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第2章
第54話 レテフの、意外な過去
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そしてレテフたちと合流。
俺の姿が見えるなり、レテフが早足で俺に寄ってくる。
「エッチなこととか、あんなことやこんなこととかされてない? 貞操は大丈夫?」
そして息が当たるくらい近くまで寄ってくる。まあ、一歩手前まで行っちゃったけど問題はない。
「大丈夫だよ。レテフじゃないんだから」
「そ、それはよかったかな……。けど、どんなことを話したか、教えてくれるかな?」
サナの言葉に俺は少し考える。ここで本当のことを言ったら、ローチェが、完全な敵として扱われちゃうよな……。
とりあえず、アイツが男だということと、鉄束団だということは伏せておこう。
「まあ、先日のコンテストのことと、なんか、気が合うから友達になってくれってことだ」
俺は適当な理由をつけてごまかす。2人とも、とりあえず信じてくれた。
「友達? わからないわ。そう偽って、接近した挙句、不埒なことをしてくるかもしれないわ。大人のキスをしたり、裸をのぞいたり、大人の階段を上るように迫って来たり」
「だ、大丈夫だよ。そんなことするような子じゃないから安心して」
だからレテフじゃないんだから大丈夫だって!
俺は何とか彼女をなだめる。
「じゃあ、夜も遅いし、もう帰ろうか──」
そして帰り道、暗い石畳の道をとぼとぼと歩きながら、今日の出来事を思い出す。
ローチェ。まさか男の娘だったとは、おまけに鉄束団だ。
敵……なんだよなあいつ。
確かに、次の試合。俺は全力で戦うつもりだし、勝つ気でいる。
けれど、アイツ、敵だという感覚が全くしない。
ムエリットの時の様に、戦うしかないのか。あいつは、負けたら消滅してしまうのか。
けど、それは、なんか嫌だ。
根っから悪い奴なんかじゃない、ただ魔法少女になりたかっただけの男の娘だ。
何とかして、それだけは回避しなきゃ──!
ローチェの家を訪れてから数日後。
俺たちは再び、リヒレの店を訪れた。
「おじゃましまーす」
「ようこそ!」
ご機嫌な気分でリヒレが店の奥からやってくる。
昼前のこの時間。客足は全くない。
彼女の店は、コーヒーを業者や富裕層の家に出して生計を立てている。だから、店は空いていても問題ないのだ。
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
リヒレのエプロン姿。笑顔が似合うかわいさ。とても素敵だ。
「リヒレちゃん。すっごいかわいい!」
サナがその姿に、興奮。まあ、気持ちもわからなくもない。
そして4人掛けの座席につき、10分もするとコーヒーが出てくる。
コーヒーを机に置くと、リヒレがレテフの隣につく。
「今日のコーヒー、とっても自慢なんだから!」
「自慢、どんなコーヒーなの?」
「それは飲んでからの楽しみよ。サナちゃん!」
ウキウキな表情のリヒレ。どんなコーヒーなんだろう。そして4人とも手を合わせ──。
「いただきます」
その言葉を合図に、コーヒーを口にする。
味わいを感じるなり俺は驚く。
「確かに味が違う」
「うん、確かにこのコーヒー、おいしい。香りが豊かで、味も市場の出店で飲んだものとは違うしおいしい」
「サナちゃん。そりゃぁそうよ!!」
今まで飲んで来たコーヒーよりはるかにおいしい。味も、香りも今までとは違う。
「だってこれ、政府に出しているコーヒーだもん。特別品なのよ」
「えっ? そうなの」
「政府のコーヒーは、うちで卸したものを使っているわ。これがそうなの。本当はパパから、この豆は他人に出さないでって言われてるの。けど、ちょっと余っちゃったから、使っちゃった」
そうなのか、ま、そこまでの量じゃないしいいか。
そしてコーヒーをすすりながら談笑。おいしい食べ物や、ファッション、趣味など、楽しく、たわいもない会話を楽しむ。
なんか新鮮だな。前の世界では、友人なんていなかった。だから、人とこんなに会話で盛り上がることなんてなかった。
必要なこと以外喋ったりしないコミュ障だった。
だからこの世界に来て初めて知った。親しい友達と、こんな会話をして楽しむ良さを。
そしてサナは何気なく1つの質問をレテフに投げかける。
「そういえばさ、レテフちゃんについて気になったんだけど」
「何、サナ──」
「レテフちゃんって変身するとき、口上を叫ばないよね。何か理由はあるの?」
確かに俺も気にはなっていた。俺やサナもそうだが、魔法少女は変身するときに、専用の言葉を叫ぶ。
何か理由でもあるのかな──。
サナが何気なく言ったその言葉、レテフはその言葉に驚いたようにドキッとし始める。
「それは、ね、ちょっと深いわけがあるのよ」
すると、答えたのはリヒレだった。彼女はどこかノリノリな気分で、レテフの昔について語り始める。
「ちょっと前は体をクルクルって回転したり、ウィンクしたりしてとってもかわいらしい変身をしていたのよ」
「へぇ~~」
「ちょ、ちょっとリヒレ、やめて。サナも変な妄想しないで!」
あわあわと手を振り、否定するレテフ。しかしそれにかまわずリヒレは話を続ける。
「けど、私や魔法少女仲間がそれを指摘したの。「レテフちゃんかわいい」って。そしたら顔を真っ赤にして、恥ずかしがっちゃって、かっこいいポーズとかをやめちゃったの」
「へぇ、かわいいポーズ? 興味ある、見たい、見せてそれで記録に取ってみたい!」
「やめて、私、あのポーズ恥ずかしくてやりたくないの。だから、一生懸命無詠唱で変身できるよう練習したの!」
必死になって反論するレテフ。まあ、そこまで恥ずかしいなら勘弁してあげよう。
そしていったんこの場が落ち着き、俺がカップに残っていたコーヒーを飲み干したその時。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!
突然の爆発音。俺たちは慌ててキョロキョロと顔を合わせる。
「たぶん、ホロウが現れたんだと思う、行ってみよう」
「「うん」」
サナとレテフも同調。すぐに店を出て表に出る。
すると──。
俺の姿が見えるなり、レテフが早足で俺に寄ってくる。
「エッチなこととか、あんなことやこんなこととかされてない? 貞操は大丈夫?」
そして息が当たるくらい近くまで寄ってくる。まあ、一歩手前まで行っちゃったけど問題はない。
「大丈夫だよ。レテフじゃないんだから」
「そ、それはよかったかな……。けど、どんなことを話したか、教えてくれるかな?」
サナの言葉に俺は少し考える。ここで本当のことを言ったら、ローチェが、完全な敵として扱われちゃうよな……。
とりあえず、アイツが男だということと、鉄束団だということは伏せておこう。
「まあ、先日のコンテストのことと、なんか、気が合うから友達になってくれってことだ」
俺は適当な理由をつけてごまかす。2人とも、とりあえず信じてくれた。
「友達? わからないわ。そう偽って、接近した挙句、不埒なことをしてくるかもしれないわ。大人のキスをしたり、裸をのぞいたり、大人の階段を上るように迫って来たり」
「だ、大丈夫だよ。そんなことするような子じゃないから安心して」
だからレテフじゃないんだから大丈夫だって!
俺は何とか彼女をなだめる。
「じゃあ、夜も遅いし、もう帰ろうか──」
そして帰り道、暗い石畳の道をとぼとぼと歩きながら、今日の出来事を思い出す。
ローチェ。まさか男の娘だったとは、おまけに鉄束団だ。
敵……なんだよなあいつ。
確かに、次の試合。俺は全力で戦うつもりだし、勝つ気でいる。
けれど、アイツ、敵だという感覚が全くしない。
ムエリットの時の様に、戦うしかないのか。あいつは、負けたら消滅してしまうのか。
けど、それは、なんか嫌だ。
根っから悪い奴なんかじゃない、ただ魔法少女になりたかっただけの男の娘だ。
何とかして、それだけは回避しなきゃ──!
ローチェの家を訪れてから数日後。
俺たちは再び、リヒレの店を訪れた。
「おじゃましまーす」
「ようこそ!」
ご機嫌な気分でリヒレが店の奥からやってくる。
昼前のこの時間。客足は全くない。
彼女の店は、コーヒーを業者や富裕層の家に出して生計を立てている。だから、店は空いていても問題ないのだ。
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
リヒレのエプロン姿。笑顔が似合うかわいさ。とても素敵だ。
「リヒレちゃん。すっごいかわいい!」
サナがその姿に、興奮。まあ、気持ちもわからなくもない。
そして4人掛けの座席につき、10分もするとコーヒーが出てくる。
コーヒーを机に置くと、リヒレがレテフの隣につく。
「今日のコーヒー、とっても自慢なんだから!」
「自慢、どんなコーヒーなの?」
「それは飲んでからの楽しみよ。サナちゃん!」
ウキウキな表情のリヒレ。どんなコーヒーなんだろう。そして4人とも手を合わせ──。
「いただきます」
その言葉を合図に、コーヒーを口にする。
味わいを感じるなり俺は驚く。
「確かに味が違う」
「うん、確かにこのコーヒー、おいしい。香りが豊かで、味も市場の出店で飲んだものとは違うしおいしい」
「サナちゃん。そりゃぁそうよ!!」
今まで飲んで来たコーヒーよりはるかにおいしい。味も、香りも今までとは違う。
「だってこれ、政府に出しているコーヒーだもん。特別品なのよ」
「えっ? そうなの」
「政府のコーヒーは、うちで卸したものを使っているわ。これがそうなの。本当はパパから、この豆は他人に出さないでって言われてるの。けど、ちょっと余っちゃったから、使っちゃった」
そうなのか、ま、そこまでの量じゃないしいいか。
そしてコーヒーをすすりながら談笑。おいしい食べ物や、ファッション、趣味など、楽しく、たわいもない会話を楽しむ。
なんか新鮮だな。前の世界では、友人なんていなかった。だから、人とこんなに会話で盛り上がることなんてなかった。
必要なこと以外喋ったりしないコミュ障だった。
だからこの世界に来て初めて知った。親しい友達と、こんな会話をして楽しむ良さを。
そしてサナは何気なく1つの質問をレテフに投げかける。
「そういえばさ、レテフちゃんについて気になったんだけど」
「何、サナ──」
「レテフちゃんって変身するとき、口上を叫ばないよね。何か理由はあるの?」
確かに俺も気にはなっていた。俺やサナもそうだが、魔法少女は変身するときに、専用の言葉を叫ぶ。
何か理由でもあるのかな──。
サナが何気なく言ったその言葉、レテフはその言葉に驚いたようにドキッとし始める。
「それは、ね、ちょっと深いわけがあるのよ」
すると、答えたのはリヒレだった。彼女はどこかノリノリな気分で、レテフの昔について語り始める。
「ちょっと前は体をクルクルって回転したり、ウィンクしたりしてとってもかわいらしい変身をしていたのよ」
「へぇ~~」
「ちょ、ちょっとリヒレ、やめて。サナも変な妄想しないで!」
あわあわと手を振り、否定するレテフ。しかしそれにかまわずリヒレは話を続ける。
「けど、私や魔法少女仲間がそれを指摘したの。「レテフちゃんかわいい」って。そしたら顔を真っ赤にして、恥ずかしがっちゃって、かっこいいポーズとかをやめちゃったの」
「へぇ、かわいいポーズ? 興味ある、見たい、見せてそれで記録に取ってみたい!」
「やめて、私、あのポーズ恥ずかしくてやりたくないの。だから、一生懸命無詠唱で変身できるよう練習したの!」
必死になって反論するレテフ。まあ、そこまで恥ずかしいなら勘弁してあげよう。
そしていったんこの場が落ち着き、俺がカップに残っていたコーヒーを飲み干したその時。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!
突然の爆発音。俺たちは慌ててキョロキョロと顔を合わせる。
「たぶん、ホロウが現れたんだと思う、行ってみよう」
「「うん」」
サナとレテフも同調。すぐに店を出て表に出る。
すると──。
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