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2章
素敵な日・決意
しおりを挟む頭を下げてからこの場所を出て、私たちは宮殿へと戻っていく。色々とあったなぁ。
時間はすでに夕方。沈もうとしているオレンジの陽の光が私たちを照らしている。
ミシェルは、ご機嫌なのかう~~と言いながら大きく背伸びをしていた。
「色々と、楽しかった。また、こうして息抜きしてもいいかもね」
「はい」
ぎこちないけど、笑顔を作る。ちょっと、不自然かな? そう考えていると、それを見ていたミシェウがじっと私の顔を見てくる。
「な、何よ……」
そして、ニコッと笑って私のほっぺを掴んできた。
「にゃっ、にゃにをすりゅんですかぁ~~~っ!」
「一緒に過ごせて、とっても楽しかった。これからも、たまにはこうした時間を過ごそうね」
私のほっぺから手を放してから、一歩離れて──にっこりと笑った。
かわいいなぁ。私と違って、自然に笑顔を作れるのが羨ましい。オレンジに光る夕日が当たってるのも相まって、とてもやさしい笑みに見える。
私は、その笑みに胸がドキドキして──どう言葉を返そうか、迷ってしまう。もじもじとしつつ、何とか言葉を返した。
「ありがとう……そう言ってくれると、本当にうれしいです。また、こうして2人です、過ごせるといいですね」
「そうだね」
そして、ぎゅっと手をつないで道を歩いていく。いつの間にか、握り方は指同士を絡めあう恋人つなぎとなる。
「やっぱり、シャマシュの手。冷たくて、気持ちいい。ずっと握っていたい!!」
「そこまで言われちゃうと、照れちゃいますよ。でもミシェウの手こそ──握っていて、とても気持ちいです」
「ありがと。あと、こんな平和な街を、これからも守っていこうね」
「そうですね。頑張りましょう」
今日1日、いい息抜きになった。2人で、色々なところを巡った。楽しいところもあって──それから、まさかのメンデスとの出会い。
でも、気になっていることもあった。色々と、考えなきゃいけないこともあるように感じた。
これからも、大変な時間が続きそうだ。
夜。
夕食後、私はカイセド様の部屋のベランダにいた。
城下町の景色が良く見え、街のネオンときれいな星空を見ながら私たちは肩を寄せ合う。
「メンデス、今日は何があったの?」
そう言って、カイセド様が私の肩を寄せてくる。私が困っているとき、表情から察してくるのかいつも気にかけてくれる。そういう所が、とても素敵に感じる。
「カイセド様、今日は──その」
しばしの間、言葉を考えた後答える。流石に、何も考えず今日のことは言えない。何とか、嘘ではないようにお茶を濁して答えないと。
「領地の人たちと、色々と相談事をしておりました」
「そうか」
カイセドはそう答えて、机のワイングラスを取った。ワインを飲みながら、ネオンが輝く街並みをじっと見ている。
あの街並み、街で国民たちは何をしているのだろうか。平和に暮らせているといいな。市民同士で、争いあったりしてないかしら。
「最近は移民どうした国外での争いごとが多くて、ちょっと暗い気持ちになります」
目を伏せ、悲しい気持ちになりながら言う。国民たちが傷ついている姿を見ているのを見ているだけで、胸が痛くなって悲しい感情が湧き出てしまう。
「もちろん、わかってはおります。政務に携わる以上、そう言った判断をしなくてはならない。争いが終わらない以上、誰かが戦わなくてはならない」
「そうだ、俺だってそれは感じる。でも──」
顔を上げて、見つめ合う。そして──。
「メンデスのそういった優しいところが、僕は好きだ」
そして、私たちは向かい合うとカイセドは私の両手をぎゅっと握ってくれた。
暖かい手。握られているだけで、心が満たされて行くような感覚になる。私は、そのままカイセドの胸に飛び込んだ。
「私、絶対に争いごとから人々を戦いから救って見せます」
「メンデスがそういうなら、俺も応援するよ」
「あ、ありがとうございます」
カイセドは、優しく私の背中をなだ出てくれる。暖かくて、私が感じていた怖さや不安といった感情が少しずつ溶けていっていくような感覚になる。
私はさらにカイセドの身体を寄せる。
胸の飛び込むと、カイセドはやさしく私を抱きしめてくれた。
カイセドに抱かれながら思い出す。昼間に会ったミシェウとシャマシュ。
まさか、あんなところで会うなんて思わなかった。まさか、2人がこんなところにいるとは。
今日の取引無いようだったら見つかっても問題ないけど、予想外に知っている人と出会ってしまうと、やはりびっくりしてしまうものだ。
あの2人も、人に言えないような取引をしていたのだろうか。それとも──。
あと、シャマシュを見て感じた。私は、シャマシュのようになれないかもしれない。あの瞳を見ればわかる。強い意思。私にはないものだ。
何があっても、大切な人達を守り切るという強い力。シャマシュ、あんな雰囲気だったっけ? ちょっと意外。
彼女から感じた意志は、今まで見たことがないくらい強く見えた。
それでも、心を折るわけなにはいかない。私の祖国は、争いが多く傷つく人たちをたくさん見てきた。あんな人たちを、作らないために。
人々が、戦火に交えたりしないように、私が先頭になっていかないと。
拳を強く握って、そう誓ったのだった。
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