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第2章
第70話 これが、本当の私なの
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一方レテフ。
(リヒレ、強い。こんなに力があったの?)
闘技場の外でのリヒレとの戦い。
リヒレは自分の肉体くらいの大きな鎌をぶん回して、レテフに迫りくる。
レテフは、なかなか反撃ができない。タロットの力だけあって、一般人にしては破格の魔力を持っている。
──がそれだけではない。
「どうしたのレテフちゃん。守ってばかりじゃ勝てないよ。それとも、私とは戦えないっていうの?」
リヒレがそう叫びながら大鎌をふるう。
彼女の言葉は、当たっていた。
リヒレが次々繰り出す攻撃にレテフは防御を取るだけで全く反撃しない。
というかしようともしない。
迷っているのだ。彼女は子供のころからの親友。自分がいちこんでいるときにいつも支えてくれたかけがえもない存在。
簡単に、弓矢は向けられない。
頭では戦わなければいけないと理解していても、彼女の感情がそれを拒絶してしまうのだ。
攻撃はできない。しかしよけ続けるのも限界がある。
「そこよ!」
そしてとうとうかわしきれず、攻撃を浴びてしまう。
レテフの肉体は10メートルほど吹き飛び、地面にたたきつけられる。
倒れこむレテフ。
「あっけないわね。これで終わり?」
そしてリヒレがレテフの足元に移動すると、その大鎌を彼女の首元に置く。
「リヒレ。どうしてこんなになっちゃったの? 本当の自分を早く取り戻してよ」
レテフの必死の願いにリヒレの表情がこわばる。
「本当の自分? これが本当のわたしなの」
「これが、リヒレ? 嘘に決まってるじゃない。本当のリヒレは、優しくて、私を支えてくれる大切な親友──」
「それは私の演技なの。あなたたちはいいよね。魔法少女の力を与えられて、それでみんなから羨望のまなざしで見られて」
レテフの言葉を遮るリヒレの叫び。
リヒレの言葉がレテフの心にナイフのように突き刺さる。
彼女の戦うという意思を、じわじわと奪っていき、絶望感が全身を包んでいく。
「私は、それを見ていることしかできなかった。いつも助けられる側で、そばであこがれることしかできなかった」
「だからこの力をもらった時、とても嬉しかったわ。それでね、決めたの。今までのように」
レテフの心の中から、闘志が消えていくのを感じ始める。戦わなきゃと思っていても、リヒレから突き放されたという事実が彼女の心から戦い気力を奪っていき、あきらめの気持ちが大きくなっていった。
(私、ダメなのかな……)
そう感じ始めたその時、思い出し始める。
(リヒレは、そんな子じゃない──)
レテフの心の叫びが、聞こえだす。
わかっている。リヒレは、そんな人間ではない。
ずっと一緒にいた自分だからわかる。もし彼女が、このまま闇の力の操られ、人々を傷つけてしまったら。
正気を取り戻したリヒレは、立ち直ることができなくなるくらい落ち込んでしまうだろう。
そのまま闇落ちしてしまうことだって、十二分にあり得る。自分自身に絶望して、あの笑顔を失ってしまうことだって──。
(そんなことは、絶対にさせない。今、自分が傷ついても、絶対に親友を救って見せる)
そう心の中で叫ぶと、レテフはリヒレの表情を見る。
わかる、彼女の本心が泣いているのが、彼女の最高の親友が、叫んでいるのがわかる。
だったらレテフが出した答えなんて、ただひとつしかない。
「リヒレ……。あなたを見て、私ようやく理解したわ。今私がなすべきことを」
「なすべき、こと?」
「どんなことがあっても、何があっても、あなたを守り通すって。絶対に救うって!」
リヒレはレテフの叫びに思わず一歩引く。さっきまでの、動揺しながらの言葉ではない。強い意志を持った、自分自身根の叫びだ。
「絶対、取り戻すから!」
そして、立ち上がり、再び立ち向かう。
立ち上がり、自身の弓を剣のように扱い、リヒレにぶつけていく。
いつものような得意の遠距離戦を行いのではない。彼女から距離を取ったら、それだけリヒレに対する気持ちが遠のいてしまいそうだからだ。
だから前へ、逃げたくなってもそれを踏み越えて前へ。
そしてそれは、思いもよらない結果をもたらすこととなった。
レテフは、無理やりに攻勢をかける。決して得意とは言えない接近戦、その中で、気づき始める。
「リヒレ、この感触。これなら勝てる」
レテフが、押し始めている。リヒレは、不器用ながら何とか攻撃を防ぐ。
その防ぎ方から感じる。やっぱり接近戦をしたのは正解だったと。
こう攻撃を防ぐか、どう反撃に出るか、それは長年戦ってきた経験や勘からその人が瞬時に決めるものだ。
しかし、リヒレにはそれがない。いくら強い魔力を手に入れたとしても、それを使うのは今が初めて。
押しているときはそれでもいい、うまくいっているときはただ殴っているだけでもそれなりにうまくいく。
しかし、一度防戦に転じてしまうとそうはいかない。相手の攻撃を読んで、どう反撃するか決めないといつまでも押されっぱなしになってしまう。
彼女は、戸惑いながら、拙い動きで攻撃を受けるだけ。
リヒレは、いわば強い魔力を手に入れただけの素人。何度も激戦を繰り広げたレテフの敵ではなかった。
そしてリヒレはレテフから攻撃を浴び、身体が吹き飛ぶ。この時も普通の魔法少女ならば、ここで大技が飛んでくることを理解できるが、リヒレには、それを理解する経験がなかった。
そしてようやくできた反撃のチャンス。
「ここで、勝負を決める!」
レテフは思いっきり叫び、弓矢をリヒレに向けた。
(リヒレ、強い。こんなに力があったの?)
闘技場の外でのリヒレとの戦い。
リヒレは自分の肉体くらいの大きな鎌をぶん回して、レテフに迫りくる。
レテフは、なかなか反撃ができない。タロットの力だけあって、一般人にしては破格の魔力を持っている。
──がそれだけではない。
「どうしたのレテフちゃん。守ってばかりじゃ勝てないよ。それとも、私とは戦えないっていうの?」
リヒレがそう叫びながら大鎌をふるう。
彼女の言葉は、当たっていた。
リヒレが次々繰り出す攻撃にレテフは防御を取るだけで全く反撃しない。
というかしようともしない。
迷っているのだ。彼女は子供のころからの親友。自分がいちこんでいるときにいつも支えてくれたかけがえもない存在。
簡単に、弓矢は向けられない。
頭では戦わなければいけないと理解していても、彼女の感情がそれを拒絶してしまうのだ。
攻撃はできない。しかしよけ続けるのも限界がある。
「そこよ!」
そしてとうとうかわしきれず、攻撃を浴びてしまう。
レテフの肉体は10メートルほど吹き飛び、地面にたたきつけられる。
倒れこむレテフ。
「あっけないわね。これで終わり?」
そしてリヒレがレテフの足元に移動すると、その大鎌を彼女の首元に置く。
「リヒレ。どうしてこんなになっちゃったの? 本当の自分を早く取り戻してよ」
レテフの必死の願いにリヒレの表情がこわばる。
「本当の自分? これが本当のわたしなの」
「これが、リヒレ? 嘘に決まってるじゃない。本当のリヒレは、優しくて、私を支えてくれる大切な親友──」
「それは私の演技なの。あなたたちはいいよね。魔法少女の力を与えられて、それでみんなから羨望のまなざしで見られて」
レテフの言葉を遮るリヒレの叫び。
リヒレの言葉がレテフの心にナイフのように突き刺さる。
彼女の戦うという意思を、じわじわと奪っていき、絶望感が全身を包んでいく。
「私は、それを見ていることしかできなかった。いつも助けられる側で、そばであこがれることしかできなかった」
「だからこの力をもらった時、とても嬉しかったわ。それでね、決めたの。今までのように」
レテフの心の中から、闘志が消えていくのを感じ始める。戦わなきゃと思っていても、リヒレから突き放されたという事実が彼女の心から戦い気力を奪っていき、あきらめの気持ちが大きくなっていった。
(私、ダメなのかな……)
そう感じ始めたその時、思い出し始める。
(リヒレは、そんな子じゃない──)
レテフの心の叫びが、聞こえだす。
わかっている。リヒレは、そんな人間ではない。
ずっと一緒にいた自分だからわかる。もし彼女が、このまま闇の力の操られ、人々を傷つけてしまったら。
正気を取り戻したリヒレは、立ち直ることができなくなるくらい落ち込んでしまうだろう。
そのまま闇落ちしてしまうことだって、十二分にあり得る。自分自身に絶望して、あの笑顔を失ってしまうことだって──。
(そんなことは、絶対にさせない。今、自分が傷ついても、絶対に親友を救って見せる)
そう心の中で叫ぶと、レテフはリヒレの表情を見る。
わかる、彼女の本心が泣いているのが、彼女の最高の親友が、叫んでいるのがわかる。
だったらレテフが出した答えなんて、ただひとつしかない。
「リヒレ……。あなたを見て、私ようやく理解したわ。今私がなすべきことを」
「なすべき、こと?」
「どんなことがあっても、何があっても、あなたを守り通すって。絶対に救うって!」
リヒレはレテフの叫びに思わず一歩引く。さっきまでの、動揺しながらの言葉ではない。強い意志を持った、自分自身根の叫びだ。
「絶対、取り戻すから!」
そして、立ち上がり、再び立ち向かう。
立ち上がり、自身の弓を剣のように扱い、リヒレにぶつけていく。
いつものような得意の遠距離戦を行いのではない。彼女から距離を取ったら、それだけリヒレに対する気持ちが遠のいてしまいそうだからだ。
だから前へ、逃げたくなってもそれを踏み越えて前へ。
そしてそれは、思いもよらない結果をもたらすこととなった。
レテフは、無理やりに攻勢をかける。決して得意とは言えない接近戦、その中で、気づき始める。
「リヒレ、この感触。これなら勝てる」
レテフが、押し始めている。リヒレは、不器用ながら何とか攻撃を防ぐ。
その防ぎ方から感じる。やっぱり接近戦をしたのは正解だったと。
こう攻撃を防ぐか、どう反撃に出るか、それは長年戦ってきた経験や勘からその人が瞬時に決めるものだ。
しかし、リヒレにはそれがない。いくら強い魔力を手に入れたとしても、それを使うのは今が初めて。
押しているときはそれでもいい、うまくいっているときはただ殴っているだけでもそれなりにうまくいく。
しかし、一度防戦に転じてしまうとそうはいかない。相手の攻撃を読んで、どう反撃するか決めないといつまでも押されっぱなしになってしまう。
彼女は、戸惑いながら、拙い動きで攻撃を受けるだけ。
リヒレは、いわば強い魔力を手に入れただけの素人。何度も激戦を繰り広げたレテフの敵ではなかった。
そしてリヒレはレテフから攻撃を浴び、身体が吹き飛ぶ。この時も普通の魔法少女ならば、ここで大技が飛んでくることを理解できるが、リヒレには、それを理解する経験がなかった。
そしてようやくできた反撃のチャンス。
「ここで、勝負を決める!」
レテフは思いっきり叫び、弓矢をリヒレに向けた。
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