【完結】突然異世界に召喚された俺、とりあえず勇者になってみますね

静内燕

文字の大きさ
上 下
72 / 221

激戦の末、二人が見た物

しおりを挟む
口に中に赤い光が集約し、膨張。
 次の瞬間甲高い発射音と共に口から、巨大な光弾が全てを引き裂くかのような速度で発射される。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!

 イレーナと幸一はとっさに横に身体を投げ飛ばし直撃を免れる。

 攻撃が地面に直撃し大爆発を起こす、再びすさまじい大爆発が起こる。
 建物は倒壊、地面はえぐれ爆発の中心地は更地のようになる。

 しかし二人は全くひるまずに再びシーホースに急接近。
 一気にスピードを上げて向っていく。

 グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 シーホースはその左腕を振り上げ、その拳を向かってくるイレーナ相手に振り下ろす。
 イレーナは何とかかわしたものの、たったそれだけの攻撃で地面が抉れ始め、陥没する。

 しかしイレーナはひるむことなく一回地面に着地すると再び飛び上がりシーホースに向かって突っ込んでいく。

(このくらいでひるむ私じゃない!! 私は負けない!!)


「──えっ?」

 イレーナがそう考えた瞬間、目の前に突然シーホースの拳が現れた。



「イレーナ!!」

 空中にいるイレーナにとってその振り下ろした攻撃はかわせるものではなかった、しかし飛び込んできた幸一がイレーナをお姫様だっこをするようにして助ける。

 二人はいったん距離をとって体勢を立て直すと、そろって大きく息を吐く。

「ごめん、幸君」

「大丈夫? 心配はいらないよ」

 二人はほんのりと顔を赤くして言葉を交わしイレーナが再び槍を構える。
 しかしシーホースはその瞬間を見のがさず反撃を再開。

 グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 今度はシーホースが二人の間合いへ飛び込んでいく。

 シーホースが間合いに踏み込んだ瞬間、イレーナも負けずに飛び込んでいく。
 イレーナの振り下ろした一撃をシーホースは腕で受け止めるがイレーナはそれをものともせず

 怒涛の連続攻撃、しかし──。


 グワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

 シーホースの叫び声と同時に身体が紫色に光り始める。
 イレーナは無視して攻撃を続ける、シーホースは再びこぶしを振り上げる。イレーナはそれを防ぐが、その拳がそのままイレーナの体を弾き飛ばす。


 シーホースはイレーナの攻撃を何とパワーでイレーナをはねのけたのだった。
 さらにシーホースはイレーナに追撃を始める。すると今度は幸一の反撃が始まる。


 タッ──。

 両足に思いっきり魔力を込めて加速をつけて一気に踏み込む。そして鋭い速さで右からシーホースに切り込んでいく。

 カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


 シーホースの意識は幸一に移り左手で対応、防がれてしまう。
 すると幸一は一気に距離を取る。そして兵器の魔力を込める。


 願いをとどかせし光、逆縁を乗り越え、踏み越える力現出せよ
 バーニング・ブレイブ・ネレイデス

 再び青い炎が幸一のエクスカリバーから出現しこの場を包み込むような大爆発が起こる

 三度目、幸一は力を振り絞って術式を繰り出していく。

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン


 グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 断末魔の様な悲鳴を上げるシーホース、傷だらけの体になり誰から見てもかなりダメージを受けているのが理解できた。

 そして──。

「次で決める!!」

 イレーナが決意を胸にそう叫ぶと一気に間合いを詰めていく。そして槍を振り上げて自分のすべての力を込めて術式を発動させる。


 時空をつかさどる力、闇に立ち向かう勇気となりて、希望となる力を!!
 ユリシーズ・リミテット・スラッシャー




 ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!












 イレーナの渾身の一撃、シーホースは防ぎきれずに身体が損傷する。
 まるで断末魔の様な叫びを上げるシーホース。
 シーホースの敵意はイレーナに移りイレーナを執拗に追い始める。

(かかったな! まあそれが狙いだったんだが──)

 必然的にノーマークになる幸一、これが作戦だった。互いに攻撃を仕掛けシーホースの意識が外れた方がスキはあるが威力の大きい術式を出す。

 イレーナがシーホースに傷を負わせたら、最後は威力の強い遠距離術式を打てる幸一が決める。

「作戦通りだ、イレーナ」

 そして幸一は手に持っている兵器を振り上げ魔力を思いっきり込める。

「さあ、チェックメイトだ!!」

 涅槃なる力、今世界を轟かせる光となり降臨せよ!!スピリッド・シェイブ・ハルバード




 解き放ったのは幸一最大の威力を誇る術式。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン





 天地がひっくり返るくらいの強い轟音。
 術式はシーホースに直撃し大爆発をする。

「シーホースはどうなった?」







 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 幸一がシーホースへ視線を移す。
 すると身体がまるで蒸発していくかのようにゆっくりと消滅していった。

「シーホースを倒した?」

「やっぱ勇者さんってすごいね?」

 それを遠くから見ていた冒険者達が反応する。
 周りは歓喜の声に包まれる。


 フラッ──。

 魔力のほとんどを使い切ってしまった幸一、膝に力が入らなくなり思わずその場にへたり込む。

(やばい、もう力が入らん──)

 フラッ──。

 そう考えながらその場で横になり空を見る。すると誰かがやってきて幸一に手を差し伸べる。


 幸一はイレーナの手をぎゅっと握り、何とか立ち上がる。

「幸君、すごい……」

 イレーナが照れながら幸一に向かって囁く。

「褒めてくれて、ありがとう。でも勝ったのは俺一人のおかげじゃないよ。こちらこそありがとうね……」


 そう言いながら見つめ合う二人、幸一もドキッとしたため顔を赤くする。すると力が入らない幸一にイレーナが肩を貸そうとして幸一の左肩を持ち上げる。

「あ、ありがとう──、結構力」


「幸君、イレーナ、大丈夫?」

 青葉とルトもやってくる。すでに救助と避難を完了していてあとはイレーナと幸一だけであった。

「やっぱり勇者だね、強いや。でも手当した方がいいよね、医者の所へ行こう?」

 ルトが話しかけると次は青葉が茶化したような態度で話す。

「や~~ん、邪魔しちゃった? 二人っきりの方が良かった?」

「それとも二人でベットでも行くつもり?」

 青葉のからかうような質問に二人はあわあわと手を振り反論する。

「そ、そ、そ、そんななわけないでしょしょ!! 変なこと言わないでよ!!」

「そ、そうだよ」

「それとも私とベット?」

「とりあえずベットから離れて! それと他の人たちは大丈夫なの?」

 幸一は冷静に突っ込み他の冒険者の事を聞きだす。これだけ派手に街を壊しながら戦ったのだから建物だけでなく人への被害も相当なものだと予想していたからである。

「そうね、他の人たちは避難が終わったわ。何とか無事よ。残りはあんた達の手当だけよ」

 強がって一人で幸一を持ち上げようとしたものの

 腕を組み冷静になって青葉は右肩を持ち上げる。


 幸一が二人の肩を借りながらさっきまで戦場になっていた住宅街を見る。

 あたりは日が暮れ始め夕日が見え始めている。

 今回は今までの戦いとは違うところがあった。
 国全体で戦わなければいけないはずが政争の道具にされ、その中での戦いになってしまった。しかし冒険者たちはそれにもめげず魔王軍と勇敢に戦っていた。

 それを見た幸一は理解した。彼らなら魔王軍になんて負けたりはしない。たとえ足を引っ張られても守りたい物のため最後まで戦い抜き今回も勝利した。


 自分も彼らと一緒にもっと戦っていたい。それだけじゃない、今回は自分たちが冒険者達の足を引っ張るような事態になってしまった。
 もうこんなことは起こされない、そして冒険者達が報われるような仕組みを作る。
 そんな決心を胸に秘めながらこの場を去っていった──。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...