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二、追ってくる過去

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「まおぉ?」
 舌が縺れて甘えたな声が出た。

 唇に残る魔王の熱が冷えていくのを感じた。
 足りない。満たされたことのある身体は魔王の熱を求めていた。

?」
「足りない。もっとルカの魔力が欲しい。もっとくれるか?」

 その言葉に胸が満たされる。
 こんな言葉だけで俺は嬉しくなってしまう。

「欲しいだけやるよ」

 魔王の言葉に応えたくて、俺は魔王の上に跨った。
 これだけ近ければほんの少しだけでも接触することで俺の魔力を感じれるはずだ。

 あとは魔王の好きにすればいい。
 魔王が何をするのか分からない。
 でも、いつも通り気持ちよくしてくれるに違いないという確信があった。

「ルカ……」

 魔王は俺を押し倒す。
 あっさりと位置を変えられ、マウントを取られた。
 冷たい石の感触に背中がぞわりとした。
 
「……ンッ!」
 
 魔王は俺の股間に顔を埋めた。
 
「まお、そこ……汚いって、前も言った……」
「欲しいだけくれるって約束だったろ?」
「そうだけど……やっぱり、あっ……風呂とか入ってな……んっ……んんっ」

 森の中を走ったせいで汗もかいただろうし、泥や汚れもたくさんついているはずだ。
 綺麗なはずがない。
 
「気になるなら浄化の魔法を使うが、この匂いが消えてしまうのが勿体ない」
 
 そう言いながら魔王はこともあろうに俺の股間の匂いを嗅ぐ。
 絶対臭いのにそんなところで深呼吸をするな。
 俺は恥ずかしくなって魔王の頭を引き離そうとグイグイ押す。
 しかし、魔王の頭はビクともしない。
 
「……っ、やめろよ。やめろって……」
「ルカのここは期待しているのに?」
「してなんか……な、いっ」

 普段はしっかりしまわれているところが曝け出され、魔王の吐息がかかる。
 胸がドキドキして呼吸が荒くなる。
 恥ずかしくて堪らない。
 
「お願いだから嗅ぐなって!」
「じゃあ……」

 魔王はそう呟くと俺の股間についてるものを咥えた。
 前回、咥えられたときの記憶が蘇る。
 確か、あのときはそこを果物に例えられてとても恥ずかしい思いをした。

「待って……お願い。魔王、へんなこと、言わないで……」
「変なこと?」

 魔王は咥えていたそれから唇を離して尋ねる。
 助かったと思った。

「んっ……おちん、ちんを、ももって……言った……からっ」

 安心していたところだったが、魔王はすぐに顔を埋めて、そこを舌で撫で回した。
 
「嗚呼、だってとても綺麗な桃色をしているだろう? 色素の薄い陰茎が段々と桃色に染まって赤く腫れていくところがどうも熟した桃に見えて……」
「だからっ、言うなって! 人のおちんちんをなんだと思ってんだよ!」

 魔王は笑う。

「だから、お前の陰茎ーーペニスだろう?」
「そうだけど……はぁっ……あっ、ああっ」

 会話の合間合間で魔王は俺の竿に舌を這わす。
 ぞわぞわとした快感に背筋がしなる。

「あっ、ああっ……あっ」

 わざとなのだろう。魔王はぴちゃぴちゃと音を立てて俺に見せつけるように真っ赤な舌を出して舐め出す。
 淫猥な音に耳が熱くなる。

 嗚呼、でも、すごく気持ちがいい。
 すぐにイきそうだ。

「しかし、ルカが陰茎をおちんちんって呼ぶのは何だか可愛いな」
 魔王が揶揄うように笑う。

「だって、恥ずかし……おちんちんが一番、恥ずかし、く……ないからあっ」
「そう? じゃあ、私のもおちんちんって呼ぶのか?」

 俺は頭を振った。
 魔王のそれはおちんちんと呼ぶにはあまりにも凶悪だ。

「なんて呼ぶんだ?」

 意地の悪い質問に俺は頭を振る。
 そんなの答えられない。

「知らな……」
「ちんぽ? ちんこ? ぺニス? 男根?」

 綺麗な顔して、卑猥な言葉を楽しそうに並べるな。
 こいつ、恥ずかしくないのか?
 聞いている俺の方が恥ずかしくなってくる。

「やだっ……言うわけ、な……っない……だろ!」
「私としてはそうだな。ルカにはぺニスと呼んでもらいたいかな」

 いつの間にか魔王はそこを舐めるのをやめていた。

「魔王?」
「呼んでくれたらイかせてもいい」

 なんだよ、その条件は。
 恥ずかしくてそんなこと言えるわけがない。
 俺は頭を思い切り振る。

「無理っ!」
「ルカ?」
「やだっ! お前のなんてへなちょこおちんちんで十分だ!」
「強情だな」

 魔王はそう呟くと、手で俺のものを扱き始めた。

「んっ……んんっ!」
「言ってくれたらもっとすごいことしてやる」
「変っ態!」

「ルカはキスが好きだろ?」
「……知らないっ」
「キスして、ここを擦ったらすごく気持ちがいいと思わないか?」

 正直、絶対それは気持ちがいいと思う。
 魔王とのキスは頭が蕩けそうなくらい気持ちがいい。
 ぺニスと口にするだけでとろとろにしてもらえるなら乗ってもだろう。

「でも……恥ず、かし……っ」

 そうだよ。めちゃくちゃ恥ずかしいんだよ。

「私とお前しかいないのに何を恥ずかしがる? 私の耳元で一言言うだけだ」
「うっ……ううっ」

 魔王はこのままただの手淫だけでは俺をイかせる気がないらしく、イきそうになると寸前のところで刺激を緩める。

「ぺ、」
「ぺ?」
「やっぱ無理だって!」

 俺は頭を振った。

「ルカ?」
「あうっ……んっ……やだ、恥ずかし……っ」
「ほしいだけくれる約束はどうした?」

「……う、ううっ」

「言って?」

「ううっ……ぺニス……」

 口にしてみると、罪悪感に似た羞恥心が湧いてくる。

「ほら、言った……! 言ったからっ!」

 もういいじゃないか。許してくれても。 
 こんな真似して何が楽しいんだ。

「嗚呼」
 魔王は満足そうに笑った。

 こちらはとても恥ずかしくて顔が上げられない。
 何だか悪いことをしてしまったような気持ちになって俯く。

「で、ルカの、何を可愛がればいいんだ?」
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