アイドル候補生の初めてもらったテレビの企画が「天才アイドルは異世界で勇者になれるのか」だった件

静内燕

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フィテアトル編

裏切り者は……

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「まず貴族の人たちを逃がさないといけないですわ」

「けど、どうすれば?」

 冥王兵はぱっと見では200体くらいは存在していた、傭兵たちはどんどんやられていってすでに戦っているのは残りわずかになっていった。
 いくらなんでもそんな数の敵を2人で相手をするのは酷であった。
 しかしそれをわかっていながら幸乃はあきらめなかった、彼らをすべて救いたいと、そう考えていた。
 その感情を察したのかシンクレアは1つの提案を行う。

「無茶かもしれないけど、やってみますか?」

「知っているからですよ、みんなから無茶といわれても、無謀といわれても、助けを求めている人たちのために命を顧みずに立ち向かっていった人のことを…… とにかくやってみましょう」

 シンクレアがそう話すと2人で作戦を話し合う、3分ほどで話しが終わる。
 そして2人は冥王兵たちの方に体を向けると自身のデバイスを取り出す、そして……

「フレイム・エクスプローション」

「ガトリング・ウォーター!!」

 2人は一斉に遠距離攻撃を放っていく、それは冥王兵たちに命爆発音を上げながら命中する。
 そして相手が混乱しているスキをついて一気に2人は飛び込む。

 強力な冥王兵に始めは奇襲の効果もあり圧倒するものの次第に数の多さにてこずっていくようになった。2人は背中合わせになり、息を荒げながら考え始める。

「どうしようか?」

「そうですわね……」

「ふっ、貴様ら、大した腕をしている、だがそれまでだ!!」

 2人が話していると、さらに敵の一人が話しかけてくる

 どす黒く、威圧感を感じさせるような声、2人はこの声が誰の声なのかを知っていた。
 敵の幹部の1種ゾイガーであった、以前バードランドでもあったことがあり、その時は2体のゾイガーをベルとリルカが何とか倒していた。
 まだまだ7~80体はいる冥王兵と一緒に戦うには強すぎる敵である。

「どうした、行かせてもらうぞ!!」

 ゾイガーが2人を威圧するような口調でそう叫んだその時──

 冥王兵の左側から大きな爆発音を持って現れる、そしてブリトン教のオレンジ色の旗を持った兵士たちが

 そこには自分たちの信者を連れて来て冥王兵と戦っているカラブロの姿があった

「あんた、何やってたのよ!!」

「すまなかったな、来るのが遅れて。このこと自体はつかんでいたのだが、動員に遅れてだな……」

 カラブロは謝るようにそう言うと何十人の信者と共に冥王兵に立ち向かっていった。
 それと同時にシンクレアは幸乃の肩をたたく。

「ちょっと話があります、こっちへ来てください」

 シンクレアは何かに気付いたのか、幸乃と共にこの場所を後にし、その背後の裏道へ進んでいった。

 薄暗い廊下の中を1人の男が走っていく。
 冥王兵達が襲ってきた方向とは逆の道の廊下の中を1人の貴族が走っていた。
 その人物の腕をつかみ始めた物がいた。

「あなたが冥王のスパイだったんですね」

 シンクレアがそう宣言する、するとその貴族は名前をシュペルリンクと名乗り自らが資金源のために彼らと手を結んでいたことを認めたのである。

「貴族を続けていくには資金が必要なんだ……」

「やはりあなたが裏切り者だったんですね……」

 貴族ゆえ、その訂正を守るため莫大な資金が必要、
 その資金の確保のために、冥王と手をつないだということだった。

 そう言いながらポケットからナイフを取り出し、自らの腕を傷つけて自害し罪を償おうとする、その時幸乃がその手を止める。

「申し訳ないけどそれはさせないよ」

「そうですわ、それを今度は法廷で証明してください」

 そう言って2人はシュペルリンクをとらえる、そして再び冥王兵との戦いに参加、20分もすると冥王兵はすべて消滅する。

 2人はハンスに真犯人を伝える、シュぺルリンクを中心に複数の内通者がいたこと、そして彼らが政治機密などを横流ししていたことを打ち明けた。

 ハンスはこの後の彼らの処遇は私がやるといって2人を外に連れ出す、今度お礼に何かする、そしてもう1つ頼みが欲しいといって歩き出した。

「ちょっと寄ってほしいところがあります。そこまで時間はとらせません」

「わかりました、別にいいですよ」

 そんなやりとりをして20分ほど歩くとその場所にたどり着く。
 そこはきれいに整備された草が広がる平地に規則正しく十字架が並んでいる場所、つまり墓地だった。

「こっちだ」

 ハンスが道を右に曲がる、少し歩くと目的の場所はあった。

 その場所に3人はたどり着くと幸乃は十字架の下の白い墓石の名前を確認するするとその名前に驚愕する。
 そう、それはかつての勇者だと聞いた加藤凪の墓だった。


 幸乃が驚きのあまり言葉を失う中さらにハンスは天を見上げながら語り始める。
「彼女の戦いっぷり、そして彼女を救えなかった無念さは今も私の記憶に残っています」

 壮絶だった、彼女は対立していた私たちを背負って単身で何千ともいう膨大な数の敵と戦い壮絶な戦死をしたという。

 そんな話を聞いて幸乃は言葉も出なかった。
 1枚岩になれなかった、そのせいで彼女を支える事が出来ずこうして彼女を失うことになってしまった悔いは今もこうして残っていた。

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