64 / 91
2章
負の力
しおりを挟む「お前たちはどうだ──正義を歌いながら、俺たちから搾取し続けた富で──どれだけの贅沢をしてきた? 関心を持ったことはあるか? その経験の差を、今から教え込んでやる!」
対抗しきれない。さっきまでとはまるでパワーが違う。攻撃一つ一つに力がこもっている。
負の力とでもいうのだろうか。
吹き飛んだ体はそのまま後ろにある小屋に突っ込んでいった。強く激突した衝撃で建物は倒壊。ガラガラとテントや中にあった物が崩れる。
瓦礫の中に、私とミシェウ。光が届かない、真っ暗で狭い空間で話しかける。
「大丈夫?」
「まあ、何とか」
ミシェウもだいぶ消耗している。でも、突破口が見つからない。どうすればいい?
そんなことを考えていると、ミシェウが話しかけてくる。
「ねぇ、今度は私が前に立っていい?」
「え──」
思わず言葉を失う。当然だ。ミシェウの占星術は──力をため込んだり、詠唱する場面が多く接近戦には向かない。一応最低限の身のこなしは出来るけど。迷っていると、ミシェウは自信を持った笑みで親指を立てる。
「キケンだけど、色々試してみる。そうすれば、何かわかるかもしれない」
「そうね」
コクリとうなづいた。そうだ。逃げてばかりいたら何も始まらない。ここで勇気を出せば、何か得るものがあるかもしれない。
結局は、戦うことでしか道は開けない。
そして、剣を一振り。がれきをすっ飛ばして、2人でヴァシリーと対面。
私が後方で援護し、ミシェウが前線で攻撃を振るう。
「今度はお前か、結果は変わらないだろがな!」
「それは、やってみないとわからないかな」
そして、私たちの戦いが始まった。ミシェウは様々な占星術を解き放つ。
さっきのように、まずは雷。
「おいおい学習しろよ──もう忘れちまったのか?」
結果はさっきと一緒。全く効かない。やはり──こいつに電気系統は効かないみたい。
それから、ヴァシリーが接近してピンチになると、私が急接近してミシェウへの攻撃を防ぐ。
私が引きながらも、何とか攻撃を受けている間、ミシェウが詠唱し攻撃を放つ。
「天候・大嵐──テンペスト・シムルグ!」
急いでヴァシリーから距離を取った。
次は暴風──まるで竜巻のような暴風が、ヴァシリーに突っ込んでいく。
そこまで効いてない。多少体から砂が飛んでいったように見えるが、ダメージは受けていない。
これでもダメなのか、そして再び接近戦。
ピンチになったら私が援護。かなり痛いけど──まだ大丈夫。ミシェウと一緒だから、不安なんてない。
「天候は、雨。レイニー・インパクト」
次は水鉄砲──ミシェウも大技を連発して魔力的にきついのかさっきよりも大分威力が落ちてる。
ミシェウの魔力が限界でない以上、どこかで有効打を見つけないと。
慌ててかわそうとするヴァシリーに突っ込んでいく。
「何?」
私は同士討ちになる危険を承知で援護。ミシェウの攻撃が来るギリギリまでヴァシリーに攻撃を続ける。
そして、背中にミシェウの攻撃を感じて──すぐに右に飛び込んだ。
「しまった!」
飛び込みながら、ヴァシリーを見る。
ヴァシリーはかなり動揺していた様子。これは、食らいたくないという事なのだろうか?
そしてかわしきれなかったのか、今までみたいに無力化できなかったのか方にはかすり傷。初めてだ、ヴァシリーに肉体的ダメージを与えたのは。
「やってくれたなぁ……この礼はたっぷりと返してやるよ」
すぐにこっちに銃口を向けてきた。銃口からは今までにないくらいに大きな魔力の塊。相当感情的になっている。
「ますい!」
慌てて障壁を張る。ミシェウも対抗しようとさっきのような術式を繰り出す。
「天候は霙。アイス・ディザスターストーム」
今度は、大きな氷の塊。それがヴァシリーへと向かっていく。衝突するヴァシリーの攻撃とミシェウの攻撃。衝突するなりミシェウの攻撃は消滅。
ヴァシリーの巨大な魔力の塊はそのまま私達へ。
私が急いで障壁を張るものの、全く歯が立たない。一瞬で崩壊。攻撃は私達に直撃した。
ヴァシリーの攻撃が爆発を起こし、私たちの肉体が大きく吹き飛ぶ。
「これがお前たちへの、俺の復讐だ。むかつくんだよぉ貴様らのような育ちがいいやつを目の当たりにすると」
そして、戦闘で崩壊したゲルに体が直撃。さっきの繰り返しだ。私達の身体はがれきに埋まってしまった。
倒れこんだ身体。舞い上がった土埃で大きく咳き込む。隣には同じく吹き飛ばされたミシェウ。
「ゴホゴホ──水、効いたね。いけるかもしれない」
ミシェウの言葉に、はっとなる。
そうだ──水。最後──水をかぶった方の部分。ヴァシリーは攻撃を受け流せなかった。そして、明らかに動揺を隠せていない。その後の攻撃的なあの態度。
「水をかぶると、砂が固まって攻撃を受け流せないんじゃないかな?」
「そうか」
水に触れると攻撃を受けてしまう。
だから感情的になったのか。そこをつけば、勝機があるかもしれない。でも──。
深呼吸して、自分の魔力を感じる。かなり使い切ってしまっていて、さっきまでのような激しい戦いは出来そうにない。
「私──大きい術式あと1回は使えるよ」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる