【完結】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内燕

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ウェレン編

お別れの間際に……

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 巡礼祭終了から一週間後。

 お別れの日がやってきた。

 宮殿の前で行きと同じシェルパの人たち。
 国王や要人、アリーツェ達が見送りに来ている。

「ありがとうございました。このご恩は決して忘れません」

「助かったよ。この国に平和が戻ったのは、あなたたちのおかげだ」


 代表として国王とアリーツェがお別れの言葉を話す。幸一達の活躍に対しての賛辞の言葉。そして何かあったらいつでも頼ってくれと継げる。

 幸一は微笑をしながらそこまでのことはやっていないと言葉を返す。

 するとアリーツェは自分の背後に目線を映した。そこにいるのは小さな女の子。






「ほらレイカ、別れの時間よ──」


 スッ……。

 ゆっくりとアリーツェの後ろから一人の少女が出てくる。アリーツェのスカートをつかみゆっくりと姿を現す。


「あのう……。幸一さん……」


 後ろからやや小さめの声で話しかけてくる声。幸一は聞き慣れた声にそっと振り向く。
 レイカであった。言いづらそうに、うつむきながらゆっくりと話を続ける。


「その、ありが……とう」

「いいんだよ。気にしないで!!」

 イレーナがすぐに手を小刻みに振って言葉を返す。幸一はどう言葉をかければいいかわからず考えこんでしまう。



 レイカはあまり自分を表現するのが得意でなく二人にどうお礼を言えばいいかわからない。

 二人の呼びかけがなかったら自分はペドロの術式によって破壊の限りを尽くしていただろう。正気に戻ってもその事実に苛まれどうなっていたかわからない。


 何よりこの街は確実に壊滅していただろう。破壊の限りを尽くした自分、崩壊した街を目の当たりにして身を投げていた可能性だってある。


「あの……、身体とか大丈夫?」

「まあ、何とかね。流石に激しい戦いとかは出来ないけど 優しいね幸一君」

「それとも激しい運動したいの? ベッドで」

 どこか幼くも妖艶な表情で幸一を見上げる。幸一はからかいの言葉に動揺しつつも冷静になる。



「でも心配してくれてありがと。優しい幸一君でよかった」

「別に、当然のことをしたまでだよ」

 レイカはぱっと明るい笑みをみせる。

「だから。今、そんなあなたに私の気持ちをあなたに伝えるわ──」

 ゆっくりと歩いて幸一に接近。そして──。



 チュッ──。



「またいつか会いましょう。あんた、結構いい男じゃない」

 優しい微笑を向けるレイカ。
 それとは対照的に凍りつく周り。幸一は突然のレイカの行動に凍りついてしまったように動かなくなる。

 少し恥ずかしげに顔を赤らめる、少しはにかんだような表情。
 幸一は予想もしなかった行動に顔を赤面させる。

 そしてくるりと後ろを向いてこの場を去っていった。
 みずみずしくマシュマロのように柔らかい感触。何処か甘い香りもする。もちろん生まれて初めての感覚。




 ゴゴゴゴゴゴゴ──。

 ジト目というのもそうだが殺気が全身から漂っている。

 そのただならに気配に動揺し幸一は右を向く。

「イ、イレーナ──、これはレイカがやってきただけで、その……、故意では」

「最っ低!!」



「あの子にキスされたのがそんなにうれしかったの? あ!! 幸君は小さい子が好きだったんだ~~」


「ち、ち、ち、違うって!! レイカの行動に驚いただけだよ!!」



 青葉がその身をぴったりとくっつけジト目を向けながらからかってくる。それを見て「へぇ~~」と言わんばかりにニヤニヤしながら幸一を見つめる。
 イレーナは幸一に接近し殺気を漂わせながら接近する。


 青葉は幸一に肩を寄せ、手を重ねる。
 彼女の柔らかく滑らかな手の感触、コート越しに感じる青葉の体温と身体。思わず幸一は胸をどきどきとさせる。

「もう──、お二人さんは、こうすればいいのよ」

 そう言ってくるりとステップを踏んで青葉はイレーナの後ろに立つ。


 そして──。


 トン──、と青葉がイレーナの背中を押すと──。


 チュッ。

 慌てふためく幸一の唇にイレーナの唇が重なる。
 突然の事態に二人は思考が完全に停止。サラも驚愕を隠せずほをかむり固まる。

「ご、ご、ご、ごめん。そ、その──、青葉ちゃんが押すから!! わざとじゃないから!!」

「だ、だ、だ大丈夫だよ!! 別にき、き、気にしてなんかないから!!」

 慌てて二人が離れる。
 イレーナは唇を抑え顔がリンゴのように真っ赤。そして互いに見つめ合う。レイカとは違った柔らかさ、甘酸っぱさを感じる唇。


 二人は顔を赤くして無言で見つめ合う。サラと青葉はそんな二人を見て二人の関係が進展するのはまだ先になると確信する。


 そんな甘い想いをしながら幸一達は帰路についていった。
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