TS! 俺、女の子になってるっ? 魔法少女になった俺は、最強になって百合展開を楽しむようです

静内燕

文字の大きさ
上 下
118 / 122
最後の戦い

第118話 激闘、そして結末

しおりを挟む
 集いし希望の光よ、その思いを結集させ、新たな希望を照らし出せ!!
 スターダスト・ボルテックス・エアレイド


 空中にいるユピテルは身動きが取れず、剣を前に繰り出し、攻撃を受けようとする。

 ──が無理な体制だったためか、十分受けきれずユピテルの体がのけぞる。

 そのまま体を回転させ、ユピテルに攻撃を放つ。
 体勢を崩していたユピテルは十分な受け身をとれず、攻撃が直撃。

 吹き飛ぶユピテルの体。そのまま数メートルほど吹き飛び、受身をとる。これ以上の追撃はやめた方がいい。

 そしてユピテルはすぐに立ち上がり、剣を俺に向けながら話しかけてきた。




「流石だなアグナム。貴様こそ、俺の生涯のライバルと呼ぶにふさわしい存在だ」

「ありがとう。それはうれしいよ」

「──だが、一つだけ言っておくべきことがある」

「な、何だよ」

「確かに貴様は強かった。パワーも、テクニックも、そして最後まであきらめずに戦う精神も。いままでであって来た魔法少女の中で一番といっても過言ではない。認めよう、貴様の実力。だが、最後に勝つのはこの俺だ!」

 そしてユピテルは深呼吸をし、精神を統一させた。
 まずい、何かをやってくる。すぐに辞めさせないと──。

「ありがとう。けれど、俺は負けるつもりなんてない。絶対に、ユピテルに勝って見せる!」

 俺はそう叫びながらユピテルに向かって距離を詰めていく。

 そして間合いに入っていき剣を振り下ろしユピテルに放つ。手加減はしない、全力の一撃。

 しかし──。

「フッ。流石はアグナムだ。だが、甘いぞ!」


 俺が放った一撃を、ユピテルは軽々と植えてしまう。手加減したつもりはなかったのだが、剣がこれ以上進んでいかない。

「すっげええなあ二人とも」

「やっぱりレベルが違うぜぇぇ!」

 会場の観客も大盛り上がりを見せる。




 さっきとは速度が違う。さっきまでは攻撃こそ防がれていたもののペース自体はスピードのある俺が握っていた。
 しかし今は違う。俺とほぼ互角の速度で



「ユピテル。お前、まだ力を隠し持っていたのか」

「隠していたわけではない。お前の速度に、ついていっているだけだ」



 そんな相手が、全力で俺を倒すと言っている。それならば、返す言葉は、やることは一つだ!

「ありがとう。けれど、その だって俺は破ってみせるよ!」

 両者一歩も引かず、手加減もなく渾身の一撃を相手にふるう。

 その姿はまるでダンスを踊っているかのようだ。
 美しく、手を取り合い踊っているかのような──。

 二つの輝いた宝石が、互いに磨きあい、高みを目指しているようだ。
 体が軽くなり、パワーもスピードも増しているのがわかる。


 ユピテルも、それに乗じて力を増しているのを感じる。


 俺はユピテルより先手を取ろうと。ユピテルは圧倒的なパワーで押し潰そうと、持てる力のすべてを出し尽くす。

 互いに全く手加減をしない。


 ライバルというやつだ。
 互いに互いを信頼できる存在として認識している。ピンチの時には助け合い、共に戦う。

 けれど、どっちが強いかと聞かれたら自分が強いと胸を張って言える。
 死んでもいいから勝ちたくないという相手。

 俺は生まれてきた中で初めて生まれた存在。
 それでも、目の前の相手は一歩も下がらない。

「俺だって本気だ。そして、その本気で貴様を打ち破って見せる!」


 相手はユピテル。今までの敵よりずっと強い存在だ。

 味方だったときはあんなにも頼れる存在だった。それが今や敵同士、優勝をかけて戦う相手となっている。

 それが今や俺の優勝を阻む最大のライバルになっている。俺がどれだけ力を高め、新たな戦術を生み出しても、ユピテルは当たり前に乗り越えてくる。

 そんなユピテルだからこそ、こんなところで負けるわけにはいかないと、絶対に勝って見せると強く感じられる。


 そして俺はユピテルと全力で戦い続ける。

 ──互いを高めあうような、激しい戦いの中で、俺はとある感覚に襲われ始めた。


「──ユピテル、強くなってる」



 急にユピテルの速度についていけなくなり始めたのだ。
 まるで戦っていくごとにユピテルの攻撃が早くなり、パワーが強くなっていくような感覚に襲われる。

 俺は何とか攻撃に対応しながらも動揺を隠せなくなってしまう。

 すると後ろの観客席で座っていた女神「パージ」が突然席を立ち始めた。


 まるで痛みをこらえるような、悲痛さを感じられる表情で、俺の方をじっと見ている。

「サナさん。とうとう恐れていたことが起きてしまいました──」

「恐ろしいこと?」

「生まれ持った魔力です」


「魔法少女の体内には魔力があります。その魔力は日ごろの鍛錬、そして互いに力を磨き上がっていく中で高めていくことができます。先ほどまで、二人は死闘を繰り返していく中で互いにその力を高めあっていきました。しかし、成長速度には限界があり、それは魔法少女によって速度が異なります」

 その言葉を聞いて俺は理解してしまう。俺がユピテルについていくことができなくなった理由を──。

「もうお分かりいただけると思います。今、互いに力を認め合い、ぶつけ合う中で今までにないくらいの成長速度で二人は強くなりました。しかし、戦いあっているうちにアグナムの成長速度が限界に達してしまったのです。もう、アグナムの成長速度は速くなることはありません。しかしユピテルは違う、アグナムの倍以上の容量があり、今もなおその力を高めることができる。どこまでも高みを目指すことができる」

 それは、今まで聞いたどんな言葉よりも非情で残酷なものだった。

「大変申し訳有りませんが、アグナムさんはこれ以上、ユピテルさんについていくことはできません」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...