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ウェレン編
政治パーティーへ
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「これでどう? 綺麗だと思うわ?」
青葉がイレーナの着替えを手伝い鏡の方を向かせる。彼女によって彩られた自分の姿、その美しさに顔を真っ赤にして驚く。
「ええっ? これが私──」
そこには上品でお淑やかさを持つドレス姿のイレーナの姿だった。上品さを感じさせるドレスの生地がイレーナの白い肌を強調させ装飾品が彼女に彩りを添えていた。
結び上がった髪も彼女の美しさを引き立て大人の美しさを醸し出している。
派手な服装ではなかったが彼女の持つ魅力は損なわれていない。
「じゃあ行きましょ、みんな待っているでしょうし──」
サラの言葉のもと控室を出る3人。
タキシード姿の幸一がすでに着替えを終えて会場の入り口に立っていた。
幸一が3人の声に反応して振り向く。
「幸君、その……、私──どうかな?」
おどおどしながら涼しげに髪をかき上げるイレーナ、それを見て幸一がその端麗さに思わずドキッとする。
感想を求めているのだと感じ言葉をかける、
「そ、その──とてもきれいだよ。すごく似合っていると思う」
3人とも派手さこそ無いパーティー用の装いではあった。しかし個々の魅力を最大限引き出していてとても素敵な姿であったと感じた。
「3人とも、素敵だよ。綺麗でとても似合ってるよ」
「その言葉、ありがとう。でも幸君はもうちょっとかな?」
青葉はほほ笑みながらスッと幸一に歩み寄る。青葉は彼にふっと顔を寄せる。
青葉特有のにっこりとした笑みがまじかに迫る。
驚く幸一。
「ちょ、青葉──、近いって!!」
もうひと押しで唇が触れてしまう、あるいはその控えめな胸が触れてしまいそうな距離。
彼女の髪や香水を意識した瞬間、青葉のなめらかで細い指が幸一の胸に触れた。
「ちょ、ちょっと──」
「ネクタイや襟が少しずれているわ、動かないで、直すから──」
青葉はその言葉通り幸一のズレ気味のネクタイと襟をまっすぐにする。
「はい、これでいいわね、とても格好良くて素敵よ」
「青葉、ありがとう──」
彼女にほめられると思わず顔がほんのりと赤くなる。
青葉と二人で話しているとどうしても手玉に取られてしまう。
すると隣にいたイレーナが手をぎゅっと握って話しかける。その表情にはどこか嫉妬の表情が入っていた。
「パーティー始まるよ、行こう?」
「う、うんわかった……」
イレーナのやきもちの入った強めの物言いに少し圧倒されながら赤絨毯の廊下を進んでいく。
3分ほどでパーティー会場の入り口にたどり着く。警備の兵士にあいさつをして入口の重々しいドアを開ける。
「うん、なんだか楽しそう」
イレーナが思わず声を漏らす。会場内にはすでに人が入っていた。
机には食べ物がずらりと置いてあって、食べ物飲み物を口にしながらの歓談タイムとなっている。
「よろしかったら飲み物、どうでしょうか──」
「うん、サンキュー」
幸一も近くにいたウェイターから飲み物を受け取る。
イレーナ自身は他の貴族達からも有名なようで飲み物を二つ持った男性達がわらわらとやってくる。
「どうぞ、お飲物です。一緒に話ししましょう」
「イレーナお嬢様、ネウストリアでの生活はどうですか? 困ったことがあったら何なりと──」
と言った感じで色んな貴族の重鎮たちがイレーナの関心を引こうと必死なのが分かる。
イレーナもこの場で少しでもみんなと話そうとしているのが分かる。
幸一も勇者とだけあっていろいろな人から話しかけられた、魔王軍との戦いの事。勇者としての生活の事、中には──。
「うちの娘、嫁さんにどうかね尽くすタイプだし絶対いいと思うよ」
「あ……、その気持ちだけ受け取っておきます」
何とお見合いの話をする者もいた。当然丁重にお断りを入れたのだが──。
そしてイレーナのもとに一人の男性が現れる。彼を見るとイレーナは驚きの表情を見せ早足で彼のもとに駆け寄る。
「お父様、お久しぶりです」
「おお、イレーナ、久しぶりだな──」
年配で長身、整ったヒゲ。厳格なまなざし。イレーナの父親であるダウニング=ミッテランであった。
実に2年ぶりの再会。イレーナが本心からの喜びの表情を見せる。
父も何処か穏やかな顔つきになり二人は久々の会話を楽しむ。王国のこと、魔王軍の戦いのこと、この国の状況の事。
父の厳格だった顔つきに笑みがこぼれる。イレーナも久しぶりの再会に喜んでいるのがひしひしと伝わっている。
しかし二人の会話を聞いていると幸一の中にどこか違和感を感じた。
「おお、イレーナ。調子はどうだ?」
さらに隣にはタキシード姿をした養子のこの国の国王の後継者、ガルシア=ミッテラン、その二人の妹の姿もあった。彼が幸一に話しかける。
「ガルシア様、わたくし幸一と申しますよろしくお願いします」
形式的なあいさつを行う幸一とガルシア握手を行い会話が始まる。
「そうですか、それが理由でわざわざここまで。この街のこと、よろしくお願いいたします」
「お、お兄さん──」
「ああ、イレーナか」
今度はイレーナがこっちに来て兄に話しかける。
しかしイレーナが話しかけるとどこか不機嫌そうになり淡々とした口調になる。
青葉がイレーナの着替えを手伝い鏡の方を向かせる。彼女によって彩られた自分の姿、その美しさに顔を真っ赤にして驚く。
「ええっ? これが私──」
そこには上品でお淑やかさを持つドレス姿のイレーナの姿だった。上品さを感じさせるドレスの生地がイレーナの白い肌を強調させ装飾品が彼女に彩りを添えていた。
結び上がった髪も彼女の美しさを引き立て大人の美しさを醸し出している。
派手な服装ではなかったが彼女の持つ魅力は損なわれていない。
「じゃあ行きましょ、みんな待っているでしょうし──」
サラの言葉のもと控室を出る3人。
タキシード姿の幸一がすでに着替えを終えて会場の入り口に立っていた。
幸一が3人の声に反応して振り向く。
「幸君、その……、私──どうかな?」
おどおどしながら涼しげに髪をかき上げるイレーナ、それを見て幸一がその端麗さに思わずドキッとする。
感想を求めているのだと感じ言葉をかける、
「そ、その──とてもきれいだよ。すごく似合っていると思う」
3人とも派手さこそ無いパーティー用の装いではあった。しかし個々の魅力を最大限引き出していてとても素敵な姿であったと感じた。
「3人とも、素敵だよ。綺麗でとても似合ってるよ」
「その言葉、ありがとう。でも幸君はもうちょっとかな?」
青葉はほほ笑みながらスッと幸一に歩み寄る。青葉は彼にふっと顔を寄せる。
青葉特有のにっこりとした笑みがまじかに迫る。
驚く幸一。
「ちょ、青葉──、近いって!!」
もうひと押しで唇が触れてしまう、あるいはその控えめな胸が触れてしまいそうな距離。
彼女の髪や香水を意識した瞬間、青葉のなめらかで細い指が幸一の胸に触れた。
「ちょ、ちょっと──」
「ネクタイや襟が少しずれているわ、動かないで、直すから──」
青葉はその言葉通り幸一のズレ気味のネクタイと襟をまっすぐにする。
「はい、これでいいわね、とても格好良くて素敵よ」
「青葉、ありがとう──」
彼女にほめられると思わず顔がほんのりと赤くなる。
青葉と二人で話しているとどうしても手玉に取られてしまう。
すると隣にいたイレーナが手をぎゅっと握って話しかける。その表情にはどこか嫉妬の表情が入っていた。
「パーティー始まるよ、行こう?」
「う、うんわかった……」
イレーナのやきもちの入った強めの物言いに少し圧倒されながら赤絨毯の廊下を進んでいく。
3分ほどでパーティー会場の入り口にたどり着く。警備の兵士にあいさつをして入口の重々しいドアを開ける。
「うん、なんだか楽しそう」
イレーナが思わず声を漏らす。会場内にはすでに人が入っていた。
机には食べ物がずらりと置いてあって、食べ物飲み物を口にしながらの歓談タイムとなっている。
「よろしかったら飲み物、どうでしょうか──」
「うん、サンキュー」
幸一も近くにいたウェイターから飲み物を受け取る。
イレーナ自身は他の貴族達からも有名なようで飲み物を二つ持った男性達がわらわらとやってくる。
「どうぞ、お飲物です。一緒に話ししましょう」
「イレーナお嬢様、ネウストリアでの生活はどうですか? 困ったことがあったら何なりと──」
と言った感じで色んな貴族の重鎮たちがイレーナの関心を引こうと必死なのが分かる。
イレーナもこの場で少しでもみんなと話そうとしているのが分かる。
幸一も勇者とだけあっていろいろな人から話しかけられた、魔王軍との戦いの事。勇者としての生活の事、中には──。
「うちの娘、嫁さんにどうかね尽くすタイプだし絶対いいと思うよ」
「あ……、その気持ちだけ受け取っておきます」
何とお見合いの話をする者もいた。当然丁重にお断りを入れたのだが──。
そしてイレーナのもとに一人の男性が現れる。彼を見るとイレーナは驚きの表情を見せ早足で彼のもとに駆け寄る。
「お父様、お久しぶりです」
「おお、イレーナ、久しぶりだな──」
年配で長身、整ったヒゲ。厳格なまなざし。イレーナの父親であるダウニング=ミッテランであった。
実に2年ぶりの再会。イレーナが本心からの喜びの表情を見せる。
父も何処か穏やかな顔つきになり二人は久々の会話を楽しむ。王国のこと、魔王軍の戦いのこと、この国の状況の事。
父の厳格だった顔つきに笑みがこぼれる。イレーナも久しぶりの再会に喜んでいるのがひしひしと伝わっている。
しかし二人の会話を聞いていると幸一の中にどこか違和感を感じた。
「おお、イレーナ。調子はどうだ?」
さらに隣にはタキシード姿をした養子のこの国の国王の後継者、ガルシア=ミッテラン、その二人の妹の姿もあった。彼が幸一に話しかける。
「ガルシア様、わたくし幸一と申しますよろしくお願いします」
形式的なあいさつを行う幸一とガルシア握手を行い会話が始まる。
「そうですか、それが理由でわざわざここまで。この街のこと、よろしくお願いいたします」
「お、お兄さん──」
「ああ、イレーナか」
今度はイレーナがこっちに来て兄に話しかける。
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