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2章
捕縛
しおりを挟む今の話にミシェウが耳打ちしてくる。
「これで決まっちゃったね」
「はい……」
口にすると精神の高揚、幻覚、感情の興奮など麻薬やコカインに近い系統の法律で禁止されている薬物。
やはり取引をしていたのか……。
これでこいつらは黒確定。後は、逃がさないように捕えて話しを聞くだけね。そしてガサゴソという物音からのチャリンとした音。硬貨だろうか。
「わかりました。後これが手数料です」
「随分儲かったな。それだけローラシアは荒れてるってことか?」
「はい、以前よりも貧困層やスラム街が増えていて──薬物に手を出す人が多いんです」
「そうか、それなら取引量増やしても大丈夫そうだな」
それから立ち上がったのだろう、スッと音がしてキィィと歩く音。そしてガサゴソとものを漁っているのだろう。またこっちに戻ってきた。
物音からもわかる。何かをもってきた音。
「今回は、これだけ持って行ってくれ。お前の腕とローラシアの状況なら大丈夫だろう」
「え?? 本当にいいんですか? 前回の3倍近い量ですよ?」
「気にするな。また一人、逃げようとした奴がいてな。その分誰に売りさばかせるか悩んでたんだよな。もってけ」
「あ……」
待ってよ、あの薬物でしょ。そんなものを売りさばかせるわけにはいかない。なんとか止めないと。
「しかしこっちは大変だぜ。雨が降らなくて食料が手に入らなくなっちまってる」
男はこっちに気づいていないのか愚痴を言っている。でも、いいのかしら?? もし逃げられたら?
でも、行かなきゃもっと犠牲者は増える。マリーのことが心配だけど、もしものことになりそうだったら私たちが保護すればいい。
そう考えて、ミシェウに視線を向ける。ミシェウのは強気な表情で、コクリとうなづいた。
そして男が白い粉を出した──その時だった。
アイコンタクトを取ってから、上にあった窓のガラスを蹴って割る。
私達のことに気づいた男が、とっさに隣にある袋をもって立ち上がって逃げようとしたが、そんなことをさせるつもりはない。思いっきり
「さあ、そこにあるものを見せてください。一部始終は見てました」
男は何とか逃れようとしているのか懸命にもがいている。けど、魔法はそこまで強くないから私でも十分押さえつけられる。
全身に魔力を込めて肉体を強化して、男を逃がさない。そして、ロープをポケットから取り出して、胴体と腕を縛り付けてから質問をし始めた。
「あなた名前は?」
「お前に教える必要はない」
男は押さえつけられたまま答えようともしない。まあ、まともに答えてくれるとも思ってないわ。
最初は暗くて顔がよくわからなかったけど、目が慣れてきたからその姿が良く見えてきた。
背が高めで、白いひげを生やした年配の人。
目つきが悪くて、黒っぽい服を着ている。
「マリー。こいつの名前教えて」
「えーと、ヴァシリーです」
「ありがと。ミシェウ、何か見つかった?」
ミシェウはすでにヴァシリーが持っていた大きな袋をあさり始めていた。何があるのだろうか──そしてミシェウが袋の中から大きな箱を取り出す。
「白い粉──ほかにもなにか違法な取引はありそう?」
「わからない、けど可能性は十分にある」
後、周囲の確認もしておかないと。他にも違法な取引あったかもしれない。
色々と調べておこうか。
という事で、周囲の捜索に入った。異論は認めないという事で、周囲にあるものをどけながら何か手掛かりがないか捜索。
「誰かと繋がってるかわかるかもしれないわ」
これ──金貨なんだけど、描いてあるのはおじいさまの顔。つまり、うちの金貨。
「これ、うちの金貨ですよね? どうやって手に入れたんですか?」
私の質問に、男はムスッとしたまま質問に答えない。どうしたものか──押収するのは当然として、こいつがどれだけの物を、それも誰に渡したかが知りたい。
まあ、答えるわけないか。ヴァシリーを警戒しつつ私も袋をあさる。
ただ見るだけでなく。袋自体を何度も触って隠し場所のようなものがあるか調べる。
あー、袋の外側と内側の間になんかあるみたい。ガサゴソとあさったあと袋を裏返す。
二重に皮ある場所を発見して、そこをめくって、隠れていた物を取り出す。
あったのは、一冊の手帳のようなもの。何かな? 疑問に思いながら中を開いてミシェウとマリーに見せてみる。
「帳簿?」
「確かにそうね」
中を開くと、右には3.4桁の数字。それから、見たことがない文章の数々。取引に使った額と、物の記録だろう。
これなら、どこと取引があったかわかる。まあ、正直に書いてあるわけではなくダミー商社を噛ませているだろうけど。
「そうね。後でたっぷり検証しましょ」
時間がかかっても、必ず暴いてやる。
そう考えて手帳を一度地面に置いたその時──。
「危ない!!」
ミシェウがこっちに突っ込んできて私を突き飛ばしてきた。とっさの行動に反応できず、私がいた場所に視線を向けると、赤茶色の光線がその場所に突っ込んできた。
「ごめんね。突然ヴァシリーが攻撃してきて、こうするしかなかったの」
「いえいえ、ありがとうございます。ミシェウは悪くないです。原因は全てアイツですから」
ヴァシリーに目を向け、彼をにらみつける。ヴァシリーは、マスケット銃を手に取っていて見やりと笑みを浮かべている。
こいつ──強い魔法が使えたの?
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