上 下
9 / 91

互いの評判

しおりを挟む
「確かに、私も彼の気持ちをもっと理解するように努力します」

 真剣に、王国の行く末を考える。でも、周囲の人の心理を推し量るって私苦手なのよね。
 やってはみるけど正直不安だわ。

 それなら、どちらかというとミシェウのほうが。仮にも兄弟なんだし。そう考えて、ちらりとミシェウの方へ視線を向けると──。

「でも、カイセドだって本心から思ってるんでしょ。それならそれでいいじゃん。ふぁ~~あ」

 大きなあくびに、お父様が軽くげんこつで対応。不満そうにぷくっと顔を膨らませ口をとがらせるミシェウ。

「ちぇ~~、そんなことすると王位継承権を本当に放棄しちぁうよ」

「お前ら、同性同士だぞ。本気で言っているのか? ほかの奴らに収拾がつかん」

「本気じゃなかったら面前であんなこと言いません。本気です、本気でミシェウと結婚したいと考えてます」

 自然と真剣な眼差しになり、じっとお父様を見つめる。その気持ちに嘘偽りなんてない。
 額に手を当て悩みこむお父様に、ミシェウが口をはさむ。

「でも、好きだったんならさ──同性でもいいじゃん。後継ぎを考えなきゃいけない国王ならまだしも、私王位継承者じゃないし」


 その言葉に、お父様は大きくため息をついた。私と違って、ミシェウは人に好かれやすい。
 こういった時、決まりや従来の考えにとらわれずに、個人の考えを一番に考えたり突拍子もないアイデアを出したりするのはミシェウのいいところだ。

 そういうところはとっても好きなんだけど、こういう時はさすがに考える。そう言っても、父上の考えが変わることはないからだ。

「バカ娘が……」

「なんかただならぬ言葉を聞いた気がする」

 ぷくっと、不満そうな顔になるミシェウ。

 でも、他の貴族からそんな感じで言われてはいる。感情的で、人たらしと呼ばれるくらい周囲のことを見ている。時には掟破りといえるくらいの突拍子もないことを言い出して周囲を困らせたりする。

 私だって、ミシェウのそういうところが大好きなのだ。

 王国一のアホの子といわれることだってあるくらいだ。
 そのあだ名に恥じない行い、すぐに思い知らせてやるんだから。ミシェウは、このくらいで周囲のことを考えなくなったりしない。

 もっとも、カイセドとの婚約者だった私との接点はここまであまりなかった。

 私はあまり人とかかわろうとしないうえに、他の人がやっていることにあまり興味を持とうとしない。

 ミシェウもまた、自分の占星術について学んだり、他の貴族とのかかわりや接待で手一杯で、その評判を時折耳に挟むくらいだ。

 とはいえ、私もミシェウも全く双方を知らないわけではなかった。パーティーや議会なんかでちらりとその姿を見たことはあった。

 評判だって、貴族の人と会談をしているときなんかで聞いたことはある。

「とりあえず、私はミシェウと一緒に行動します。行動したうえで、カイセドやほかの貴族、メンデスの話を聞いたりしてその都度対応します。いいですね」

「流石はミシェウだ。正直、どうすればいいのか私もよくわからない。隣国のウラル帝国とのこともあり、難しいかじ取りをすることになると思うが一緒に王国のために協力してくれ」

「了解です」

 コクリとうなづく。隣国ウラル帝国。大陸の4割を占める超大国で広い国土の中で黒い噂がたくさんある。広い国土で、黒魔術を開発したり暗殺などを得意としている

 ミシェウだって、それは知っている。そして、メンデスの貴族が統治している領地はウラル帝国沿いに面していたし、歴史的にウラル帝国領だったこともあり交渉なども含めて重要な役割を担っていた。だから彼女や家との関係も無碍にすることはできない。難しいかじ取りだけど、やるしかないわ。

 強くこぶしを握って、その覚悟を決めた。



 ミシェウ視点。


 ミシェウとコルウィルの話を聞いて、一人になって宮殿を歩きながらシャマシュのことを思い出していた。
 シャマシュ──何度か噂は来たことがる。親しいわけではなかったけど。私に負けず変わり者だとうわさは聞いていた。

 冷静沈着で、ただ周囲の感情が理解できず正論をぶつけあい対立を繰り返した印象がある。
 もっと、周囲の感情を理解すればいいのに──感情的なものを理解しなきゃとは思っていた。

「あの子、頭も魔力もピカ一なんだけどねぇ──」

「いつも一人で本を読んでたり、あんまし人とかかわろうとしないというか──」

「それに美人なんだけどねぇ。イケメンで身分の高い人を紹介してもなかなか興味を示さないし」

 聞いたところによると、シャマシュの方も私の奇想天外っぷりや変人伝説──みたいなのは聞いていたそうだ。
「毎日、宮殿の庭でなんかやっていては大けがしたり、爆発させたり──」

「無許可で街へ出ては──変な人の所へ行ったり──」

 ズキッ─ズキッ──。心臓を刺されたような気分になる。うるさいわね。しょうがないでしょ。
 占星術は発展途上で、その道の専門家の指導がいる。それに、実験だって必要。
 当然失敗だってする。

「しっかり根回ししたり、事前に伝えたりしてるからけが人とか出てないんだしいいんじゃない」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...