125 / 221
巨大なる襲撃編
迷子の男の子
しおりを挟むすると──。
「イレーナ。あの子どうしたのかな?」
幸一が視線の先に指をさす。その指先には一人の男の子。
涙目になりながら周囲を見回しキョロキョロしている。もしかしてあの子迷子なのではないかと言う事だとイレーナは理解し心配そうになる。
「幸君、ちょっと行ってみよう」
「そうだね」
イレーナがそう幸一に声をかける。幸一はイレーナを向き優しい微笑を浮かべてイレーナに言葉を返す。そして二人は困っている子供にそっと接近。
「迷子かな? 君、どうしたの?」
幸一が優しくその子供に話しかける。その子供は泣きながら幸一の方を振り向く。
子供はただ涙目になってこっちを見ている、警戒しているかのように。するとイレーナが優しい口調でその子に名はしかける。
「一人で、ここまで来たの。でも帰り道がわかんなくなちゃった」
「ねえ、僕はどこの地区に住んでいるの? 教えてくれれば一緒にそこまで連れて行くからさ」
その少年はイレーナの言葉に反応しゆっくりと泣きやむ。そして南の方向をゆっくりと指差す。
「あっちの方向ってこと?」
イレーナの質問にその子供はそっと首を縦に振る。そして幸一とイレーナが再び顔を見合わせる。
「一緒に行こう。俺達が送って言ってあげるよ」
その言葉に子供は顔を上げる。そしてイレーナに向って手を差し出す。イレーナはその手をぎゅっと握ってゆっくりと歩き始める。
「南って言ってもどのあたりかわからないの?」
「ずっと歩いてきた。だからこの辺りは良くわかんない」
その言葉に困り果てるイレーナ。この街ネウストリアは南側には住宅街が広がっていてとても今日中に歩きまわれる距離ではない。
幸一もそれは理解していて何とかおおよその場所が特定できないか腕を組んで考える。
そして二~三分考えた末に一つの質問をする。
「じゃあ君の家の周りに特徴がある建物なんかない? 変わった家があるとか、大きな公園とか」
少年は首をかしげながら記憶を思い出させる。
「たしか、教会があった」
「そ、それはどんな教会? 色とか大きさはわかる?」
確かに教会は目印の一つになるがこの街では教会はいくつも存在する。それではどのあたりにすんでいるのか特定できない。
「大きさとか、色とか、周りに何があるとかわかる?」
イレーナの質問に少年は何とか教会の特徴を思い出そうとする。そしてゆっくりと二人にそれを話す。
「確か、煉瓦で出来ていて、周りは家に囲まれている。確か最近出来た家に取り囲まれているみたい」
その言葉を聞いて幸一は軽く頭を抱える、しかしそれだけでは場所は特定できない。他に分かりやすい特徴は無いのか。それでもその場所を聞いたイレーナは一つの場所を思いつく。
「もしかしたらガロス地区かもしれない。そこまで行ってみる?」
「もしかしたらってことは絶対ではないけどそこの可能性が高いってこと?」
「うん、あのあたりは確か地方から人口が流入してきてその人たちの住居が増えているの。もしかしたらそのあたりかもしれない。前に市民からその地区の教会の周りに移民たちの家が立ち並んでいて景観が悪くなったって声が届いていたから。」
イレーナには自信があった。彼女は普段からよく街に出たりして市民の声を聞いていた。その中で聞いた声の一つを今思い出したのであった。
普段から市民達の声を聞いているイレーナだからこそたどり着いた結論であった。
それに彼から聞き出せた情報はこれだけ、他に行くあてなど無くこの情報を頼りに道を進んでいくしか選択肢はなかった。
そしてそれを頼りに三人は再び出発する。
「そう言えば名前は?」
「ロム」
「ロム君か、じゃあいっしょ行こうか」
ロムが首を縦に振り道を進み始める。にぎやかな繁華街、一般人が住む物静かな街並み、風情あるネウストリアの街並みを手をつなぎながら進んでいく。
30分ほど歩くと噴水のあるにぎやかな公園にたどり着く、目的の場所まであと半分と言ったところ。
「ちょっと疲れちゃったし休憩しようか──。ちょっとそこの露店でパフェ買ってくるね~~」
イレーナがノリノリな気分でその露店に行く。確かに歩き疲れたというのもあるが半分はおいしそうなパフェの店があったからと言うのが半分だろう。
幸一とロムは目に前にある石で出来たベンチに腰掛けた。そして幸一がロムに話しかける
「君、生まれはここだったの? それとも違う場所?」
「生まれはここじゃない。別の場所、でもまだ小さかったから何も覚えていない。いつももめ事が起きていてある日両親がもうここから抜け出すって言ってこの場所にやってきた」
「ああ、そうなのか……」
その言葉に幸一は複雑な気持ちになる。
恐らく地方は経済状況が良くない、その上治安も悪く街の中で内乱やもめ事も多いのだろう。そしてここでは生活できないと判断し比較的治安もよく安定しているネウストリアに来たのだと予想する。
彼らのために自分が何かできることはないか、彼の隣で考える幸一。すると──。
「幸君、ロム。買って来たよ~~」
イレーナが好きそうなクリームがたっぷり入ったパフェ、しかし今回はいつも買っているパフェと違ってチョコクリームを使ったパフェ。
イレーナはそのパフェをおいしそうに食べる。満面の笑み。
幸一も一口食べてみる。チョコの苦みが程良く効いていてとてもおいしいと感じた。
「おいしいものも食べたし出発しようか」
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる