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第24話 わかった。この世界は絶対に守り抜く!
しおりを挟む障壁はガラス細工だったかのように俺の術式が直撃した瞬間に砕け散る。
そして俺の攻撃が幻虚獣に直撃する。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ──!!
幻虚獣は断末魔のような叫び声を上げながら消滅し始める。
「やったー。アグナムさんが勝った。さっすがだよ」
「やっぱりアグナムさんは強いね! 」
周囲からも歓喜の声が上がる。そしてサナとレテフ、リヒレが近づいてくる。彼らも何とか幻虚獣たちを倒したようだ。
「さすが私のアグナムね。絶対に勝つと思っていたわ」
いつからレテフの物になったのかな?
と突っ込みたいが、予想以上に体力を消耗している。
すぐに立ち上がろうとしたが、その瞬間俺はこの場にへたり込んでしまう。
「アグナムちゃん、大丈夫? 」
「大丈夫ですか? 休んだ方が……」
「私の愛が足りないのかしら、今肩を貸してあげるわ」
レテフのボケに俺は返す気力もない。まあ、仕方がない。
しかし本当に今はやばかった。貞操を守れたことが俺にとって唯一の救いだ。
思えばこの世界にきてからディープキス、裸での抱き合い、パンチラ、そして触手プレイ。
貞操の危機とのエンカウント率がバグかってくらい高すぎる。
まるで天の声が、ラノベのヒロインお色気要員用フルコースを満喫しろと俺に命令しているかのようだ。
女の子とのキス、抱きつきなんて元の世界では虚数の彼方にある宇宙の果てのような遠い世界としか考えていなかった。
それが今じゃ、エロシーン量産女の子と化してしまっている。今までのそういったシーンとは無縁の人生と釣り合いを持たせているように。
俺、確かに心は男だけど、体は女の子なんだよ。あくまで魔法少女になったのであってエロゲの主人公になったわけじゃないんだよ。
そしてサナとリヒレがスピアをにらみつける。
「残りはあなただけよ。さあ、抵抗するの?」
「捕まえるよ。覚悟はいい?」
2人の言葉にスピアはひるんで1歩引いてしまう。
「この世界、攻略するには少し骨だな。まあいい、今度は負けないからな!」
そして撤退しようとしたその瞬間。
「恋に次はあっても、侵略者に次なんかないわ」
なんと、レテフが背後から彼に接近、持っていたひもで体と腕を縛り付けたのだ。両手を奪われ、どうすることもできなくなったスピア。これで勝負はあったな。
「とりあえず聞きたいことがある。微粒子レベルに粉々にされたくなかったら質問に答えろ」
スピアはすねたような表情をしながら視線を逸らす。
「とりあえず。俺たちの世界で魔王たちに寝返ったのはどれくらいいるんだ? 死にたくなかったら答えるんだな」
「──7人と聞いている」
嫌そうに答えるスピア。確か昨日もいたな、ドイデとムエリットだっけ。あいつらのことだな。
「確か鉄束団とか名乗っていたな。決して散らない鉄の結束の仲間という意味だってよ。笑えるぜ」
7人。確か昨日会ったのはムエリットとドイデの二人。
ということはあのクラスの強さの奴が5人、そしてそいつらを束ねる魔王がいるってことか。厳しい戦いになりそうだな。
俺が険しい表情をしているとサナは自信あり劇話しかけてくる。
「でも、アグナムちゃん。そのうちの1人に勝ったんでしょう。だったら勝てるんじゃ」
「確かにそうだけど、あくまであれは初めての戦いだったから勝てたんだ」
今までは俺はこの世界では無名で戦い方や戦術などを知られていない。だから奇襲だってできるし、相手も手探りでデータもないまま戦っていた。
でも相手だって戦っているうちに対策だってしてくる。苦戦するような展開や、俺が想像もしないような奇襲作戦だってやってくるはずだ。
前のネトゲでもそうだった。ランク2桁まで上がったあたりからそんな感じだった。俺の戦術を読んできて思いもしない奇襲を受けたりするのが日常茶飯事だった。
まあ、それを乗り越えて強くなるのが本物の強者なんだけどな。前のネトゲでの俺みたいに。
「あんな強い敵が、あと5人もいるんだ。みんな、油断せずに戦おう」
俺はほかの魔法少女たちに呼びかけるように叫ぶ。全員で力を合わせればきっと勝てる。
「確かに強そうだけど、絶対に勝ちましょう。私のアグナム」
「私も力になる。よろしくね」
「サナ、レテフ。そうだな、力を貸してくれ」
ほかの魔法少女たちも相槌を打ってくれたり。「協力するよ」と言ってくれた。
ほかにもいくつかのことをスピアから聞く。エルフの世界ではどうやって侵略したか。支配した人たちの処遇などだ。
「なるほど、徹底した情報収集で侵略先の事情を調べる。体制側と対立している奴らを調べ、そいつらに力を与える」
「レテフ、重要なのはそこじゃない。しかもうまいのは魔王たちはあまり表立って動かずに、実際に攻撃するのは現地の裏切り者にやらせていること。これによってその世界の人たちの怒りが彼らに向くことで、魔王対エルフという構図でなくなるのを防いでるということだ」
「そうです、ですので周囲から見れば私たちの内輪もめという構図になってしまい、なかなか団結させることができませんでした」
そしてもう1つ、支配した地域の奴らの処遇だ。
なんとこいつらはただ奴隷にするだけではなく、忠誠度を競わせ、反逆行為を教えたやつらに褒美を与えるということだった。これにより人々は団結して立ち向かうよりも、周囲を陥れて自分がいい思いをするようになってしまった。
「そして人々は互いに疑心暗鬼になりだれも信用できなくなってしまいました。我々は平和な繁栄を築いていたがゆえに、抵抗も、対抗も後手に回ってしまいすべてが手遅れになってしまいました」
バタフが言葉を締めくくると俺たちは暗い表情になる。
「お願いします。この世界を、私たちのようにしてほしくないのです。必ず、守りきってください」
必死の願い、俺は彼女の肩をポンとたたく。
分かった。あなたの思い。絶対に無駄にはしない。
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