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サヴィンビ編
理想の世界
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「貴様は俺と相対しても全く動じないな──。大した奴だ、ますます気に入ったぞ。俺が貴様たちを呼んだのは他でもない。この俺様が作り出す理想の世界の力になってほしい」
「理想の、世界──?」
イレーナは頭に?マークを浮かべながら質問する。
彼特有の無駄に尊大な態度で話しを進める。
「おかしいと思わないか、この国のように無実の国民から富をむさぼり贅沢の限りを尽くす奴がいる一方、いつまでたっても紛争は終わらず苦しんでいる人がいる事を。確かにルトのようにこの現実を少しでも変えようとしている人物は多数いる」
「だがそんな小手先のごまかしでは世界は変わらない。もっと世界を根本から変えるような改革でなければならない。単発ではなく何万人もの大所帯、そしてそれを実行できる力、さらに烏合の衆ではなく確固たる信念と志を持った集団で世界を変えなければならない」
青葉が腕を組みながら口をはさむ。
「なるほどね、読めたわあんたの野望。ずいぶん大きい夢物語ね……」
「どういうこと? 青葉ちゃん」
「今の国王や軍隊を中心とした体制に変わって冒険者たちでこの世界を支配するという意味ね」
青葉が軽蔑の表情で答えるとへイムはぱちぱちと拍手をし始める。そしてニヤリと笑みを浮かべながら言葉を返す。
「御名答、流石だ青葉。貴様はただの脳筋女ではない。頭脳もそれなりの物を持っているということな」
イレーナがほほを膨らませ不満げになる。へイムはそれを無視して演説を続ける、ルトと幸一は表情を険しくしたまま表情を変えない。
「考えても見ろ、従来の貴族や軍人を中心とした政治体系はすでにひずみが生じている。とまらない格差、貧困……。内戦はいつまでたってもなくならず、そして彼らの権力だけが無意味に肥大化していく──。この不幸の連鎖、誰かが止めなければいけない。
彼らの牙城を突き壊す強さを持った者、彼らに負けない権威と威光を持ち世界を束ねる実績がある者──」
へイムは右手を上げ天の方向に視線を向ける。そして不敵な笑みを浮かべながらさらに話を続ける。
「一つだけ存在する。その条件を満たす者が貴様ら冒険者だ。
戦闘能力では従来の兵よりはるかに強い。さらに魔獣を倒しこの世界の平和を守っているという実績もある。俺達魔力を使える人間がこの世界を支配すればいい、奴らの権力体制のひずみに強力な打撃を与え破壊してしまえばいい。
それが世界を救うためにこの俺様が導き出した答えだ」
「だが俺だけでは世界を変えることは出来ない。同士が必要なのだ。それも俺以外に民を救った実績があり、カリスマ性強い正義感、悪に屈しない心と強さを兼ね備えた人物が──」
想像もしなかったへイムの言葉に幸一達は言葉を失う、噂にたがわぬ横暴かつ傲慢な口調、しかし話しに全くスキがない。
恐らく幸一が何を言っても譲ろうとしないだろう強弁ともいえる言動。
確実に今王国の権力に居座っているどの貴族よりも会話しづらいだろう。
下手に言い返せばさらに面倒なことになると考え幸一は沈黙する。
やがてルトが冷ややかな視線を送りながら言葉を返し始める。
「魔法を使えない人達はどうすればいいんですか?
結局魔法使い達の奴隷になるしかないんですか? それでは何も変わらないですよね。彼らにとっては支配する人が変わるだけで──」
「そうだな、想定内の質問だ。凡人がこんなことをすればそうなってしまうだろう。自らの欲に飲み込まれ腐敗した今の貴族達のようになるだけだろう。だが俺のような偉人で慈悲深い人物が行えばいい。その手段はすでに考えている」
不敵な笑みを浮かべたまま隣にいるティミセラにアイコンタクトを送る。
彼女が代わりに答える。
「流石ですルト、あなたはどんな時でもそういった弱者の事を考えている」
笑みを浮かべているがルトにはどこか作り笑いのように見えていた。
「しかしその心配はありません。持たざる者にもそれ相応の権利は与えます。今のように一方的に不当な扱いを受け貧困にあえぐようなことは決してありません」
「簡単に言えば俺達が査定して彼らの役職や能力、世界への貢献度に応じて権限を与えればいい」
「個人の実力や能力に応じて権利を与えます。そして権利を多く受け取った者にはそれ相応の義務を貸せばいいのです。戦闘能力が強い人材には邪なものから人々を守護する義務。政治に詳しいものには政治を通して国民たちを豊かにする義務と言った要領で与えればよいのです。そして力のあるものたちがこの世界に争いが起きないように治安を守り各国の利害を調整します」
傲慢な物言いのへイムに対し全く口調を変えず冷静な口調で説明するティミセラ。
「まあそんなことだ。俺達には大義がある、その与えられた力を使って魔王軍という世界を滅ぼさんとする敵を打ち倒し平和を守るという大義が!!」
「腐敗しきった政治を打破し世界を正しき方向へ導く天命が!!」
「妄想もいかげんにしたらどうなの?」
彼の言葉に反論したのは青葉だった。へイムをじっとにらみながら反論を始める。
「理想の、世界──?」
イレーナは頭に?マークを浮かべながら質問する。
彼特有の無駄に尊大な態度で話しを進める。
「おかしいと思わないか、この国のように無実の国民から富をむさぼり贅沢の限りを尽くす奴がいる一方、いつまでたっても紛争は終わらず苦しんでいる人がいる事を。確かにルトのようにこの現実を少しでも変えようとしている人物は多数いる」
「だがそんな小手先のごまかしでは世界は変わらない。もっと世界を根本から変えるような改革でなければならない。単発ではなく何万人もの大所帯、そしてそれを実行できる力、さらに烏合の衆ではなく確固たる信念と志を持った集団で世界を変えなければならない」
青葉が腕を組みながら口をはさむ。
「なるほどね、読めたわあんたの野望。ずいぶん大きい夢物語ね……」
「どういうこと? 青葉ちゃん」
「今の国王や軍隊を中心とした体制に変わって冒険者たちでこの世界を支配するという意味ね」
青葉が軽蔑の表情で答えるとへイムはぱちぱちと拍手をし始める。そしてニヤリと笑みを浮かべながら言葉を返す。
「御名答、流石だ青葉。貴様はただの脳筋女ではない。頭脳もそれなりの物を持っているということな」
イレーナがほほを膨らませ不満げになる。へイムはそれを無視して演説を続ける、ルトと幸一は表情を険しくしたまま表情を変えない。
「考えても見ろ、従来の貴族や軍人を中心とした政治体系はすでにひずみが生じている。とまらない格差、貧困……。内戦はいつまでたってもなくならず、そして彼らの権力だけが無意味に肥大化していく──。この不幸の連鎖、誰かが止めなければいけない。
彼らの牙城を突き壊す強さを持った者、彼らに負けない権威と威光を持ち世界を束ねる実績がある者──」
へイムは右手を上げ天の方向に視線を向ける。そして不敵な笑みを浮かべながらさらに話を続ける。
「一つだけ存在する。その条件を満たす者が貴様ら冒険者だ。
戦闘能力では従来の兵よりはるかに強い。さらに魔獣を倒しこの世界の平和を守っているという実績もある。俺達魔力を使える人間がこの世界を支配すればいい、奴らの権力体制のひずみに強力な打撃を与え破壊してしまえばいい。
それが世界を救うためにこの俺様が導き出した答えだ」
「だが俺だけでは世界を変えることは出来ない。同士が必要なのだ。それも俺以外に民を救った実績があり、カリスマ性強い正義感、悪に屈しない心と強さを兼ね備えた人物が──」
想像もしなかったへイムの言葉に幸一達は言葉を失う、噂にたがわぬ横暴かつ傲慢な口調、しかし話しに全くスキがない。
恐らく幸一が何を言っても譲ろうとしないだろう強弁ともいえる言動。
確実に今王国の権力に居座っているどの貴族よりも会話しづらいだろう。
下手に言い返せばさらに面倒なことになると考え幸一は沈黙する。
やがてルトが冷ややかな視線を送りながら言葉を返し始める。
「魔法を使えない人達はどうすればいいんですか?
結局魔法使い達の奴隷になるしかないんですか? それでは何も変わらないですよね。彼らにとっては支配する人が変わるだけで──」
「そうだな、想定内の質問だ。凡人がこんなことをすればそうなってしまうだろう。自らの欲に飲み込まれ腐敗した今の貴族達のようになるだけだろう。だが俺のような偉人で慈悲深い人物が行えばいい。その手段はすでに考えている」
不敵な笑みを浮かべたまま隣にいるティミセラにアイコンタクトを送る。
彼女が代わりに答える。
「流石ですルト、あなたはどんな時でもそういった弱者の事を考えている」
笑みを浮かべているがルトにはどこか作り笑いのように見えていた。
「しかしその心配はありません。持たざる者にもそれ相応の権利は与えます。今のように一方的に不当な扱いを受け貧困にあえぐようなことは決してありません」
「簡単に言えば俺達が査定して彼らの役職や能力、世界への貢献度に応じて権限を与えればいい」
「個人の実力や能力に応じて権利を与えます。そして権利を多く受け取った者にはそれ相応の義務を貸せばいいのです。戦闘能力が強い人材には邪なものから人々を守護する義務。政治に詳しいものには政治を通して国民たちを豊かにする義務と言った要領で与えればよいのです。そして力のあるものたちがこの世界に争いが起きないように治安を守り各国の利害を調整します」
傲慢な物言いのへイムに対し全く口調を変えず冷静な口調で説明するティミセラ。
「まあそんなことだ。俺達には大義がある、その与えられた力を使って魔王軍という世界を滅ぼさんとする敵を打ち倒し平和を守るという大義が!!」
「腐敗しきった政治を打破し世界を正しき方向へ導く天命が!!」
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