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ウェレン編

道中の戦い

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「レイカ嬢ちゃん、私の実力。見せてやるよ──」

 ペドロの言葉を川切りに2人の戦いが、今始まる──。





 一方イレーナと青葉は後方の二人に接近する。

「2人とも、もう観念しなさい!!」


 後方には坊主頭で長身、筋肉質の男性、デュラグ。もう一人、長髪で痩躯の若い青年の幹部アルメロがいた。
 2人には青葉とイレーナが対応。相対し始めるとデュラグとアルメロが反応する。

「一瞬で終わらせてやるさ」

「ああそうだ、貴様たちの俺達の力見せつけてやらないとな」

 2人の言葉に青葉とイレーナは動じない。こちらの戦闘もすぐに始まっていった。










 ペドロとレイカ、互いに接近戦でつばぜり合い、戦闘が始まるほど5分、互いに有効打を与えられず互角の戦いが続く。

「お嬢ちゃんが相手をするのかい。私の相手が務まるといいねぇ」

 ペドロの挑発にもレイカは動じない。



 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 レイカがペドロの強力な攻撃を受ける。何とか攻撃を受けようとするが受けきれずのけぞるような体制になる。


「とどめだ!!」

 ペドロが前がかりになる。レイカはそれを見逃さなかった。レイカは右足に強く魔力を込める、そしてのけぞりながら強引にのけぞった体勢から後ろに蹴りを入れて無理矢理体勢を前のめりにする。

(何ィィィィィ)

 予想もしなかった行動にペドロは心の中で叫ぶ。しかしすでに彼女も前がかりの体勢、不意をつかれどうする事も出来ない。

 そこにレイカが魔力を込めた一太刀をペドロに浴びせる。

 ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

 ギヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。

 断末魔の様な叫び声を上げながらペドロの体が吹き飛ぶ。彼女の体がそのまま後ろにある気に叩きつけられる。

 レイカは勝負を決めるためペドロに接近、自身の剣を振り上げる、しかし──。

「フッ、あんた強いね──。ここは身を引くよ」

 すぐに身を起こす、そしてレイカの攻撃をかわすと針葉樹の森の中へ逃げていった。
 レイカは悔しさのあまり歯ぎしりをしながらつぶやく。

「くっ、逃がした……」

 悔しいが感情的になり深追いして持ち場を離れるのはまずい。理性を取り戻し仕方なしに追うのをやめ持ち場に戻る。

(次は絶対とらえてやるんだから──)



 一方イレーナと青葉の戦いも決着の時を迎えていた。

 最初は互角に戦っていたが次第にイレーナと青葉が優勢になっていく。
 そして決着の時が来る。



 氷結なる光輝かせ、その無限の光で寄せ来る敵を打ち砕け!!
 ブリザード・ガントレット  ──連撃のアイス・フレーク──

 マシンガンのように氷の球が何十にも出現する。そしてそれが機関銃の連射のようにデュラグとアルメロに向かっていく。

「ぐっ──」

 アルメロが前方に障壁を展開青葉の攻撃はその障壁によって防がれる。しかし──。

(イレーナ、今がチャンスよ!!)

 スッ──。

 それは敵の注意を前方に向けさせる囮だった。その瞬間、後方に移動していたイレーナが二人の背後に現れる。そして自身の槍を天空に向かって振り上げる。
 その気配の気付いた二人が慌てて後ろを振り向く。

 しかしその時には時すでに遅い。イレーナは槍に魔力を込める、そして──。


 希望を束ねる力、光の化身となりてその強さ、躍動せよ

 アストログラフ・ソウル・スターライト・ランス

 ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!


 デュラグが防御の体制をとり何とか攻撃を受けきろうとする、しかしイレーナはそれを無視して攻撃を仕掛ける。
 イレーナの渾身の一撃が二人に直撃する。二人の肉体が宙を舞い10メートルほど吹き飛ぶ。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 デュラグは防御の体勢をとっていたがそれを突き破りそのまま直撃。二人の体は壁に強くたたきつけられる。それにより魔力が完全に消滅。

「すごい、あの二人を一瞬で──」

 周りから歓喜のざわめき具合が聞こえ出す。この二人は兵士達の中でも実力があると恐れられ手を焼き続けていた人物でもあった。それがこんな一瞬で勝負が決まると言うことに驚きを隠せなかった。

「この人たち、すごすぎる──」

「俺達とは、まるでレベルが違いすぎる──」

 ざわめきだす周囲。しかし敵の2人もただではやられなかった。

「おい、お前!!」

(──コクッ)

 2人は互いに視線を合わせアイコンタクトをとる。そして──。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 2人が一斉に自身の兵器に魔力をため込む。そして小規模の爆発を起こす。爆発の煙がこの場一帯を包み込み視界が利かなくなる。
 敵の奇襲に備えて幸一達は防御の構えをとる。

 そして20秒ほどたつと煙が消える。青葉とイレーナがすぐに周囲を見回す。しかし……。

「いな~~い!!」

「逃げられちゃいましたね……」

 2人の言葉通りすでに3人の姿は無かった。がっくりと肩を落とす幸一達。しかしこんなことで気落ちしてはいられない。とりあえず国王やアリーツェなど要人が無事なことを確認。

「なんだよ、取り逃がしちまったのかよ。なっさけねえなァ」

 貴族達が小言をはさむが無視。再び街への帰還の準備をする。負傷をした兵士に手当ての手配、要人たちに状況の説明を行う。

 さらに念のため周囲に何か罠がないか少し時間をかけて散策する。しかし特にこれといった罠は無いことを確認。

「とりあえず安全確認は取れました。いつでも出発して大丈夫です」


 進行の責任者にそれを伝えると一行は街への帰還を再開する。
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