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巨大なる襲撃編
サラと二人で、そして極秘の作戦
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「大事にしますよ。叫びますよ」
「うっ、貴様……」
おじさんは大事にするという言葉に何も言えなくなり黙ってしまう。
この商店で知られれば確実に信用を失いここから追放されることもあり得る。それだけでなく人をだましてニセ金貨を押しつける人物と風評されればまともな相手とは取引されなくなってしまう。
彼もここで商人としての信用を失うわけにはいかず嫌々ながらも矛を収め買う予定だったネックレスとお釣りを渡す。
「俺の負けだよ穣ちゃん。このネックレス受け取りな」
「──。わかりました」
意外だったサラの強気な姿勢に幸一はどう反応すればいいかわからずただ呆然としていた。
そして正規の金貨でネックレスを購入。この店を去る。
サラはそのネックレスを首につけてご機嫌そうに鼻歌を歌いながら道を歩いていく。一悶着あったがそのネックレス自体は気に言っているようだ。
「に、似合っているよ。サラ──」
「あ、ありがとう」
幸一がぎこちなく作り笑顔を見せると、サラもほんのわずかな笑みを浮かべる。
ここに来てから魔王軍との戦いが続き、張り詰めた雰囲気が続いている中サラとともに歩いた日常の雰囲気。どこか穏やかな空気を二人は共有した。
その後もいくつか店を歩いてみるが何ら問題は起こらず、いろいろなところを見て回り夜──、無事にいつもの部屋に帰還した。
イレーナは青葉に後方支援のための指導を受けるらしく部屋に帰ってくるのはもう少し後になりそうだ。
よってここにいるのはサラと幸一の二人。二人はベッドに座りながら今日の事をゆっくりと話す。
「それにしても意外だったよ。サラにあんな一面があったなんて」
幸一は思い出す。いつもは気弱で人見知りなサラが強気になったところ。彼はそこがとても印象に残った、正義感が強くここぞというときは絶対に引かないサラの部分を始めた見た
「今日は付き合ってくれて、ありがとう」
サラにそう話しかける。
「ううん、すごく楽しい一日だったよ。最初はどうなるかなって思ったけど」
確かに意外なこともあった。それでも二人は楽しいひと時を過ごせたし、サラの意外な一面も見る事が出来た
まあ、この後イレーナと気まずい雰囲気になるだろうが。
サラの事がもっと知りたいという感情に包まれ幸一はサラとこの場を後にしていった。
それから三日ほどたったある日。青葉と幸一はとある重要人物の部屋にいた。
「とりあえずこの机で間違いないわ。ありがとうね、メイドさん」
「青葉様、幸一様。どうかご無事をお祈りいたします、では」
これは魔王軍とつながりがあるのではないかと疑いがある人物の部屋。
そして二人の視線の先にあるもの。それは以前レナ達に特注品の机であった。そう、二人が魔王軍のスパイから証拠をつかむための秘密兵器だ。
「とりあえず、作戦は成功ね。メイドさんも特に何も言われなかったし」
侍女の人の中でもイレーナ派の人がこの部屋の担当になっているのを確認。
これならば彼女がいる中部屋に入ってもメイドの人は特に何も言わない。現に今も作戦を行おうとする幸一と青葉に対して奨励の言葉まで送ったほどだ。
そして隠れて一時間ほどたつと──。
「掃除が終わりました。入って大丈夫です」
「わかったわ新人さん。始めまして、私はグロリア。よろしくね」
この人が今回ターゲットにした人物。グロリアだ。今は机の中にいるため姿こそ見えていないが青葉が以前あった事があると言っていた、黒髪でセミロングの女性だった。
侍女は特に変わった態度はとらずに礼儀正しくペコリと頭を下げる。
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。ご不満があれば何でもどうぞ」
青葉と幸一が隠れたところ。
それは彼らが話している机の中であった。先ほど二人が確かめた机の最大の特徴。それは壁の一部を横にずらすと取り外せるようになっていて。中が空洞になりその中に二人が入れるような作りになっていた。
先日レイたちに訪れて注文したのがこの特性の机だった。幸い職人の質も良く元の机と形がそっくりになっている。
もちろんグロリアも警戒は怠らない。裏社会を知っている彼女にとって盗聴や罠が張っている事など日常茶飯事。当然警戒はしているし対策はある。
クローゼットの中やタンス、キッチンの下などに誰かいたり何かを仕掛けていないか確認。貝の形をした録音機能がある装置メモワール・ダイヤルにはいつも警戒をしている。
特に最近になって侍女が変わったため彼女はより一層警戒を強めていた。
まずは部屋の中をしらみつぶしに調べる。キッチンの下の扉。タンスの引き出し。家具と壁の隙間、暖炉の中、さらには天井を開けてその上まで。
「まあ、特に異常はないわ──」
警戒を怠らずありとあらゆるところを調べるグロリア。しかし彼らにとって机は机でありそれ以外の何物でもない。
その中は彼らにとって意識の外であり警戒の様子は見られない。
結局彼女はその机には手を付けずそばにある椅子に座りこむ。
「どうやら、バレなかったみたいね」
「ああ──」
「うっ、貴様……」
おじさんは大事にするという言葉に何も言えなくなり黙ってしまう。
この商店で知られれば確実に信用を失いここから追放されることもあり得る。それだけでなく人をだましてニセ金貨を押しつける人物と風評されればまともな相手とは取引されなくなってしまう。
彼もここで商人としての信用を失うわけにはいかず嫌々ながらも矛を収め買う予定だったネックレスとお釣りを渡す。
「俺の負けだよ穣ちゃん。このネックレス受け取りな」
「──。わかりました」
意外だったサラの強気な姿勢に幸一はどう反応すればいいかわからずただ呆然としていた。
そして正規の金貨でネックレスを購入。この店を去る。
サラはそのネックレスを首につけてご機嫌そうに鼻歌を歌いながら道を歩いていく。一悶着あったがそのネックレス自体は気に言っているようだ。
「に、似合っているよ。サラ──」
「あ、ありがとう」
幸一がぎこちなく作り笑顔を見せると、サラもほんのわずかな笑みを浮かべる。
ここに来てから魔王軍との戦いが続き、張り詰めた雰囲気が続いている中サラとともに歩いた日常の雰囲気。どこか穏やかな空気を二人は共有した。
その後もいくつか店を歩いてみるが何ら問題は起こらず、いろいろなところを見て回り夜──、無事にいつもの部屋に帰還した。
イレーナは青葉に後方支援のための指導を受けるらしく部屋に帰ってくるのはもう少し後になりそうだ。
よってここにいるのはサラと幸一の二人。二人はベッドに座りながら今日の事をゆっくりと話す。
「それにしても意外だったよ。サラにあんな一面があったなんて」
幸一は思い出す。いつもは気弱で人見知りなサラが強気になったところ。彼はそこがとても印象に残った、正義感が強くここぞというときは絶対に引かないサラの部分を始めた見た
「今日は付き合ってくれて、ありがとう」
サラにそう話しかける。
「ううん、すごく楽しい一日だったよ。最初はどうなるかなって思ったけど」
確かに意外なこともあった。それでも二人は楽しいひと時を過ごせたし、サラの意外な一面も見る事が出来た
まあ、この後イレーナと気まずい雰囲気になるだろうが。
サラの事がもっと知りたいという感情に包まれ幸一はサラとこの場を後にしていった。
それから三日ほどたったある日。青葉と幸一はとある重要人物の部屋にいた。
「とりあえずこの机で間違いないわ。ありがとうね、メイドさん」
「青葉様、幸一様。どうかご無事をお祈りいたします、では」
これは魔王軍とつながりがあるのではないかと疑いがある人物の部屋。
そして二人の視線の先にあるもの。それは以前レナ達に特注品の机であった。そう、二人が魔王軍のスパイから証拠をつかむための秘密兵器だ。
「とりあえず、作戦は成功ね。メイドさんも特に何も言われなかったし」
侍女の人の中でもイレーナ派の人がこの部屋の担当になっているのを確認。
これならば彼女がいる中部屋に入ってもメイドの人は特に何も言わない。現に今も作戦を行おうとする幸一と青葉に対して奨励の言葉まで送ったほどだ。
そして隠れて一時間ほどたつと──。
「掃除が終わりました。入って大丈夫です」
「わかったわ新人さん。始めまして、私はグロリア。よろしくね」
この人が今回ターゲットにした人物。グロリアだ。今は机の中にいるため姿こそ見えていないが青葉が以前あった事があると言っていた、黒髪でセミロングの女性だった。
侍女は特に変わった態度はとらずに礼儀正しくペコリと頭を下げる。
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします。ご不満があれば何でもどうぞ」
青葉と幸一が隠れたところ。
それは彼らが話している机の中であった。先ほど二人が確かめた机の最大の特徴。それは壁の一部を横にずらすと取り外せるようになっていて。中が空洞になりその中に二人が入れるような作りになっていた。
先日レイたちに訪れて注文したのがこの特性の机だった。幸い職人の質も良く元の机と形がそっくりになっている。
もちろんグロリアも警戒は怠らない。裏社会を知っている彼女にとって盗聴や罠が張っている事など日常茶飯事。当然警戒はしているし対策はある。
クローゼットの中やタンス、キッチンの下などに誰かいたり何かを仕掛けていないか確認。貝の形をした録音機能がある装置メモワール・ダイヤルにはいつも警戒をしている。
特に最近になって侍女が変わったため彼女はより一層警戒を強めていた。
まずは部屋の中をしらみつぶしに調べる。キッチンの下の扉。タンスの引き出し。家具と壁の隙間、暖炉の中、さらには天井を開けてその上まで。
「まあ、特に異常はないわ──」
警戒を怠らずありとあらゆるところを調べるグロリア。しかし彼らにとって机は机でありそれ以外の何物でもない。
その中は彼らにとって意識の外であり警戒の様子は見られない。
結局彼女はその机には手を付けずそばにある椅子に座りこむ。
「どうやら、バレなかったみたいね」
「ああ──」
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