【完結】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内燕

文字の大きさ
上 下
114 / 221
ウェレン編

最深部へ

しおりを挟む
 
 前方から誰かの声がする。

 坊主頭で長身、筋肉質の男性、デュラグが。もう一人、長髪で痩躯の若い青年の幹部アルメロ。

 2人が幸一とイレーナの前に立ちふさがる。


「そこをどけ」

「残念ながらそれは出来ないね──」


 対立する4人。
 もう言葉はいらなかった。4人は対峙し、戦うという事を共通の理解としていたからである。


 タッッッッッ──。

 デュラグとアルメロが戦いの開始と同時に左右に分かれてイレーナを狙って来た。


 そうはさせないと幸一はイレーナを援護するがデュラグはその攻撃を素手で払いのける。
 彼が繰り出した拳によって幸一の攻撃は一瞬で消滅した。

 その光景に幸一は驚く。つまり彼の攻撃は拳一つで幸一の攻撃を打ち消せる力を持っているということだった。

 何の苦もなく幸一の攻撃を撃破したデュラグは一気にイレーナに急接近、そして彼が左のこぶしを放つ。

 イレーナは何とか攻撃を受けるが鉄の球が衝突したような衝撃。その衝撃に踏ん張ったはずの足が震える。

 さらにデュラグはさらに踏み込み左足の蹴りをイレーナの腹部へ叩きこむ。


 腹部に魔力を集中しギリギリで攻撃をこらえる。

 しかし圧倒的な攻撃力で今すぐ意識を失いそうな強力な威力だった。
 身体は吹き飛び宙を舞う、デュラグはそのスキを逃さず身体を回転させる。目にもとまらぬ速さでさらに拳を放つ。

 イレーナは何とかそれをかわし、後ろへ身をそらす。
 槍の間合いより接近されるととても勝てない。

 何とか間合いを取って槍のリーチを生かす。そういった戦いをしないといけない。

「流石はお嬢様、その実力に偽りは無いな──」

 そう囁きながらデュラグは腰を落としさらなる攻撃の構えをとる。
 そして勝負を決めるため一気にイレーナに襲い掛かる。

 イレーナは意識を集中させ守りを固め彼の猛攻をしのぐ。




 互いに最大の威力を持つ術式のぶつかり合い。

 イレーナの攻撃がデュラグを押し切り彼がのけぞるような体制になる。
 そしてそのスキをイレーナは見逃さなかった。


 最高の力を込めた最大の一撃

 時空を超える力、今友のため敵をせん滅し救いの力となり、定めを超える閃光貫け
 ヘリオポーズ・イクシオンブラスター・スプレマシー・ノヴァ

 ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ──!!



 デュラグはガードもむなしく後方に体が吹き飛ぶ。そのまま肉体が壁に叩きつけられぐったりと倒れて動かなくなる。







 一方幸一とアルメロの勝負も決着がつこうとしていた。

 老獪かつ滑稽な攻撃に苦労してきたが少しずつ対応し始める
 アルメロが
 幸一はその攻撃にバックステップですぐに身を後方に動かす。

 アルメロはここで勝負を決めようと一気に間合いを詰めていく。そして──。

(食いついてきたな!!)

 幸一の戦術だった。幸一は彼が経験豊富でストレートに戦っても苦戦すると予測していた。なので彼に戦術どおりにいってると思いこませていて前がかりになったところに逆に攻撃をたたき込む作戦だった。

 幸一が突然前に出てきたことにアルメロは一瞬驚愕する。

(罠だったのか?)


 しかしすぐに反応し剣に魔力を込める。幸一もここで勝負を決めようと全身に魔力を込めアルメロに攻撃を仕掛ける。


 願いをとどかせし力、逆縁を乗り越え、踏み越えし力現出せよ

 バーニング・ブレイブ・ネレイデス

 ドォォォォォォォォォォォォォォン!!

 強力な魔力を幸一がたたき込む。幸一の攻撃がアルメロの攻撃を打ち破りそのまま彼の体に直撃。


 そのままアルメロの体が壁に叩きつけられる。アルメロはすべての魔力を失い地面に落下する。

「強いな、勇者よ──」



 再び二人が手を握る。使ってしまった魔力を回復しつつ先へ進んでいく。レイカや国王達の無事、地上で戦っている青葉や兵士が心配になり落ち着いていられない。

 焦りを感じながら二人は道の奥へと進んでいった。










 最深部へたどり着いた幸一とイレーナ。二人はきょろきょろとあたりを見回す。

「あの文字は……?」

 幸一が見たには真正面にある壁に記されている文章。
 それは古代の文字の様で幸一は見るのは初めて。当然解読することなどできない。

「イレーナ、この文字わかるか?」

 イレーナは壁に描かれている文章を凝視しながら言葉を失っていた。そして気持ちを落ち着けた後ゆっくりと口を開き始める。

「理由はわからない、でも私にはこの文字が分かるの、見たことも聞いたことも無いはずなのに──」

 困惑するイレーナ、するとこの部屋の中央の小さな壇上が青白く光り始める。
 青白い光はゆっくりと人型の形になり膝下程のサイズの精霊のような生き物になる。

 白い神官のような衣装を着た青白く光る生き物。その生き物がぺこりとゆっくりお辞儀をしてから話しかける。

「おまたせしておりました、イレーナ様」

 突然の言葉にイレーナは何を話せばいいかわからず混乱し始める。


「あなたが強さを身につけてここに帰る事、そしてこの遺跡に眠る「しょごりゅう」の力を手に入れる事。運命でした、そしてその運命が今イレーナ様を手繰り寄せたのです」


「ちょっとまって、どういうことなの? ここに帰ってくるって何? 理解できないよ」

 すると背後から叫び声が聞こえる。

「イレーナ、私が話そう!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...