上 下
20 / 91

ステルスな敵

しおりを挟む
 これはもう、やるしかないわね。大きく気を吸って、覚悟を決めた。

 一般兵士じゃ太刀打ちできないし、これ冒険者でもステルス機能を打ち破れる特殊な奴じゃないとできないし今から読んでも時間かかるよね? それなら、占星術の出番だ。私と、シャマシュで力を合わせれば絶対勝てると思う。

 この相手なら、しっかりと実力を発揮できる。杖を取り出し、バァルに向ける。大きく深呼吸して

「スターライト・ミラージュ!!」

 黄色い、手のひらサイズの星が大量に出現。輝いていて、とても見栄えがいい星だ。

「なんだこれは──」

「ミシェウ、いつの間にあんな力をつかいようになったんだ?」

 周囲の貴族や警備の兵士たちも、目を大きくして私の星たちをみていた。見ていなさい、私の力見せつけてやるんだから!

「いっけぇぇ!」

 大きく杖を振ると、私を包んでいた星たちがまるでドラゴンのように一直線に並び始めた。

 それらはまるで意思を持っているかのようにうねりながらバァルの元へ進んでいく。そんなことはつゆ知らずに暴れまわっているバァル。

 星たちは暴れまわっているバアルに触れた瞬間バアルの体らしき部分に包まれる形を包んでいくのがわかる。

 バァルはそれを拒絶するかのように苦しみもがいて暴れまわるが、包んでいる星たちはただ透明な肉体にまとわりついている。
 そしてこれで、透明だったこいつの形を居場所が分かった。


「これでこいつの場所と形はわかったわ。あとは──シャマシュ!」

「はい、わかりました!」

 シャマシュがバァルの方を強くにらみつける。まずは私。

「スターダスト・スピア」

 新たに杖から数十個の星が登場。それらが今度は一気にバァルに向かっていく。バァルに直撃した瞬間、槍状になった星が肉体を貫通。心臓付近に突き刺された星の槍。

 激痛にもがき苦しむバァル。周囲の机や料理を壊したりぶちまけたり──お行儀が悪いわねもう。シャマシュに視線を送ると、強気な視線でコクリとうなづいてきた。

「素晴らしいです。あとは私に任せてください!」

 そしてシャマシュは大きな剣を召喚。剣をのたうち回っているバァルに向け、叫んだ。

「ネオストーム・バースト」

 剣から水色の大きな光線が出現。一直線にのたうち回っているバァルに直撃。

 ドォォォォォォォォォォォォォン!!

「これで終わりよ」


 大爆発して、後方に吹き飛んでいく。そこにシャマシュが突っ込んでいき、バアルの肉体を何度も刻んでいった。腕、両足──そして心臓付近を一突きしてバァルは動かなくなった。

「これで大丈夫なはず。後処理の方お願い」

「了解しましたシャマシュ様」

 兵士隊長の人が、敬礼をして言葉を返す。兵士の人の中には、魔物を処理する専門部隊があり、その人に任せよう。

 何とか終わった。よかったよかった。でも誰だろう、こんなところに魔物を呼んだのは。魔物を呼ぶ手段の一つとして、専門の術式を使う方法がある。

 それなら、こんな魔物がいない場所でも呼ぶことができる。しかし、それだと魔物を呼ぶ特殊な術者が必要だ。誰か、そんな奴を手引きしているのだろうか。そういった人を、警戒した方がいいかもしれないわね……。

 ちょっと疲れちゃった。あの術式、使うと体力が持ってかれるのよね。脱力感が全身を包んで、体がふらついてくる。

 すると、右腕を誰かがつかんで私を支えてきた。誰かと思い左を見ると、シャマシュが優しく微笑みながらこっちを見つめてきた。

「流石はミシェウです、大丈夫ですか?」

「シャマシュが仕留めてくれたし、こうして支えてるんだから大丈夫大丈夫!」

 にっこりと笑顔を返して言うと、シャマシュの顔がほんのりと赤くなる。そして、きょろきょろと視線を泳がせた後「ありがとう」と小さくささやいた。その姿は、いつものクールでツンとした態度のシャマシュと違ってかわいく感じる。
 なんていうか、いつもとのギャップがすごい。

 かわいいとこあるじゃない。すごいわ──。

 そして、貴族の人たちやメイドの人と一緒にメチャクチャになった会場の復旧に当たった。
 中には「こんなことは俺の仕事じゃない」なんて言って協力しないやつがいたけど無視するしかない。

 30分ほどで最低限の片付けが終わる。残り時間もあるし、バァルの処理などあとはメイドの人たちがやってくれるらしく別の人と話そうとしたその時──。

「ミシェウ、あれ」

「え──あれ?」


 シャマシュが肩をたたいて視線を前方に向ける。そこにいたのは、カイセドとメンデス、そして……。

「ホーネルカー??」

 軍服を着た、腹の出た小太りの中年の男。なんと、ホーネルカーがいたのだ。会場に来てたの? ほかの貴族と話してたのかな? 知らなかった。

「ミシェウ、大丈夫? 歩けるなら、カイセドとホーネルカーのところに行きたい」

「わ、私は大丈夫。そうね、何話しているのか気になるし」

 よく見てみる。メンデスと一緒に3人で談笑をしているみたい。一歩引いて何やらコクリとうなづいていた。
 それからにやりとした笑みで、提案でもしているのかこの場の状況などお構いなしに自慢げな表情でペラペラ話しを再開。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...