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途上、ヤシと先
15.
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金の受け渡し的な場面を見てしまった。
しかも、カジノへ行く前に。
そんな感じの、いまの黒田縫李は。
彼の視線の先で。
その視線の先に見えている空の陰りとか、暗さを彼が見出すのに。
「金の受け渡し的な場面」が影響しなかった、とは表現が適さないかもしれない。
「割のいいアカウント」?
少なくとも、数登珊牙が携わるという「ユーオロテとかいうアイドルの死」とは、それとは。
何か別の話ではあろう。
今の場合、主な話になるはずだったのは、「数登珊牙がクラニークのどの辺りの位置に居るのか」。
クラニークホテルの、棟の話になるはずだった。
にも関わらず、その話の代わりに、ニッカトール・ダウナー周辺で話題が拡がったのか。少し危うかったのか。
エラニーとあの、厳しい視線を送って来たホテルのボーイとの間で。
それで棟がどこ、とかいう話は今も吹っ飛んでいる。
一向に、数登が戻ってくる様子もなく。
「タクシー、あるんですよね」
と縫李は言った。
通路を通って、先に続くカジノに向かう途中である。
エラニー。
「ええ。停めたままですよ。あなたも見ていたでしょう」
動揺に緊迫が重なった。
先程の気分を表現するなら、そんな感じだ。
一触即発? を、なんとなく切り抜けた状態?
縫李は直接関わったわけではないが、心理的には落ち着かない。
あとここから先は、カジノだ。
桁違いの金関係の話にまた、近くなるわけで。
更に落ち着けないだろう。
中庭。
クラニークホテルの中庭だ。
内観でも、抽象的なオブジェがあった。
中庭には自然が多くある。
駐車場のヤシのところで見た、植物と同系統。
敷地丸ごとクラニークと、ソフトリーアズが関わる。
と考えると、ここもまた自然による抽象表現を取っている、と言えるのかもしれない。
桁違いの金の何かから、頭を逸らすための抽象。
金と死、か。
黄と紺。
コントラスト的には、そんな感じである。
いまの通路の配色を平たく、伸ばした生地のように表現するのであれば。
中庭からの、今の通路。
通路もまたしかり。
頭を逸らすための抽象の、度合に凝るのだろう。
内観にあったオブジェよりも、色彩には気を配っているのかもしれない。
通路の内部が、照明と。
その照り返しで黄。
一方、夜を湛えた外が紺。
そんな感じに見えるように。
視界には。
縫李。
「カジノへ行ったら、シーグレイがいるんですよね」
「恐らく」
「終わったら、どうします?」
「終わったら?」
と言ってまたエラニーは。
縫李にとっての、分かりやすい表情になった。
数登よりも表情が分かりやすい。
と縫李は個人的に思っていて。
「帰る、んですよね」
と縫李はおずおず。
「数登さん戻って来ないのは」
「彼の戻るのを待ちましょう」
と言って、エラニーは表情を緩めている。
縫李は肯いてみる。
良からぬ言葉の一つに、情報流出というのも気になる。
件のウェス・シーグレイとトリー・エーカは、今も話したりすることはあるだろう。
トリーは、ニッカトール・ダウナーのアカウント持ちでもある。
アカウント持ちという状況は直接、仮想通貨と繋がるような何かではない。
ただ、仮想通貨はそれに関わるメンバー全体に、関わってくる話である。
情報流出というのは、そういう点でも気になった。
良からぬ話。
なんかたぶん。
今の流れからして、シーグレイを警戒しておくのは、まあ。
しかし、縫李にとっては初対面である。
エラニーは、そうではないかもしれない。
良からぬ話に携わる氏と初対面というのは、疲れるのだろう。
エラニーは、そういう点で慣れている、のかもしれない。
通路内部は、煌々と黄色かった。
それが、いきなり真っ暗になる。
手で押し開けて、今度はネオンが眼に焼き付くよう。
内部へ入った。カジノだ。
カジノらしさが弥益ほどだ。
どことない汗と埃と、金の匂いというか。
香り?
誰彼の手で触られたであろう、その名残の雰囲気。
トランプ一枚一枚が空を切る時の、籠ったような匂い。
それらが積み重なった上に、ネオンの明かりで構成されている。
空間。
出たのは、正面ではなかった。
提携するホテルの通路から来た。
それ専用の入口ということになろう。
扉を押し開けて、すぐの両脇へ。
屈強な二名。
さっき、エラニーとボーイと、その近くに居た屈強な二名。
クラニークホテルで。
その二名と違うのは、縫李にも分かった。
暗い照明にネオンが重なる。
ので肌の色まで、よく識別することが出来ない。
そして煙。
白い煙の放つ匂いと人々の、熱気。
天井では黒く見える、巨大なファンが回っている。
今度はボーイではなく、支配人か?
何かやりあう感じになるのか。とか。
いまのネックは十九ということ。
縫李とエラニーの眼の前。
ソフトリーアズというカジノの目玉である、ゲームへの賭け。
正確に言えば、ゲームアカウントへの賭けである。
その他のテーブルと同じく。
賭場主任がついている。
その丸みを帯びた緑のテーブルではなく、先に眼へ飛び込んでくるのは大きなスクリーン。
基本のプレイ人数は一人対一人。
それぞれに二席。
縫李は十九だから、そこの大画面が見える位置まで行くのに。
少々工夫がいった。
十九というのがまずネックになる。
トランプを切っていく音。
空を切る時の出る雰囲気。
匂い。指と指先の温度。
その階で少しだけ音を添えている、縫李の居る位置の問題もあるが。
どこかポップなスロットの音。
カラカラという音。
そういう音を背景に、縫李は十九というのを何とかしなければならなかった。
ソフトリーアズでは、仮想通貨利用も可、その他身分証は電子でが定石。
縫李は零乃のパスポート持参。
零乃は、いくつか所有していたので一つ、「借りた」のである。
いまは自宅を不在の、零乃の。
その部屋より一つ。
そういう点、零乃については予備も多く持っていた。
実際は、縫李は冷や汗。
あとは入ってしまえば、そこはカジノ。
支配人とは、何事も起きなかった。
そして眼へ飛び込んでくる、大画面の方向へそのまま向かって行く。
席は一つと一つ。
仕切りがあり、賭けた連中とプレイヤーを少々区切るためか。
今日の日は席がある。
人間がプレイする日のようだ。
実際プレイ中であり、席には中央の大画面以外のプレイヤー用モニター。
基本的にゲーム内では武器は使わない仕様だ。
だからか。
画面固定でハンドガン所持の手、という演出よりも。
視界の開けたプレイヤー視点。
それが画面へ表現されていて。
暗いぶん煌々と光るモニターと、照明のネオン。
賭けた連中か、時おり叫びをあげている。
七分間。
いまは何分後なのだろう?
ゲーム開始より。何分後か?
席に着いているプレイヤーの、手元で激しい動き。
それから大画面の動きだ。
敵同士の把握というのはプレイヤー各々、既に終わっているようだった。
あと何分だろうか?
叫んでいる方から見てプレイヤー同士の姿。
カジノ内の暗さと、その煌々としたピンクなり青なりのネオンで。
より見えにくいものになっていた。
それに頑丈な、ネオン付のチェア。ゲーミング用だ。
全てはゲーム。ゲームの世界のネオンで、カジノ内。
大画面で争うキャラクターの顔の作りは非常に、似通っている。
そのゲーム世界の、動きの激しさが弥益ほど。
「写真というかパスポートだとまあ、あまり疑われないというか」
と縫李は言った。
ただちょっと、歓声なんだか、落胆なんだか。
分からないような中での会話だから、声は張り上がる。
「似ているんでしょうね」
「先程の?」
とエラニー。
零乃のパスポートのことだ。
「そうです」
「今ここにいる面々も実年齢がどうというのはむしろ、カジノ側が正確に把握するのを避けてきているかもしれない」
言ってエラニーは苦笑した。
「賭けに参加しているというだけではない。実際にはチームだという場合もありますからね」
「チームって」
縫李は、改めてプレイヤー外の面々を見つつ。
「チーム、ですか?」
「そう。実際プレイヤーが一人というより、チームで参加するほうが賭けや利益についても安心感があるでしょう」
仮想通貨のことを云われているような気がして、縫李は肩をすくめた。
「安心感ですか」
「そう」
「でも分かりませんね。賭ける奴同士でチームを作るんですか?」
「一見単独で。しかし実際にはアカウント売買だ。情報についても売買に関する多くを知っているほうが、実際の賭けやゲームを行う以外にも有利になります」
なんか、やっぱりこのエラニーはいろいろ把握している様子。
あるいは、ギデオン。
「じゃあ……」
と縫李。
「今ゲームをプレイしている奴と、賭けてて叫んでいる連中の中にはチーム同士が居る、っていうことですか?」
チーム、と言って。
やっぱり自分のことを、云われているような気がした縫李だった。
「賭け額を上げたり下げたりっていうのも、その他利益面とかの考慮みたいなのも。単独プレイの奴だけで決めていることだけじゃなくて」
「居ました」
縫李の視線はエラニーに制された。
手の先というか、指先の向こう。
辺りが暗いので、分かりづらい。
今ゲーム観戦の連中と、その他カジノに居る「客」とは。
その間に仕切りが入っているために、仕切り向こうのエラニーと縫李は、聴衆として立っているわけではない。
だから行き来は割と自由だった。
とはいっても、ニッカトール・ダウナーだ。
賭けない連中の中にも、野次馬は居たりする。
そういう奴らを、避けつつ二人が向かった先。
チームだろうがなんだろうが。
賭けに勝つためにゲームに、参加するのはゲーマーである。
その道のプロというのは身体のケアにも気を遣う。
例えば、腕、腰、姿勢。
聴覚や視覚面に関しては、酷使をより免れないであろうが。
その身体の腕の部分は、特にコントロールで酷使する部分だ。
ゲーマーにとっては必要不可欠の部分の、腕。
手から肱の辺りまでの筋肉。それから肩へと繋がる辺りの筋だ。
腱鞘の辺りは特に。
専用のマッサージブース。
今のカジノに、それはあって。
そこだけは、ネオンではなく。
ガラス張りの四角い小さいブースだ。
施術師と今まさに施術を受けているプレイヤーの、その姿が見えた。
そのブース近く。
ゲームの大画面を監督然として見つめている、ウェス・シーグレイ。
しかも、カジノへ行く前に。
そんな感じの、いまの黒田縫李は。
彼の視線の先で。
その視線の先に見えている空の陰りとか、暗さを彼が見出すのに。
「金の受け渡し的な場面」が影響しなかった、とは表現が適さないかもしれない。
「割のいいアカウント」?
少なくとも、数登珊牙が携わるという「ユーオロテとかいうアイドルの死」とは、それとは。
何か別の話ではあろう。
今の場合、主な話になるはずだったのは、「数登珊牙がクラニークのどの辺りの位置に居るのか」。
クラニークホテルの、棟の話になるはずだった。
にも関わらず、その話の代わりに、ニッカトール・ダウナー周辺で話題が拡がったのか。少し危うかったのか。
エラニーとあの、厳しい視線を送って来たホテルのボーイとの間で。
それで棟がどこ、とかいう話は今も吹っ飛んでいる。
一向に、数登が戻ってくる様子もなく。
「タクシー、あるんですよね」
と縫李は言った。
通路を通って、先に続くカジノに向かう途中である。
エラニー。
「ええ。停めたままですよ。あなたも見ていたでしょう」
動揺に緊迫が重なった。
先程の気分を表現するなら、そんな感じだ。
一触即発? を、なんとなく切り抜けた状態?
縫李は直接関わったわけではないが、心理的には落ち着かない。
あとここから先は、カジノだ。
桁違いの金関係の話にまた、近くなるわけで。
更に落ち着けないだろう。
中庭。
クラニークホテルの中庭だ。
内観でも、抽象的なオブジェがあった。
中庭には自然が多くある。
駐車場のヤシのところで見た、植物と同系統。
敷地丸ごとクラニークと、ソフトリーアズが関わる。
と考えると、ここもまた自然による抽象表現を取っている、と言えるのかもしれない。
桁違いの金の何かから、頭を逸らすための抽象。
金と死、か。
黄と紺。
コントラスト的には、そんな感じである。
いまの通路の配色を平たく、伸ばした生地のように表現するのであれば。
中庭からの、今の通路。
通路もまたしかり。
頭を逸らすための抽象の、度合に凝るのだろう。
内観にあったオブジェよりも、色彩には気を配っているのかもしれない。
通路の内部が、照明と。
その照り返しで黄。
一方、夜を湛えた外が紺。
そんな感じに見えるように。
視界には。
縫李。
「カジノへ行ったら、シーグレイがいるんですよね」
「恐らく」
「終わったら、どうします?」
「終わったら?」
と言ってまたエラニーは。
縫李にとっての、分かりやすい表情になった。
数登よりも表情が分かりやすい。
と縫李は個人的に思っていて。
「帰る、んですよね」
と縫李はおずおず。
「数登さん戻って来ないのは」
「彼の戻るのを待ちましょう」
と言って、エラニーは表情を緩めている。
縫李は肯いてみる。
良からぬ言葉の一つに、情報流出というのも気になる。
件のウェス・シーグレイとトリー・エーカは、今も話したりすることはあるだろう。
トリーは、ニッカトール・ダウナーのアカウント持ちでもある。
アカウント持ちという状況は直接、仮想通貨と繋がるような何かではない。
ただ、仮想通貨はそれに関わるメンバー全体に、関わってくる話である。
情報流出というのは、そういう点でも気になった。
良からぬ話。
なんかたぶん。
今の流れからして、シーグレイを警戒しておくのは、まあ。
しかし、縫李にとっては初対面である。
エラニーは、そうではないかもしれない。
良からぬ話に携わる氏と初対面というのは、疲れるのだろう。
エラニーは、そういう点で慣れている、のかもしれない。
通路内部は、煌々と黄色かった。
それが、いきなり真っ暗になる。
手で押し開けて、今度はネオンが眼に焼き付くよう。
内部へ入った。カジノだ。
カジノらしさが弥益ほどだ。
どことない汗と埃と、金の匂いというか。
香り?
誰彼の手で触られたであろう、その名残の雰囲気。
トランプ一枚一枚が空を切る時の、籠ったような匂い。
それらが積み重なった上に、ネオンの明かりで構成されている。
空間。
出たのは、正面ではなかった。
提携するホテルの通路から来た。
それ専用の入口ということになろう。
扉を押し開けて、すぐの両脇へ。
屈強な二名。
さっき、エラニーとボーイと、その近くに居た屈強な二名。
クラニークホテルで。
その二名と違うのは、縫李にも分かった。
暗い照明にネオンが重なる。
ので肌の色まで、よく識別することが出来ない。
そして煙。
白い煙の放つ匂いと人々の、熱気。
天井では黒く見える、巨大なファンが回っている。
今度はボーイではなく、支配人か?
何かやりあう感じになるのか。とか。
いまのネックは十九ということ。
縫李とエラニーの眼の前。
ソフトリーアズというカジノの目玉である、ゲームへの賭け。
正確に言えば、ゲームアカウントへの賭けである。
その他のテーブルと同じく。
賭場主任がついている。
その丸みを帯びた緑のテーブルではなく、先に眼へ飛び込んでくるのは大きなスクリーン。
基本のプレイ人数は一人対一人。
それぞれに二席。
縫李は十九だから、そこの大画面が見える位置まで行くのに。
少々工夫がいった。
十九というのがまずネックになる。
トランプを切っていく音。
空を切る時の出る雰囲気。
匂い。指と指先の温度。
その階で少しだけ音を添えている、縫李の居る位置の問題もあるが。
どこかポップなスロットの音。
カラカラという音。
そういう音を背景に、縫李は十九というのを何とかしなければならなかった。
ソフトリーアズでは、仮想通貨利用も可、その他身分証は電子でが定石。
縫李は零乃のパスポート持参。
零乃は、いくつか所有していたので一つ、「借りた」のである。
いまは自宅を不在の、零乃の。
その部屋より一つ。
そういう点、零乃については予備も多く持っていた。
実際は、縫李は冷や汗。
あとは入ってしまえば、そこはカジノ。
支配人とは、何事も起きなかった。
そして眼へ飛び込んでくる、大画面の方向へそのまま向かって行く。
席は一つと一つ。
仕切りがあり、賭けた連中とプレイヤーを少々区切るためか。
今日の日は席がある。
人間がプレイする日のようだ。
実際プレイ中であり、席には中央の大画面以外のプレイヤー用モニター。
基本的にゲーム内では武器は使わない仕様だ。
だからか。
画面固定でハンドガン所持の手、という演出よりも。
視界の開けたプレイヤー視点。
それが画面へ表現されていて。
暗いぶん煌々と光るモニターと、照明のネオン。
賭けた連中か、時おり叫びをあげている。
七分間。
いまは何分後なのだろう?
ゲーム開始より。何分後か?
席に着いているプレイヤーの、手元で激しい動き。
それから大画面の動きだ。
敵同士の把握というのはプレイヤー各々、既に終わっているようだった。
あと何分だろうか?
叫んでいる方から見てプレイヤー同士の姿。
カジノ内の暗さと、その煌々としたピンクなり青なりのネオンで。
より見えにくいものになっていた。
それに頑丈な、ネオン付のチェア。ゲーミング用だ。
全てはゲーム。ゲームの世界のネオンで、カジノ内。
大画面で争うキャラクターの顔の作りは非常に、似通っている。
そのゲーム世界の、動きの激しさが弥益ほど。
「写真というかパスポートだとまあ、あまり疑われないというか」
と縫李は言った。
ただちょっと、歓声なんだか、落胆なんだか。
分からないような中での会話だから、声は張り上がる。
「似ているんでしょうね」
「先程の?」
とエラニー。
零乃のパスポートのことだ。
「そうです」
「今ここにいる面々も実年齢がどうというのはむしろ、カジノ側が正確に把握するのを避けてきているかもしれない」
言ってエラニーは苦笑した。
「賭けに参加しているというだけではない。実際にはチームだという場合もありますからね」
「チームって」
縫李は、改めてプレイヤー外の面々を見つつ。
「チーム、ですか?」
「そう。実際プレイヤーが一人というより、チームで参加するほうが賭けや利益についても安心感があるでしょう」
仮想通貨のことを云われているような気がして、縫李は肩をすくめた。
「安心感ですか」
「そう」
「でも分かりませんね。賭ける奴同士でチームを作るんですか?」
「一見単独で。しかし実際にはアカウント売買だ。情報についても売買に関する多くを知っているほうが、実際の賭けやゲームを行う以外にも有利になります」
なんか、やっぱりこのエラニーはいろいろ把握している様子。
あるいは、ギデオン。
「じゃあ……」
と縫李。
「今ゲームをプレイしている奴と、賭けてて叫んでいる連中の中にはチーム同士が居る、っていうことですか?」
チーム、と言って。
やっぱり自分のことを、云われているような気がした縫李だった。
「賭け額を上げたり下げたりっていうのも、その他利益面とかの考慮みたいなのも。単独プレイの奴だけで決めていることだけじゃなくて」
「居ました」
縫李の視線はエラニーに制された。
手の先というか、指先の向こう。
辺りが暗いので、分かりづらい。
今ゲーム観戦の連中と、その他カジノに居る「客」とは。
その間に仕切りが入っているために、仕切り向こうのエラニーと縫李は、聴衆として立っているわけではない。
だから行き来は割と自由だった。
とはいっても、ニッカトール・ダウナーだ。
賭けない連中の中にも、野次馬は居たりする。
そういう奴らを、避けつつ二人が向かった先。
チームだろうがなんだろうが。
賭けに勝つためにゲームに、参加するのはゲーマーである。
その道のプロというのは身体のケアにも気を遣う。
例えば、腕、腰、姿勢。
聴覚や視覚面に関しては、酷使をより免れないであろうが。
その身体の腕の部分は、特にコントロールで酷使する部分だ。
ゲーマーにとっては必要不可欠の部分の、腕。
手から肱の辺りまでの筋肉。それから肩へと繋がる辺りの筋だ。
腱鞘の辺りは特に。
専用のマッサージブース。
今のカジノに、それはあって。
そこだけは、ネオンではなく。
ガラス張りの四角い小さいブースだ。
施術師と今まさに施術を受けているプレイヤーの、その姿が見えた。
そのブース近く。
ゲームの大画面を監督然として見つめている、ウェス・シーグレイ。
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