ1つ1つ。あれの一体何割が、違法な物品なのだろうか。
「あれ、どうやって調べようか?」
「まあ、全部調べるなんて不可能だわ。手掛かりはあるの?」
「多分だけど。全部が全部薬物なんてことはない。そこをピンポイントで探り当てる必要があるんだけど、わかる?」
「あのさ、多分普通の茶葉や貿易品と分けていたり、目印みたいなものをつけているんだと思う。それも、一般の船乗りにはわからないような」
「隠し場所みたいなものがあると思う。そこを探して──当てればいいと思う」
「理屈はわかったわ。でもどうするの? 隠し場所というわけだから、簡単に見つからなさそうよ」
「それはわかってます。一応策は考えています」
そして、私は2人に耳打ち。自分が考えていた策を話す。
「わかったわ。それで行きましょ」
「粗がないとは言い切れないけど、他に代案がないのも事実ね」
2人は賛成してくれた。そして、私たちは作戦を実行。人気のない物陰に隠れてチャンスをうかがう。
港では、船乗りの人たちが荷車を使ったり担いだりして荷物を運んでいた。
そんな時間が十数分ほど過ぎる。あまり時間が経つと船が出発してしまう。早く船長の人が来ないかな。
そんな風に焦りの気持ちが出てきたあたり──一人の人物がやってきた。
確か、あの人だっけ。水色と白の縞々のシャツを着た、小太りの男の人。
両手のポケットに手を突っ込みながら、がに股で船へ向かって歩いていた。
「あの人が船長よ、行きましょう」
「はい」
私達が兵士たちを引き連れて早足でその人のところまで歩いていく。
そして、男の人の肩を叩いた。
「申し訳ありません、お話したいことがあるのですがよろしいですか?」
突然の事態に、慌てて驚く船長。
「な、な、なんだいきなり。何の用だ? というか貴様たちはいったい何だ?」
こっちが王国の物だという証明の書類を見せる。船長の人は、驚きつつその書類に目を通していた。
「申し訳ありません。王国の兵士の物です」
「い、一体なんでしょうか? そろそろ出航の準備をしないといけないのだが」
「大丈夫です。そこまで時間はとらせません。出航になりそうになったら教えてください」
「大丈夫です。そこまで時間はとらせません。出航になりそうになったら教えてください。身を引きますから」
「急なんだけど、それくらいことが急いでるって事なの。下手をしたら、後々まずいことになってしまうわ。だから、協力させてほしいわもしかしたら、あなただって罪を問われることになるかもしれないの。それで処罰なんて絶対に嫌でしょう?」
アルルの言葉に、船長は考え込んで──言葉を返してきた。
「そこまで言うなら、わかった」
査察に関する書類に、アルルの共犯者になるかもしれないという言葉に船長の人は反論できなくなったのか、コクリと首を振ってくれた。「ありがとうございます」と3人でお礼を言って、船の中へ。船員たちの邪魔にならないように列を作って進んでいく。
船の中、薄暗い廊下。物を運んでいる人たちを見ながら歩いていく。
特におかしい所はない。
無限にここにいられるわけではない。何か手掛かりはないのだろうか。
周囲を見ながら変わったところ──わからない。ひそひそ声で、アルルに話しかけた。
「何か、わかったことある?」
「う~~ん。全体図とか見たり、もう少し雰囲気とか見ないとわからないかな」
それから、しばらく周囲を歩く。
私は怪しそうな動きや仕草をしている人がいないかよく探す。
アルルが先頭になって、色々歩く。大きな荷物が大量にある部屋を見たり、かといえば部屋の周りを一周したり。
そして、とある部屋周りを周回した後、アルルはパタリと足を止めて優しく壁に手を触れた。
「ここ、空間ができてない?」
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