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サヴィンビ編
絶対にこの街を守る
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彼はプライドや自尊心が高い。それにもかかわらず幸一は彼に尊厳を傷つけ挑発するような物言いでクラスノフに迫る。
眉間にしわを寄せてあからさまに機嫌が悪くなる。そして激高し叫ぶ。
「黙れ、それ以上話を続けるとその首をはねるぞ!!」
クラスノフは怒鳴りながらマスケット銃を幸一の首に突き付ける。しかしそれではすでに魔力をまとっている幸一に危害を与えることは出来ない。
幸一は銃を突きつけられながらも冷静な口調で言葉を返す。
「俺は魔力が使える、そんな虚仮脅し俺には通用しない」
「言葉では反論できないと悟るや否や今度は力で相手を抑えつけようとする。国民たちのために戦うレジスタンスだったころのあんたたちはどこに行ったのですか?」
クラスノフはかつて自分たちの部族のために戦うと決めた時の自分を思い出す。
その気持ちを振り切るように幸一に反論する。
「そんなことは理想論だ。体制の維持には力が必要だ」
「そうやって利益のために、気づけば彼らの権力を守るために何の罪もない国民を弾圧し圧政を敷く。異を唱える者は反逆罪として投獄し気づけばかつて自分たちが嫌悪していた恐怖政治の肩棒を担いでいるというわけか──」
幸一の正論に言葉を失うクラスノフ達──。
心の隅では理解していた、自分がかつて圧政を敷いていた貴族達と同じことを自分たちが行っていた事を。
「協力してくれ。この街を守らなければ、お前たちだって居場所がなくなる。これはお前達のためにもなる──」
沈黙する会議室。
「私も約束するわ、あなた達の居場所は絶対に作るって」
イレーナのその言葉に軍人のみんなが反応する。自分たちがかつて弾圧をしていた貴族達から権力を奪い取った時のように今度は自分たちも彼らによって権力を奪われる。それが一番怖かったのだろう。
彼の中で葛藤が続く。すると背後にいたルトが初めて言葉を発する。
「まだ僕たちがあなたたちを味方だと認識しているうちにクラスノフ様、ご決断ください。一緒に魔王軍と戦い平和な世界を築くか、世界から悪役として認識されるか」
ルト、相手を睨みつけながらもどこか怒りを込めた物言いだった。つまり遠まわしにこういったのである。これ以上横暴を続けるなら、貴様たちを政治から追放する。と──。
クラスノフ、普段はおとなしいルトの強気な言葉に圧倒され息をのむ。
そして腕を組んで考え始める。しばしの時間が流れた後ゆっくりと口を開き始める。
流石に魔法使い達を一斉に敵に回されるとどうにもならなくなってしまう。ましてや悪役と認識されば居場所がなくなってしまう。がっくりとうなだれながらもクラスノフは首を縦に振るしかなかった。
「わかった。こちらも貴様たちに味方しよう。仲間達の受け入れ、許可する。だが約束してくれ。もう二度と俺達を不当な扱いすることはやめてほしい」
「もちろんです。あなた達を傷ついたりするような事だけはさせません」
ルトのきっぱりとした物言い。
思えば彼らが今政権を握った理由も支配していた貴族達から不当な扱いを受けていたことが理由でもあった。
ルトの想いでもあった。彼らは敵ではない。もし彼らを敵と認定すればゴブリン達は武器を手に取り戦いになる可能性だってある。戦いだけは避けたい、最悪の事態だけは回避できそうだとホッと胸をなでおろす。
「ありがとうございます。あなた達の決断、決して無駄にはさせません」
「こっちこそな、約束守れよ。もしまた弾圧なんかしたら俺たちだって武器を手に取ることになっちまうんだからな」
ルトと幸一、クラスノフ。3人が強いまなざしで視線を集め同意する。そしてその同意書に3人がサインしていく。
(よかった──)
安堵するイレーナ。そして3人がそれぞれ握手をしたのを最後に会議が終わる。
会議室のドアを開けて礼をした後ドアを閉める。
「良かった、何とか成功したよ」
何処か疲れた表情をする幸一とルト。
「相手が強情で何としても譲らなかったらどうしようかって僕、ひやひやしたよ」
それは幸一も同じだった
「やっぱりね」
青葉達もその気持ちは察していた。さっきの会議、二人にはどこか余裕がないように感じられた。相手が利益を無視して強行に人間と対立する様なゴブリンじゃなかった。それが二人にとってとても幸いであった。
そして二人は確かめ合う、絶対にこの街を守ると──。
彼らの想い。絶対無駄にはしない。そんな決意を確認しながらこの場を後にしていった。
次の仕事も説得であった。今度はゴブリンの説得より難しいかもしれない。なにせその人物はさっきのゴブリン達より説得が難しいであろう人物だからだ。
その人物とはサラを通してすでに相対する約束をしていた。そしてその場所であるギルドに幸一は向かった。イレーナ達はすでに誰と会うか理解しているので真剣な顔つきをしている。
ギルドにたどり着いた幸一達、すぐに中に入る。中に入った瞬間彼がいることがすぐに分かった。独特のオーラがギルドの中に渦巻いていたからであった。 額に汗を浮かべ始める。
「俺様を待たせるとはいい度胸だな。俺様は寛大だ、話だけは聞いてやろうぞ。」
眉間にしわを寄せてあからさまに機嫌が悪くなる。そして激高し叫ぶ。
「黙れ、それ以上話を続けるとその首をはねるぞ!!」
クラスノフは怒鳴りながらマスケット銃を幸一の首に突き付ける。しかしそれではすでに魔力をまとっている幸一に危害を与えることは出来ない。
幸一は銃を突きつけられながらも冷静な口調で言葉を返す。
「俺は魔力が使える、そんな虚仮脅し俺には通用しない」
「言葉では反論できないと悟るや否や今度は力で相手を抑えつけようとする。国民たちのために戦うレジスタンスだったころのあんたたちはどこに行ったのですか?」
クラスノフはかつて自分たちの部族のために戦うと決めた時の自分を思い出す。
その気持ちを振り切るように幸一に反論する。
「そんなことは理想論だ。体制の維持には力が必要だ」
「そうやって利益のために、気づけば彼らの権力を守るために何の罪もない国民を弾圧し圧政を敷く。異を唱える者は反逆罪として投獄し気づけばかつて自分たちが嫌悪していた恐怖政治の肩棒を担いでいるというわけか──」
幸一の正論に言葉を失うクラスノフ達──。
心の隅では理解していた、自分がかつて圧政を敷いていた貴族達と同じことを自分たちが行っていた事を。
「協力してくれ。この街を守らなければ、お前たちだって居場所がなくなる。これはお前達のためにもなる──」
沈黙する会議室。
「私も約束するわ、あなた達の居場所は絶対に作るって」
イレーナのその言葉に軍人のみんなが反応する。自分たちがかつて弾圧をしていた貴族達から権力を奪い取った時のように今度は自分たちも彼らによって権力を奪われる。それが一番怖かったのだろう。
彼の中で葛藤が続く。すると背後にいたルトが初めて言葉を発する。
「まだ僕たちがあなたたちを味方だと認識しているうちにクラスノフ様、ご決断ください。一緒に魔王軍と戦い平和な世界を築くか、世界から悪役として認識されるか」
ルト、相手を睨みつけながらもどこか怒りを込めた物言いだった。つまり遠まわしにこういったのである。これ以上横暴を続けるなら、貴様たちを政治から追放する。と──。
クラスノフ、普段はおとなしいルトの強気な言葉に圧倒され息をのむ。
そして腕を組んで考え始める。しばしの時間が流れた後ゆっくりと口を開き始める。
流石に魔法使い達を一斉に敵に回されるとどうにもならなくなってしまう。ましてや悪役と認識されば居場所がなくなってしまう。がっくりとうなだれながらもクラスノフは首を縦に振るしかなかった。
「わかった。こちらも貴様たちに味方しよう。仲間達の受け入れ、許可する。だが約束してくれ。もう二度と俺達を不当な扱いすることはやめてほしい」
「もちろんです。あなた達を傷ついたりするような事だけはさせません」
ルトのきっぱりとした物言い。
思えば彼らが今政権を握った理由も支配していた貴族達から不当な扱いを受けていたことが理由でもあった。
ルトの想いでもあった。彼らは敵ではない。もし彼らを敵と認定すればゴブリン達は武器を手に取り戦いになる可能性だってある。戦いだけは避けたい、最悪の事態だけは回避できそうだとホッと胸をなでおろす。
「ありがとうございます。あなた達の決断、決して無駄にはさせません」
「こっちこそな、約束守れよ。もしまた弾圧なんかしたら俺たちだって武器を手に取ることになっちまうんだからな」
ルトと幸一、クラスノフ。3人が強いまなざしで視線を集め同意する。そしてその同意書に3人がサインしていく。
(よかった──)
安堵するイレーナ。そして3人がそれぞれ握手をしたのを最後に会議が終わる。
会議室のドアを開けて礼をした後ドアを閉める。
「良かった、何とか成功したよ」
何処か疲れた表情をする幸一とルト。
「相手が強情で何としても譲らなかったらどうしようかって僕、ひやひやしたよ」
それは幸一も同じだった
「やっぱりね」
青葉達もその気持ちは察していた。さっきの会議、二人にはどこか余裕がないように感じられた。相手が利益を無視して強行に人間と対立する様なゴブリンじゃなかった。それが二人にとってとても幸いであった。
そして二人は確かめ合う、絶対にこの街を守ると──。
彼らの想い。絶対無駄にはしない。そんな決意を確認しながらこの場を後にしていった。
次の仕事も説得であった。今度はゴブリンの説得より難しいかもしれない。なにせその人物はさっきのゴブリン達より説得が難しいであろう人物だからだ。
その人物とはサラを通してすでに相対する約束をしていた。そしてその場所であるギルドに幸一は向かった。イレーナ達はすでに誰と会うか理解しているので真剣な顔つきをしている。
ギルドにたどり着いた幸一達、すぐに中に入る。中に入った瞬間彼がいることがすぐに分かった。独特のオーラがギルドの中に渦巻いていたからであった。 額に汗を浮かべ始める。
「俺様を待たせるとはいい度胸だな。俺様は寛大だ、話だけは聞いてやろうぞ。」
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