8 / 122
第8話 初めての、濃厚なキス
しおりを挟むオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ────!!!!
闘技場いっぱいに観客達の大声援が鳴り響く。勝ったのか、俺。
魔力を消費しすぎているのか体が重くて、力がうまく入らない。恐らく魔力の使い過ぎなのだろう、これから注意しないと。
すると救護班の人が来て担架に運ばれ始めた。とてもふらふらするような感覚。
そして闘技場の中に運ばれ、サナやユピテル、レテフと一緒の部屋でけがの手当てなどが行われた。
手当てをしながら、意識を取り戻したサナが微笑を浮かべながら話しかける。
「すごいじゃん。あのユピテルを倒しちゃうなんて」
「ま、まぐれだよ。次はああはいかないと思う」
苦笑いを浮かべながら言葉を返す。そりゃそうだ、相手が俺の事をよく知らなかったからこそできる芸当だ。次やったら確実に負けると思う。
「けど、すごいね、勇気あるね!! あそこで戦うなんて」
「あ、ありがとう。まあ、意地みたいなものだよ。なんか、許せなくって」
そうだな、あんなの理想の魔法少女じゃない。そんな意地が、俺を戦いに引きずり出した。そんな感じかな?
そしてユピテルの意識が戻っていないのを確認するとさらに話しかける。
「あのさあ、今回って俺達が乱入した戦いだよね。流石に記録にはならないでしょ?」
「確かに、記録にはならないよ、流石に3対1じゃね……。審判もそう言う雰囲気だから叫んだだけだと思うよ。けどあの試合は観客達の記憶には残るよ。アグナムちゃんがユピテルに勝った試合として。明日から有名人になっちゃうかもね」
いきなり有名人か。大変そうな日常になりそうだ。
その後、俺達は手当てが終わる。ユピテルとレテフも意識を取り戻した。
2人とも何も言わずにこの場から去っていく。そして俺達も歩けるくらい体力が回復してきた。
話しあった結果、サナの家に行くことになり手当てをしてくれた人に礼をいってからこの場を去る。
そして闘技場を出る。入口にぽつんと一人の少女が立っていた。
黒髪の少女レテフだ。
俺達の存在に気付くと彼女がこっちによってくる。
「待っていたわ、さっきはありがとう」
「いやいや、勝手にやっただけだから」
体はぼろぼろだが、とりあえずは無事なようだ。フッと微笑を浮かべながら見つめ合う形になる。
「傷とか、大丈夫?」
「サナさん。とりあえずは平気よ。しばらくは戦えそうにないけど」
そしてレテフは俺をじっと見つめてくる。
「アグナムさん。私を助けてくれたでしょう。お礼がしたいの」
「いえ。受け取っていただくわ」
アグナムの頬を固定するようにぎゅっと両手を当て、赤い唇を強く重ねた。
予想もしない突然の出来事にサナは言葉を失う。
「ン、ン、ンンン~~~~~~~~~~~ッッ!!!!」
すると少女は頬から手を放し、ぎゅっと俺の腕をつかむ。
その感覚を感じた俺は何とかここから脱しようともがき始める。
しかし予想以上に彼女の力が強く、腕を全く動かすことができない。
後ろの壁と唇からの強い圧力のせいで顔を離すことができない。
その間にも少女は、まるで獣のように、アグナムの唇をむさぼるようにキスを続ける。
そして──。
スッ──!
(ちょ、これはまさか……)
レテフの唇の間から柔らかく、生暖かい感触をしたものが口に入ってくるのを感じた。
予想もしなかった行為にサナは顔を真っ赤にし両手で頬を覆う
(ま、まさかの舌入れ???)
すぐのそれが彼女の舌であると理解する。
予想もしなかった行為に俺の頭はパニックを起こし頭が沸騰しそうになる。
俺も何とか舌で押し返そうとするが、彼女は気にも留めず、その舌を絡み合わせる。
俺の舌や歯茎、口の中のあらゆる場所を感じようと貪るように舌が動き回る。本当に獣のようなキスだ。
ジュルルル──、ジュッ、ジュッ、ジュル~~~~~~!!
絡み合う二つの唇、ほんのりとしたレテフの唾液が俺の口の中に送られているのがわかる。当然俺にとっては初体験だ。
互いの舌がいやらしく絡み合う、濃厚なキス。彼女の柔らかい舌で、口の中がとろけるような感覚。
さらに、彼女はするりと俺の首に、なめらかで細い腕を、蛇のように絡み付ける。
その時間は俺にとっては永遠に感じた。ようやくレテフはキスを終え唇を離す。
レテフは顔をほんのりと赤くし、恍惚な表情を浮かべながらぺろりと唇を嘗め回す。
「嬉しかった? じゃあもう一度しましょう──」
そうささやきながら、桃色の唾液でぬれきった唇が俺の唇に近づいてくる。
さすがにこれ以上はまずい。
理性では理解していたが、両腕を再び彼女の手ががしっとつかんでいて全く動くことができない。
じっとレテフの水色の瞳が俺の目を。見つめている。
そして再び彼女の唇が俺の眼前まで接近し──。
「ダメ~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!」
その寸前のところ、キスまで何ミリかというところでサナによって引き裂かれる。
「もう! 2人ともいきなり何をやっているの。しっかりしてよ!!」
「どういうつもり?」
その時になってやっとレテフはサナに視線を向け始めた。
まるで、初めてサナがいることに気が付いたようなキョトンとした表情で彼女を見つめる。すると──?
「なんのつもり? 私の愛の邪魔をするなら、あなたを微粒子レベルまで粉々にしてやるわ!!」
「何のつもりは、こっちのセリフだよっ!! いきなりアグナムに何するの?」
「何って、キスのこと?」
「それ以外に何があるの! いきなりキスなんてどう考えてもおかしいでしょ!!」
サナの言葉にレテフがため息を漏らし──。
「別に? 私にとっては普通よ。でもそれがあなたにどう関係しているの? 2人の問題でしょう? 彼女がそれを望むなら特に異論はないはずよ」
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる