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互いの評判
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「確かに、私も彼の気持ちをもっと理解するように努力します」
真剣に、王国の行く末を考える。でも、周囲の人の心理を推し量るって私苦手なのよね。
やってはみるけど正直不安だわ。
それなら、どちらかというとミシェウのほうが。仮にも兄弟なんだし。そう考えて、ちらりとミシェウの方へ視線を向けると──。
「でも、カイセドだって本心から思ってるんでしょ。それならそれでいいじゃん。ふぁ~~あ」
大きなあくびに、お父様が軽くげんこつで対応。不満そうにぷくっと顔を膨らませ口をとがらせるミシェウ。
「ちぇ~~、そんなことすると王位継承権を本当に放棄しちぁうよ」
「お前ら、同性同士だぞ。本気で言っているのか? ほかの奴らに収拾がつかん」
「本気じゃなかったら面前であんなこと言いません。本気です、本気でミシェウと結婚したいと考えてます」
自然と真剣な眼差しになり、じっとお父様を見つめる。その気持ちに嘘偽りなんてない。
額に手を当て悩みこむお父様に、ミシェウが口をはさむ。
「でも、好きだったんならさ──同性でもいいじゃん。後継ぎを考えなきゃいけない国王ならまだしも、私王位継承者じゃないし」
その言葉に、お父様は大きくため息をついた。私と違って、ミシェウは人に好かれやすい。
こういった時、決まりや従来の考えにとらわれずに、個人の考えを一番に考えたり突拍子もないアイデアを出したりするのはミシェウのいいところだ。
そういうところはとっても好きなんだけど、こういう時はさすがに考える。そう言っても、父上の考えが変わることはないからだ。
「バカ娘が……」
「なんかただならぬ言葉を聞いた気がする」
ぷくっと、不満そうな顔になるミシェウ。
でも、他の貴族からそんな感じで言われてはいる。感情的で、人たらしと呼ばれるくらい周囲のことを見ている。時には掟破りといえるくらいの突拍子もないことを言い出して周囲を困らせたりする。
私だって、ミシェウのそういうところが大好きなのだ。
王国一のアホの子といわれることだってあるくらいだ。
そのあだ名に恥じない行い、すぐに思い知らせてやるんだから。ミシェウは、このくらいで周囲のことを考えなくなったりしない。
もっとも、カイセドとの婚約者だった私との接点はここまであまりなかった。
私はあまり人とかかわろうとしないうえに、他の人がやっていることにあまり興味を持とうとしない。
ミシェウもまた、自分の占星術について学んだり、他の貴族とのかかわりや接待で手一杯で、その評判を時折耳に挟むくらいだ。
とはいえ、私もミシェウも全く双方を知らないわけではなかった。パーティーや議会なんかでちらりとその姿を見たことはあった。
評判だって、貴族の人と会談をしているときなんかで聞いたことはある。
「とりあえず、私はミシェウと一緒に行動します。行動したうえで、カイセドやほかの貴族、メンデスの話を聞いたりしてその都度対応します。いいですね」
「流石はミシェウだ。正直、どうすればいいのか私もよくわからない。隣国のウラル帝国とのこともあり、難しいかじ取りをすることになると思うが一緒に王国のために協力してくれ」
「了解です」
コクリとうなづく。隣国ウラル帝国。大陸の4割を占める超大国で広い国土の中で黒い噂がたくさんある。広い国土で、黒魔術を開発したり暗殺などを得意としている
ミシェウだって、それは知っている。そして、メンデスの貴族が統治している領地はウラル帝国沿いに面していたし、歴史的にウラル帝国領だったこともあり交渉なども含めて重要な役割を担っていた。だから彼女や家との関係も無碍にすることはできない。難しいかじ取りだけど、やるしかないわ。
強くこぶしを握って、その覚悟を決めた。
ミシェウ視点。
ミシェウとコルウィルの話を聞いて、一人になって宮殿を歩きながらシャマシュのことを思い出していた。
シャマシュ──何度か噂は来たことがる。親しいわけではなかったけど。私に負けず変わり者だとうわさは聞いていた。
冷静沈着で、ただ周囲の感情が理解できず正論をぶつけあい対立を繰り返した印象がある。
もっと、周囲の感情を理解すればいいのに──感情的なものを理解しなきゃとは思っていた。
「あの子、頭も魔力もピカ一なんだけどねぇ──」
「いつも一人で本を読んでたり、あんまし人とかかわろうとしないというか──」
「それに美人なんだけどねぇ。イケメンで身分の高い人を紹介してもなかなか興味を示さないし」
聞いたところによると、シャマシュの方も私の奇想天外っぷりや変人伝説──みたいなのは聞いていたそうだ。
「毎日、宮殿の庭でなんかやっていては大けがしたり、爆発させたり──」
「無許可で街へ出ては──変な人の所へ行ったり──」
ズキッ─ズキッ──。心臓を刺されたような気分になる。うるさいわね。しょうがないでしょ。
占星術は発展途上で、その道の専門家の指導がいる。それに、実験だって必要。
当然失敗だってする。
「しっかり根回ししたり、事前に伝えたりしてるからけが人とか出てないんだしいいんじゃない」
真剣に、王国の行く末を考える。でも、周囲の人の心理を推し量るって私苦手なのよね。
やってはみるけど正直不安だわ。
それなら、どちらかというとミシェウのほうが。仮にも兄弟なんだし。そう考えて、ちらりとミシェウの方へ視線を向けると──。
「でも、カイセドだって本心から思ってるんでしょ。それならそれでいいじゃん。ふぁ~~あ」
大きなあくびに、お父様が軽くげんこつで対応。不満そうにぷくっと顔を膨らませ口をとがらせるミシェウ。
「ちぇ~~、そんなことすると王位継承権を本当に放棄しちぁうよ」
「お前ら、同性同士だぞ。本気で言っているのか? ほかの奴らに収拾がつかん」
「本気じゃなかったら面前であんなこと言いません。本気です、本気でミシェウと結婚したいと考えてます」
自然と真剣な眼差しになり、じっとお父様を見つめる。その気持ちに嘘偽りなんてない。
額に手を当て悩みこむお父様に、ミシェウが口をはさむ。
「でも、好きだったんならさ──同性でもいいじゃん。後継ぎを考えなきゃいけない国王ならまだしも、私王位継承者じゃないし」
その言葉に、お父様は大きくため息をついた。私と違って、ミシェウは人に好かれやすい。
こういった時、決まりや従来の考えにとらわれずに、個人の考えを一番に考えたり突拍子もないアイデアを出したりするのはミシェウのいいところだ。
そういうところはとっても好きなんだけど、こういう時はさすがに考える。そう言っても、父上の考えが変わることはないからだ。
「バカ娘が……」
「なんかただならぬ言葉を聞いた気がする」
ぷくっと、不満そうな顔になるミシェウ。
でも、他の貴族からそんな感じで言われてはいる。感情的で、人たらしと呼ばれるくらい周囲のことを見ている。時には掟破りといえるくらいの突拍子もないことを言い出して周囲を困らせたりする。
私だって、ミシェウのそういうところが大好きなのだ。
王国一のアホの子といわれることだってあるくらいだ。
そのあだ名に恥じない行い、すぐに思い知らせてやるんだから。ミシェウは、このくらいで周囲のことを考えなくなったりしない。
もっとも、カイセドとの婚約者だった私との接点はここまであまりなかった。
私はあまり人とかかわろうとしないうえに、他の人がやっていることにあまり興味を持とうとしない。
ミシェウもまた、自分の占星術について学んだり、他の貴族とのかかわりや接待で手一杯で、その評判を時折耳に挟むくらいだ。
とはいえ、私もミシェウも全く双方を知らないわけではなかった。パーティーや議会なんかでちらりとその姿を見たことはあった。
評判だって、貴族の人と会談をしているときなんかで聞いたことはある。
「とりあえず、私はミシェウと一緒に行動します。行動したうえで、カイセドやほかの貴族、メンデスの話を聞いたりしてその都度対応します。いいですね」
「流石はミシェウだ。正直、どうすればいいのか私もよくわからない。隣国のウラル帝国とのこともあり、難しいかじ取りをすることになると思うが一緒に王国のために協力してくれ」
「了解です」
コクリとうなづく。隣国ウラル帝国。大陸の4割を占める超大国で広い国土の中で黒い噂がたくさんある。広い国土で、黒魔術を開発したり暗殺などを得意としている
ミシェウだって、それは知っている。そして、メンデスの貴族が統治している領地はウラル帝国沿いに面していたし、歴史的にウラル帝国領だったこともあり交渉なども含めて重要な役割を担っていた。だから彼女や家との関係も無碍にすることはできない。難しいかじ取りだけど、やるしかないわ。
強くこぶしを握って、その覚悟を決めた。
ミシェウ視点。
ミシェウとコルウィルの話を聞いて、一人になって宮殿を歩きながらシャマシュのことを思い出していた。
シャマシュ──何度か噂は来たことがる。親しいわけではなかったけど。私に負けず変わり者だとうわさは聞いていた。
冷静沈着で、ただ周囲の感情が理解できず正論をぶつけあい対立を繰り返した印象がある。
もっと、周囲の感情を理解すればいいのに──感情的なものを理解しなきゃとは思っていた。
「あの子、頭も魔力もピカ一なんだけどねぇ──」
「いつも一人で本を読んでたり、あんまし人とかかわろうとしないというか──」
「それに美人なんだけどねぇ。イケメンで身分の高い人を紹介してもなかなか興味を示さないし」
聞いたところによると、シャマシュの方も私の奇想天外っぷりや変人伝説──みたいなのは聞いていたそうだ。
「毎日、宮殿の庭でなんかやっていては大けがしたり、爆発させたり──」
「無許可で街へ出ては──変な人の所へ行ったり──」
ズキッ─ズキッ──。心臓を刺されたような気分になる。うるさいわね。しょうがないでしょ。
占星術は発展途上で、その道の専門家の指導がいる。それに、実験だって必要。
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