35 / 35
エピローグ
しおりを挟む
久しぶりに王城の中を歩くのは非常に緊張をする。好機の目で見られていることにも気づいていたが、後ろへ続く二人のお陰で、どうにか動揺を隠せていた。
通された部屋の前で止まり、二人へ声を掛ける。
「終わったら、エルペルトが治療を受けている場所へ向かうよ。スカーレットはこの場で待機していてくれ。くれぐれも喧嘩はしないようにね?」
エルペルトが頭を下げ、スカーレットが約束を守れなさそうな顔を見せたが、諦めることにして室内へと入った。
室内には、すでに俺以外の全員が揃っている。父であるカルトフェルン国王が顎で示した席へと座った。
「それで、セスよ。これは一体どういうことだ?」
陛下の見せている紙は、俺が兄弟姉妹へ送ったものだ。なんの許可も無く、王位継承権を放棄するような約束は認められない、ということだろう。
……前の俺なら引き篭もっていたか逃げ出していた。少し成長した後は、声を出せずに怯えていた。
そんなことを思い出し、笑みを浮かべながら立ち上がる。
「実は、王位を争うよりも大事なことがありまして……。そのために、援助をしてもらいたいのです」
「理由が正当なものであれば、国が援助を行おう」
「いえいえ、それではダメなのです。王位を狙っているのでは? などと勘違いをされ、足を引っ張られて勝てるような相手では無いのです」
陛下以外には意味が分からないだろう。声にこそ出していないが、相手が誰か、どの国なのかと、顔に出ていた。
今までの六番目の王族は、隠して生きて来たのかもしれない。だが、俺は違う。なんとしても勝利するために、打てる手は全て打たせてもらう。
「できれば穏便に勝利したいですが、相手も一柱というわけでもないようですし、最悪を想定する必要があります」
ペラペラと話していることに焦れたのだろう。
第二王女シュティーアは立ち上がり、強く言った。
「一体なにをしようと言うの! 具体的に述べなさい!」
その質問に対し、薄く笑う。
オリアス砦にいる者たちとも話し合い、最悪の場合はそうなるだろうと、覚悟は決めた。
俺はゆっくりと、導き出した答えを述べた。
「――神殺し」
これは俺が、国からは無能だと罵られたまま抗い続け、大切な仲間と、そして兄弟姉妹と力を合わせたり敵対し……神へと勝利する。
そんな、歴史には刻まれなかった話である。
おわり
通された部屋の前で止まり、二人へ声を掛ける。
「終わったら、エルペルトが治療を受けている場所へ向かうよ。スカーレットはこの場で待機していてくれ。くれぐれも喧嘩はしないようにね?」
エルペルトが頭を下げ、スカーレットが約束を守れなさそうな顔を見せたが、諦めることにして室内へと入った。
室内には、すでに俺以外の全員が揃っている。父であるカルトフェルン国王が顎で示した席へと座った。
「それで、セスよ。これは一体どういうことだ?」
陛下の見せている紙は、俺が兄弟姉妹へ送ったものだ。なんの許可も無く、王位継承権を放棄するような約束は認められない、ということだろう。
……前の俺なら引き篭もっていたか逃げ出していた。少し成長した後は、声を出せずに怯えていた。
そんなことを思い出し、笑みを浮かべながら立ち上がる。
「実は、王位を争うよりも大事なことがありまして……。そのために、援助をしてもらいたいのです」
「理由が正当なものであれば、国が援助を行おう」
「いえいえ、それではダメなのです。王位を狙っているのでは? などと勘違いをされ、足を引っ張られて勝てるような相手では無いのです」
陛下以外には意味が分からないだろう。声にこそ出していないが、相手が誰か、どの国なのかと、顔に出ていた。
今までの六番目の王族は、隠して生きて来たのかもしれない。だが、俺は違う。なんとしても勝利するために、打てる手は全て打たせてもらう。
「できれば穏便に勝利したいですが、相手も一柱というわけでもないようですし、最悪を想定する必要があります」
ペラペラと話していることに焦れたのだろう。
第二王女シュティーアは立ち上がり、強く言った。
「一体なにをしようと言うの! 具体的に述べなさい!」
その質問に対し、薄く笑う。
オリアス砦にいる者たちとも話し合い、最悪の場合はそうなるだろうと、覚悟は決めた。
俺はゆっくりと、導き出した答えを述べた。
「――神殺し」
これは俺が、国からは無能だと罵られたまま抗い続け、大切な仲間と、そして兄弟姉妹と力を合わせたり敵対し……神へと勝利する。
そんな、歴史には刻まれなかった話である。
おわり
0
お気に入りに追加
580
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。


エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です
カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」
数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。
ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。
「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

なにをおっしゃいますやら
基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。
エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。
微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。
エブリシアは苦笑した。
今日までなのだから。
今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ここでおしまい!?面白かったので、続きが読めなくてとても残念です。ああ。本当に好きです。
おもしろくて一気に読ませてもらいました!
途中ハーレム物かと思ってたのですが、全然そんなこと無くて好感もてました。
この先も気づかないうちに人を垂らしこんで何だかんだ引き込もれずに幸せになるのかなって思います。
素敵な作品をありがとうございます(*˘︶˘*).。.:*♡
ハーレム物にする予定は当初からなく、色んな人を助けていたり、助けられていたという物語でした。
そこを楽しんでもらえ、とても嬉しいです!
感想ありがとうございます!
最近の無駄にサービスシーンの多いハーレム物じゃなく楽しい作品!とワクワクしてたんですが、まさかの俺たちの未来はこれからだ的終了・・・残念です
確かに、もう少ししっかりとした終わらせ方をするべきだったかもしれません。
楽しんでいただけたのに、そこを申し訳なく思います。
感想ありがとうございます!