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第2章
第57話 負けるのは、イヤ!
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そして戦いが始まる。
まず動いたのはサナだ。一気に距離を詰める。
そして一瞬後方にいるレテフにアイコンタクトを送る。レテフはそれを察し弓矢を構える。
悠久なる聖矢よ、鉄血なる信念を纏い、その想いを昇華せよ
エアレイド・ストーム・アクセルアロー
レテフの術式。100本はあろう魔力を伴った大量の矢が彼女の周囲に出現。
そして彼女が弓を弾き、矢を発射する。敵2人の元へ。
「ほう、なかなかやるな。魔法少女」
放たれた弓矢の中心にライグは突っ込んでいく。
そして弓矢が直撃、しかし全く聞いていない。そしてサナが攻撃を加える。
サナがその剣をライグに向かって突き刺す。剣は彼の右胸を貫く。
「よし、これで大ダメージよ」
「レテフちゃん。それは違うよ」
「ピンク、勘がいいな──」
サナは突き刺した時の感触、そしてその時の彼の余裕の笑みを見てすべてを理解した。これは狙っていたのだと。
確かに彼女の一撃は鎧を破り、彼の肉体を貫いた。ライグはぱっと余裕の表情で1歩退く。
すると、突き刺した場所は魔力で元通り、鎧は回復してしまったのだ。
「回復系の術式ね──」
レテフの問いに、ライグはにやりと笑ったまま答えない。
「じゃあ、反撃に行くとするか──」
そして槍を構えて、サナを抜いて一気にレテフに襲い掛かってくる。
サナが応戦しようとするが、黒髪の長髪バリシュが叫びながら自身のマスケット銃をサナに向ける。
「お前の相手は俺だぁぁぁ!」
横からたたきつけられた、鋭い一撃。
「まずい!」
反射的に体を動かせ、距離をとる。何とか攻撃をかわす。
そこには構えをとったバリシュが、薄ら笑いを浮かべながら構えをとっていた。
やや軽いものの、ユピテルに匹敵するほどの速さを持っていた。
サナはギリギリでその切っ先をはじくと、身体を入れ替えるようにして剣を振りかぶり──。
それをやめて、無理やり後ろに下がる。
とっさに後ろに下がったその場所をかすめるように、その剣が貫く。
少しでも反応が遅れていたら、間違いなくバリシュの剣が、サナの脇腹を貫通していた。
それほどまでに、すべてが完ぺきなカウンターだった。
「かわしやがったな、たいしたやつだ……」
すると今度はバリシュが反撃する番になる。
彼が一気に距離を詰める。
剣の先が地を這うような低さから、一気に切り上げる。
防御に回ったサナは、何とか防ごうとするが。その剣を回避するようにバリシュの剣が円を描く。
(攻撃が、速い!)
サナの言葉通り、一つ一つの攻撃速度が今まで戦ってきた魔法少女よりも桁違いに早い。
サナは攻撃を何とか回避しつつ、反撃の機会を狙うが、そのとたん鋭いカウンターが狙ってくる。
(どうしよう、まったく反撃できない……)
互いの剣の激しいぶつかり合い。衝突するたびに火花が飛び散る。バリシュの攻撃はどれも隙だらけ、粗削りだが、圧倒的な速さがそれをかき消しているのだ。
単純な強さだけなら、ユピテルに匹敵しているかもしれない。
(けど、彼の剣には、まだ覚悟がない!)
サナは感じていた。彼の剣は、子供がわがままを言って暴れているのと同じなのだと……。感情のままに暴れ、力を振り回しているだけ。
(覚悟も、想いも全く感じない!)
そう心で叫ぶと、無理やり間合いを詰め始める。
そして魔力の供給を上げてバリシュの剣をはじき返すと、彼の胴体に強力な突きを見舞う。
「馬鹿め! 焦ったなこの女!」
バリシュは、それを狙っていたかのように体をひねって、無理やり体勢を立て直す。
そして、サナの突きに、自分も突きで対応。そして、手首をひねり、サナの剣を弾き飛ばそうとした。
しかし──。
「何っ?」
サナはそれを読んで、その力を利用しくるりと1回転そのまま前進すると、無防備なバリシュの体。
無防備になったバリシュの胸を、サナの剣が力強く突き刺した。
魔力があったので、出血こそしないものの、致命傷となる。
彼の肉体から、蒸発するように魔力が消えていくのがわかる。
自分の負けを知り、愕然とした表情でバリシュが大きく目を開く。
「マジかよ……。こんな力を手にした、俺が負けるなんて……」
そしてそのまま力なくこそを抜かし、倒れこんだ。
「あとは、レテフちゃん。お願い、勝って!」
サナは顔を上げて、レテフたちに視線を向ける。
彼女たちの戦いも、決着の時を迎えようとしていた。
「行くぞ、黒髪女!」
坊主頭で小柄なライグは、魔力を使い再び鎧を装備し始めた。そして一気に突撃をしてくる。
レテフはその攻撃をギリギリで回避しながら、彼の方向を振り返る。繰り出された槍攻撃は、風邪を引き裂くような鋭さで、直撃すれば致命傷となるだろう。
(速いし、威力も強い)
その強さに、驚きを見せるレテフ。しかし、敵は都合よく余裕を与えてはくれない。
ライグが再び突っ込んでくる。レテフは慌てて、彼の方向を向き、自身の弓を構える。
すぐに彼に向けて弓矢を10本ほど放つが、直撃してもライグは意にも介さず、全く勢いは落ちない。
直撃した部分はわずかに、鎧が破損したものの、すぐに魔力によって修復してしまう。
身をかがみ、回避したレテフのすぐ上を、ライグの槍が通り過ぎ、彼女の黒髪が空を舞う。
乱暴だが、パワーも速さも桁違いだ。おまけのこれはレテフが苦手な接近戦。
(このままじゃ……、負ける)
遠距離で押し切れず、距離を詰められパワー負け。先日のローチェ戦と同じパターンだ。
このままでは、そう遠くないうちに力負けする。
その姿を想像すると、レテフは、身震いし始める。
攻撃自体は荒々しく、直線的といった感じで、単純なものだが、それだけに対応も難しい。
しかし、だからと言って負けるのをおとなしく待っているつもりはない。
彼女にも、意地があるのだ。
(こんなところで、負けるのは──、イヤ!!)
まず動いたのはサナだ。一気に距離を詰める。
そして一瞬後方にいるレテフにアイコンタクトを送る。レテフはそれを察し弓矢を構える。
悠久なる聖矢よ、鉄血なる信念を纏い、その想いを昇華せよ
エアレイド・ストーム・アクセルアロー
レテフの術式。100本はあろう魔力を伴った大量の矢が彼女の周囲に出現。
そして彼女が弓を弾き、矢を発射する。敵2人の元へ。
「ほう、なかなかやるな。魔法少女」
放たれた弓矢の中心にライグは突っ込んでいく。
そして弓矢が直撃、しかし全く聞いていない。そしてサナが攻撃を加える。
サナがその剣をライグに向かって突き刺す。剣は彼の右胸を貫く。
「よし、これで大ダメージよ」
「レテフちゃん。それは違うよ」
「ピンク、勘がいいな──」
サナは突き刺した時の感触、そしてその時の彼の余裕の笑みを見てすべてを理解した。これは狙っていたのだと。
確かに彼女の一撃は鎧を破り、彼の肉体を貫いた。ライグはぱっと余裕の表情で1歩退く。
すると、突き刺した場所は魔力で元通り、鎧は回復してしまったのだ。
「回復系の術式ね──」
レテフの問いに、ライグはにやりと笑ったまま答えない。
「じゃあ、反撃に行くとするか──」
そして槍を構えて、サナを抜いて一気にレテフに襲い掛かってくる。
サナが応戦しようとするが、黒髪の長髪バリシュが叫びながら自身のマスケット銃をサナに向ける。
「お前の相手は俺だぁぁぁ!」
横からたたきつけられた、鋭い一撃。
「まずい!」
反射的に体を動かせ、距離をとる。何とか攻撃をかわす。
そこには構えをとったバリシュが、薄ら笑いを浮かべながら構えをとっていた。
やや軽いものの、ユピテルに匹敵するほどの速さを持っていた。
サナはギリギリでその切っ先をはじくと、身体を入れ替えるようにして剣を振りかぶり──。
それをやめて、無理やり後ろに下がる。
とっさに後ろに下がったその場所をかすめるように、その剣が貫く。
少しでも反応が遅れていたら、間違いなくバリシュの剣が、サナの脇腹を貫通していた。
それほどまでに、すべてが完ぺきなカウンターだった。
「かわしやがったな、たいしたやつだ……」
すると今度はバリシュが反撃する番になる。
彼が一気に距離を詰める。
剣の先が地を這うような低さから、一気に切り上げる。
防御に回ったサナは、何とか防ごうとするが。その剣を回避するようにバリシュの剣が円を描く。
(攻撃が、速い!)
サナの言葉通り、一つ一つの攻撃速度が今まで戦ってきた魔法少女よりも桁違いに早い。
サナは攻撃を何とか回避しつつ、反撃の機会を狙うが、そのとたん鋭いカウンターが狙ってくる。
(どうしよう、まったく反撃できない……)
互いの剣の激しいぶつかり合い。衝突するたびに火花が飛び散る。バリシュの攻撃はどれも隙だらけ、粗削りだが、圧倒的な速さがそれをかき消しているのだ。
単純な強さだけなら、ユピテルに匹敵しているかもしれない。
(けど、彼の剣には、まだ覚悟がない!)
サナは感じていた。彼の剣は、子供がわがままを言って暴れているのと同じなのだと……。感情のままに暴れ、力を振り回しているだけ。
(覚悟も、想いも全く感じない!)
そう心で叫ぶと、無理やり間合いを詰め始める。
そして魔力の供給を上げてバリシュの剣をはじき返すと、彼の胴体に強力な突きを見舞う。
「馬鹿め! 焦ったなこの女!」
バリシュは、それを狙っていたかのように体をひねって、無理やり体勢を立て直す。
そして、サナの突きに、自分も突きで対応。そして、手首をひねり、サナの剣を弾き飛ばそうとした。
しかし──。
「何っ?」
サナはそれを読んで、その力を利用しくるりと1回転そのまま前進すると、無防備なバリシュの体。
無防備になったバリシュの胸を、サナの剣が力強く突き刺した。
魔力があったので、出血こそしないものの、致命傷となる。
彼の肉体から、蒸発するように魔力が消えていくのがわかる。
自分の負けを知り、愕然とした表情でバリシュが大きく目を開く。
「マジかよ……。こんな力を手にした、俺が負けるなんて……」
そしてそのまま力なくこそを抜かし、倒れこんだ。
「あとは、レテフちゃん。お願い、勝って!」
サナは顔を上げて、レテフたちに視線を向ける。
彼女たちの戦いも、決着の時を迎えようとしていた。
「行くぞ、黒髪女!」
坊主頭で小柄なライグは、魔力を使い再び鎧を装備し始めた。そして一気に突撃をしてくる。
レテフはその攻撃をギリギリで回避しながら、彼の方向を振り返る。繰り出された槍攻撃は、風邪を引き裂くような鋭さで、直撃すれば致命傷となるだろう。
(速いし、威力も強い)
その強さに、驚きを見せるレテフ。しかし、敵は都合よく余裕を与えてはくれない。
ライグが再び突っ込んでくる。レテフは慌てて、彼の方向を向き、自身の弓を構える。
すぐに彼に向けて弓矢を10本ほど放つが、直撃してもライグは意にも介さず、全く勢いは落ちない。
直撃した部分はわずかに、鎧が破損したものの、すぐに魔力によって修復してしまう。
身をかがみ、回避したレテフのすぐ上を、ライグの槍が通り過ぎ、彼女の黒髪が空を舞う。
乱暴だが、パワーも速さも桁違いだ。おまけのこれはレテフが苦手な接近戦。
(このままじゃ……、負ける)
遠距離で押し切れず、距離を詰められパワー負け。先日のローチェ戦と同じパターンだ。
このままでは、そう遠くないうちに力負けする。
その姿を想像すると、レテフは、身震いし始める。
攻撃自体は荒々しく、直線的といった感じで、単純なものだが、それだけに対応も難しい。
しかし、だからと言って負けるのをおとなしく待っているつもりはない。
彼女にも、意地があるのだ。
(こんなところで、負けるのは──、イヤ!!)
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