203 / 221
オリエント編
相手は魔王。けれど負けない
しおりを挟む
「それがしか。とうとう現れたぞい」
ユダの言葉に、その人物がにやりと笑い反応する。
「ユダ。そして人間たち、良くここまでたどり着いたな。褒めてつかわす」
その言葉から、幸一達は感じ始める。
今まで何くらいの威圧感。それだけで体は竦み上がり、冷や汗が出る。
自分の本能が、逃げろ。じゃないと死ぬぞと叫んでいる。
その様子を看破したユダが、幸一達の方を向いてその名前を言う。
「魔王ノーデンス。魔王軍の最高指導者。そちたちが憎み、絶対に滅ぼそうと意気込んでいる人物じゃ──」
「こいつが魔王か、この俺様が打ち倒すにふさわしい人物だ」
「ヘイムか、うわさは聞いているぞ。大した身の程知らずだ」
理解していた。言葉など交わす必要がない。かわしたところで、変わることがないからだ。
これから、彼らはどちらかが消滅するまで戦わなければならないということが。
特に、ルーデルは。
「とうとう現れたか、俺たちを滅ぼした、うち滅ぼす敵」
「ルーデル。さん」
いつもルーデルの隣にいたシスカは、それを最も強く感じていた。しかし、疑問が残る。
「けど、大天使と、戦わなくてはいけないんですよね……」
その言葉に周囲は沈黙。確かにそうだ、魔王を倒すことは確かに幸一達の目標の一つだが、それ以外にもやらなければならないことはある。
「仕方ない。二手に分かれよう。俺は大天使と戦う。イレーナは魔王を倒してくれ。」
「──わかった。幸君」
イレーナは残念そうな表情を見せながらも承諾。幸一と一緒に戦いたいという気持ちは強くあった。
──が、エーテル体になっているのは幸一とイレーナだけ。
魔王も、大天使も、エーテル体を受け入れた人物がいないと勝利はおろかまともな戦いにならない可能性だってある。
両方に勝つには、二人は別れて戦うしかない。
それを理解していたイレーナは、特に何も言わなかった。
「わかった幸君。私、絶対に勝つ!」
イレーナがそう意気込む。
すると、横から誰かがやってくる。
「おっと、ノーデンス様によってかかって戦うことは許されないぞ」
ルーデルがその姿を見て、表情をこわばらせる。
「貴様たち──。忘れはしない!」
「彼らの正体、知っているんです──か?」
「当然だ、シスカ。こいつらのせいで、それだけの戦友が犠牲になったことか──」
そう、彼らこそが、ルーデルの故郷であるオリエント地方を侵略し、平穏な日常を破壊してきた張本人だったからだ。
「ナラトゥース、グルーン。こいつらの名前だ」
岩場に座り込んでいる二人、左の長い大鎌を持ち、長身で不気味な雰囲気をした騎士がナラトゥース。右の大きな杖を持ち、醜悪に満ちた姿をしている方がグルーンだ。
そしてルーデルは幸一達に叫ぶ。
「こいつらは俺が戦う。貴様らを粉々に消滅させてやる!」
彼らへの憎悪。それを全員が理解する。──が、それに待ったをかけた人物が一人。
「ルーデル……さん。待って──ください」
「なんだシスカ!」
「私も、戦い──ます。ルーデルさんを、一人には、させません!」
か細いながらも、強い気持ちが入った言葉使いに、ルーデルが戸惑いながら言葉を返す。
「まて、俺とか、死ぬかもしれないぞ」
「一人で戦うのは、無謀──です。私も、戦い……ます。それに──」
シスカは、一瞬言葉を詰まらせた後、勇気を出してその言葉を話す。
「今のルーデル……さん、怒りを、抱きすぎている、気が──します。このままだと、自分を──、見失って……しまう気がするです」
その言葉にルーデルは一瞬言葉を失う、そして僅かに頭を冷やし言葉を返す。
「──わかった。共に、戦おう」
今のシスカは、勇気を出して忠告をしている。おそらく彼が強く言っても引かないだろう。
シスカは、ルーデルのために、彼の身を案じているのだから。
こういう時のシスカは、頑固で引かない。それを理解していたルーデルは、彼女の言葉を受け入れた。
そして二人がナラトゥース、グルーンの方を向く。
「貴様達は、この俺が殲滅させる」
「そうかい、なら。行こうか!」
ナラトゥースが、自身の大鎌を向け、勝負が始まる。
それを見たイレーナも、魔王と向き合った。
「──私が、戦う。絶対に、勝つ」
「ならば、証明して見せよ。貴様の強さを」
もはや二人の間に言葉はいらない。そんなもので変わる心ではないのを、互いに知っているから。
「任せたよ。イレーナ」
幸一がそう言うと、イレーナが深呼吸して魔王と相対する。
それを見た幸一達はこの場を後にし、先へ進み始める。
そして、別れ際に一言。
「幸君。私、絶対に勝つから、だから、幸君も、負けないで?」
「わかった。絶対に勝つ」
幸一は力強く返事をする。
そして幸一達は先へ。
イレーナは、魔王と、静かに向かい合った。
そして魔王とイレーナがにらみ合ったころ。激戦を繰り広げている人たちがいた。
メーリングと、ルナシーである。
「確かに天使だけあって、実力は相当ね」
「当たり前ですわ。そんな付け焼刃のコンビネーションで、私達に勝てると思ったら、大
ユダの言葉に、その人物がにやりと笑い反応する。
「ユダ。そして人間たち、良くここまでたどり着いたな。褒めてつかわす」
その言葉から、幸一達は感じ始める。
今まで何くらいの威圧感。それだけで体は竦み上がり、冷や汗が出る。
自分の本能が、逃げろ。じゃないと死ぬぞと叫んでいる。
その様子を看破したユダが、幸一達の方を向いてその名前を言う。
「魔王ノーデンス。魔王軍の最高指導者。そちたちが憎み、絶対に滅ぼそうと意気込んでいる人物じゃ──」
「こいつが魔王か、この俺様が打ち倒すにふさわしい人物だ」
「ヘイムか、うわさは聞いているぞ。大した身の程知らずだ」
理解していた。言葉など交わす必要がない。かわしたところで、変わることがないからだ。
これから、彼らはどちらかが消滅するまで戦わなければならないということが。
特に、ルーデルは。
「とうとう現れたか、俺たちを滅ぼした、うち滅ぼす敵」
「ルーデル。さん」
いつもルーデルの隣にいたシスカは、それを最も強く感じていた。しかし、疑問が残る。
「けど、大天使と、戦わなくてはいけないんですよね……」
その言葉に周囲は沈黙。確かにそうだ、魔王を倒すことは確かに幸一達の目標の一つだが、それ以外にもやらなければならないことはある。
「仕方ない。二手に分かれよう。俺は大天使と戦う。イレーナは魔王を倒してくれ。」
「──わかった。幸君」
イレーナは残念そうな表情を見せながらも承諾。幸一と一緒に戦いたいという気持ちは強くあった。
──が、エーテル体になっているのは幸一とイレーナだけ。
魔王も、大天使も、エーテル体を受け入れた人物がいないと勝利はおろかまともな戦いにならない可能性だってある。
両方に勝つには、二人は別れて戦うしかない。
それを理解していたイレーナは、特に何も言わなかった。
「わかった幸君。私、絶対に勝つ!」
イレーナがそう意気込む。
すると、横から誰かがやってくる。
「おっと、ノーデンス様によってかかって戦うことは許されないぞ」
ルーデルがその姿を見て、表情をこわばらせる。
「貴様たち──。忘れはしない!」
「彼らの正体、知っているんです──か?」
「当然だ、シスカ。こいつらのせいで、それだけの戦友が犠牲になったことか──」
そう、彼らこそが、ルーデルの故郷であるオリエント地方を侵略し、平穏な日常を破壊してきた張本人だったからだ。
「ナラトゥース、グルーン。こいつらの名前だ」
岩場に座り込んでいる二人、左の長い大鎌を持ち、長身で不気味な雰囲気をした騎士がナラトゥース。右の大きな杖を持ち、醜悪に満ちた姿をしている方がグルーンだ。
そしてルーデルは幸一達に叫ぶ。
「こいつらは俺が戦う。貴様らを粉々に消滅させてやる!」
彼らへの憎悪。それを全員が理解する。──が、それに待ったをかけた人物が一人。
「ルーデル……さん。待って──ください」
「なんだシスカ!」
「私も、戦い──ます。ルーデルさんを、一人には、させません!」
か細いながらも、強い気持ちが入った言葉使いに、ルーデルが戸惑いながら言葉を返す。
「まて、俺とか、死ぬかもしれないぞ」
「一人で戦うのは、無謀──です。私も、戦い……ます。それに──」
シスカは、一瞬言葉を詰まらせた後、勇気を出してその言葉を話す。
「今のルーデル……さん、怒りを、抱きすぎている、気が──します。このままだと、自分を──、見失って……しまう気がするです」
その言葉にルーデルは一瞬言葉を失う、そして僅かに頭を冷やし言葉を返す。
「──わかった。共に、戦おう」
今のシスカは、勇気を出して忠告をしている。おそらく彼が強く言っても引かないだろう。
シスカは、ルーデルのために、彼の身を案じているのだから。
こういう時のシスカは、頑固で引かない。それを理解していたルーデルは、彼女の言葉を受け入れた。
そして二人がナラトゥース、グルーンの方を向く。
「貴様達は、この俺が殲滅させる」
「そうかい、なら。行こうか!」
ナラトゥースが、自身の大鎌を向け、勝負が始まる。
それを見たイレーナも、魔王と向き合った。
「──私が、戦う。絶対に、勝つ」
「ならば、証明して見せよ。貴様の強さを」
もはや二人の間に言葉はいらない。そんなもので変わる心ではないのを、互いに知っているから。
「任せたよ。イレーナ」
幸一がそう言うと、イレーナが深呼吸して魔王と相対する。
それを見た幸一達はこの場を後にし、先へ進み始める。
そして、別れ際に一言。
「幸君。私、絶対に勝つから、だから、幸君も、負けないで?」
「わかった。絶対に勝つ」
幸一は力強く返事をする。
そして幸一達は先へ。
イレーナは、魔王と、静かに向かい合った。
そして魔王とイレーナがにらみ合ったころ。激戦を繰り広げている人たちがいた。
メーリングと、ルナシーである。
「確かに天使だけあって、実力は相当ね」
「当たり前ですわ。そんな付け焼刃のコンビネーションで、私達に勝てると思ったら、大
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす
Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二
その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。
侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。
裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。
そこで先天性スキル、糸を手に入れた。
だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。
「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」
少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。
俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
RISING 〜夜明けの唄〜
Takaya
ファンタジー
戦争・紛争の収まらぬ戦乱の世で
平和への夜明けを導く者は誰だ?
其々の正義が織り成す長編ファンタジー。
〜本編あらすじ〜
広く豊かな海に囲まれ、大陸に属さず
島国として永きに渡り歴史を紡いできた
独立国家《プレジア》
此の国が、世界に其の名を馳せる事となった
背景には、世界で只一国のみ、そう此の
プレジアのみが執り行った政策がある。
其れは《鎖国政策》
外界との繋がりを遮断し自国を守るべく
百年も昔に制定された国家政策である。
そんな国もかつて繋がりを育んで来た
近隣国《バルモア》との戦争は回避出来ず。
百年の間戦争によって生まれた傷跡は
近年の自国内紛争を呼ぶ事態へと発展。
その紛争の中心となったのは紛れも無く
新しく掲げられた双つの旗と王家守護の
象徴ともされる一つの旗であった。
鎖国政策を打ち破り外界との繋がりを
再度育み、此の国の衰退を止めるべく
立ち上がった《独立師団革命軍》
異国との戦争で生まれた傷跡を活力に
革命軍の考えを異と唱え、自国の文化や
歴史を護ると決めた《護国師団反乱軍》
三百年の歴史を誇るケーニッヒ王家に仕え
毅然と正義を掲げ、自国最高の防衛戦力と
評され此れを迎え討つ《国王直下帝国軍》
乱立した隊旗を起点に止まらぬ紛争。
今プレジアは変革の時を期せずして迎える。
此の歴史の中で起こる大きな戦いは後に
《日の出戦争》と呼ばれるが此の物語は
此のどれにも属さず、己の運命に翻弄され
巻き込まれて行く一人の流浪人の物語ーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる