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最終章
第99話 鉄束団リーダー
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カグヤは理解していたように身を引いて、すぐにステップを踏んで攻撃を繰り出してくる。俺はすぐに身体を退いてカグヤの攻撃を振り払った。しかしカグヤはその動作も読んでいたようでさらに攻勢に出る。
素晴らしいとしか言いようがない。この連撃によって、俺は攻撃、動作をすべて誘導され、一方的に袋小路に追い詰められるような感覚になっている。
そこから外れるということは、彼女の猛反撃を食らい即破滅ということだ。
どのような回避や反撃を試みても、それを予知していたかのように対応されてしまう。
さらに以前より殺気が増している。少しでもチャンスがあればすぐに攻撃を仕掛けてくるのだ。
しかし失ったものもある。
以前のカグヤならば、守備的なところがある代わりにスキというスキが全くなかった。
だから力づくで強引に突破する以外に攻略手段がなかった。
しかし今は違う。
相手を倒し、勝利を求めることにこだわりすぎるあまり前がかり気味になっている。
恐らく俺やユピテルに負けて、今までの自分を信じることができなくなったのだろう。
そして今までの自分を捨てて、自分の戦闘スタイルを変えてしまったのだ。
それがお前のスキだ。
こんなことしたって、カグヤのためにはならない。
敵だったけど、彼女の気高くて、正々堂々としたところはとても素敵だと思う。
そんな彼女を俺は取り戻してほしいと思っている。
だから、今のカグヤには絶対に負けるわけにはいかない。
チャンスは一回。失敗すればカグヤなら次は対策を打ってくるだろう。
カグヤは勝利を確信したのかにやりと笑みを浮かべた。以前の様に相手をリスペクトし、自分の信じ続ける彼女であればまだスキをさらさなかったのかもしれない。相手をリスペクトし、勝利だけが目的ではないのだから。
しかし勝利を目的としたお前はそれを確信した瞬間、その目的を達成したと錯覚し隙を見せてしまった。
その代償を、きっちりと払わせてやる!
俺は体から湧き上がる痛みを強引に無視して体を回転させながら剣をふるう。
その勢いを利用し、剣を振り上げカグヤに向かって一気に向かっていく。
勝利を確信したと思っていたカグヤはその動きに対応できず唖然とするばかり。
そして──。
悠久なる輝きをまとい、赫焉(かくえん)なる斬撃、ここに現れよ
ホープ・ソード・スレイシング
ズバァァァァァァァァァァァァァァァ──。
俺が放った一撃がカグヤの体をリングの外の観客席まで吹き飛ばす。
そして壁に激突しそのまま倒れこんだ。
その彼女の体から蒸発するように魔力が消えていく。
連撃の欠点その2。あまりの連続攻撃と、相手の攻撃を予測し、誘導するための技術や瞬発力。それを実行するために莫大な魔力の消費が生じてしまう。
──もう彼女はしばらく魔法を使えないだろう。これで勝負は決まった。
もっとも、俺だって人のことは言えない。
あまりの痛みに立っていられなくなり、切り刻まれたわき腹を抑える。
一応腹部に魔力を回していたので出血こそはならなかったが、ほぼ攻撃と同時に使用したので魔力を使いすぎてしまった。
あまりの痛みに立っていられなくなり、座り込んだ瞬間レフェリーの叫び声がこだまする。
「カグヤ選手、意識消失。勝者。アグナム」
ウォォォォォォォォォォォォォォォ──。
その瞬間にこだまする、観客たちの大声援。絶叫と興奮がこの場を包む。
そして、この勝負はこれで終わりではない。
観客たちが興奮しているのはこれからの彼女へのいたぶりだ。
「さあ、勝負は尽きました。これからはみなさんお愉しみのいたぶりの時間です。 思う存分、カグヤをいたぶってください」
もちろん。俺にそんな趣味はない。するはずがない。俺は走ってカグヤの方へと向かっていく。
ボロボロになったカグヤ。
お姫様抱っこのような形で首とひざの裏を両手で支える。
「じゃあ、こんなところから出よう、あなたにこんな場所は似合わない」
カグヤを安心させるためにフッと微笑を浮かべた。
そのカグヤはその瞬間はっと顔を赤面させる。ちょっとカッコつけちゃったかな?
「全く、君は罪な女だな──。責任は取ってもらうぞ」
幸いなことに、観客からも彼女をいたぶれというような声は出ていない。
このまま、彼女を連れてこの場から去ろう……。
そう考え、カグヤを抱きかかえ、立ち上がろうとしたその時──。
キィィィィィィ──。
闘技場の扉が開き、誰かが入ってくる。
「何だ貴様」
「貴様がアグナムか、まさか今の状態のカグヤを倒すとはな、流石だというほかない──」
フードを被り外見はよく見えない。するとその人物はフードを脱ぎ、表情をあらわにする。
「モルトケ、何しに来たお前!」
モルトケ、確か鉄束団のリーダーの名前だ。とうとう姿を現したな。
モルトケの容姿を見てみる。長い耳、つまりエルフだ。それから中性的な容姿で、男だったとしても全く不思議はない
というか正直分からない。
そしてモルトケは剣を俺に向かって向けながら、話しかけてきた。
「アグナム、私と戦おう──といいたいところだが、すでにカグヤと戦いを終えてボロボロのようだな。ということで二人とも始末させてもらう」
素晴らしいとしか言いようがない。この連撃によって、俺は攻撃、動作をすべて誘導され、一方的に袋小路に追い詰められるような感覚になっている。
そこから外れるということは、彼女の猛反撃を食らい即破滅ということだ。
どのような回避や反撃を試みても、それを予知していたかのように対応されてしまう。
さらに以前より殺気が増している。少しでもチャンスがあればすぐに攻撃を仕掛けてくるのだ。
しかし失ったものもある。
以前のカグヤならば、守備的なところがある代わりにスキというスキが全くなかった。
だから力づくで強引に突破する以外に攻略手段がなかった。
しかし今は違う。
相手を倒し、勝利を求めることにこだわりすぎるあまり前がかり気味になっている。
恐らく俺やユピテルに負けて、今までの自分を信じることができなくなったのだろう。
そして今までの自分を捨てて、自分の戦闘スタイルを変えてしまったのだ。
それがお前のスキだ。
こんなことしたって、カグヤのためにはならない。
敵だったけど、彼女の気高くて、正々堂々としたところはとても素敵だと思う。
そんな彼女を俺は取り戻してほしいと思っている。
だから、今のカグヤには絶対に負けるわけにはいかない。
チャンスは一回。失敗すればカグヤなら次は対策を打ってくるだろう。
カグヤは勝利を確信したのかにやりと笑みを浮かべた。以前の様に相手をリスペクトし、自分の信じ続ける彼女であればまだスキをさらさなかったのかもしれない。相手をリスペクトし、勝利だけが目的ではないのだから。
しかし勝利を目的としたお前はそれを確信した瞬間、その目的を達成したと錯覚し隙を見せてしまった。
その代償を、きっちりと払わせてやる!
俺は体から湧き上がる痛みを強引に無視して体を回転させながら剣をふるう。
その勢いを利用し、剣を振り上げカグヤに向かって一気に向かっていく。
勝利を確信したと思っていたカグヤはその動きに対応できず唖然とするばかり。
そして──。
悠久なる輝きをまとい、赫焉(かくえん)なる斬撃、ここに現れよ
ホープ・ソード・スレイシング
ズバァァァァァァァァァァァァァァァ──。
俺が放った一撃がカグヤの体をリングの外の観客席まで吹き飛ばす。
そして壁に激突しそのまま倒れこんだ。
その彼女の体から蒸発するように魔力が消えていく。
連撃の欠点その2。あまりの連続攻撃と、相手の攻撃を予測し、誘導するための技術や瞬発力。それを実行するために莫大な魔力の消費が生じてしまう。
──もう彼女はしばらく魔法を使えないだろう。これで勝負は決まった。
もっとも、俺だって人のことは言えない。
あまりの痛みに立っていられなくなり、切り刻まれたわき腹を抑える。
一応腹部に魔力を回していたので出血こそはならなかったが、ほぼ攻撃と同時に使用したので魔力を使いすぎてしまった。
あまりの痛みに立っていられなくなり、座り込んだ瞬間レフェリーの叫び声がこだまする。
「カグヤ選手、意識消失。勝者。アグナム」
ウォォォォォォォォォォォォォォォ──。
その瞬間にこだまする、観客たちの大声援。絶叫と興奮がこの場を包む。
そして、この勝負はこれで終わりではない。
観客たちが興奮しているのはこれからの彼女へのいたぶりだ。
「さあ、勝負は尽きました。これからはみなさんお愉しみのいたぶりの時間です。 思う存分、カグヤをいたぶってください」
もちろん。俺にそんな趣味はない。するはずがない。俺は走ってカグヤの方へと向かっていく。
ボロボロになったカグヤ。
お姫様抱っこのような形で首とひざの裏を両手で支える。
「じゃあ、こんなところから出よう、あなたにこんな場所は似合わない」
カグヤを安心させるためにフッと微笑を浮かべた。
そのカグヤはその瞬間はっと顔を赤面させる。ちょっとカッコつけちゃったかな?
「全く、君は罪な女だな──。責任は取ってもらうぞ」
幸いなことに、観客からも彼女をいたぶれというような声は出ていない。
このまま、彼女を連れてこの場から去ろう……。
そう考え、カグヤを抱きかかえ、立ち上がろうとしたその時──。
キィィィィィィ──。
闘技場の扉が開き、誰かが入ってくる。
「何だ貴様」
「貴様がアグナムか、まさか今の状態のカグヤを倒すとはな、流石だというほかない──」
フードを被り外見はよく見えない。するとその人物はフードを脱ぎ、表情をあらわにする。
「モルトケ、何しに来たお前!」
モルトケ、確か鉄束団のリーダーの名前だ。とうとう姿を現したな。
モルトケの容姿を見てみる。長い耳、つまりエルフだ。それから中性的な容姿で、男だったとしても全く不思議はない
というか正直分からない。
そしてモルトケは剣を俺に向かって向けながら、話しかけてきた。
「アグナム、私と戦おう──といいたいところだが、すでにカグヤと戦いを終えてボロボロのようだな。ということで二人とも始末させてもらう」
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