アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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フィテアトル編

立場の違い、どう理解すれば

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「俺が話したいのはそういういことではない、今はもう競技をやっている場合ではないという事だ」

「じゃあ、3皇戦自体をやめるという事なんですか?」


 するとヴェラッティが前方に右手をかざし始める、すると突然1枚の手紙が出現し始める。
 それは4人が今まで見た事もないような模様をしていてこれを見た全員がこの世界で出来た物ではないことを直感的に理解した。
 手紙には真っ黒い紙に白い文字で描かれていた。


 そしてその中の文章にはこう記してあった。

 もし3皇戦を不当に中止するならば市民達を巻き込んだテロ行為をする。
 そしてすでにこの国の軍の中に潜んでいる、彼らを巻き込みたくないのならば私の傀儡となる事だ。

 ──と。

 そしてこれを見たヴェラッティがつぶやき始める。

「明らかに俺達に対する挑戦状だこれは……」




「いや、明日国民全土に俺が直接伝える、今回は3グループで争う事をやめさせて団結して戦うように告げる」

「そう、争っているときじゃない、皆の幸せのため、平和のため団結する時だって公にする」

 彼がそう話している時、シンクレアも会話に入り始める。

「それなら賛成ですわ、罪のない市民達を争いに巻き込むのは私だってロニーだって嫌ですもの」

 貴族や軍人の1部が冥王たちに裏切って情報を流しているのだった。

「お~~い、勝負はついたのかい?」

 4人が話している時遠くから声がした。
 ジャミアとレオポルトが傷だらけになってこっちへ向かってきた。
 話によると、幸乃、ベルと戦った後、少し体を休めた後こっちに向かっていくようになって途中で敵たちと戦いながら何とかここへ来たらしい。
 するとそれを見計らったようにヴェラッティが話し始める。

「全員来たようだね」

 そう、これからのことについて。



 まず彼が話したのは市民達が動揺するのを防ぐため、今日の1件はすべてヴェラッティが作った仕掛けだということ、にしてほしいとの要望だった。

「つまり今日起こったことの口合わせをしたいということですね」

 ベルが無表情で今日の話の内容を要約する、その言葉にヴェラッティは言葉を返す。

「ああ、まずこちらとしても市民達に動揺が広がるのは何としても避けなければならないからね、無論真実は後で話すよ、市民達の士気を高めるためにね」


 しかしこの話しに唯一いい顔をしなかったのがレオポルトだった。

 彼は元々貴族の家系だった。
 なので子供の時から他の派閥たちに打ち勝つようにずっと教育をうけてきて、彼個人的に協力ということに違和感があるということである。

 ロニーは何とか首を縦に振った。
 彼もまた貴族出身の高級軍人だったがこの状況を受け入れていたようでやむを得ずといった形で了承する。


「ふざけるな、こんなのは受け入れられん、俺は拒否する」

 と不機嫌な口調と表情でそう言ってレオポルトはこの場を去ってしまった。
 シンクレアは彼を心配そうな表情で見つめる、アブホースの強さは戦った彼女は良く知っていた、とても1人では歯が立たない、どうしても他の人たちとの協力が必要になる。
 そんなことを考えていると今度はロニーがフォローを入れるように話しかける。

「まあ大丈夫だよ、彼だって根っから悪いだけってわけじゃない。ちょっと頑固なところがあるだけで何度も説得すれば分かってくれるとは思う」

 ロニーが彼の後姿を見ながらそっと話す、ロニーは子供のころからレオポルドやその家族と親交があったらしくレオポルトやその身辺について知っていて彼のことは身辺含めて理解者だった。

 彼自身はそこまで悪い奴ではないのだが彼の両親がああいうふうに他の派閥を異常に警戒ばかりしていてそうやって育ってきたためこの考えは彼の頭で整理できるようになるまで何度も説得すれば必ず分かってくれる、そう言ってロニーもこの場を去った。
 するとシンクレアが微笑を浮かべながら幸乃に話しかける。

「よろしかったら私と一緒に行動しませんか? 一緒に冥王に関する事を捜査させていただけたら幸いです、それに見せたい物もありますし、ね、ジャミア!!」

「んまあ、そうだね、でもシェリンがなんていうかな?まだ負い目があるんじゃない?」

「わしは気にするな、どうせいつかは向き合わなければいけない、遅いか早いかの違いじゃ」
「何それ? それって凪さんのこと?」

 幸乃が問いかけるとシンクレアはうつむき始めて答える。

「いずれわかりますよ、いずれね…… ここでどうこう言うより直接見た方が分かりますから、その時は私が説明します」

「ああ、その方がいいかもね」

「まあ、そうだと思います」

 そんなやりとりをしながら幸乃達は元来た道を戻りかえっていった。

 その道中幸乃は複雑な思いだった。
 幸乃にはレオポルトやロニーの感情をどう理解すればいいかわからなかった。
 会ったところでどう言葉をかければいいかなんてわからない、ただ今までのことは忘れて協力してほしい、それでは彼らは理解してもらえないというのは理解していた。
 しかしどう言葉をかければいいのかが分からない……

 生まれた時から幸乃は直感的にやりたいということにがむしゃらにやってきた人間であった、前に世界でアイドルを目指していたのもそう、ただたまたま見ていたライブコンサートを見て直感的に「こういうことをやりたい!!」そう考えて生きてきた幸乃にとって生まれながらに背負う物があり、家系やその教えに縛られている人のどう接すればいいか、そんなことを考えながらの帰宅となった……



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