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サヴィンビ編
イレーナの再挑戦
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青葉の囁き通りみんながイレーナの言葉を信じ食事に入る。
焼き魚とパン、サラダにミルクティーといったシンプルな内容だった。
そこに調べ物をしていたサラも入ってきて食事に入る。
「いただきまーす」
そしてイレーナが作った料理を幸一達が召し上がることになった。幸一がその料理を口に入れる、その味は……。
「うっ……、何これ──」
その料理の衝撃に幸一は思わず絶句する。
味自体は問題ない。しかしとにかく生臭い、魚の嫌なにおいが消されていなくてそのまま残っている。試しに周りの反応も見てみたのだが──。
「変なにおい──」
「これ、どっかおかしいでしょ」
青葉とイレーナもけげんな表情をする。イレーナも困った表情をする。
「あれ? 何でこんな味なの? ちゃんと味付けとかも間違えなかったはずなのに……」
困惑し戸惑うイレーナ。幸一も口にはしないまでも口が進まない。
(初めてだ、一口食べただけで吐き気を催したのは……)
「これ何の魚?」
「ええっと──、確かヒメマスの一種だった気がする」
サラの質問、その種類を聞いて青葉は愕然としうなだれながら一つ問いただす。
「イレーナちゃん、一応聞いてみるけど血抜きってしたの?」
「血抜き?」
イレーナはその青葉の言葉に首をかしげて頭に?マークを浮かべる。
その表情から血抜きを知らないと悟ったサラが血抜きについてイレーナに教える。血抜きとは調理の際に釣った魚の身体から血を抜くことである。それをしないと魚のにおいが身に移ってしまい、生臭くなってしまったり味が落ちてしまう。なのでヒメマスのようににおいの強い魚は血抜きをしなければならなかったのだが──。
「えぇぇぇぇっ? そんなの知らなかった~~」
涙目になりながら叫ぶイレーナ。周りはあきれ果て始める。
青葉は苦笑いをしながら呆れた表情をする。
「もういいわ、イレーナちゃんの料理に対するセンスに期待した私がバカだったわ。
私の人生の中で一番まずい飯だわこれ──」
「そ、そ、そんな~~」
「まあいいわ、だって豚が空を飛べなくて豚を責める人なんていないじゃない? そういうこと」
(ううぅぅ──)
青葉の言葉がイレーナの心にナイフのようにぎすぎすと突き刺さる。
しかし実際にまずい料理を作ってしまったイレーナは何も言い返せずただ黙っているしかなかった。
サラもあまりのまずさに二口目が入らない。言葉こそ発していないがサラもまずいと感じていたのは明らかだった。
すると一人の人物が立ち上がる。そしてあまった材料や調理器具を見ながら思考し始める。
ニウレレだった。そして彼は包丁を手に取り調理を始め出す。
「まあ、何とか出来そうだな」
そこにあるのはイレーナが使った後のあまりモノでありお世辞にもまともな料理が作れるような状態ではなかった。
「これ、料理できるの? 私買って来ましょうか? 今なら何とか空いている店もありそうだし」
「いいよ、みんな食料に困っているんだ。俺達だけそんな贅沢はしたくない、そうだろ」
幸一は街の人達が物資が不足して困っている様子を思い出し納得する。
「まあそうだな、俺達だけ贅沢するってのは気が引けるな」
「確かに、そうです」
発言権のないイレーナ、ただうなずく。少しでも力になればとニウレレの調理の手伝いもする。
余りモノや安いありきたりな食材ばかりであったが、ニウレレは経験から食材達の風味や味を思い出し調理していく。
30分もすると料理は完成する。
完成した料理をみんなで食べ始める。
「あんたいいとこあるじゃない。見なおしたわ」
料理を食べ始めた青葉が驚いた表情をしながら開口一番に囁く。
「当り前だよ。具材を見ていた瞬間からどうすればいいかイメージはわいていたからね」
専属の料理人であった。確かに彼は接客向きな性格ではなくいい加減で適当な性格だった。 だが彼は彼にしかない物を持っていた。
「あ、ありがとうございます──」
イレーナが頭を下げる。
「いいんだ、イレーナだっけ。この街の事よろしく頼むよ」
それでも生まれ育ったこの街を何とかしてほしい。そんな想いでニウレレはイレーナに頼みこむ。
イレーナは彼の想いを感じ首を縦に振る。
「わかりました。わたし、絶対にこの街を守り抜きます」
例え気が合わない部分があっても同じ思いを共有している。気が合わない部分があっても、争うことがあっても育っていったこの街を守り抜きたいと言う強い願い。
イレーナはニウレレの言葉からそんなことを感じ取る。
そして決意を堅くする。この街を絶対に守り抜くと──。
食事が終わり、別れの時間になる。イレーナが再び頭を下げ礼を言う。
「あの、ありがとうございます。料理、とってもおいしかったです」
「こちらこそよろしくな、街、守ってくれよな」
「わかりました、その想い。私たちが守ってみせます」
彼らしいぶっきらぼうな物言いではあったが気持ちは伝わっていた。幸一はそう感じ彼に手を差し出す。二人は強く握手をする。そしてこの場を去っていく。
性格、やり方、方法、生まれた場所が違ってもこの街のために尽くすという心は一緒だと感じながら──。
食事を終えて部屋に戻った幸一やルトたち5人。すると侍女が現れて青葉宛に手紙が渡される。
「手紙? 誰から?」
焼き魚とパン、サラダにミルクティーといったシンプルな内容だった。
そこに調べ物をしていたサラも入ってきて食事に入る。
「いただきまーす」
そしてイレーナが作った料理を幸一達が召し上がることになった。幸一がその料理を口に入れる、その味は……。
「うっ……、何これ──」
その料理の衝撃に幸一は思わず絶句する。
味自体は問題ない。しかしとにかく生臭い、魚の嫌なにおいが消されていなくてそのまま残っている。試しに周りの反応も見てみたのだが──。
「変なにおい──」
「これ、どっかおかしいでしょ」
青葉とイレーナもけげんな表情をする。イレーナも困った表情をする。
「あれ? 何でこんな味なの? ちゃんと味付けとかも間違えなかったはずなのに……」
困惑し戸惑うイレーナ。幸一も口にはしないまでも口が進まない。
(初めてだ、一口食べただけで吐き気を催したのは……)
「これ何の魚?」
「ええっと──、確かヒメマスの一種だった気がする」
サラの質問、その種類を聞いて青葉は愕然としうなだれながら一つ問いただす。
「イレーナちゃん、一応聞いてみるけど血抜きってしたの?」
「血抜き?」
イレーナはその青葉の言葉に首をかしげて頭に?マークを浮かべる。
その表情から血抜きを知らないと悟ったサラが血抜きについてイレーナに教える。血抜きとは調理の際に釣った魚の身体から血を抜くことである。それをしないと魚のにおいが身に移ってしまい、生臭くなってしまったり味が落ちてしまう。なのでヒメマスのようににおいの強い魚は血抜きをしなければならなかったのだが──。
「えぇぇぇぇっ? そんなの知らなかった~~」
涙目になりながら叫ぶイレーナ。周りはあきれ果て始める。
青葉は苦笑いをしながら呆れた表情をする。
「もういいわ、イレーナちゃんの料理に対するセンスに期待した私がバカだったわ。
私の人生の中で一番まずい飯だわこれ──」
「そ、そ、そんな~~」
「まあいいわ、だって豚が空を飛べなくて豚を責める人なんていないじゃない? そういうこと」
(ううぅぅ──)
青葉の言葉がイレーナの心にナイフのようにぎすぎすと突き刺さる。
しかし実際にまずい料理を作ってしまったイレーナは何も言い返せずただ黙っているしかなかった。
サラもあまりのまずさに二口目が入らない。言葉こそ発していないがサラもまずいと感じていたのは明らかだった。
すると一人の人物が立ち上がる。そしてあまった材料や調理器具を見ながら思考し始める。
ニウレレだった。そして彼は包丁を手に取り調理を始め出す。
「まあ、何とか出来そうだな」
そこにあるのはイレーナが使った後のあまりモノでありお世辞にもまともな料理が作れるような状態ではなかった。
「これ、料理できるの? 私買って来ましょうか? 今なら何とか空いている店もありそうだし」
「いいよ、みんな食料に困っているんだ。俺達だけそんな贅沢はしたくない、そうだろ」
幸一は街の人達が物資が不足して困っている様子を思い出し納得する。
「まあそうだな、俺達だけ贅沢するってのは気が引けるな」
「確かに、そうです」
発言権のないイレーナ、ただうなずく。少しでも力になればとニウレレの調理の手伝いもする。
余りモノや安いありきたりな食材ばかりであったが、ニウレレは経験から食材達の風味や味を思い出し調理していく。
30分もすると料理は完成する。
完成した料理をみんなで食べ始める。
「あんたいいとこあるじゃない。見なおしたわ」
料理を食べ始めた青葉が驚いた表情をしながら開口一番に囁く。
「当り前だよ。具材を見ていた瞬間からどうすればいいかイメージはわいていたからね」
専属の料理人であった。確かに彼は接客向きな性格ではなくいい加減で適当な性格だった。 だが彼は彼にしかない物を持っていた。
「あ、ありがとうございます──」
イレーナが頭を下げる。
「いいんだ、イレーナだっけ。この街の事よろしく頼むよ」
それでも生まれ育ったこの街を何とかしてほしい。そんな想いでニウレレはイレーナに頼みこむ。
イレーナは彼の想いを感じ首を縦に振る。
「わかりました。わたし、絶対にこの街を守り抜きます」
例え気が合わない部分があっても同じ思いを共有している。気が合わない部分があっても、争うことがあっても育っていったこの街を守り抜きたいと言う強い願い。
イレーナはニウレレの言葉からそんなことを感じ取る。
そして決意を堅くする。この街を絶対に守り抜くと──。
食事が終わり、別れの時間になる。イレーナが再び頭を下げ礼を言う。
「あの、ありがとうございます。料理、とってもおいしかったです」
「こちらこそよろしくな、街、守ってくれよな」
「わかりました、その想い。私たちが守ってみせます」
彼らしいぶっきらぼうな物言いではあったが気持ちは伝わっていた。幸一はそう感じ彼に手を差し出す。二人は強く握手をする。そしてこの場を去っていく。
性格、やり方、方法、生まれた場所が違ってもこの街のために尽くすという心は一緒だと感じながら──。
食事を終えて部屋に戻った幸一やルトたち5人。すると侍女が現れて青葉宛に手紙が渡される。
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