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青葉の交渉術

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「自分が思っている事──、分かりました。私もうこんなことしたくありません罪悪感に囲まれながら生きていくなんて嫌です!!」

 心の底から本音を出したレンヌに幸一は応援の言葉を投げかける。絶対力になる、と──。

「ありがとうございます、えーと。名前を聞いていませんでした。伺ってもよろしかったですか?」

 そして彼女に質問に答え自己紹介をする。するとレンヌは驚いて言葉を返す。

「え? 幸一さんってあの炎の唯一王ですよね、勇者さんだったんですか?」

「まあ、世間ではそうい言われてるみたいだね」

 照れ隠しをする幸一。

 そしてレンヌは心を開き始め、自分がかかわっている情報を話し始める。

 元締めのマフィア、誰がかかわっているかを──。
 そして。

「政府の関係者もここに時折来ています。私たちの中でもうわさになっています」

 有力そうな証言に幸一は紙を取り出し記録を取り始める。

「名乗ったのは三人くらいです。それと──、一ついいですか?」

「いいよ、何?」

「ありがとうございます、あなたのおかげで私、立ち直れそうです」

 そう言って彼女が頭を下げる。

「こちらこそ役に立ててうれしいよ。何かあったら連絡してくれ、ぜひ力になるから」

 そう言って幸一は席を後にする。そして新たな聞き込みをしようと再びエントランスへ向かっていった。










 一方ルトと青葉の女子二人組も重要な局面を迎えていた。

 坊主頭で長身、目をぎらつかせている男。その姿を見て青葉が気づく。
 そしてルトの耳元でそっと囁く。

「獲物が来たわ、次はあいつよ」

「わかった」

 オークとの見合いが終わった後エントランスで再び誰かいないか周りを見る。
 すると一人の男がいてその人物を見つけると青葉の目の色が変わる。

 エントランスの向こう側にいる一人の男、長身で坊主頭、異様なほどに目つきがぎらついていた。
 大きく手を上げてその男に叫ぶ。

「そこのかっこいいお兄さ~~ん、よろしかったら私たちと一緒に飲みませんか~~」

 男声が聞こえたので振り向くと二人の姿を確認する。
 にっこりとした営業スマイルで青葉がその男の右腕によりついてぎゅっと握り始める。


 その姿にオークは鼻の下を伸ばして了承し部屋へ向かっていく。


 ランプで照らされた薄暗い部屋の中。青葉がその男のグラスにワインを継いでいく。

 継がれたワインを飲みほした男が青葉のデニムをじっと見ると彼女の太ももをいやらしい手つきで触る。
 さらに右にいるルトの手をぎゅっと握る。そして口を開き始める。

「そろそろさ、茶番は終わりにして本番行こうや、金二十枚でどうや?」

「えーー? でも私達~~、そういうのはまだちょっと早いっていうか、そういうのはちょっとできない……」


 上目づかいをしながら青葉が両手をあわあわと振って遠まわしに断りの言葉を入れる。すると男は急に不機嫌な表情になり食い下がり始める。

「なあ──、分かってるんだろここはただ酒を飲む場所じゃないって。金と引き替えにあれをやる場所だってよ……」

 そう、それがこの「ハプニングカフェ」の実態であった。お酒を飲みながら値段交渉を行いいかがわしい行為を行う、ようするに売春の巣窟となってしまっていた。

 無論さっき青葉と飲んでいたオークのようにただ酒を飲んでいるのを楽しむ人もいるので全員がそう言ったことをしているわけではない。




 建前上ではここはいかがわしい行為をする場ではなく、出会った男女が一緒にお酒などを飲む場所であり、そのさなかで偶然互いに行為を持った人達がそう言った行為をしているだけであるということになっていると店は主張している。

 しかし男は引き下がらない。

「なあ黒髪──、お前はどうなんだ?よかったら俺の奴隷にならないか? 実はこう見えても俺はこの国の議員なんだぜ、今よりずっといい生活が待っているぜ」


 そして彼は議員と言う事をばらし自分の名前をゲルナーと名乗る。
 自信に満ちた表情でルトを自分の奴隷にしようと邪険な笑みを見せながら肩を組んで誘いこむ。

 その女の子が本当は女装した王子様だということも知らずに──。

「すいません、私はそういうことは出来ないんです。それは別の人に頼んでもらえますか?」

 ルトは何とか軽くあしらう、今度は青葉がゲルナーに話しかける、彼が議員だとばらしたことで青葉は彼に対して気兼ねなく情報を聞くことができたのである。

(本当は彼が議員だとどうやって言わせようかと思ったけど手間が省けたわ……)

「へぇ~~、議員さんだったんだ。私ちょっと興味あるかも~~」

 ゲルナーは有頂天になり青葉に秘密事項をべらべらとしゃべり出す。

「私興味あるぅ!! 教えて教えて!!」

「うんそれ、私も知りたい」

 二人が興味ありげな表情でゲルナーから情報を聞き出そうとする。するとゲルナーはご機嫌な表情になり──。


「しょうがねえなあ……、ちょっとだけだぞ」


 あっさりと機密をしゃべっていった。おもに自分とマフィアなどのつながり。などであった。
 確かに機密ではあったのだが青葉が狙っているのはそういった私的な事ではなかった。

「へぇ~~、すごい仕事をしているんだね!! じゃあいっぱい教えてくれたお礼にお兄さんのさっきの希望、聞いてあげちゃうね」

「おっいいねぇ、金は出すからよ」

 ゲルナーの目の色が変わり会話に食いついてくる。

「流石にここじゃあ引けるからちょっと別の場所にしましょう、その前にちょっとトイレーー」

 青葉の提案にゲルナーは乗り彼女がトイレから帰ってくると店を後にする。そして場所を移動を移動している時にルトがゲルナーに聞こえないように耳打ちで心配そうに話しかける

「青葉……、流石にまずいよ。あんな約束……」
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