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2章
街を、歩いていると
しおりを挟むふぅ──何とか会議が終わった。まさかの裏切り者がいるなんてね。
「それはわからないわ。これから探す必要があるわ。皆さん、協力よろしくね」
「わかりました」
動揺しながらも全員が賛同してくれた。
これはこれで、大変なことになったわ。表向きは協力してくれるとはいえ、自分の身の周りがそうだったとしたら態度を一変させてかばおうとするだろう。
それを見抜かなきゃいけないのもとても大変そう。心折れる作業になりそう。
とりあえず会議は終わった。メンデス──大丈夫かしら。
彼女、とても繊細な子なのよね。心配。
一度、2人の場所に向かってメンデスの状態を確認。カイセドと一緒にいて、少し元気を取り戻したみたい。「ありがとう」と優しい笑みを浮かべて頭を下げてきた。とりあえず、大丈夫そうか。
何とか、対策を立てないと──。
考えて、街を散策してみることとなった。考えても仕方ないし、戦い後の街の様子だって見てみたいし。
そして、私たちは宮殿を出て王都の中を歩き始めた。
大通りの、比較的治安がいい道を屋台で買ったパフェを食べながら道を行く。
「なんていうか、デートみたいね」
「そ、そそうよね」
デートという言葉に、ドキッとして顔を赤くしてしまう。ちょっと、意識しちゃうわね。
顔が赤くなり思考がまとまらなくなりミシェウの事ばかり考えてしまう。
って今は遊びじゃないのよね。息抜きにデート気分になるくらいはいいけど、締めるとこは締めないと。
街──どこか表情が暗い。ちょっと、話を聞いてみようかしら。
露店で、ドライフルーツを売っている人に話を聞いてみた。目が合うなり、ぺこりと頭を下げてくる。
「ラングーンの方での戦い、お疲れ様です」
「え──なんで知ってるんですか?」
私達がラングーンにいたということは、周囲にはあまり知らせてない。広がるとしても、もう少し時間がかかると思ってたんだけれど──。意表をつかれて戸惑っていると、おばさんが話を進めた。
「息子がね、参加したのよ」
「そうだったんですか、ありがとうございます」
「ただね、怪我を負ってしまって今療養中なの」
話によると、何本か骨を折って仕事に復帰も難しいらしい。おまけに、周囲の冒険者で亡くなった人が多く出てしまい精神に傷を負ったとか。
「そんな中でも、あなたたち2人はとても活躍したって聞いてるわ」
「それは、ありがとうございます」
「あなたたちは、とても応援してるから、頑張るのよ」
奨励の言葉に、2人とも頭を下げた。そう応援されると、こっちも頑張ろうという気持ちになる。
「了解です。皆様の期待にこたえられるように頑張ります」
そして、店を離れる。
「街に出た時のいいとこって、これよね。実際の声を聞けるし、時には応援の声を「もらえる。頑張ろうって気になるもの」
「それはわかります」
現に、今応援の言葉をもらった時ちょっとうれしさを感じた。私は、今までそんなことしてなくて、何で街にって思ったけど──これはいいメリットよね。おまけに、国民たちと一緒にいることで顔を覚えてもらえる。
ミシェル、そりゃ人気者になるわよね。
そしてそんなことを考えていると、後ろから誰かが話しかけてきた。
「ああ、シャマシュ様とミシェウ様ですね。お久しぶりです」
「あ、あなたは──」
騎士の格好をした、髪の長い金髪の女の人。
ロザリア──こんなところで会うとは思わなかった。
ラングーンでは一緒に戦った仲だ。しかし、こんな街中で何をしているのだろうか。
「どしたの?」
「ええと。この街で調べていたのですが」
ひそひそと、耳打ちしてくる。聞かれたら困ることでもあるのだろうか。
「最近ね、よく見るのよ。見たこのもない外国からの商品が。それも闇市経由で」
話を聞くと、貧しい人々が見たこともない食べ物や小物類を持っている場合が多いので、気になって調べているとか。
何か、ヒントになるかもしれないわ。ちょっと聞いてみよう。
「一緒に歩きませんか?」
「そうですね、色々と気が付けたら幸いです」
気が付けることも増えるかもしれない。他に行く当てがあるわけでもないし、一緒に行動してみようか。
「一緒に行動、楽しみです。少しでもこの街のことを、今起きていることを知れたらいいです」
「こちらこそよろしくお願いします」
大通りからしばらく道を進んで人気の少ない道へ。さっきまでと比べると、道にゴミが散らかって汚れていたり、不規則に古びた家屋が並んでいるような貧困層が住むエリアへと入っていく。
「この辺りは、もともと住んでいた貧困層の方に加え、各地から流入した難民や移民たちが住んでいるエリアです。狭い土地に人々はバラックや何十年もたった古びた家に住んでいます」
「地震などがあったら被害が大きくなりそうですね」
そう言うと、ロザリアは静かにコクリとうなづいた。
「大体、手抜き工事だったりして予算を減らしているので倒壊するでしょう。こちらも、何とかなるといいのですが」
「補修を行うにしても、全部行うには相当な時間がかかりそうね」
そこを抜けると、活気のある市場が現れる。街の中心のよりも、粗末な作りで売っている物もどこか汚れていたり、見たことがないものだったり。
「偽物だったりおが屑で量を嵩増ししたパン、腐りかけた食べ物を使った干し肉──貧困層の街で売っている物なんてどれもそんなものです。これが現実ですよ」
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