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二章 碧緑の宝剣(リゲル編)
20.リゲル・ジェードの片鱗
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「こっちだ」
アントニスが憲兵を連れて来る声が聞こえた。
ひらりと緑と青の色彩が目の前を横切った。リゲルだ。
リゲルは駆け出していた。ミモザを探しにすぐにでも出ていきたかったのだろう。気持ちは分かるが、何か言ってから走り出してほしい。
「待ってください!」
リゲルは俺の言葉なんか聞いてもいない。後ろを向かず、前だけを見て走っていた。
どんなにリゲルが強くても流石に単独で誘拐犯のアジトに殴り込みはまずいだろう。俺は迷わずリゲルを追いかけた。
「おじょ、アルキオーネ様!」
「アントニス! ごめんなさい。リゲル様を放って置けないんです。貴方は憲兵に説明をしておいてください。わたくしたちは先に三軒目に行くはずだった廃教会に行ってますから!」
俺は早口でそう叫ぶ。
アントニスの返事を聞くより先に俺は通りに飛び出した。
リゲルの足は速い。俺ははぐれないように必死にリゲルの後に食らいつく。あの派手な色の服だから見失わずに済んでいるようなものだが、いつ見失ってもおかしくない。
もう春だというのに空気は冷たく肺を刺す。苦しい。肺が酷く痛む。お腹、腰、太もも、膝、ふくらはぎ、痛いところは枚挙にいとまがない。
どうか、アルキオーネの体が壊れてしまう前に目的地に着きますようにと祈りながら俺は足を動かした。
(もういいじゃないか。)
そう思ったが、ここで走るのをやめたら俺が迷子になる。
(嗚呼、もうダメだ。もっと走り込みをしておくんだった。)
段々と意識が朦朧としてくる。目が霞み、リゲルを見失いそうになる。
「リゲル、どこ? どこです?」
「アルキオーネ、ここだ。ほら、大丈夫?」
顔を上げると苦し紛れに呼んだはずのリゲルは少し先で立っていた。
(もしかして、ここが目的地?)
俺は崩れ落ちるように手をついて地面に倒れ込んだ。ちょうど、土下座のような姿勢で俺は動けなくなる。
嗚呼苦しい。喉の奥が血の味がする。毒の一つも吐きたくなるが、息を吐くのもきつくて何も言えない。
「おい!」
リゲルは膝をつき、俺の顔を覗く。
俺は呼吸を整えようとするが、息は上がったままだった。言葉の代わりに何度も呼吸音が漏れた。
「貴方、馬鹿、ですか? 一人で、向かうなんて」
やっと言えたのはそれだけだった。
「馬鹿……それはちょっと酷くないか?」
リゲルはきょとんとした顔をしてから困ったような微笑んだ。いつものリゲルだ。
俺は首を横に振る。
「馬鹿ですよ。頼りないとは思いますけど、わたくしも一緒に連れて行ってください。せいぜい貴方の盾くらいにはなってさしあげますから」
何とか俺がリゲルを繋ぎ止めなければそう思った。
「いや、アルキオーネは細すぎて盾にもならないと思うけど」
冗談だと思ったのか、リゲルは笑う。いつも通りのリゲルの笑顔にほっとする。
怖がってても仕方ない。リゲルはリゲルなんだから。俺は俺でできることをしなきゃ。俺は拳を握り、ゆっくりと立ち上がった。
*
リゲルは廃教会の扉を勢いよく開ける。埃っぽい匂いがした。中には十人くらいの男がいて、ぎょっとした顔でこちらを見ていた。
その奥には扉が見える。もしもミモザがいるならあそこだろう。
「ミモザ!」
リゲルはそう叫んでから剣を構えると、先手必勝とばかりに走り出した。男たちが剣を構える前に手直にいた男を下から上に斬りつけた。リゲルは血のついた頬を拭いながら凶悪な面で笑う。
「死にてぇやつは前に出ろ!」
男たちはリゲルの言葉に気圧されたように動けなくなる。
俺も男たちと同様に気圧されそうになる。いつもとは違う口振りと顔つきに震えながら俺は剣を握った。
俺は頭を振った。
(怖い。怖いけど大丈夫。恐れるな。レグルスが誘拐されたときだって上手くやれた。今回だってきっと大丈夫だ。今できることはリゲルの背中を守ることだ。)
俺は覚悟を決めた。
俺は廃教会を駆け抜けると、ぴったりとリゲルの背中に自分の背中を合わせた。リゲルの背中は俺が預かっているんだ。そう思うがやっぱり震えは止まらない。
男たちが剣を抜き、構えた。そして、じりじりと男たちがリゲルと俺を囲む。
リゲルの体が動いた気配がした。と、同時に赤い色が迸った。
顔に液体がかかる。生暖かく、鉄のような味がじんわりと口に広がった。俺は顔にかかったものを手の甲で拭った。手袋が赤く濡れる。血だ。
「お前か? お前がミモザを!」
剣のかち合う音とリゲルの叫び声がした。
俺ははっとして顔を上げた。俺の前にいる男たちは舐めきった様子でにやにやと俺を見ている。小柄で華奢な少女である俺は男たちからしたら小動物のように見えるに違いない。
ただの獲物になるわけにはいかない。俺は男たちを睨んだ。
「くそっ! ミモザ! ミモザぁあああ! 何処にいるんだああああっ!」
背後では、リゲルが悲痛な叫びをあげながら剣を振っている気配がした。それと一緒に嫌な音がした。骨が折れ、肉が絶たれる。そんなイメージの音だった。
リゲルの叫び声に俺の胸は押し潰されそうになる。俺には痛いほどリゲルの気持ちが分かった。
「頼む……返事をしてくれ」
リゲルは絞り出すように呟く。
何故、こんなことになったんだろう。パレードのときのミモザの様子を思い出す。いつも生意気で我儘で意地っ張りで、正直、嫌な奴だと思っていた。でも、リゲルのことを一番に考えているのはミモザだ。リゲルだってきっとミモザのことを一番に思っているはずだった。それなのに、ほんの少し目を離しただけで……
俺は剣を握り直した。
「リゲル様、聞いてください。あそこに扉が見えるでしょう? きっとあの奥にミモザ様がいます。気をしっかり持ってください」
確証はない。でも、そうでも言わないとリゲルが壊れてしまいそうで、俺はそんな言葉を掛けていた。
「アルキオーネ……」
「いいですか。わたくしが援護するのです。貴方もしっかりとわたくしを援護してくださいよ」
「嗚呼、そうだな」
リゲルの声がふわっと軽くなった。
男のうちの一人と目が合う。男はこちらに向かって駆けてくる。襲われる。瞬時にそう理解した。
「イグニス!」
力の限り叫ぶ。別に叫び声が大きければ火力が上がる訳でもない。
俺の目の前の男の前髪が燃えた。男は半狂乱になり、叫び声を上げながらごろごろと床を転げ回る。
(よっしゃ! 訓練の成果が出たな。)
俺は視線を変え、別の男の方を見た。男はたじろぐ。
後ろでは男の叫び声が聞こえた。リゲルが派手にやらかしているみたいだな。
俺はにっこりと笑う。
「さあ、リゲル! わたくしに構わず行きなさい!」
その声を合図に背中にあったリゲルの気配がふっと消える。
「さあ、燃やされたい奴から前に出なさい!」
俺はリゲルを真似てそう凄んでみせた。男たちは唾を飲み込み。じりじりと近づいてくる。
「イグニス!」
俺は叫ぶと同時に剣を振った。
一人の男の前髪が燃えたのを尻目に、もう一人の男の剣を受ける。重い。押し切られてしまいそうだ。頭から真っ二つは嫌だ。
俺はもう一度、呪文を唱えようと息を吸った。
「イ……」
「アルキオーネ!」
リゲルの声とともに目の前の男が崩れ落ちるように倒れた。
真っ赤に染まったリゲルの顔が目の前にあった。
「俺の後ろに!」
リゲルはグイッと俺を引っ張る。俺はダンスのステップを踏むようにくるりと回ると、リゲルの背中に軽くぶつかる。
目の前に男たちが倒れているのが見えた。いつの間にこんなに倒していたんだ。
驚いて俺はリゲルの方をちらりと振り返った。
「前を見ていろ!」
俺は慌てて前を向いて剣を構えた。しかし、目の前には倒れている男だけだった。
(あれ、敵がいないんだけど?)
首を傾げていると、後ろから骨の折れるような音が数回と風切り音が数回続いた。嫌な音だ。
「あの……まだ振り返ったらダメですか?」
「嗚呼、もう、大丈夫だよ。終わった」
その声に恐る恐るリゲルの方を向く。
すると、リゲルは男の背中に足を乗せ、無表情に力を込めているところだった。ミシミシと嫌な音がしそうなくらい強く踏みしめている。
「リゲル! もう十分でしょう」
「そうかな? もう二度とこんなことしようなんて思えない体にしてあげないと……」
「大丈夫です。十分、もう二度とこんなことできない体になってますから」
「アルキオーネがそう言うなら……」
リゲルは名残惜しそうに足を降ろす。そして、男の肋を目掛けて蹴りを入れた。骨の折れるような嫌な音がした。
「よかったね。命拾いしたね」
リゲルは冷たく微笑みながら呟く。その姿に俺は完全に引いていた。
「さて、ミモザを探そう?」
リゲルは血のべっとりと付いた顔をこちらに向け、手を差し出す。顔と同様、着けていた手袋は血で真っ赤に染まっている。俺は差し出された手を見つめ、戸惑いながら頷く。
大丈夫。これはただのリゲルだ。あのリゲル・ジェードではない。
そう思うのに手を差し出すのが躊躇われた。
アントニスが憲兵を連れて来る声が聞こえた。
ひらりと緑と青の色彩が目の前を横切った。リゲルだ。
リゲルは駆け出していた。ミモザを探しにすぐにでも出ていきたかったのだろう。気持ちは分かるが、何か言ってから走り出してほしい。
「待ってください!」
リゲルは俺の言葉なんか聞いてもいない。後ろを向かず、前だけを見て走っていた。
どんなにリゲルが強くても流石に単独で誘拐犯のアジトに殴り込みはまずいだろう。俺は迷わずリゲルを追いかけた。
「おじょ、アルキオーネ様!」
「アントニス! ごめんなさい。リゲル様を放って置けないんです。貴方は憲兵に説明をしておいてください。わたくしたちは先に三軒目に行くはずだった廃教会に行ってますから!」
俺は早口でそう叫ぶ。
アントニスの返事を聞くより先に俺は通りに飛び出した。
リゲルの足は速い。俺ははぐれないように必死にリゲルの後に食らいつく。あの派手な色の服だから見失わずに済んでいるようなものだが、いつ見失ってもおかしくない。
もう春だというのに空気は冷たく肺を刺す。苦しい。肺が酷く痛む。お腹、腰、太もも、膝、ふくらはぎ、痛いところは枚挙にいとまがない。
どうか、アルキオーネの体が壊れてしまう前に目的地に着きますようにと祈りながら俺は足を動かした。
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(嗚呼、もうダメだ。もっと走り込みをしておくんだった。)
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「リゲル、どこ? どこです?」
「アルキオーネ、ここだ。ほら、大丈夫?」
顔を上げると苦し紛れに呼んだはずのリゲルは少し先で立っていた。
(もしかして、ここが目的地?)
俺は崩れ落ちるように手をついて地面に倒れ込んだ。ちょうど、土下座のような姿勢で俺は動けなくなる。
嗚呼苦しい。喉の奥が血の味がする。毒の一つも吐きたくなるが、息を吐くのもきつくて何も言えない。
「おい!」
リゲルは膝をつき、俺の顔を覗く。
俺は呼吸を整えようとするが、息は上がったままだった。言葉の代わりに何度も呼吸音が漏れた。
「貴方、馬鹿、ですか? 一人で、向かうなんて」
やっと言えたのはそれだけだった。
「馬鹿……それはちょっと酷くないか?」
リゲルはきょとんとした顔をしてから困ったような微笑んだ。いつものリゲルだ。
俺は首を横に振る。
「馬鹿ですよ。頼りないとは思いますけど、わたくしも一緒に連れて行ってください。せいぜい貴方の盾くらいにはなってさしあげますから」
何とか俺がリゲルを繋ぎ止めなければそう思った。
「いや、アルキオーネは細すぎて盾にもならないと思うけど」
冗談だと思ったのか、リゲルは笑う。いつも通りのリゲルの笑顔にほっとする。
怖がってても仕方ない。リゲルはリゲルなんだから。俺は俺でできることをしなきゃ。俺は拳を握り、ゆっくりと立ち上がった。
*
リゲルは廃教会の扉を勢いよく開ける。埃っぽい匂いがした。中には十人くらいの男がいて、ぎょっとした顔でこちらを見ていた。
その奥には扉が見える。もしもミモザがいるならあそこだろう。
「ミモザ!」
リゲルはそう叫んでから剣を構えると、先手必勝とばかりに走り出した。男たちが剣を構える前に手直にいた男を下から上に斬りつけた。リゲルは血のついた頬を拭いながら凶悪な面で笑う。
「死にてぇやつは前に出ろ!」
男たちはリゲルの言葉に気圧されたように動けなくなる。
俺も男たちと同様に気圧されそうになる。いつもとは違う口振りと顔つきに震えながら俺は剣を握った。
俺は頭を振った。
(怖い。怖いけど大丈夫。恐れるな。レグルスが誘拐されたときだって上手くやれた。今回だってきっと大丈夫だ。今できることはリゲルの背中を守ることだ。)
俺は覚悟を決めた。
俺は廃教会を駆け抜けると、ぴったりとリゲルの背中に自分の背中を合わせた。リゲルの背中は俺が預かっているんだ。そう思うがやっぱり震えは止まらない。
男たちが剣を抜き、構えた。そして、じりじりと男たちがリゲルと俺を囲む。
リゲルの体が動いた気配がした。と、同時に赤い色が迸った。
顔に液体がかかる。生暖かく、鉄のような味がじんわりと口に広がった。俺は顔にかかったものを手の甲で拭った。手袋が赤く濡れる。血だ。
「お前か? お前がミモザを!」
剣のかち合う音とリゲルの叫び声がした。
俺ははっとして顔を上げた。俺の前にいる男たちは舐めきった様子でにやにやと俺を見ている。小柄で華奢な少女である俺は男たちからしたら小動物のように見えるに違いない。
ただの獲物になるわけにはいかない。俺は男たちを睨んだ。
「くそっ! ミモザ! ミモザぁあああ! 何処にいるんだああああっ!」
背後では、リゲルが悲痛な叫びをあげながら剣を振っている気配がした。それと一緒に嫌な音がした。骨が折れ、肉が絶たれる。そんなイメージの音だった。
リゲルの叫び声に俺の胸は押し潰されそうになる。俺には痛いほどリゲルの気持ちが分かった。
「頼む……返事をしてくれ」
リゲルは絞り出すように呟く。
何故、こんなことになったんだろう。パレードのときのミモザの様子を思い出す。いつも生意気で我儘で意地っ張りで、正直、嫌な奴だと思っていた。でも、リゲルのことを一番に考えているのはミモザだ。リゲルだってきっとミモザのことを一番に思っているはずだった。それなのに、ほんの少し目を離しただけで……
俺は剣を握り直した。
「リゲル様、聞いてください。あそこに扉が見えるでしょう? きっとあの奥にミモザ様がいます。気をしっかり持ってください」
確証はない。でも、そうでも言わないとリゲルが壊れてしまいそうで、俺はそんな言葉を掛けていた。
「アルキオーネ……」
「いいですか。わたくしが援護するのです。貴方もしっかりとわたくしを援護してくださいよ」
「嗚呼、そうだな」
リゲルの声がふわっと軽くなった。
男のうちの一人と目が合う。男はこちらに向かって駆けてくる。襲われる。瞬時にそう理解した。
「イグニス!」
力の限り叫ぶ。別に叫び声が大きければ火力が上がる訳でもない。
俺の目の前の男の前髪が燃えた。男は半狂乱になり、叫び声を上げながらごろごろと床を転げ回る。
(よっしゃ! 訓練の成果が出たな。)
俺は視線を変え、別の男の方を見た。男はたじろぐ。
後ろでは男の叫び声が聞こえた。リゲルが派手にやらかしているみたいだな。
俺はにっこりと笑う。
「さあ、リゲル! わたくしに構わず行きなさい!」
その声を合図に背中にあったリゲルの気配がふっと消える。
「さあ、燃やされたい奴から前に出なさい!」
俺はリゲルを真似てそう凄んでみせた。男たちは唾を飲み込み。じりじりと近づいてくる。
「イグニス!」
俺は叫ぶと同時に剣を振った。
一人の男の前髪が燃えたのを尻目に、もう一人の男の剣を受ける。重い。押し切られてしまいそうだ。頭から真っ二つは嫌だ。
俺はもう一度、呪文を唱えようと息を吸った。
「イ……」
「アルキオーネ!」
リゲルの声とともに目の前の男が崩れ落ちるように倒れた。
真っ赤に染まったリゲルの顔が目の前にあった。
「俺の後ろに!」
リゲルはグイッと俺を引っ張る。俺はダンスのステップを踏むようにくるりと回ると、リゲルの背中に軽くぶつかる。
目の前に男たちが倒れているのが見えた。いつの間にこんなに倒していたんだ。
驚いて俺はリゲルの方をちらりと振り返った。
「前を見ていろ!」
俺は慌てて前を向いて剣を構えた。しかし、目の前には倒れている男だけだった。
(あれ、敵がいないんだけど?)
首を傾げていると、後ろから骨の折れるような音が数回と風切り音が数回続いた。嫌な音だ。
「あの……まだ振り返ったらダメですか?」
「嗚呼、もう、大丈夫だよ。終わった」
その声に恐る恐るリゲルの方を向く。
すると、リゲルは男の背中に足を乗せ、無表情に力を込めているところだった。ミシミシと嫌な音がしそうなくらい強く踏みしめている。
「リゲル! もう十分でしょう」
「そうかな? もう二度とこんなことしようなんて思えない体にしてあげないと……」
「大丈夫です。十分、もう二度とこんなことできない体になってますから」
「アルキオーネがそう言うなら……」
リゲルは名残惜しそうに足を降ろす。そして、男の肋を目掛けて蹴りを入れた。骨の折れるような嫌な音がした。
「よかったね。命拾いしたね」
リゲルは冷たく微笑みながら呟く。その姿に俺は完全に引いていた。
「さて、ミモザを探そう?」
リゲルは血のべっとりと付いた顔をこちらに向け、手を差し出す。顔と同様、着けていた手袋は血で真っ赤に染まっている。俺は差し出された手を見つめ、戸惑いながら頷く。
大丈夫。これはただのリゲルだ。あのリゲル・ジェードではない。
そう思うのに手を差し出すのが躊躇われた。
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