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第25話 それぞれの1歩
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分かった。あなたの思い。絶対に無駄にはしない。
そんな誓いを胸に、俺達はこの場所を去っていく。
魔法少女の1人がそろそろ撤退の時間だと俺に告げたからだ。
彼女たちがこの遺跡のことを記録し終わったらしい。バタフと強い握手をして、さよならと一言。
帰り道の洞窟の中、歩きながらサナが俺に話しかけてくる。
「そういえば結構ダメージ受けていたみたいだけれど大丈夫なの? 」
「何が?」
「エンペラーカップ、明日からだよ。戦えるの?」
そうか、明日が大会だった。いきなり対戦かもしれないんだっけ。すっかり忘れてたよ。
「結構ぐったりしていたけど。多分明日1回戦よ。戦えるの?」
「大丈夫、戦えないというわけではないから」
まあ、戦いというのはいつも万全の状態でできるとは限らない。ゲームでもボロボロの状態で不意打ちを受けたり、眠気と戦いながらバトルをしたことはあった。
ぐったりしていたというのも貞操が危ういという精神的なダメージによるものだったし、これくらいなら全然大丈夫だ。
「心配ありがとう。けど特に問題はないよ」
その言葉にレテフは顔を真っ赤にしてほをかむってしまう。
「ありがとうなんて、当然じゃない。愛する人の体調のことを心配するのは」
その言葉に若干引いてしまう俺。その気持ちは全く変わっていないんだな……。
すでに夕日が沈もうとしているころ、遺跡を振り返ってささやいた。
「どんな強敵だろうと、俺は必ず勝つ!」
その思いに変わりはない。ユピテル、ムエリット誰だろうと俺が勝つ。
そんな強い思いを強く抱きながら、俺たちはこの場所を去っていった。
俺たちが遺跡で激しい戦いを繰り広げていた日の夜。
全く別の場所で闇がうごめいていた。
ここから数10キロ離れたところにあるとある神殿へと続く道。
人気がない森の中。
数人くらいがやっと通れる闇夜の道を、軽い口論をしながら2人の人物が歩いていた。
先日の昼間、3つの首を持ったタイプのホロウ。ダークライト・エンド・ドラゴンを召喚し街を襲撃したオークのドイテ。もう1人は男勝りな言葉使い、アグナムと激戦を繰り広げた魔法少女。
小柄でピンクと灰色の2色の髪色にツインテールの髪の少女。ムエリットだ。
不満そうな顔つきでぶつくさと独り言をつぶやく。
「俺、まだ戦えたんだけどな。不様に負けちまって、悔しくて夜も眠れねぇよ」
「しょうがねぇだろ。あのまま行ったらお前、死ぬまで戦っていただろ」
その言葉にムエリットは図星をつかれ黙りこくってしまう。
「んで、なんかいい策でもあったのかい?」
「まあな。やはりアグナムという女が強い。貴様、以前にも戦ったことがあるのだろう? あのゲーム空間とかいうところで」
「ゲーム空間っていうのは俺以外だ。俺は強くなりたい、だから魔王様に頼んで、それも魔王様の術式でゲームとかいう世界の中に生身で入ったんだ」
要約すると、「魔法少女大戦」のプレイヤーたちと生身でゲーム内で戦ったということだ。俺たちのような強者と。
「なんだかよくわからないが、強いやつがいっぱいいるってことでいいんだな?」
「ああ、そしてその強いやつの1人があいつってことだ。さっきの戦いを見てもわかるだろ」
ドイデは俺の強さを思い出し、思わずため息をつきてしまう。それくらいドイデには強い相手に見えたからだ。
「ああ、真正面から戦ったら大苦戦するだろうな。変化球を使う必要がある。まかせろ、次は必ず俺たちが勝つ。先日は魔法少女の力や戦いを見ていただけ、いわば偵察だ」
「そんなでかい体して、ずいぶん慎重なんだな。お前はシャーマンオークでパワーだって魔法少女に負けないくらい強いんだろ。そのまま行っちゃえよ8,9割は勝てるだろ」
「馬鹿野郎、勝負にはな──、8割9割じゃダメなんだよ。100%勝たなきゃいけない時があるんだよ。忘れたか? 俺たちが受けた絶望を」
力強い声。その言葉にムエリットは自らの過去を思い出しうつむく。そして再び顔を上げ ドイテを見つめた。
「ああ、俺たちは、裏切られた、まっとうな正義の道なんて用意されていなかった。だから復習しなきゃいけないんだ。俺たちの正義を裏切ったやつらに」
彼らはもともと正しい道、正義の道を歩もうとしていた。しかし、その正義は踏みにじられ、道を、命を失った。それが彼ら鉄束団の特徴の1つ。
「今こそ、俺たちを見捨てたやつらに、一泡吹かせてやる時が来た。そうだろう。ドイデ、ムエリット」
そしてその怒りを、魔王に買われ、この世界によみがえったのだ。
2人の前方からどす黒い声が聞こえる。闇夜で姿は見えないが声で2人はそれが誰なのかすぐに理解した。
「いたのか──、モルトケ」
フードを被り、顔を隠していて顔はよく見えない。しかし、その体から、邪悪なオーラがこの場を支配するようににじみ出ている。
「その顔つきじゃ、うまくいかなかったようだな」
その言葉に頭に来たのか、ドイデはモルトケに詰め寄り不機嫌な口調で言い返す。
「参謀ぶって座ってるだけのお前に言われたくはない。大体俺たち鉄束団7皇神は7人いることになってる。そのはずが6人。人数集めすらまともにできていないじゃないかお前」
「仕方ないだろう。以前のエルフとの戦いで敗れたのだから。だが心配はいらん。いま探しているところだ。新たな7皇神を──」
そう、彼らの名は鉄束団この世界を支配し漆黒の染めようとする存在だ。意味は、決して負けない鉄の結束という意味で。7人のメンバーで構成されているはずだったが、前回にエルフとの戦いで1人敗れてしまったのだった。
「だからそれが終わったら俺も戦いに出る。それまで待っていろ」
言い争う2人、ギスギスとした険悪な雰囲気がこの場を支配する。
「ところで、アグナムだったな。その魔法少女とやらは」
「ああ。あの強さは尋常じゃない」
そしてモルトケは彼女の強さや性格について聞く。こまめな情報収集を欠かさず行い、相手の傾向を知ってそれに合わせて対策を練っていたのだ。
「なるほどな。典型的な正義感の強い魔法少女というタイプだな。俺たちが悪行を行えば行うほど、負けまいと強くなるタイプか」
「ああ、ムエリットとよく似たタイプだったな」
「確かに、昔の俺とそっくりで腹が立つぜ」
ムエリットも顔つきを険しくさせる。昔の自分、正義を信じて戦っていたこと、そしてその後に起こった残酷な結末を思い出したからだ。
「ただ真正面から立ち向かっていっても、あらぬ力を発揮されることもあり、返り討ち必死だ」
「まあな、実際俺も負けちまったし。あいつ、どうやって勝つか……」
ムエリットが両手に頭を置きながら考えていると、モルトケが何かを思いついたらしく。2人に視線を合わせる。
「確かに彼を真正面から戦えばこっちも被害は甚大なものになるだろう。そこで、からめ手を使え」
「ああ、それを今俺は考えているところだ」
すると、モルトケがにやりと笑みを見せ始める。
(どれだけ戦闘能力がすごくとも、所詮は経験の少ない若造。弱点だってわかる。昔の俺たちのようにな)
彼らも昔は俺やサナのように悪を嫌い正義のために戦っていた。しかし、裏切りや罠によってその望みを果たせず、失意のうちに散っていったのであった。
「この手のタイプの弱点はよく理解している。ドイデ、こいつには仲間がいるはずだ。そうだろう?」
「ああ、いたな」
「だったら話は早い。ちょっと耳を貸せ──」
そういってモルトケは彼に接近。耳打ちでその作戦を伝える。
「なるほどな。そいつは有効かもしれん」
「頼むぞドイデ。お前ならできる。われらルルイエの勝利のために、全力を尽くすのだ」
ドイデは静かに首を縦に振る。彼らには俺たちと同じくらい、下手をしたらそれ以上に強い信念がある。
俺たちが敵について知ったこの日、敵もまた結束を固め、勝利のために新たな1歩を踏み出したのだった。
そんな誓いを胸に、俺達はこの場所を去っていく。
魔法少女の1人がそろそろ撤退の時間だと俺に告げたからだ。
彼女たちがこの遺跡のことを記録し終わったらしい。バタフと強い握手をして、さよならと一言。
帰り道の洞窟の中、歩きながらサナが俺に話しかけてくる。
「そういえば結構ダメージ受けていたみたいだけれど大丈夫なの? 」
「何が?」
「エンペラーカップ、明日からだよ。戦えるの?」
そうか、明日が大会だった。いきなり対戦かもしれないんだっけ。すっかり忘れてたよ。
「結構ぐったりしていたけど。多分明日1回戦よ。戦えるの?」
「大丈夫、戦えないというわけではないから」
まあ、戦いというのはいつも万全の状態でできるとは限らない。ゲームでもボロボロの状態で不意打ちを受けたり、眠気と戦いながらバトルをしたことはあった。
ぐったりしていたというのも貞操が危ういという精神的なダメージによるものだったし、これくらいなら全然大丈夫だ。
「心配ありがとう。けど特に問題はないよ」
その言葉にレテフは顔を真っ赤にしてほをかむってしまう。
「ありがとうなんて、当然じゃない。愛する人の体調のことを心配するのは」
その言葉に若干引いてしまう俺。その気持ちは全く変わっていないんだな……。
すでに夕日が沈もうとしているころ、遺跡を振り返ってささやいた。
「どんな強敵だろうと、俺は必ず勝つ!」
その思いに変わりはない。ユピテル、ムエリット誰だろうと俺が勝つ。
そんな強い思いを強く抱きながら、俺たちはこの場所を去っていった。
俺たちが遺跡で激しい戦いを繰り広げていた日の夜。
全く別の場所で闇がうごめいていた。
ここから数10キロ離れたところにあるとある神殿へと続く道。
人気がない森の中。
数人くらいがやっと通れる闇夜の道を、軽い口論をしながら2人の人物が歩いていた。
先日の昼間、3つの首を持ったタイプのホロウ。ダークライト・エンド・ドラゴンを召喚し街を襲撃したオークのドイテ。もう1人は男勝りな言葉使い、アグナムと激戦を繰り広げた魔法少女。
小柄でピンクと灰色の2色の髪色にツインテールの髪の少女。ムエリットだ。
不満そうな顔つきでぶつくさと独り言をつぶやく。
「俺、まだ戦えたんだけどな。不様に負けちまって、悔しくて夜も眠れねぇよ」
「しょうがねぇだろ。あのまま行ったらお前、死ぬまで戦っていただろ」
その言葉にムエリットは図星をつかれ黙りこくってしまう。
「んで、なんかいい策でもあったのかい?」
「まあな。やはりアグナムという女が強い。貴様、以前にも戦ったことがあるのだろう? あのゲーム空間とかいうところで」
「ゲーム空間っていうのは俺以外だ。俺は強くなりたい、だから魔王様に頼んで、それも魔王様の術式でゲームとかいう世界の中に生身で入ったんだ」
要約すると、「魔法少女大戦」のプレイヤーたちと生身でゲーム内で戦ったということだ。俺たちのような強者と。
「なんだかよくわからないが、強いやつがいっぱいいるってことでいいんだな?」
「ああ、そしてその強いやつの1人があいつってことだ。さっきの戦いを見てもわかるだろ」
ドイデは俺の強さを思い出し、思わずため息をつきてしまう。それくらいドイデには強い相手に見えたからだ。
「ああ、真正面から戦ったら大苦戦するだろうな。変化球を使う必要がある。まかせろ、次は必ず俺たちが勝つ。先日は魔法少女の力や戦いを見ていただけ、いわば偵察だ」
「そんなでかい体して、ずいぶん慎重なんだな。お前はシャーマンオークでパワーだって魔法少女に負けないくらい強いんだろ。そのまま行っちゃえよ8,9割は勝てるだろ」
「馬鹿野郎、勝負にはな──、8割9割じゃダメなんだよ。100%勝たなきゃいけない時があるんだよ。忘れたか? 俺たちが受けた絶望を」
力強い声。その言葉にムエリットは自らの過去を思い出しうつむく。そして再び顔を上げ ドイテを見つめた。
「ああ、俺たちは、裏切られた、まっとうな正義の道なんて用意されていなかった。だから復習しなきゃいけないんだ。俺たちの正義を裏切ったやつらに」
彼らはもともと正しい道、正義の道を歩もうとしていた。しかし、その正義は踏みにじられ、道を、命を失った。それが彼ら鉄束団の特徴の1つ。
「今こそ、俺たちを見捨てたやつらに、一泡吹かせてやる時が来た。そうだろう。ドイデ、ムエリット」
そしてその怒りを、魔王に買われ、この世界によみがえったのだ。
2人の前方からどす黒い声が聞こえる。闇夜で姿は見えないが声で2人はそれが誰なのかすぐに理解した。
「いたのか──、モルトケ」
フードを被り、顔を隠していて顔はよく見えない。しかし、その体から、邪悪なオーラがこの場を支配するようににじみ出ている。
「その顔つきじゃ、うまくいかなかったようだな」
その言葉に頭に来たのか、ドイデはモルトケに詰め寄り不機嫌な口調で言い返す。
「参謀ぶって座ってるだけのお前に言われたくはない。大体俺たち鉄束団7皇神は7人いることになってる。そのはずが6人。人数集めすらまともにできていないじゃないかお前」
「仕方ないだろう。以前のエルフとの戦いで敗れたのだから。だが心配はいらん。いま探しているところだ。新たな7皇神を──」
そう、彼らの名は鉄束団この世界を支配し漆黒の染めようとする存在だ。意味は、決して負けない鉄の結束という意味で。7人のメンバーで構成されているはずだったが、前回にエルフとの戦いで1人敗れてしまったのだった。
「だからそれが終わったら俺も戦いに出る。それまで待っていろ」
言い争う2人、ギスギスとした険悪な雰囲気がこの場を支配する。
「ところで、アグナムだったな。その魔法少女とやらは」
「ああ。あの強さは尋常じゃない」
そしてモルトケは彼女の強さや性格について聞く。こまめな情報収集を欠かさず行い、相手の傾向を知ってそれに合わせて対策を練っていたのだ。
「なるほどな。典型的な正義感の強い魔法少女というタイプだな。俺たちが悪行を行えば行うほど、負けまいと強くなるタイプか」
「ああ、ムエリットとよく似たタイプだったな」
「確かに、昔の俺とそっくりで腹が立つぜ」
ムエリットも顔つきを険しくさせる。昔の自分、正義を信じて戦っていたこと、そしてその後に起こった残酷な結末を思い出したからだ。
「ただ真正面から立ち向かっていっても、あらぬ力を発揮されることもあり、返り討ち必死だ」
「まあな、実際俺も負けちまったし。あいつ、どうやって勝つか……」
ムエリットが両手に頭を置きながら考えていると、モルトケが何かを思いついたらしく。2人に視線を合わせる。
「確かに彼を真正面から戦えばこっちも被害は甚大なものになるだろう。そこで、からめ手を使え」
「ああ、それを今俺は考えているところだ」
すると、モルトケがにやりと笑みを見せ始める。
(どれだけ戦闘能力がすごくとも、所詮は経験の少ない若造。弱点だってわかる。昔の俺たちのようにな)
彼らも昔は俺やサナのように悪を嫌い正義のために戦っていた。しかし、裏切りや罠によってその望みを果たせず、失意のうちに散っていったのであった。
「この手のタイプの弱点はよく理解している。ドイデ、こいつには仲間がいるはずだ。そうだろう?」
「ああ、いたな」
「だったら話は早い。ちょっと耳を貸せ──」
そういってモルトケは彼に接近。耳打ちでその作戦を伝える。
「なるほどな。そいつは有効かもしれん」
「頼むぞドイデ。お前ならできる。われらルルイエの勝利のために、全力を尽くすのだ」
ドイデは静かに首を縦に振る。彼らには俺たちと同じくらい、下手をしたらそれ以上に強い信念がある。
俺たちが敵について知ったこの日、敵もまた結束を固め、勝利のために新たな1歩を踏み出したのだった。
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