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エピローグ
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長かった戦いは、いったん終わりを告げた。
村に着いた瞬間、幸一は力尽き、数日間眠り込んでしまった。
その後、起きるとすぐに彼らと別れネウストリアへと帰った。
王族たちにこのことをすべて説明すると、英雄であるかのように称賛された。
直ちに専属の兵士にならないか。褒美はいくらでも出す、と迫るが彼らは断る。
「私達には、まだやるべきことがありますから」
「やるべきこと? 魔王軍や大天使から世界を救って、まだやるべきことがあるというのかね。幸一殿。イレーナ殿」
首をかしげる国王に幸一が自信満々に答えた。
「いいえ。世界を救うための戦いに、終わりはないのです。ずっと、戦わなければいけないのです。それが、この戦いで俺がこの戦いでみんんあい約束したことなんですから」
そう言って彼らは新たな世界の枠組みを作るために動き出したのだった。
そして数か月後。
「ど、どうかな、似合ってる」
「ここのネクタイ。曲がってるから直すね」
純白のドレスを纏ったイレーナが、幸一のネクタイを直している。
幸一達の活動は、何とか成功しその第一歩を踏み出した。
今回のような世界を巻き込むような大災厄。一つの国ではできないこと。それに対して国境を越えて世界全体で立ち向かうための、冒険者たちの連合集団。
国際同盟を設立することとなった。
大天使との戦いを終えた後、幸一達はメーリングやルーデル、ヘイム達と話して各自故郷に帰ったら、この戦いのほとぼりが冷めないうちに、王族たちの設立と加盟の許可をいただくために動き回ることを約束したのだ。
戦いが終わったばかりで、彼らが英雄のような扱いを受けていたこともあり、この世界の主要国の王族たちは比較的容易に首を縦に振ってくれた。
そしてその中心に彼らはいた。国の代表として選ばれたのだった。
幸一達が世界を救ったことは世界中に知られ、彼らは英雄となっている。
彼らなら、大国の圧力に屈したり、利益で悪をなす組織に寝返ったりしないと使用されていたからだ。
今日はそんな国際同盟の設立日。各国から代表が集まり、人々に演説をし、これからの方針を決めるため、ここ本部となったネウストリアに集まったのだ。
「ほら、こんな感じでいいかな。幸君」
「ありがとう。これなら大丈夫そうだ」
イレーナに整えてもらったネクタイを見ながら、黒い執事のような服を着た幸一が、鏡の前で外見を確認していると、誰かが入り口の扉をノックする。
トントン──。
「二人とも、準備はできた?」
淡い黄色のドレスを身にまとったサラが、迎えに来る。
国際同盟のジーランディア王国代表は、イレーナ、その補佐官はサラが担当することとなった。今回の戦いで二人は大きな活躍をした。
イレーナはボロボロになりながらも魔王を打ち倒し、サラはその多彩な補助能力で周囲を助けた。
二人がいなかったら、この戦いに勝つことはできなかっただろう。
その成果から、周囲をまとめ上げ、成果を出せるだろうとのことから選ばれたのだった。
「サラ、ありがとう。今行くよ」
そして二人は控室を出て赤じゅうたんの敷かれている廊下へ。
「のろけさん。ここはみんながいるんだから、イチャイチャもほどほどにね」
「そうッスよ。まあ、付き合っているのはみんな知っているッスけどね」
背後から、からかうような、たしなめるような物言いで誰かが話しかける。
メーリングと、ルチアだ。
メーリングは、アストラ帝国での大型魔獣「ブリューナク」を倒した功績をたたえられ、アストラ帝国代表となったのだ。
そしてもう一人の補佐官は、政府と対立していた教会の人間。そしてメーリングと親しいルチアが選ばれた。
新しい世界秩序の象徴に二人が選ばれたことで、アストラ帝国でも対立も少しづ強くなってきているそうだ。
廊下を歩きながら、右にルチア、左にメーリングが寄ってくる。二人とも白っぽいお姫様のようなドレスを着ている。
メーリングが露出した腕を幸一の腕にちょこんとつける。
プルンとした柔らかい肉厚。
思わずメーリングの視線を向けると、彼女のスイカのような大きな胸とその谷間が嫌でも視線に入ってしまう。
顔を赤くして目を背けてしまう幸一。押して顔を膨らませて、不満そうな表情になるイレーナ。
「幸一さん。あなたがいなかったら。私はサラとも仲を戻せなかった。ここにはいなかった。ずっと暗い世界で自分のことをあきらめる日々を送っていたわ」
「そうッスね。あなたのおかげッスよ」
「そんな、私に勇気を取り戻してくれた、あなたがとても好きよ」
そしてあろうことか幸一の手を取り自分の豊満な胸に押し当てたのだ。彼の右手全体に、マシュマロのような感覚が伝わってくる。
「ちょ、ちょっとメーリング。そういうことはやめて!」
慌てて手を離す幸一。
直後に背後から殺気がこれでもかというくらいに感じ始める。
「幸君。どういう事かな?」
イレーナが、目に殺気をこれでもかというくらい宿らせながらにらみつけてきたのだった。
サラが慌てて二人の間に入る。
「イレーナちゃん。落ち着いて。メーリングもやめて。こんなところでけんかをしないで」
その言葉に、メーリングもイレーナも矛を収める。
「半分は冗談よ。悔しいけど、あなたにはもっとふさわしい人がいるもの。さすがに、みんなの前でここまでされちゃあ、私は譲るしかないわ」
メーリングなそう言ってちらっとイレーナを向く。
メーリングに、以前のような無表情で暗い様子はない。物静かだけれど、微笑を浮かべていて生き生きとしている。
最後の戦いに後、イレーナが幸一の胸で会いたかったと大泣きしたのは彼女含め、みんなが見ている。
それを見て、彼にはイレーナがふさわしいと悟ったのだ。
「けど、幸君のことあきらめないわ。もし心が変わったというときは、いつでも一緒にいてあげるからね」
そして幸一に向かって笑顔でウィンクする。
それに反比例して、イレーナが涙目になってしまう。慌てて幸一が彼女をなだめた。
「ごめん。イレーナ。大丈夫、俺はイレーナのこと、好きだよ」
ぐすんと涙目になっているイレーナが、顔を上げた。
「こりゃ、うちらが入る余地は無さそうッスね」
ルチアの手を頭の後ろに当てながらの一言。周囲も、どこかほんわかとした雰囲気が流れる。
ちなみにサラのアストラ帝国への入国禁止令は解かれた。
近く、仕事がひと段落したら遊びに行くらしい。サラが、この前楽しそうにそのことを幸一と話していた。
そして赤じゅうたんの道の先に両開きのドアがある。
「ここが、各国代表が集まっているロビーです。もう、みんな集まっていると思う」
幸一は、懐かしい気分になった。ここ最近はネウストリアで王族や役所の人たちに、国際同盟の設立のため、組織を作ることに奔走していたからだ。
久しぶりの、戦友たちとの再会。
そのドアを先頭を歩いているサラが開けた。
キィィィィィ──。
そこには、各国代表の姿があった。全員、ドレスやスーツ姿など、正装の姿をしている。
そして、そこには久しぶりの再会となる戦友の姿があった。
「お前。来るのが遅いぞ」
「ごめんなルーデル。身支度に戸惑っちゃって……」
「幸一さん。カッコイイ──、です」
ルーデルとシスカだ。
シスカは、あれからもルーデルについていっている。
ルーデルは、オリエント地方全体の代表となり、彼女がその補佐官となった。
オリエント地方は、国という概念がなく、たくさんの部族で成り立っている地方。ゆえに、彼らを束ねる王様が存在せず、とりあえずルーデルとシスカが代表としてここに来たのだ。
「久しぶりだな。ルーデル、そっちは問題ないか?」
「ああ、何とか周辺の部族たちの説得に成功したところだ」
「これからも、よろしく……です 」
部族単位で国という概念すらない地域でもある彼らの地区。言語も、考え方も、宗教もバラバラ。まとめあげるだけでも一苦労なはずだ。幸一も、この地区に何かあったらすぐに駆けつけられるようにアンテナを張っていた。大変な毎日が待っているだろう。
そう思い幸一が声をかける。
「けれど、何かあったら連絡をくれ。俺たちも、力になるから」
「ありがとう。だが気にするな。俺達だって、しっかり同盟の代表としてまとめ上げて見せる」
「そう。です……。私も、頑張ります」
ルーデルは、以前のように復讐に取りつかれているような感覚はなく、シスカも芯が強い子になった。
(何かあったら、力を貸そう。けど、二人なら、だいじょうぶだろう)
二人の会話に、幸一は直感で感じた。
そして白いテーブルクロスが敷かれた机からワイングラスを取り、イレーナとサラにワインを注ぐ。
「幸君の分は、私がやるね」
そう言ってイレーナは幸一からワインを受け取り、彼女が注いだワインを一口飲むと──。
「イレーナ。幸一さん。久しぶりね」
「みんな、久しぶりだね」
本当に久しぶりな、男女が幸一達の前に現れる。
灰色の髪で小柄、中性的な外見をしている少年ルト。
クリーム色でウェーブがかかった紙の小柄な少女。レイカ
ルトはサヴィンビ代表、レイカはノーム共和国他北国全体の代表となっている。
「レイカちゃん。久しぶりー!」
「イレーナちゃん。彼氏と大人の階段登った?」
「ちょ、ちょっとー!」
レイカのからかう言葉に、イレーナは顔を赤くしてぶんぶんと手を振る。その傍ら、ワイングラスを片手にルトが話しかけてきた。
「お久しぶりだね。すごいよ、大天使に勝つなんて。とんだ英雄だね」
「いいや。俺だけじゃないよ。みんなのおかげだよ」
「ごめんね。僕、そっちに協力できなくて」
「気にしないで。ルトにはルトのやることがあるんだから。そっちを一生懸命やってくれればいいよ」
ルトはずっとサヴィンビ付近での活動をしていた。なので情報の伝達が遅く、幸一達の動向が全くつかめなかった。そのため、最後の戦いに来られなかったのだ。
それでも、特にとがめない。これから一緒に、世界のために戦っていけばいいのだから。
「幸一君。イレーナちゃんと寝るのはいつ?」
突拍子もない後ろからの言葉に、幸一はせき込んでしまう。
ゴホッ──。ゴホゴホッ!
「セ、セリカ……。いきなりませた質問するなよ──」
「冗談よ。うぶなイレーナちゃんにそんなことできるわけないじゃない」
まだ子供で、酒が飲めないため、優雅にオレンジジュースを飲みながらしゃべるレイカ。
こう見えても彼女は正義感が強く、ノーム共和国でも大活躍している。
互いに、王族や貴族たちの価値観が古く、国同士で協力したり、国民のために頑張っておるのがわかる。
「それで、調子はどう?」
「問題はないわ。最近は余裕も出て来たから、困ったことがあったら手紙頂戴。力になるわ」
将来が有望なのが垣間見える。イレーナとも仲良さそうに会話してるのを見た幸一は感じる。
(レイカも、ルトも心配はいらないだろう。二人とも、国民たちをよく引っ張れるだろう)
二人の様子に安心していると、サラが話しかけてきた。
「幸君。そろそろ演説の時間だよ」
「もうなのか。じゃあ行ってくるよ」
そして、幸一は今日国民たちに国際同盟設立の挨拶をすることとなっていたのだった。
「行ってきなさい。初代議長さん」
「わかったよレイカ。けど、うまく話せるといいなあ……」
レイカの言葉通り、幸一は国際同盟の初代議長となった。さすがに本人は務まるはずがない反対した。
──が、できたばかりの組織、それも国をまたいで設立した機関を作るということで、相当知名度があり国王たちを納得させられるような人物でないと務まらない。
そう判断し、皆が幸一を選択し、しぶしぶ承認せざるを得なくなったのだ。
そして、この国の王女様のイレーナたちと一緒にこれからスピーチへ進むために移動。
「幸一さん。あなたの演説。期待しているわ」
「ありがとう。メーリング」
メーリングの言葉を聞いて、幸一とイレーナがこの場を去る。同時に彼女たちも、彼の演説を聞くために外へ。
廊下に出ると、そこに、二人の人物がいた。
「似合っているぞ、初代議長」
「ヘイム、ありがとな」
ヘイムが副代表となった。難がある人物だが、カリスマ性があり、強力な力がある。
彼とどううまく付き合っているか、手腕が試される。
「まあ、貴様が大天使を倒したというのは紛れもない真実。だが、俺様は貴様の言う通りに動く人形ではない。それだけは肝に銘じておけ」
「んなこと、言われなくてもわかってるよ」
そして最後、彼をこの世界に送り込んだ天使。
「幸一殿。大勢の前の演説じゃ。どんなことを言うか、決まっておるな?」
ユダだ。これからも、彼女は幸一に、みんなに助言していくだろう。
「ああ。大体は決まっている。俺に任せて」
そう言いながら、この戦いで強く感じたことを想いだす。
人一倍優しく、まじめだったが故、。人ではない絶対的な存在だったが故、人間たちの期待に応えようとした。
しかし、人間の感情というものが理解できず、孤独となっても、戦い続けた。
永遠に光が射さない闇の中で、彼女は失望しすべてを滅ぼすことを選んだ。
かつて滅ぼすと誓っていた魔王と共に。
それを見て幸一は思った。
自分一人では世界は救えない。そんなこと、しなくていい。
イレーナに青葉、ユダ──、それだけじゃない。周りの人が志を共有できたからこそ、戦いに勝つことができたのだ。
世界を救う救世主になど、ならなくていい。
皆に希望が持てるように精一杯戦っていけばいい。
そうすれば、答えは出てくる。
階段をのぼり、王城のテラスの吹き抜けに出る。
集まった主要国の王族に貴族たち、国民たちに顔を見せると、大きな歓声が上がる。
穏やかな眼差しを国民に向け、ゆっくりと口を開く。
これからも、世界は一筋縄ではないだろう。
魔王、大天使という共通の敵がいない中、今までとは違ったかじ取りを彼らは要求される。
それでも、彼らならできる。
理想とする姿を追って、精一杯戦っている限り──。
幸一の演説を、人々は耳を傾けて聞いている。
そして、大きな拍手喝采が生まれると、大歓声となって晴天の空に響き渡った。
村に着いた瞬間、幸一は力尽き、数日間眠り込んでしまった。
その後、起きるとすぐに彼らと別れネウストリアへと帰った。
王族たちにこのことをすべて説明すると、英雄であるかのように称賛された。
直ちに専属の兵士にならないか。褒美はいくらでも出す、と迫るが彼らは断る。
「私達には、まだやるべきことがありますから」
「やるべきこと? 魔王軍や大天使から世界を救って、まだやるべきことがあるというのかね。幸一殿。イレーナ殿」
首をかしげる国王に幸一が自信満々に答えた。
「いいえ。世界を救うための戦いに、終わりはないのです。ずっと、戦わなければいけないのです。それが、この戦いで俺がこの戦いでみんんあい約束したことなんですから」
そう言って彼らは新たな世界の枠組みを作るために動き出したのだった。
そして数か月後。
「ど、どうかな、似合ってる」
「ここのネクタイ。曲がってるから直すね」
純白のドレスを纏ったイレーナが、幸一のネクタイを直している。
幸一達の活動は、何とか成功しその第一歩を踏み出した。
今回のような世界を巻き込むような大災厄。一つの国ではできないこと。それに対して国境を越えて世界全体で立ち向かうための、冒険者たちの連合集団。
国際同盟を設立することとなった。
大天使との戦いを終えた後、幸一達はメーリングやルーデル、ヘイム達と話して各自故郷に帰ったら、この戦いのほとぼりが冷めないうちに、王族たちの設立と加盟の許可をいただくために動き回ることを約束したのだ。
戦いが終わったばかりで、彼らが英雄のような扱いを受けていたこともあり、この世界の主要国の王族たちは比較的容易に首を縦に振ってくれた。
そしてその中心に彼らはいた。国の代表として選ばれたのだった。
幸一達が世界を救ったことは世界中に知られ、彼らは英雄となっている。
彼らなら、大国の圧力に屈したり、利益で悪をなす組織に寝返ったりしないと使用されていたからだ。
今日はそんな国際同盟の設立日。各国から代表が集まり、人々に演説をし、これからの方針を決めるため、ここ本部となったネウストリアに集まったのだ。
「ほら、こんな感じでいいかな。幸君」
「ありがとう。これなら大丈夫そうだ」
イレーナに整えてもらったネクタイを見ながら、黒い執事のような服を着た幸一が、鏡の前で外見を確認していると、誰かが入り口の扉をノックする。
トントン──。
「二人とも、準備はできた?」
淡い黄色のドレスを身にまとったサラが、迎えに来る。
国際同盟のジーランディア王国代表は、イレーナ、その補佐官はサラが担当することとなった。今回の戦いで二人は大きな活躍をした。
イレーナはボロボロになりながらも魔王を打ち倒し、サラはその多彩な補助能力で周囲を助けた。
二人がいなかったら、この戦いに勝つことはできなかっただろう。
その成果から、周囲をまとめ上げ、成果を出せるだろうとのことから選ばれたのだった。
「サラ、ありがとう。今行くよ」
そして二人は控室を出て赤じゅうたんの敷かれている廊下へ。
「のろけさん。ここはみんながいるんだから、イチャイチャもほどほどにね」
「そうッスよ。まあ、付き合っているのはみんな知っているッスけどね」
背後から、からかうような、たしなめるような物言いで誰かが話しかける。
メーリングと、ルチアだ。
メーリングは、アストラ帝国での大型魔獣「ブリューナク」を倒した功績をたたえられ、アストラ帝国代表となったのだ。
そしてもう一人の補佐官は、政府と対立していた教会の人間。そしてメーリングと親しいルチアが選ばれた。
新しい世界秩序の象徴に二人が選ばれたことで、アストラ帝国でも対立も少しづ強くなってきているそうだ。
廊下を歩きながら、右にルチア、左にメーリングが寄ってくる。二人とも白っぽいお姫様のようなドレスを着ている。
メーリングが露出した腕を幸一の腕にちょこんとつける。
プルンとした柔らかい肉厚。
思わずメーリングの視線を向けると、彼女のスイカのような大きな胸とその谷間が嫌でも視線に入ってしまう。
顔を赤くして目を背けてしまう幸一。押して顔を膨らませて、不満そうな表情になるイレーナ。
「幸一さん。あなたがいなかったら。私はサラとも仲を戻せなかった。ここにはいなかった。ずっと暗い世界で自分のことをあきらめる日々を送っていたわ」
「そうッスね。あなたのおかげッスよ」
「そんな、私に勇気を取り戻してくれた、あなたがとても好きよ」
そしてあろうことか幸一の手を取り自分の豊満な胸に押し当てたのだ。彼の右手全体に、マシュマロのような感覚が伝わってくる。
「ちょ、ちょっとメーリング。そういうことはやめて!」
慌てて手を離す幸一。
直後に背後から殺気がこれでもかというくらいに感じ始める。
「幸君。どういう事かな?」
イレーナが、目に殺気をこれでもかというくらい宿らせながらにらみつけてきたのだった。
サラが慌てて二人の間に入る。
「イレーナちゃん。落ち着いて。メーリングもやめて。こんなところでけんかをしないで」
その言葉に、メーリングもイレーナも矛を収める。
「半分は冗談よ。悔しいけど、あなたにはもっとふさわしい人がいるもの。さすがに、みんなの前でここまでされちゃあ、私は譲るしかないわ」
メーリングなそう言ってちらっとイレーナを向く。
メーリングに、以前のような無表情で暗い様子はない。物静かだけれど、微笑を浮かべていて生き生きとしている。
最後の戦いに後、イレーナが幸一の胸で会いたかったと大泣きしたのは彼女含め、みんなが見ている。
それを見て、彼にはイレーナがふさわしいと悟ったのだ。
「けど、幸君のことあきらめないわ。もし心が変わったというときは、いつでも一緒にいてあげるからね」
そして幸一に向かって笑顔でウィンクする。
それに反比例して、イレーナが涙目になってしまう。慌てて幸一が彼女をなだめた。
「ごめん。イレーナ。大丈夫、俺はイレーナのこと、好きだよ」
ぐすんと涙目になっているイレーナが、顔を上げた。
「こりゃ、うちらが入る余地は無さそうッスね」
ルチアの手を頭の後ろに当てながらの一言。周囲も、どこかほんわかとした雰囲気が流れる。
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そして赤じゅうたんの道の先に両開きのドアがある。
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キィィィィィ──。
そこには、各国代表の姿があった。全員、ドレスやスーツ姿など、正装の姿をしている。
そして、そこには久しぶりの再会となる戦友の姿があった。
「お前。来るのが遅いぞ」
「ごめんなルーデル。身支度に戸惑っちゃって……」
「幸一さん。カッコイイ──、です」
ルーデルとシスカだ。
シスカは、あれからもルーデルについていっている。
ルーデルは、オリエント地方全体の代表となり、彼女がその補佐官となった。
オリエント地方は、国という概念がなく、たくさんの部族で成り立っている地方。ゆえに、彼らを束ねる王様が存在せず、とりあえずルーデルとシスカが代表としてここに来たのだ。
「久しぶりだな。ルーデル、そっちは問題ないか?」
「ああ、何とか周辺の部族たちの説得に成功したところだ」
「これからも、よろしく……です 」
部族単位で国という概念すらない地域でもある彼らの地区。言語も、考え方も、宗教もバラバラ。まとめあげるだけでも一苦労なはずだ。幸一も、この地区に何かあったらすぐに駆けつけられるようにアンテナを張っていた。大変な毎日が待っているだろう。
そう思い幸一が声をかける。
「けれど、何かあったら連絡をくれ。俺たちも、力になるから」
「ありがとう。だが気にするな。俺達だって、しっかり同盟の代表としてまとめ上げて見せる」
「そう。です……。私も、頑張ります」
ルーデルは、以前のように復讐に取りつかれているような感覚はなく、シスカも芯が強い子になった。
(何かあったら、力を貸そう。けど、二人なら、だいじょうぶだろう)
二人の会話に、幸一は直感で感じた。
そして白いテーブルクロスが敷かれた机からワイングラスを取り、イレーナとサラにワインを注ぐ。
「幸君の分は、私がやるね」
そう言ってイレーナは幸一からワインを受け取り、彼女が注いだワインを一口飲むと──。
「イレーナ。幸一さん。久しぶりね」
「みんな、久しぶりだね」
本当に久しぶりな、男女が幸一達の前に現れる。
灰色の髪で小柄、中性的な外見をしている少年ルト。
クリーム色でウェーブがかかった紙の小柄な少女。レイカ
ルトはサヴィンビ代表、レイカはノーム共和国他北国全体の代表となっている。
「レイカちゃん。久しぶりー!」
「イレーナちゃん。彼氏と大人の階段登った?」
「ちょ、ちょっとー!」
レイカのからかう言葉に、イレーナは顔を赤くしてぶんぶんと手を振る。その傍ら、ワイングラスを片手にルトが話しかけてきた。
「お久しぶりだね。すごいよ、大天使に勝つなんて。とんだ英雄だね」
「いいや。俺だけじゃないよ。みんなのおかげだよ」
「ごめんね。僕、そっちに協力できなくて」
「気にしないで。ルトにはルトのやることがあるんだから。そっちを一生懸命やってくれればいいよ」
ルトはずっとサヴィンビ付近での活動をしていた。なので情報の伝達が遅く、幸一達の動向が全くつかめなかった。そのため、最後の戦いに来られなかったのだ。
それでも、特にとがめない。これから一緒に、世界のために戦っていけばいいのだから。
「幸一君。イレーナちゃんと寝るのはいつ?」
突拍子もない後ろからの言葉に、幸一はせき込んでしまう。
ゴホッ──。ゴホゴホッ!
「セ、セリカ……。いきなりませた質問するなよ──」
「冗談よ。うぶなイレーナちゃんにそんなことできるわけないじゃない」
まだ子供で、酒が飲めないため、優雅にオレンジジュースを飲みながらしゃべるレイカ。
こう見えても彼女は正義感が強く、ノーム共和国でも大活躍している。
互いに、王族や貴族たちの価値観が古く、国同士で協力したり、国民のために頑張っておるのがわかる。
「それで、調子はどう?」
「問題はないわ。最近は余裕も出て来たから、困ったことがあったら手紙頂戴。力になるわ」
将来が有望なのが垣間見える。イレーナとも仲良さそうに会話してるのを見た幸一は感じる。
(レイカも、ルトも心配はいらないだろう。二人とも、国民たちをよく引っ張れるだろう)
二人の様子に安心していると、サラが話しかけてきた。
「幸君。そろそろ演説の時間だよ」
「もうなのか。じゃあ行ってくるよ」
そして、幸一は今日国民たちに国際同盟設立の挨拶をすることとなっていたのだった。
「行ってきなさい。初代議長さん」
「わかったよレイカ。けど、うまく話せるといいなあ……」
レイカの言葉通り、幸一は国際同盟の初代議長となった。さすがに本人は務まるはずがない反対した。
──が、できたばかりの組織、それも国をまたいで設立した機関を作るということで、相当知名度があり国王たちを納得させられるような人物でないと務まらない。
そう判断し、皆が幸一を選択し、しぶしぶ承認せざるを得なくなったのだ。
そして、この国の王女様のイレーナたちと一緒にこれからスピーチへ進むために移動。
「幸一さん。あなたの演説。期待しているわ」
「ありがとう。メーリング」
メーリングの言葉を聞いて、幸一とイレーナがこの場を去る。同時に彼女たちも、彼の演説を聞くために外へ。
廊下に出ると、そこに、二人の人物がいた。
「似合っているぞ、初代議長」
「ヘイム、ありがとな」
ヘイムが副代表となった。難がある人物だが、カリスマ性があり、強力な力がある。
彼とどううまく付き合っているか、手腕が試される。
「まあ、貴様が大天使を倒したというのは紛れもない真実。だが、俺様は貴様の言う通りに動く人形ではない。それだけは肝に銘じておけ」
「んなこと、言われなくてもわかってるよ」
そして最後、彼をこの世界に送り込んだ天使。
「幸一殿。大勢の前の演説じゃ。どんなことを言うか、決まっておるな?」
ユダだ。これからも、彼女は幸一に、みんなに助言していくだろう。
「ああ。大体は決まっている。俺に任せて」
そう言いながら、この戦いで強く感じたことを想いだす。
人一倍優しく、まじめだったが故、。人ではない絶対的な存在だったが故、人間たちの期待に応えようとした。
しかし、人間の感情というものが理解できず、孤独となっても、戦い続けた。
永遠に光が射さない闇の中で、彼女は失望しすべてを滅ぼすことを選んだ。
かつて滅ぼすと誓っていた魔王と共に。
それを見て幸一は思った。
自分一人では世界は救えない。そんなこと、しなくていい。
イレーナに青葉、ユダ──、それだけじゃない。周りの人が志を共有できたからこそ、戦いに勝つことができたのだ。
世界を救う救世主になど、ならなくていい。
皆に希望が持てるように精一杯戦っていけばいい。
そうすれば、答えは出てくる。
階段をのぼり、王城のテラスの吹き抜けに出る。
集まった主要国の王族に貴族たち、国民たちに顔を見せると、大きな歓声が上がる。
穏やかな眼差しを国民に向け、ゆっくりと口を開く。
これからも、世界は一筋縄ではないだろう。
魔王、大天使という共通の敵がいない中、今までとは違ったかじ取りを彼らは要求される。
それでも、彼らならできる。
理想とする姿を追って、精一杯戦っている限り──。
幸一の演説を、人々は耳を傾けて聞いている。
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2021/02/12日、完結しました。
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
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(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

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読ませてもらいましたが異世界にいくところのくだりがすごくいいです。
これからも期待してるよo(^o^)o