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最終章
第103話 まさかの味方
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そして彼は壁の下にぐったりと倒れこむ。誰の目から見ても勝敗は明らかだった。
「審判。こいつが死ぬまで戦わせる気か? 早く勝敗の合図を鳴らせ!」
ユピテルの催促に審判は一瞬たじろいでしまうがすぐに右手を上げ叫ぶ。
「勝者、ユピテル選手!」
その言葉に周囲が大盛り上がりを見せる。
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ──。
「やっぱりユピテルはさいこうだぜぇぇ」
俺もその言葉には同意だ。
モルトケは鉄束団のリーダー。彼女の強さは本物だった。俺が本気を出したとしても勝てる保証はない。
その彼女が俺を倒しにここにやってきた。カグヤと激戦を繰り広げ大きく消耗したタイミングで来たということから彼女の本気度がよくわかる。
そしてユピテルは現れそれを跳ね除けて勝ったんだから。
これで鉄束団との戦いはほぼ終わりだといってもいい。リーダーに対して、どちらが強いか決着をつけたのだから。
──がユピテルの表情は険しいままだ。
「モルトケ、まだ何かあるんだろう。いい加減吐いたらどうだ?」
「さすがだよユピテル。ただ私を倒すだけでなく、私の意図にまで気が付くとはね──」
するとモルトケはにやりと目を浮かべた後、ユピテルをそのまま見つめる。
「やはりそうみたいだな。茶番などいなない、貴様の目的を言え!」
「フフッ、まあそう焦るな。すぐにわかるさ。そして絶望しろ」
そしれモルトケがピッと指を鳴らす。その瞬間──。
スッ──。
闘技場の入り口から誰かが出て来た。
「誰だ、名前を名乗れ!」
その人物の外観に俺は唖然とする。
筋肉質で、髪が短い男の人。
というか、この街の権力者の一人であるドラパと外見が似ている。
ドラパ──とは違う。似ているけれど、いつもの雰囲気とは違う。
「こいつはケオス、あのドラパの弟だ」
ユピテルの言葉に俺は驚く、あの人に弟がいたなんて──。
「フッ、覚えていてくれるとはな、嬉しいぞユピテルよ」
「当然だ、貴様たちの行ってきた活動は、今の俺の記憶にある。とても尊敬できたと思った。今はその正反対だがな──」
「せ、正反対。どういう事があったんだ?」
俺はその事実が気になる。
「こいつらは、俺と同じ、サテライトで生まれたんだ」
「そうだ、俺もドラパもこの底辺と呼ばれる地、サテライトで生まれた」
サテライト、ということは生まれはユピテルと一緒なのか。それの今の物言い、明らかに彼のことを知っているような言い方だ。
「一言で言ってやろう。俺は、昔お前たちにあこがれを感じていた。苦境な立場に立たされても、それをはねのけて戦い続ける貴様たちにな」
「ど、どういうことだユピテル。俺にも教えてくれ」
すると口を開き始めたのは毛オスのほうだった。
「俺たちは自らの境遇を変えるために様々な活動をした。いろいろな人に訴えかけたり、時には乱闘沙汰になりかけたり。しかしかなうことはなかった」
その中で俺は言葉を失ってしまう。彼らに、そんな事実があったとは。
「その中で強く誓ったのだ。絆や優しさなどという生易しいものでは、境遇を変えることはできないと。自らの境遇を変えるためならば、それは圧倒的な力とすべてを焼き尽くしても運命を変えるという鋼鉄のごとき決意なのだと。そう悟った時、私たちは手に入れたのだ。鉄束団の力という強大な魔力を」
意外だった。彼とドラパが黒幕だったとは。けれど、俺たちだって負けられないわけがある。
だから、戦う以外に道なんてない。
するとユピテルは一歩前に出て剣をケオスへと向けた。
「俺は、かつてお前のことを尊敬していた。自分たちの不遇だった境遇を変えようと必死になっている姿がとても印象的だった。だが、お前はそれを続けることができず、悪に落ちてしまった。
その程度の奴だったということだ、がっかりだ。そして、おれたちの敵だというならば打ち倒す。それだけのことだ!」
「ああ、俺たちの力で、こいつを倒そう!」
俺はユピテルに賛同する。流石だユピテル。こんな状況でも自分を曲げたりしない。
しかし、実際に戦えるのかというと──。
「姑息だと思わないか。俺たちが戦いを終えた後にのこのことハイエナのようにやってきて手柄だけを持っていく。それで貴様をどうやって勝者だと認めようというのだ」
そうだ、俺もユピテルも激闘を終えて魔力を相当消耗している。とても強敵と一戦交える状況じゃない。
「ユピテルの言う通りだ。卑怯だと思わないのか?」
俺は精一杯訴える。しかしケオスは全く動じない。
「勝つために手段は選ばない。敵が弱っている状態で安全に勝利をかっさらう。最も安全な勝ち方をするのは当然のことだ。これはスポーツではない」
こいつ、完全開き直っている。何としても俺たちに勝つ気だ。
正直ほとんど戦える気がしない。どうすればいいんだ?
そしてケオスは俺達に指を差しながら叫ぶ。
「さあ、貴様たちは俺達に支配されるのだ。そして我らがこの世界を支配する。貴様たちの様な互いに差別し合い、争うしか能のない下劣な奴らに代わってな」
ケオスの体から魔力を感じ始める。一人の人間からは、今までに感じたことがないくらいの強大な魔力だ。
はっきり言って今の俺とユピテルではまともに戦うことすらできないだろう。
ユピテルも、ただケオスをにらみつけているだけでなにも言葉を返していない。
そんな絶望感に俺達は浸っていると──。
「安心しろ、アグナム、ユピテル。あなた達には、私がついている」
背後から誰かの声が聞こえ始めた。
「審判。こいつが死ぬまで戦わせる気か? 早く勝敗の合図を鳴らせ!」
ユピテルの催促に審判は一瞬たじろいでしまうがすぐに右手を上げ叫ぶ。
「勝者、ユピテル選手!」
その言葉に周囲が大盛り上がりを見せる。
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ──。
「やっぱりユピテルはさいこうだぜぇぇ」
俺もその言葉には同意だ。
モルトケは鉄束団のリーダー。彼女の強さは本物だった。俺が本気を出したとしても勝てる保証はない。
その彼女が俺を倒しにここにやってきた。カグヤと激戦を繰り広げ大きく消耗したタイミングで来たということから彼女の本気度がよくわかる。
そしてユピテルは現れそれを跳ね除けて勝ったんだから。
これで鉄束団との戦いはほぼ終わりだといってもいい。リーダーに対して、どちらが強いか決着をつけたのだから。
──がユピテルの表情は険しいままだ。
「モルトケ、まだ何かあるんだろう。いい加減吐いたらどうだ?」
「さすがだよユピテル。ただ私を倒すだけでなく、私の意図にまで気が付くとはね──」
するとモルトケはにやりと目を浮かべた後、ユピテルをそのまま見つめる。
「やはりそうみたいだな。茶番などいなない、貴様の目的を言え!」
「フフッ、まあそう焦るな。すぐにわかるさ。そして絶望しろ」
そしれモルトケがピッと指を鳴らす。その瞬間──。
スッ──。
闘技場の入り口から誰かが出て来た。
「誰だ、名前を名乗れ!」
その人物の外観に俺は唖然とする。
筋肉質で、髪が短い男の人。
というか、この街の権力者の一人であるドラパと外見が似ている。
ドラパ──とは違う。似ているけれど、いつもの雰囲気とは違う。
「こいつはケオス、あのドラパの弟だ」
ユピテルの言葉に俺は驚く、あの人に弟がいたなんて──。
「フッ、覚えていてくれるとはな、嬉しいぞユピテルよ」
「当然だ、貴様たちの行ってきた活動は、今の俺の記憶にある。とても尊敬できたと思った。今はその正反対だがな──」
「せ、正反対。どういう事があったんだ?」
俺はその事実が気になる。
「こいつらは、俺と同じ、サテライトで生まれたんだ」
「そうだ、俺もドラパもこの底辺と呼ばれる地、サテライトで生まれた」
サテライト、ということは生まれはユピテルと一緒なのか。それの今の物言い、明らかに彼のことを知っているような言い方だ。
「一言で言ってやろう。俺は、昔お前たちにあこがれを感じていた。苦境な立場に立たされても、それをはねのけて戦い続ける貴様たちにな」
「ど、どういうことだユピテル。俺にも教えてくれ」
すると口を開き始めたのは毛オスのほうだった。
「俺たちは自らの境遇を変えるために様々な活動をした。いろいろな人に訴えかけたり、時には乱闘沙汰になりかけたり。しかしかなうことはなかった」
その中で俺は言葉を失ってしまう。彼らに、そんな事実があったとは。
「その中で強く誓ったのだ。絆や優しさなどという生易しいものでは、境遇を変えることはできないと。自らの境遇を変えるためならば、それは圧倒的な力とすべてを焼き尽くしても運命を変えるという鋼鉄のごとき決意なのだと。そう悟った時、私たちは手に入れたのだ。鉄束団の力という強大な魔力を」
意外だった。彼とドラパが黒幕だったとは。けれど、俺たちだって負けられないわけがある。
だから、戦う以外に道なんてない。
するとユピテルは一歩前に出て剣をケオスへと向けた。
「俺は、かつてお前のことを尊敬していた。自分たちの不遇だった境遇を変えようと必死になっている姿がとても印象的だった。だが、お前はそれを続けることができず、悪に落ちてしまった。
その程度の奴だったということだ、がっかりだ。そして、おれたちの敵だというならば打ち倒す。それだけのことだ!」
「ああ、俺たちの力で、こいつを倒そう!」
俺はユピテルに賛同する。流石だユピテル。こんな状況でも自分を曲げたりしない。
しかし、実際に戦えるのかというと──。
「姑息だと思わないか。俺たちが戦いを終えた後にのこのことハイエナのようにやってきて手柄だけを持っていく。それで貴様をどうやって勝者だと認めようというのだ」
そうだ、俺もユピテルも激闘を終えて魔力を相当消耗している。とても強敵と一戦交える状況じゃない。
「ユピテルの言う通りだ。卑怯だと思わないのか?」
俺は精一杯訴える。しかしケオスは全く動じない。
「勝つために手段は選ばない。敵が弱っている状態で安全に勝利をかっさらう。最も安全な勝ち方をするのは当然のことだ。これはスポーツではない」
こいつ、完全開き直っている。何としても俺たちに勝つ気だ。
正直ほとんど戦える気がしない。どうすればいいんだ?
そしてケオスは俺達に指を差しながら叫ぶ。
「さあ、貴様たちは俺達に支配されるのだ。そして我らがこの世界を支配する。貴様たちの様な互いに差別し合い、争うしか能のない下劣な奴らに代わってな」
ケオスの体から魔力を感じ始める。一人の人間からは、今までに感じたことがないくらいの強大な魔力だ。
はっきり言って今の俺とユピテルではまともに戦うことすらできないだろう。
ユピテルも、ただケオスをにらみつけているだけでなにも言葉を返していない。
そんな絶望感に俺達は浸っていると──。
「安心しろ、アグナム、ユピテル。あなた達には、私がついている」
背後から誰かの声が聞こえ始めた。
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