鬼と天狗

篠川翠

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第三章 常州騒乱

出陣(3)

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シュウさん達にも私と美幸さんが来ることをお伝えされてないのは知っていた。
だけど、あやしまれてはいけないと私はわざと驚いた顔をした。
 美幸さんは本当に驚かれている様子で、急に緊張した表情に変わられた。

ちょうどお肉が焼けてたこともあって、ほとんど会話もないままにみんなで食べて……
それからの話題は、KEN-Gさんのお屋敷に関する話題が中心だった。
 慎二さんややシュウさんはお屋敷に来られたのが初めてらしく、慎二さんが大袈裟に話されるもんだから、みんな大爆笑で……
楽しいのは良いのだけれど、シュウさんと美幸さんが話される機会がない……
美幸さんは元々ご自分から話しかけられるタイプじゃないし、シュウさんも美幸さんには特に話しかけられない。
あぁ、せっかくのチャンスなのに……
そうは思うものの、私も話がうまい方じゃないから、お二人をうまく話させることなんて出来なくて……
そう思いながら気をもんでたら、KEN-Gさんがとっておきのお酒がどうこうと言い出されて、私と慎二さんに一緒に探すようにおっしゃった。



 (あ……そういうことなのね!)



 KEN-Gさんは、お酒を探すのを口実に、シュウさんと美幸さんを二人っきりにされた。
どうか、シュウさんと楽しくお話出来ますようにと願いながら、私はKEN-Gさんの後に続いた。



 *



 「大河内さん、どんなお酒か全然覚えてへんの?
たとえば、瓶の形とかも思い出されへんかなぁ?」

 「年を取ると、本当に記憶力が落ちてのう……
最近、誰かにもらった酒なんじゃ。
 外国の酒じゃということは確かなんじゃが……」

 「そら、範囲が広すぎる。
もうちょっとヒントをくれな。」

 出来るだけ二人っきりの時間を長くしてあげたい。
 幸い、慎二さんはKEN-Gさんが別の話をし始めると手を止めて返事をして下さるから、時間は稼げた。



 (美幸さん…シュウさんと楽しくお話出来たかしら?)



 KEN-Gさんのお屋敷はとんでもなく広いから、なかなかお酒がみつからないのも不自然ではないけれど、それでも、あまりにみつからないと、シュウさん達の方が心配なさるかもしれない。
そう思っていたら、お庭の方から私達を探すシュウさんの声が響いた。
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