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◇◆◇◆◇
カッパと僕は一緒に湯船に浸かっていた。
カッパが望んだからだ。
湯船は一人ではいるには充分なサイズだが、二人で入るには狭い。狭いが密着する分、僕に寄り掛かるカッパの体温や鼓動を直接感じることが出来た。
「綺麗にしてくれるって言ったよね?」
不意にカッパがそう言った。
「じゃあ、湯船から出て……」
「違うよ」
そう言って、僕の手を取ると、そっと自分のお尻の方に持っていく。
目の前のカッパがまるで知らない男の子になったみたいで僕は少し怖くなった。
「中、綺麗にして?」
強請るような甘い声が聞こえた。
僕は目の前の少年の蕾にゆっくりと指を滑り込ませた。ぬるっとしたものに助けられ、僕の指はするりと容易く入っていく。
「あっ……」
少年は小さく息を吐き、震えた。
奥へと進めていくと、こりこりとした何かに触れる。なんだろう。僕は不思議に思って、そこを指で少し強めに擦った。
「ん、ふうっ、そこ……」
少年は喘いだ。
どうやらここが気持ちいいらしい。僕は緩く勃った少年の白い肉棒を見てそう思った。
「ね、カワウソも気持ち良くなって?」
そう言って、少年は自分のモノと僕のモノを両手で握ると擦り上げる。
僕も気持ちよくなってもらいたくて中をたくさん擦ってあげた。
「んっ、んっ、んっ……」
規則的に何度も何度も少年は喘ぎ声を上げる。可愛い声だ。
僕は少年の髪にキスの雨を降らせた。
「可愛い、本当に可愛い」
名前を呼びたかったが、ここでカッパと呼ぶのは何か違う気がして、代わりのように「可愛い」と何度も呟いた。
「可愛くない……あっ、ああっ」
「可愛いよ」
素直じゃない少年にお仕置きしてやろう。僕は少年から指を抜いた。
「あっ、ああっ!」
腰を持ち上げてやると、物欲しそうに少年が振り返る。
「どうする?」
「やだ……やだよ」
拒否の言葉を何度も呟くのに、少年の瞳はずっと僕のモノを見つめていた。
「怖いならやめるよ。酷くされたみたいだし……」
少年は唾を飲み込んでじっと僕と僕のモノを交互に見る。そして、目を瞑って少しだけ考え込む。
僕だって、彼のことはすごく欲しくて無理矢理にでも犯してしまいたかった。
でも、僕は嘘つきだから、自分の本能にだって嘘がつけた。だから、こんなにも冷静に言うことが出来た。
「してほしい……」
震える声で少年は呟く。
「お望み通りにしてあげる」
僕は歓喜に震える声を押し殺し、答える。そして、少年の中に自分のモノを突き立てた。
「あっ、ああっ……あつっ……」
「すごく可愛い」
僕は彼を揺さぶり、穿つように何度も腰を打ち付ける。
初めてだった。こんな行為も、こんなにも欲しくて欲しくて堪らなくなる気持ちも。だから、衝動をただただぶつけることしか出来なかった。
「ん、あっ、やだっ……やだ、そこ……そこ、そこっ、あっ、ああ、やっ」
「嫌なことはしたくないからやめようか?」
「やだっ! 抜かないで!」
僕が意地悪を言うと、少年は僕の腕に縋るように叫ぶ。普段は我儘なんて言わないのに、こんなときには言うなんて本当に可愛い。
「じゃあ、どうして欲しいの?」
「そこ、イイから……いっぱい、いっぱい、して、欲しい……」
可愛くお願いされたら仕方ない。
僕は後ろから彼を抱き締めてやる。
「あっ、あ……はぁ、んっ、あ……」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が接合部分から漏れる。風呂の中には、少年の喘ぎ声と肉の打ち合う音が響く。
「好きだよ……」
「ふっ、ん、んんっ、あっ……俺もっ、や……あっ、イっちゃ……あ!」
「イこう……」
「おねがっ……いっしょ……あ、ああっ!」
僕も、少年も、互いに名前を呼ぶことが出来ずに、そのまま果てた。
◇◆◇◆◇
風呂から出ると、僕たちはただ抱き合って、眠ることにした。
何も食べていないけど、幸せな気持ちで胸がいっぱいでお腹が空く余裕もなかった。
シングルサイズのベッドはやっぱり狭かったけど、それでも僕たちは離れ難くて一緒に眠りたいと思った。
眠る間際、カッパは僕の額の傷にキスをしてから小さく呟いた。僕はなんと言ったか聞こえなくて耳を近づけて聞き返した。
「名前を呼んで」
どうやらカッパはそう言っていたらしい。
「カッパ?」
「違うよ」
カッパは顔を膨らまして怒ったような顔をした。
僕は初めて拗ねたカッパの顔を見て思わず笑った。そんな僕の顔を見てカッパは仕方ないなと笑う。
「もう一回言うよ。×××って呼んで?」
カッパはそう囁いた。
「×××」
僕は名前を復唱した。
×××は嬉しそうに笑うと僕を抱き締める。
「俺の名前は、カワウソと俺だけの秘密だよ」
×××があまりにも可愛いことを言うもんだから、僕は可愛いことを言う唇を自分の唇で塞いでやった。
触れるだけの軽いキスなのに、×××はとても恥ずかしそうに顔を真っ赤にして下を向いた。
「僕の名前もじゃあ、呼んでね」
僕は×××の髪にキスをしてから、僕の名前をそっと告げた。
きっと僕の本名が嘘でなくなる日も近い。
(おしまい)
カッパと僕は一緒に湯船に浸かっていた。
カッパが望んだからだ。
湯船は一人ではいるには充分なサイズだが、二人で入るには狭い。狭いが密着する分、僕に寄り掛かるカッパの体温や鼓動を直接感じることが出来た。
「綺麗にしてくれるって言ったよね?」
不意にカッパがそう言った。
「じゃあ、湯船から出て……」
「違うよ」
そう言って、僕の手を取ると、そっと自分のお尻の方に持っていく。
目の前のカッパがまるで知らない男の子になったみたいで僕は少し怖くなった。
「中、綺麗にして?」
強請るような甘い声が聞こえた。
僕は目の前の少年の蕾にゆっくりと指を滑り込ませた。ぬるっとしたものに助けられ、僕の指はするりと容易く入っていく。
「あっ……」
少年は小さく息を吐き、震えた。
奥へと進めていくと、こりこりとした何かに触れる。なんだろう。僕は不思議に思って、そこを指で少し強めに擦った。
「ん、ふうっ、そこ……」
少年は喘いだ。
どうやらここが気持ちいいらしい。僕は緩く勃った少年の白い肉棒を見てそう思った。
「ね、カワウソも気持ち良くなって?」
そう言って、少年は自分のモノと僕のモノを両手で握ると擦り上げる。
僕も気持ちよくなってもらいたくて中をたくさん擦ってあげた。
「んっ、んっ、んっ……」
規則的に何度も何度も少年は喘ぎ声を上げる。可愛い声だ。
僕は少年の髪にキスの雨を降らせた。
「可愛い、本当に可愛い」
名前を呼びたかったが、ここでカッパと呼ぶのは何か違う気がして、代わりのように「可愛い」と何度も呟いた。
「可愛くない……あっ、ああっ」
「可愛いよ」
素直じゃない少年にお仕置きしてやろう。僕は少年から指を抜いた。
「あっ、ああっ!」
腰を持ち上げてやると、物欲しそうに少年が振り返る。
「どうする?」
「やだ……やだよ」
拒否の言葉を何度も呟くのに、少年の瞳はずっと僕のモノを見つめていた。
「怖いならやめるよ。酷くされたみたいだし……」
少年は唾を飲み込んでじっと僕と僕のモノを交互に見る。そして、目を瞑って少しだけ考え込む。
僕だって、彼のことはすごく欲しくて無理矢理にでも犯してしまいたかった。
でも、僕は嘘つきだから、自分の本能にだって嘘がつけた。だから、こんなにも冷静に言うことが出来た。
「してほしい……」
震える声で少年は呟く。
「お望み通りにしてあげる」
僕は歓喜に震える声を押し殺し、答える。そして、少年の中に自分のモノを突き立てた。
「あっ、ああっ……あつっ……」
「すごく可愛い」
僕は彼を揺さぶり、穿つように何度も腰を打ち付ける。
初めてだった。こんな行為も、こんなにも欲しくて欲しくて堪らなくなる気持ちも。だから、衝動をただただぶつけることしか出来なかった。
「ん、あっ、やだっ……やだ、そこ……そこ、そこっ、あっ、ああ、やっ」
「嫌なことはしたくないからやめようか?」
「やだっ! 抜かないで!」
僕が意地悪を言うと、少年は僕の腕に縋るように叫ぶ。普段は我儘なんて言わないのに、こんなときには言うなんて本当に可愛い。
「じゃあ、どうして欲しいの?」
「そこ、イイから……いっぱい、いっぱい、して、欲しい……」
可愛くお願いされたら仕方ない。
僕は後ろから彼を抱き締めてやる。
「あっ、あ……はぁ、んっ、あ……」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が接合部分から漏れる。風呂の中には、少年の喘ぎ声と肉の打ち合う音が響く。
「好きだよ……」
「ふっ、ん、んんっ、あっ……俺もっ、や……あっ、イっちゃ……あ!」
「イこう……」
「おねがっ……いっしょ……あ、ああっ!」
僕も、少年も、互いに名前を呼ぶことが出来ずに、そのまま果てた。
◇◆◇◆◇
風呂から出ると、僕たちはただ抱き合って、眠ることにした。
何も食べていないけど、幸せな気持ちで胸がいっぱいでお腹が空く余裕もなかった。
シングルサイズのベッドはやっぱり狭かったけど、それでも僕たちは離れ難くて一緒に眠りたいと思った。
眠る間際、カッパは僕の額の傷にキスをしてから小さく呟いた。僕はなんと言ったか聞こえなくて耳を近づけて聞き返した。
「名前を呼んで」
どうやらカッパはそう言っていたらしい。
「カッパ?」
「違うよ」
カッパは顔を膨らまして怒ったような顔をした。
僕は初めて拗ねたカッパの顔を見て思わず笑った。そんな僕の顔を見てカッパは仕方ないなと笑う。
「もう一回言うよ。×××って呼んで?」
カッパはそう囁いた。
「×××」
僕は名前を復唱した。
×××は嬉しそうに笑うと僕を抱き締める。
「俺の名前は、カワウソと俺だけの秘密だよ」
×××があまりにも可愛いことを言うもんだから、僕は可愛いことを言う唇を自分の唇で塞いでやった。
触れるだけの軽いキスなのに、×××はとても恥ずかしそうに顔を真っ赤にして下を向いた。
「僕の名前もじゃあ、呼んでね」
僕は×××の髪にキスをしてから、僕の名前をそっと告げた。
きっと僕の本名が嘘でなくなる日も近い。
(おしまい)
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