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オリエント編
付け焼刃、それでも
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「確かに天使だけあって、実力は相当ね」
「当たり前ですわ。そんな付け焼刃のコンビネーションで、私達に勝てると思ったら、大間違いですわ。メーリング」
勇気を振り絞り、戦いを決意したメーリングとルナシー。
二人は奮闘し、圧倒的な天使の攻撃に何とか対抗する。
しかし、反撃に出るという所まではいかず。防戦一方。
そんな中、メーリングが反撃に出る。
我が覇者なる力よ、わたしを拒む障壁踏み越え、その証を刻め
ペンタプリズム・スレイシング・ストーム
彼女の強力な一撃。
相対していたシャムシールは反射的にそれを防いだものの、メーリングは次々に攻撃を繰り出してくる。
彼女らしく、力任せで、強力な一撃を繰り返す。シャムシールは技術ではメーリングをはるかに上回っていたものの、攻撃を受けるのに苦戦する。
どうしても受けるのに力を使ってしまい、反撃の態勢を整えるのは容易ではなかった。
「こいつ、力押ししかできないくせに──」
「ほめ言葉、とても嬉しいわ」
歯ぎしりをするシャムシールに、にやりと笑みを浮かべるメーリング。
こちらは、メーリングが接近戦が得意というだけあって、何とか勝負になっている。
そうしている間に、ルナシーの方がピンチを迎えていた。
(このままでは、負ける──)
ルナシーの兵器は杖。それを見てもわかるように、彼女は遠距離攻撃を中心とする戦闘スタイルだ。
至近距離での、彼女の戦闘力は、メーリングと比べても、天使たちと比べても三段階くらい差があり、対応するのが精一杯になっている。
初めこそ、メーリングが前線に立って戦い、ルナシーが後方で援護するやり方だった。
が、それに気づいた天使たちが一対一同士で戦うスタイルに変えた。
よって一人で、アブディールを相手にしなければならなくなり、苦戦が続いていたのだ。
アブディールは神々しい、白く光り輝く槍を持ち、ルナシーに向かって突っ込んでくる。
それにびくっと驚いたルナシーであったが、すぐに迎撃の体制になる。
「行きます。アブディール!」
ルナシーはそう叫び、アブディールに向かって杖をふるう。
風を引き裂くような強い突き。
逃げていても、勝ち目がないと悟ったルナシー、無謀だとわかっていても、前に出ていく。
──が、現実は甘くない。その先が彼女の胸に届く前に、アブディールはその攻撃を簡単に払いのける。
「ちょっと甘いよね。そんな攻撃で勝てると思ったんですの?」
やはり付け焼刃では天使には通じない。
そのままアブディールは返す刀で、ルナシーの胸を目掛けて、その剣を突き刺す。
その剣がルナシーに直撃し、致命傷を受け──たかに見えた。
「私が、足を引っ張るわけにはいきません!」
ルナシーはその場所に十センチほどの障壁を展開。面積は小さいものの、その分分厚い障壁を張ることができ、攻撃を防ぐ形になる。
「まだです──。これならどうですか?」
それでもシャムシールは次の攻撃に移る。切り下し、なぎ払い、美しさすら感じる無駄のない連続攻撃。
(確かに、あなたたちからは感じますわ。心の底から、私達に勝利したいという想いを)
シャムシールは心の底で、感じ取っていた。彼女たちのこの戦いにおける覚悟を。自らが灰になってでも、自分たちを倒そうという強い想い。
しかし、それは自分だって同じだ。
(けれど、その想いの強さは、私達だって同じですの。私達だって、理想を踏みにじられ、絶望した。もう、この世界を変えるしかないと理解した。たとえ、どんな犠牲を払ってでも!)
そんな背水の陣のような強い覚悟を持った猛攻。
──その猛攻を、ルナシーは何とか防ぎ切ったのだ。
「ルナシー。やるじゃない。あなたなら、負けるはずがないわ」
「驚いたですの。私の連続攻撃が」
シャムシールは、二人の予想外の粘り、強さに動揺し、一度引いて作戦を立て直そうとアイコンタクトを送る。
アブディールはコクリと首を縦に振る。
そしてその通り、シャムシールが一歩引こうとした瞬間。
「そうは、させないわ!」
ルナシーが勇気を出して前に出る。前線での戦いに向かない彼女の予想外の行動にアブディールは驚きながらも、応戦。
再び鋭い斬撃の連続がルナシーを襲う。
──が、今回もその障壁によって攻撃を防ぐ。
それでもアブディール
「もらったわ!」
「しまった──」
同じように攻撃を防ごうとした瞬間。
アブディールがいったんステップをとり後方に一歩引いたのだ。
(でも、同じではそう何度も通じないですの)
そう、フェイントというやつだ。
いくらルナシーに技術があるとはいえ、同じ手を出し続けるのは限界がある。
当然読まれ、裏をかかれてしまう。
「もらいましたの!」
それをアブディールが、見逃すはずがない。
障壁もなく、がら空きになったルナシーを目掛けて、アブディールが切り込む。
(これで、決着ですの!)
決着がついたと確信した瞬間、ひとりの人物がそこへ割り込んでいた。
アブディールの渾身の一撃を防いだのは、メーリングだ。
「しまった……ですわ」
「当たり前ですわ。そんな付け焼刃のコンビネーションで、私達に勝てると思ったら、大間違いですわ。メーリング」
勇気を振り絞り、戦いを決意したメーリングとルナシー。
二人は奮闘し、圧倒的な天使の攻撃に何とか対抗する。
しかし、反撃に出るという所まではいかず。防戦一方。
そんな中、メーリングが反撃に出る。
我が覇者なる力よ、わたしを拒む障壁踏み越え、その証を刻め
ペンタプリズム・スレイシング・ストーム
彼女の強力な一撃。
相対していたシャムシールは反射的にそれを防いだものの、メーリングは次々に攻撃を繰り出してくる。
彼女らしく、力任せで、強力な一撃を繰り返す。シャムシールは技術ではメーリングをはるかに上回っていたものの、攻撃を受けるのに苦戦する。
どうしても受けるのに力を使ってしまい、反撃の態勢を整えるのは容易ではなかった。
「こいつ、力押ししかできないくせに──」
「ほめ言葉、とても嬉しいわ」
歯ぎしりをするシャムシールに、にやりと笑みを浮かべるメーリング。
こちらは、メーリングが接近戦が得意というだけあって、何とか勝負になっている。
そうしている間に、ルナシーの方がピンチを迎えていた。
(このままでは、負ける──)
ルナシーの兵器は杖。それを見てもわかるように、彼女は遠距離攻撃を中心とする戦闘スタイルだ。
至近距離での、彼女の戦闘力は、メーリングと比べても、天使たちと比べても三段階くらい差があり、対応するのが精一杯になっている。
初めこそ、メーリングが前線に立って戦い、ルナシーが後方で援護するやり方だった。
が、それに気づいた天使たちが一対一同士で戦うスタイルに変えた。
よって一人で、アブディールを相手にしなければならなくなり、苦戦が続いていたのだ。
アブディールは神々しい、白く光り輝く槍を持ち、ルナシーに向かって突っ込んでくる。
それにびくっと驚いたルナシーであったが、すぐに迎撃の体制になる。
「行きます。アブディール!」
ルナシーはそう叫び、アブディールに向かって杖をふるう。
風を引き裂くような強い突き。
逃げていても、勝ち目がないと悟ったルナシー、無謀だとわかっていても、前に出ていく。
──が、現実は甘くない。その先が彼女の胸に届く前に、アブディールはその攻撃を簡単に払いのける。
「ちょっと甘いよね。そんな攻撃で勝てると思ったんですの?」
やはり付け焼刃では天使には通じない。
そのままアブディールは返す刀で、ルナシーの胸を目掛けて、その剣を突き刺す。
その剣がルナシーに直撃し、致命傷を受け──たかに見えた。
「私が、足を引っ張るわけにはいきません!」
ルナシーはその場所に十センチほどの障壁を展開。面積は小さいものの、その分分厚い障壁を張ることができ、攻撃を防ぐ形になる。
「まだです──。これならどうですか?」
それでもシャムシールは次の攻撃に移る。切り下し、なぎ払い、美しさすら感じる無駄のない連続攻撃。
(確かに、あなたたちからは感じますわ。心の底から、私達に勝利したいという想いを)
シャムシールは心の底で、感じ取っていた。彼女たちのこの戦いにおける覚悟を。自らが灰になってでも、自分たちを倒そうという強い想い。
しかし、それは自分だって同じだ。
(けれど、その想いの強さは、私達だって同じですの。私達だって、理想を踏みにじられ、絶望した。もう、この世界を変えるしかないと理解した。たとえ、どんな犠牲を払ってでも!)
そんな背水の陣のような強い覚悟を持った猛攻。
──その猛攻を、ルナシーは何とか防ぎ切ったのだ。
「ルナシー。やるじゃない。あなたなら、負けるはずがないわ」
「驚いたですの。私の連続攻撃が」
シャムシールは、二人の予想外の粘り、強さに動揺し、一度引いて作戦を立て直そうとアイコンタクトを送る。
アブディールはコクリと首を縦に振る。
そしてその通り、シャムシールが一歩引こうとした瞬間。
「そうは、させないわ!」
ルナシーが勇気を出して前に出る。前線での戦いに向かない彼女の予想外の行動にアブディールは驚きながらも、応戦。
再び鋭い斬撃の連続がルナシーを襲う。
──が、今回もその障壁によって攻撃を防ぐ。
それでもアブディール
「もらったわ!」
「しまった──」
同じように攻撃を防ごうとした瞬間。
アブディールがいったんステップをとり後方に一歩引いたのだ。
(でも、同じではそう何度も通じないですの)
そう、フェイントというやつだ。
いくらルナシーに技術があるとはいえ、同じ手を出し続けるのは限界がある。
当然読まれ、裏をかかれてしまう。
「もらいましたの!」
それをアブディールが、見逃すはずがない。
障壁もなく、がら空きになったルナシーを目掛けて、アブディールが切り込む。
(これで、決着ですの!)
決着がついたと確信した瞬間、ひとりの人物がそこへ割り込んでいた。
アブディールの渾身の一撃を防いだのは、メーリングだ。
「しまった……ですわ」
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