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一、溺愛始めました。
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部屋に戻ると、魔王がテーブルに食事を並べていた。
朝はあまり食べない方なので、並んでいるもののほとんどは魔王が食べるものだ。
俺は魔王が準備を終えるのをベッドの上でのんびりと待つ。
服のシワ?
魔王と眼鏡、時々ヒルデに会うことしかない俺にはそんなのどうだっていいこと。ベッドの上をごろごろと転がってやる。
「終わったぞ」
「はーい、今行く」
準備が終わると、魔王が椅子に座る。
俺はその膝の上に座ってやる。
慣れたものだ。
最初は恥ずかしくて抵抗していたけど抵抗すればするほど疲れるし、腹も減るので、もう諦めていた。
自分から座ってやれば魔王は満足そうに俺の頭を撫でる。
「はい」
俺が口を開くと、魔王が小さく切ったパンを口に放り込んだ。
白いパンは柔らかくフワフワとしていて美味しい。
「美味しいか?」
「ん……」
俺は頷くと、目の前の牛乳を飲んだ。
従順に魔王が差し出すものを口に入れるなんて今まででは考えられないことだったが、流石にもうこの辺も抵抗をするのをやめていた。
俺が食べ終われば、後は魔王が食べるだけ。
その間、俺は開放されるのは分かっているので、敢えて暴れて抵抗をする必要もない。
「もういい」
パンを一つと野菜を少し、それから肉を二かけ食べてから俺は首を横に振る。
慣れたように魔王は俺に赤い果実が乗った皿を寄越すと、自分の食事に取り掛かった。
俺は黙々と赤い実を食べる。
これが魔王の膝の上じゃなかったらもっといいのに。
そんなことを考えていると、魔王がテーブルナプキンで俺の口を拭った。
「相変わらず、食べるのが下手くそだな」
「うるさいな。お前は黙って食べろよ」
俺は魔王の手からテーブルナプキンをひったくって自分の口を拭く。
こんなことして貰わなくても自分で出来るわ。
「嗚呼」
魔王はムッとした顔をしてから、スプーンを手にした。
レンズ豆のスープを掬い、口に運ぶ。
俺を抱えながら食べづらくないのだろうか。
魔王をこっそり見上げると、目が合う。
魔王の顔が緩み、柔らかく微笑んだ。
うっわ。気まずい。
俺は慌てて下を向く。
さっさと食事を済ましてしまおう。
俺は魔王の方を見ないように水の入ったグラスを手に取った。
男が二人、同じ椅子に座って黙々とご飯を食べる。
きっと傍から見たら変な空間なんだろうな。
「なあ、魔王?」
「ん?」
「このまま魔力を循環させる治療をすると、俺は大きくなるんだけど」
「嗚呼、そうだな」
「もしも、俺がお前より大きくなっても、膝に乗せて置くつもりなの?」
「ふ……っふふふふ」
魔王は手を添え、口を隠しながら笑う。
全然、隠れてない。さては、隠す気がないんだろう。
「笑い事じゃないだろ?」
考えてみて欲しい。
魔王より大きくてムキムキになった俺を魔王が抱えるのはあまりにもシュールだろう。
当然の疑問だと思うのだが魔王はなおも笑い続ける。
「ふふふ……ルカがそこまで大きくなるとは思えないが」
「父様は魔王より大きかったぞ?」
確か190センチはあったと思う。
数センチ差だとは思うが魔王の方が小さい気がする。
俺だってそのくらいになる可能性は充分あるはずだ。
「そうか。そうなっても、やはり膝に乗って欲しいと思う」
「ムキムキでも?」
「嗚呼、ムキムキでもだ」
デカくなった俺でも膝に乗せたいなんて魔王は変わったやつだ。
「重いと思うぞ」
「耐えられないと思うか?」
「……魔王ならなんとかなりそうな気もする」
「だろう?」
そうだよな。魔王だもの。
魔法とかなんだかよく分からない力でなんとかしそうな気がしてきた。
「それでも、ルカが気にするのならば、私が上に乗るのもやぶさかでは無い。そのときも無論私が手ずから食べさせてやるから安心して欲しい」
「どんな安心だよ、全く」
俺の言葉に魔王は笑った。
初めのときと比べると、随分魔王は笑うようになった。
思いの外よく変わる表情に、魔王にも慣れがあるのだなと思った。
「だから、安心して大きくなっていいぞ。今の大きさでは耐えられないだろうからな」
魔王は低く耳元で囁く。
あまりの低さに背中がぞわぞわとして、総毛立つ。
「な、何の話だよ?」
「ここが私を迎え入れる話だ」
魔王の手が俺のおしりに触れる。
そして、ゆっくりと撫でるように窄まりに近づいていく。
やっぱりそこの話かよ。
「馬鹿か。変態のおっさんみたいなこと言ってんじゃねーよ」
俺は身を捩って逃げようとするが、逃げ場がない。
それどころか逃げようとすることで隙間ができてしまい、するすると手が入っていく。
魔王はいとも容易く俺の敏感なところに辿り着く。
「ん……っ」
「この前はあんなにお強請りしただろう。ここを触ってほしいって。私を迎え入れて、魔力もたっぷり注がれたら、もっと気持ちいいだろうな」
何度も縁を撫でてからトントンとリズムよく叩く。
それだけで俺はそこのことを強く意識させられた。
「な、ご飯、食べてる途中だろ? 行儀が悪い……」
「もう終わってる」
「ちっ……」
既に空になった皿を見て、俺は舌打ちをした。
「少し……するか?」
「しない。これからお前は仕事するんだろ」
「少し……そんなに時間は掛けないから」
俺の意見は真っ当なはずなのに、ごねる魔王。
本当にこんなのが王様でいいのか?
「するなら、今日は一緒にいる必要がないよな?」
「一緒にはいたい」
そう言って、魔王は俺の顔にキスを何度も落とした。
割れ物でも扱うように優しく、額、こめかみ、睫毛、瞼、頬、鼻……と隙間なく落とす。
「じゃあ、しない」
「でも、したい。少しだけ」
魔王は顔を上げると、俺の耳を噛んだ。
痛いと思った次の瞬間、唇で優しく愛撫される。
最初は耳輪ーー耳の外側を甘く唇で食まれ、その後でゆっくりと唇を這わせる。
荒い吐息が甘く耳を擽る。
耳全体に唇を這わせたあと、耳朶に柔らかくキスを落とし、甘噛みをした。
「あ……卑怯者……っ」
「少しだけだ。ルカを感じさせろ」
傲慢な響きのある声が鼓膜を震わせた。
全てを平伏せさせる強い物言いに腰が砕けそうになる。
身体が熱い。
魔王から与えられる快楽に既に慣れてきたせいか、期待するように身体が疼いた。
あんなに嫌だった行為なのに一度こうなってしまうともう止まれない。
「指、入れるのも、ダメ……だ、から……なっ。キスだけ……」
「重畳」
魔王は俺を抱き抱え、俺をベッドに連れ込もうとする。流石にベッドの上はまずい。
「待て。ソファにしてくれ」
「狭いだろう?」
「少しだけって……だから、ソファでも、いい、だろ?」
ソファの上ならある程度動きも制限される。
だからなんだよ。
こっちは自由に動かれてあんなことやこんなことされたくないんだよ。
魔王は心底残念そうに溜め息を吐く。
「入れるのがダメなら、舐めてやろうと思ったんだが……」
「舐めっ……どこを?」
「ルカの陰茎」
い、陰茎って舐めるところじゃないだろ。
気持ちよさそうではあるけど、流石にそれはまずい。
癖になったら絶対にまずい。
絶対に拒否しなきゃ。
「キスだけって言っただろ。それ以上はナシだ」
俺は抗議するように魔王の胸を叩いた。
「キスみたいなもんだろ?」
「絶対違う。それは絶対、ナシだって」
「意見の相違だな」
魔王は俺を仰向けに下ろす。
ぎしっとソファが軋む。
魔王は片足をソファに乗せた。
「今日は、キス、だけ……」
俺の言葉に応えるように、魔王の唇が降ってきて俺の唇を捕らえた。
柔らかく濡れたものがゆっくりと唇を撫で上げ、口内に侵入する。
「……んっ……ン……ふっ」
抑え込むように魔王の唇が動き、更に深くなる。
俺を舌を吸い上げてやわやわと食まれる。
俺の舌は玩具じゃないのに、魔王は散々いいように弄ぶ。
「ふっ……ン……ふ……んんっ……ん」
俺は息をするのもやっとだった。
甘い。口の中が甘く溶けてゆく。
朝はあまり食べない方なので、並んでいるもののほとんどは魔王が食べるものだ。
俺は魔王が準備を終えるのをベッドの上でのんびりと待つ。
服のシワ?
魔王と眼鏡、時々ヒルデに会うことしかない俺にはそんなのどうだっていいこと。ベッドの上をごろごろと転がってやる。
「終わったぞ」
「はーい、今行く」
準備が終わると、魔王が椅子に座る。
俺はその膝の上に座ってやる。
慣れたものだ。
最初は恥ずかしくて抵抗していたけど抵抗すればするほど疲れるし、腹も減るので、もう諦めていた。
自分から座ってやれば魔王は満足そうに俺の頭を撫でる。
「はい」
俺が口を開くと、魔王が小さく切ったパンを口に放り込んだ。
白いパンは柔らかくフワフワとしていて美味しい。
「美味しいか?」
「ん……」
俺は頷くと、目の前の牛乳を飲んだ。
従順に魔王が差し出すものを口に入れるなんて今まででは考えられないことだったが、流石にもうこの辺も抵抗をするのをやめていた。
俺が食べ終われば、後は魔王が食べるだけ。
その間、俺は開放されるのは分かっているので、敢えて暴れて抵抗をする必要もない。
「もういい」
パンを一つと野菜を少し、それから肉を二かけ食べてから俺は首を横に振る。
慣れたように魔王は俺に赤い果実が乗った皿を寄越すと、自分の食事に取り掛かった。
俺は黙々と赤い実を食べる。
これが魔王の膝の上じゃなかったらもっといいのに。
そんなことを考えていると、魔王がテーブルナプキンで俺の口を拭った。
「相変わらず、食べるのが下手くそだな」
「うるさいな。お前は黙って食べろよ」
俺は魔王の手からテーブルナプキンをひったくって自分の口を拭く。
こんなことして貰わなくても自分で出来るわ。
「嗚呼」
魔王はムッとした顔をしてから、スプーンを手にした。
レンズ豆のスープを掬い、口に運ぶ。
俺を抱えながら食べづらくないのだろうか。
魔王をこっそり見上げると、目が合う。
魔王の顔が緩み、柔らかく微笑んだ。
うっわ。気まずい。
俺は慌てて下を向く。
さっさと食事を済ましてしまおう。
俺は魔王の方を見ないように水の入ったグラスを手に取った。
男が二人、同じ椅子に座って黙々とご飯を食べる。
きっと傍から見たら変な空間なんだろうな。
「なあ、魔王?」
「ん?」
「このまま魔力を循環させる治療をすると、俺は大きくなるんだけど」
「嗚呼、そうだな」
「もしも、俺がお前より大きくなっても、膝に乗せて置くつもりなの?」
「ふ……っふふふふ」
魔王は手を添え、口を隠しながら笑う。
全然、隠れてない。さては、隠す気がないんだろう。
「笑い事じゃないだろ?」
考えてみて欲しい。
魔王より大きくてムキムキになった俺を魔王が抱えるのはあまりにもシュールだろう。
当然の疑問だと思うのだが魔王はなおも笑い続ける。
「ふふふ……ルカがそこまで大きくなるとは思えないが」
「父様は魔王より大きかったぞ?」
確か190センチはあったと思う。
数センチ差だとは思うが魔王の方が小さい気がする。
俺だってそのくらいになる可能性は充分あるはずだ。
「そうか。そうなっても、やはり膝に乗って欲しいと思う」
「ムキムキでも?」
「嗚呼、ムキムキでもだ」
デカくなった俺でも膝に乗せたいなんて魔王は変わったやつだ。
「重いと思うぞ」
「耐えられないと思うか?」
「……魔王ならなんとかなりそうな気もする」
「だろう?」
そうだよな。魔王だもの。
魔法とかなんだかよく分からない力でなんとかしそうな気がしてきた。
「それでも、ルカが気にするのならば、私が上に乗るのもやぶさかでは無い。そのときも無論私が手ずから食べさせてやるから安心して欲しい」
「どんな安心だよ、全く」
俺の言葉に魔王は笑った。
初めのときと比べると、随分魔王は笑うようになった。
思いの外よく変わる表情に、魔王にも慣れがあるのだなと思った。
「だから、安心して大きくなっていいぞ。今の大きさでは耐えられないだろうからな」
魔王は低く耳元で囁く。
あまりの低さに背中がぞわぞわとして、総毛立つ。
「な、何の話だよ?」
「ここが私を迎え入れる話だ」
魔王の手が俺のおしりに触れる。
そして、ゆっくりと撫でるように窄まりに近づいていく。
やっぱりそこの話かよ。
「馬鹿か。変態のおっさんみたいなこと言ってんじゃねーよ」
俺は身を捩って逃げようとするが、逃げ場がない。
それどころか逃げようとすることで隙間ができてしまい、するすると手が入っていく。
魔王はいとも容易く俺の敏感なところに辿り着く。
「ん……っ」
「この前はあんなにお強請りしただろう。ここを触ってほしいって。私を迎え入れて、魔力もたっぷり注がれたら、もっと気持ちいいだろうな」
何度も縁を撫でてからトントンとリズムよく叩く。
それだけで俺はそこのことを強く意識させられた。
「な、ご飯、食べてる途中だろ? 行儀が悪い……」
「もう終わってる」
「ちっ……」
既に空になった皿を見て、俺は舌打ちをした。
「少し……するか?」
「しない。これからお前は仕事するんだろ」
「少し……そんなに時間は掛けないから」
俺の意見は真っ当なはずなのに、ごねる魔王。
本当にこんなのが王様でいいのか?
「するなら、今日は一緒にいる必要がないよな?」
「一緒にはいたい」
そう言って、魔王は俺の顔にキスを何度も落とした。
割れ物でも扱うように優しく、額、こめかみ、睫毛、瞼、頬、鼻……と隙間なく落とす。
「じゃあ、しない」
「でも、したい。少しだけ」
魔王は顔を上げると、俺の耳を噛んだ。
痛いと思った次の瞬間、唇で優しく愛撫される。
最初は耳輪ーー耳の外側を甘く唇で食まれ、その後でゆっくりと唇を這わせる。
荒い吐息が甘く耳を擽る。
耳全体に唇を這わせたあと、耳朶に柔らかくキスを落とし、甘噛みをした。
「あ……卑怯者……っ」
「少しだけだ。ルカを感じさせろ」
傲慢な響きのある声が鼓膜を震わせた。
全てを平伏せさせる強い物言いに腰が砕けそうになる。
身体が熱い。
魔王から与えられる快楽に既に慣れてきたせいか、期待するように身体が疼いた。
あんなに嫌だった行為なのに一度こうなってしまうともう止まれない。
「指、入れるのも、ダメ……だ、から……なっ。キスだけ……」
「重畳」
魔王は俺を抱き抱え、俺をベッドに連れ込もうとする。流石にベッドの上はまずい。
「待て。ソファにしてくれ」
「狭いだろう?」
「少しだけって……だから、ソファでも、いい、だろ?」
ソファの上ならある程度動きも制限される。
だからなんだよ。
こっちは自由に動かれてあんなことやこんなことされたくないんだよ。
魔王は心底残念そうに溜め息を吐く。
「入れるのがダメなら、舐めてやろうと思ったんだが……」
「舐めっ……どこを?」
「ルカの陰茎」
い、陰茎って舐めるところじゃないだろ。
気持ちよさそうではあるけど、流石にそれはまずい。
癖になったら絶対にまずい。
絶対に拒否しなきゃ。
「キスだけって言っただろ。それ以上はナシだ」
俺は抗議するように魔王の胸を叩いた。
「キスみたいなもんだろ?」
「絶対違う。それは絶対、ナシだって」
「意見の相違だな」
魔王は俺を仰向けに下ろす。
ぎしっとソファが軋む。
魔王は片足をソファに乗せた。
「今日は、キス、だけ……」
俺の言葉に応えるように、魔王の唇が降ってきて俺の唇を捕らえた。
柔らかく濡れたものがゆっくりと唇を撫で上げ、口内に侵入する。
「……んっ……ン……ふっ」
抑え込むように魔王の唇が動き、更に深くなる。
俺を舌を吸い上げてやわやわと食まれる。
俺の舌は玩具じゃないのに、魔王は散々いいように弄ぶ。
「ふっ……ン……ふ……んんっ……ん」
俺は息をするのもやっとだった。
甘い。口の中が甘く溶けてゆく。
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