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フィテアトル編

私絶対に勝つから

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「ふぅ──」

 深呼吸をして覚悟を決める、あの強大な敵に1人で立ち向かう事を……

「いくぞい幸乃、今度こそ奴を倒すぞ!!」

「行くよ、ジャミア、シンクレア、ベル、みんな、私絶対に勝つから!!」

 シェリンの掛け声に反応し幸乃は彼らを見てそう叫ぶ、そしてシェリンの魔力を受け取り再び上空へ舞い上がった。

 そして再びギルガスと同じ高さにまで上昇する。じっと見てギルガスと相対する、その時ギルガスの中から声が聞こえる。


「残りは手負いになったお前だけ、絶望的だな…… この姿の我は先ほどの我とは違うぞ」

「うっ……」

 声自体はセグラのものだったが彼の意思はすでにギルガスの物になっていた。恐らく完全に肉体が取り込まれてしまっているのだろう。しかし彼の言っていることは否定できない、オーラからもはっきりと感じられる、さっきとは比べ物にならないほどの邪悪なものが……

 そして完全体となったギルガスがどす黒い声で幸乃に話しかける。

「我の仮の姿をよくぞ打倒してくれた、だがこれまでだ満身創痍の貴様ではこれまでだ」

「うっ……」

 幸乃は即座に言葉を否定しようとする、しかし何も反論する根拠がなかった。もう魔力はかなり使ってしまった、おまけに自分以外はもう戦えない。どうしようもない状態だった。それでもあきらめるわけにはいかない幸乃は引き続きギルガスに敵意を向け続ける。

「ふふふ、完全体の力貴様たちに見せつけてやる!! お前らは苦しみ、のたうちまわり…… 消滅して死ね!!」

 そう叫ぶとセグラの肉体が徐々にギルガスの体の中に入っていく。そして彼の肉体は完全に取り込まれて消滅していった。
 するとギルガスは攻撃を開始する、さっきまでと同じ触手から砲弾のような光線状の攻撃を幸乃だけでなく四方八方に向けて攻撃を開始する。

 しかし何とか幸乃は攻撃をかわす、幸乃は下を見て爆発した後を見て唖然とする。

「嘘?何これ?」

 さっきより地上の爆発具合がケタ違いになっていた。
 それを見て幸乃は息をのんで確信する、ギルガスは以前より強力になっていることを。

 そしてさらに触手の先端から地上に向かって無差別に攻撃を開始していった。
 それはなんと広い庭園を通り越してフィテアトルの街の近くまで攻撃が命中していたのである、幸乃からは地上でそれに慌てて兵士たちが市民達の避難誘導をしている姿が見える。

「なんで?戦っているには私なのよ、彼らは関係ないでしょ!!」

「知るか、遅かれ早かれ彼らはこうなる運命なのだ」

 そしてギルガスは幸乃に攻撃を開始していく。
 ギルガスと幸乃の一騎打ち、幸乃は苦戦する一方だった。



 最初に戦った時と同じかぎ爪、しかしかぎ爪は2本から8本に増えていて触手もさっきの2倍は存在していた。それもスピードも上昇、何とか幸乃はかわしながら反撃のタイミングをうかがうが……


 とうとうかぎ爪が右腕をかすってしまう。

「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああ」

 かすっただけなのに身体を引き裂かれたような激痛が肉体を走り幸乃は悶絶する。かすっただけでもかなりの威力を持っていた。そして次1撃を受けたらもう次はないかもしれないと心に刻む。

 引き続き戦いは進むが慣れない魔力での浮上とその制御、それで相手から大きな一撃をくらえば致命傷になりかねないほどの攻撃をかわしながらの戦い、さらに一度やったことがあるとはいえ、空中での動作は慣れているわけではなくどこかぎこちない動きとなっていて相手からの攻撃をかわすことが精いっぱいだった。

 さらに空中であるが故に反撃しようにも踏ん張りが利かず威力のある1撃が打てずただ体力を消耗するだけであった。

 突破口が開けず幸乃に焦りが生まれ始める。

「ハァ……ハァ……」

 しだいに幸乃は疲労で息を荒げ始める、だがこの程度で音を上げるわけにはいかない。
 そうして反撃をうかがっているとギルガスが突然話し始める。

「異世界から来た勇者、久しぶりだ。5年前、初めて出会った時以来だったな……」

「えっ……」

 その言葉に幸乃は驚く、そうその時に会った事件といえばこの街を襲ったあの事件だった。

「あの事件主導したのはあなただったの?」

 そう、5年前この街強襲して甚大な被害を出した張本人はギルガスだった。彼はその時の事を話しだした、

「彼女は愚かだったよ、そしてたった1人で立ち向かい敗れ命を失った、次はお前だ!!」


 そう叫びギルガスが攻撃を再開する。今までとは比べ物にならないほどの攻撃の雨、当然幸乃には対処のしようがない。


 そしてその攻撃を受けて幸乃は落下する。


 一方地上にいるベルたちは戦っている幸乃を地上から応援していた。そこに1人の少女が心配そうな顔でやってくる。

「ベル、もう逃げましょ!!」

 カレンシアだった、以前のような貴族が来ているようなドレス姿ではあるがまだ完全に怪我が治ったわけではなく両腕は包帯が巻かれたまま、しかしベルが怪我を負ったという事を聞いて医師達の制止を振り切ってこの場にやってきたのであった。

「カレンシア、その心配してくれる心には感謝してくれます、でも私はまだここにいます」

「え?でもベル、あなたもう戦えないでしょ?」

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