推測と仮眠と

六弥太オロア

文字の大きさ
上 下
55 / 136
  「問」を土から見て

33.

しおりを挟む
 
「確かに」

清水颯斗しみずはやと

「私の意見はまず。そうね。とにかく、作る部分は多いんじゃないかな」

「多いとわれましてもね」

歯朶尾灯しだおあかし
彼は眼をぱちくり。

「《作る》っていう意味付けをすることに関して。俺は疑問な感じです」

「シダの方が、その作る部分に関しては詳しそうだが。一応マニアだからさ」

清水は苦笑する。
桶結千鉄おけゆいちかね数登珊牙すとうどうがへ言う。

「アバターとリアルは違う。何故なら作ることが出来るから。でしょう」

歯朶尾は肩をすくめる。

「そうですか」

清水。

「例えばさっきのバーチャルアイドルの。ライブ会場はどう」

「そりゃ」

と歯朶尾。

「いろいろ工夫はらしてあるでしょう。俺、彼女らのリアルには興味はないです。ただのリアルじゃあないライブって言いますか。あくまでアバターですね。ライブはライブですからリアルなんですけれど」

「ライブでかつアバター。ややこしいな」

と桶結。

歯朶尾はうなずく。

「アバターをリアルで展開するための空間です。リアルの空間で」

「ほう」

と数登。

「アバターが身体からだになるんですよ。いいですか」

と歯朶尾。

「リアルの会場でアバターなわけです。動画の中じゃなく。そう。身体として扱っているとかまとっている状態を作り上げる。動画の中では謂わば、アバターはアバターで動いている姿しか見えないわけです。そうじゃない。リアルで展開しているからこそ。アバターが主役になるライブです」

「ほう」

「つまり。アイドルたちのリアルとしての姿。そっちが隠される状態になるんです。分かります?」

「ええまあ」

「お客さんとアイドルが居る同じ空間に、アバターとして存在ってところを展開して作るんです。そういう意味で、《作る》ということは沢山ありますかね。特殊か。数登さんのうようにね。ただ、意味的にはどうなんでしょう。合ってますか」

数登は苦笑。

「俺が警備に当たったユーノという会場でも。そういう工夫が凝らされていた。特殊って言ったのはそういう意味です」

と歯朶尾。

「で」

「じゃあ」

と清水。

歯朶尾。

「はい」

「作ると言っては。例えばものがなくなると言うことに関して。それは、何か作る行為だと思うかい」

「え?」

歯朶尾は眼をぱちくり。

「言っている意味がますます」

「すまんな。分からないだろう」

「いや。分かんないです」

「俺もだな。どういうことです」

と桶結。
歯朶尾と顔を見合わせる。

「何をおっしゃりたいんでしょう」

と桶結。

清水。

「例えばの話だ。なくなるというのは例えば。アバターの世界であれば、動画の映像の中で。何かを追加したり減らしたり。つまるところ、追加や減らすことも何かを作っている状態。ということにならないか」

歯朶尾。

桶結。

「なるんでしょうかね」

清水は苦笑する。

「で。です」

「はい」

「なくなるという状況。いま我々の知る範囲では複数。起こっている」

「起こっているというか」

と桶結。

「起こっていますが、より深く関わっているのは鑑識……」

と言って。
歯朶尾と清水を見る。

「現場とか。証拠とかでってことですよね。そうなりますよね俺ら」

歯朶尾。
言って肩をすくめた。

「そうだね。それもある」

と清水。

「なくなる状況に関して。現場とか。今回の抗争とは別にもある。俺が依頼を受けたのは個人的なことだ。あくまでね。シダには伝わっていただろうか」

歯朶尾はかぶりを振る。

清水。

「私の方でサンプルを収集してね」

「収集ですか」

と歯朶尾。

九十九つくも社さんみたいに」

「いや。あくまで警察として出来る収集だ」

「どんな」

「杵屋さんたちの場合は音声ということ。私の場合はそうではない。あくまで依頼として受けた、とある一部屋での人の情報集め」

桶結は清水を見る。

清水。

「情報」

と数登。

清水。

「そう。九十九社は音声。こっちは部屋から収集出来るという手段。その為の道具もいくつか。手作業だな」

「それで」

と桶結。

「清水さんは、その部屋でも《なくなる状況》を作ることが出来た。とかおっしゃいたい」

「作ったのかどうかは分からない。ただ依頼では『物がなくなった』。ということで受けているから。悪いがね。情報は照らし合わせる必要があるんだ」

歯朶尾はきょとんとする。

清水は続ける。

「なくなる。それはさっきも言ったが、減るという意味にも取れる。例えば頭部、例えば持ち物。そしてもう一つ。活動が減るということ。それも、ある意味では《なくなる》」

歯朶尾。

「なくなると作るとか。何かの理由とか行動とか目的につなげたい話なんでしょうかね」

と数登へ。

「予想か何かですか」

「予想というと」

「予想は予想です」

と清水へ言う。

「清水さんには、ある程度の予想があるから《なくなる》とか。そういう変な使い回しを自分に取り入れようとする。数登さんの」

「予想を立てているのは僕も同じです」

数登は微笑んだ。

軸丸書宇じくまるしょう

「俺にはさあ。あんたらの《作る》からその以降の話が、よく分からないんだけれど」

「では。分からないなりに」

と数登。

「アイドルの活動が減るということも、例えば何かを作る一環であるとする。その点現在。実際にバーチャルアイドルは活動の量を減らしていますね」

と清水へ。

「それは、私にいている?」

「ええ」

と数登。

「例えば、歯朶尾さん。Se-ATrecシーアトレックというバーチャルアイドルがお好きと」

「なあ」

と歯朶尾。

「その予想はどこへ行くんだろうか」

「ええ。何故です」

「予想というか変な方向に行こうとしている。改めて胸騒ぎをおぼえるよ」

「なるほど」

数登は苦笑した。
言う。

「それは、清水さんの考えにでしょうか」

「あんたの考えにだ」

「『なくなる』ということが作る行為かどうかは。僕にもよく分かりません」

数登。

「例えば、ある時に見ていた映像が消失し。アイドルの活動量が減り。なくしものが増え。そう。現時点でシーアトレックというアイドルの情報もまた。とても少ない」

と歯朶尾へ。

「何故なのでしょう」

「ねえ」

と歯朶尾。

「何故なのかさ。俺が逆に聞きたいんだけれど」

数登。
かぶりを振る。

「少ないということ。意図的に情報をなくしているとすれば。どうでしょう」

杵屋依杏きねやいあが言う。

「さっき、サンプルの波形の話をしたのですが」

改めてパソコンの画面を示す。
資料と言って。
波がいくつか画面へおさまっている状態。

「一致じゃなくて変わらないものがあるって。さっき私言った気がしていて」

「うん」

と軸丸。

歯朶尾と数登。
視線がれない。

依杏。

「今のこの波形に収まりきらないというか。ここでは表現されていないものがあって」

「音声の波で表現されないもの?」

「ええ。波というか表現されないというか。確か軸丸さんと」

と依杏は軸丸へ。

「音声解析に協力いただいた教授は面識。おありかと思われます」

「思われるというか面識はあるぞ」

と軸丸。

「そりゃさっきも言ったし。波の表現云々うんぬんってのは俺。よく分からないが」

頭をく。

「なくなるのうえに予想と来て、今度は音声か。行きつく先はどこなんでしょうかね」

依杏。

「どんなに加工しても。意図的に消す。それこそなくす作業をしなければ変えられないものがあって。音声の話なんですけれど」

「ふうん」

と軸丸。

「そこにもなくす部分が出てくるわけね」

依杏はかぶりを振った。

「今の場合の《なくなる》とか言うのは、たまたまかもしれません」

「そうかな」

「とにかく。音声の話です。通常音声の加工のみでは、音声にとって変えられない部分があるそうです。私もちょっと調べてみました」

「ネットで?」

「ネットです」

依杏は苦笑。

「正確じゃないところは多いと思います。いずれにしても、音声から変えられない部分をなくすとすれば。それ相応の対応になると思うんです」

「相応ね。例えば?」

「例えば。おおやけの場で音声を公開することになったという場合。その公開する側の措置として消したり」

「それはマスメディアの場合だね」

「そうです。でも私の場合は違います」

「うん」

「録音はスマホだし。一般に公として扱われるようなものでもない」

「あくまで個人的ですね」

と数登。

依杏。

「そうですね。しかも録音したそのままです。音声の質はどうかはともかく。何も加工も消しもなくしもしていない。声紋は消されていない状態です」

「声紋」

と桶結。

依杏は再生した。

「今さっきピックアップした音声。流して聞いてみると全く違うように聞こえます。だけれど音声認証では声紋も特定出来るんです」

「認証では声紋を見分けるということ?」

「恐らく。音声の一致っていうのは、認証レベルの話ならば声紋に掛かって来るというか」

「なるほど」

と清水。

「ある意味では。それは人の情報ということになる」

「予想として」

と数登。

「情報の少ないシーアトレック。歯朶尾さん」

数登は歯朶尾から眼を逸らす。
そして再度見つめた。

「あなたは御存知ごぞんじではないかと」

歯朶尾。
何も言わない。

「あなたはバーチャルアイドルにお詳しい。しかし肝心のところになると知らない部分も多いと見受けられる」

「そうかな。それもあんたの予想じゃないの」

「では。あなた自身がアイドルである。そう予想を立てる。アイドル同士の機密事項として情報を得られない部分も出てくる。そう仮定出来ます」

「だから、言ったんだけれど」

と歯朶尾。

「それこそ、あんたの変な予想だろうが」

数登は微笑んだ。

「言ったでしょう」

「何を」

「あなたご自身でマニアと」

沈黙。

「それで。なんだっていうの。何かあるの」

「いま画面に出ているものとは別に」

と依杏。

「データを頂きました。解析いただいた教授のところでは音声と。それから数値で声紋の分析をしている。私には見ても分からないのですけれど」

手とマウス。
ノートパソコンでも一応マウスだ。

「先程ピックアップした音声と。それから声紋の分析表です。同時に出しています」

「波の形は一致していない」

と清水。

「声紋の方は。似た数値も見受けられるということ? 波の形はともかくとして」

依杏。

改めて最初から再生。
音声だ。
男性と女性。
言っていることも状況も背景の音も。
全て違う。
だから、同時に流すというのは不協和音になる。
今が実際そうである。

「歯朶尾さん」

数登は言った。

「ご自身で」

歯朶尾。
何も彼は言わず。
ただ画面を見つめている。

「あなたの声。そしてもう二つは女性の声。あるいは女性の声として出力された音声」

「それは」

桶結。

「じゃあ」

「ええ。依杏さんも今回。音声に関してソフトウェアをいろいろ見て来たということです。音声認証をかいくぐるだけの《音声の入れえ》技術も進歩してきていると」

「音声の入れ替え?」

「赤の他人になることが出来てしまう。音声だけを入れ替える。ただ音声のみです。しかし今見ている画面の場合は違います。声紋を変えていないところを見ると、恐らく」

「入れ替えをするとどうなる」

と桶結。

依杏は肯いた。

「他人の声になるんです。自分の話している状態はそのままで」

「その場合の声紋は」

「さらに技術が展開をしていくのであれば。音声認証も利かなくなる可能性が」

と数登。

「ただ」

依杏が言った。

「今の場合。声紋まで変更はかっていない。今見ていただいている波のこっちがU-Orothéeユーオロテ

と示す。

「動画。俺も観たやつと同じ音声だね」

と歯朶尾。

桶結は依杏いあへ言った。

「動画から抜いたんだろう。音声を。スマホで収集したものではないだろう」

「ええと。厳密にいえば。そうです。一応、それは動画規約の範囲内というか」

依杏は赤くなる。

桶結。

「そうだろうかね。若干危うい気もするが」

「と、とにかく」

と依杏。

「とにかく音声メインで話をします。今聴いていただいているユーオロテの声。ただ聴いただけではアイドルっぽい声って感じですよね」

「声紋まで変更は掛かっていないというのは。このユーオロテの声もそうなのか」

と桶結。

依杏はかぶりを振る。

「ユーオロテの声に関してはよく分かりませんが」

「分からないの?」

「そうです。ただ」

一呼吸ひとこきゅう

「声紋はあまり。よくよく変更を掛けられるものでは、ないそうです」

歯朶尾しだおは依杏を見つめた。

「よくなされる場合はこうです。声紋レベルでない音声加工。一般にも広く利用される方法です」

と依杏は歯朶尾へ。
歯朶尾は肩をすくめた。

「加工、ね」

「そうです」






賀籠六絢月咲かごろくあがさの家のスタジオの話。
そう。
リアルとの違い。
体の表現は仮想上のものとなる。
絢月咲のスタジオでも、それ相応の対応を取れるよう工夫がなされていた。
例えばシンクロのためのスーツだ。
仮想上のものとシンクロするために。
自分の表情。
眼球の動き。
身体部分の細かいシンクロ。
質感。
そして音声。
手足の動き。

今の時点。
今の部屋の中では、T―Garmeティー・ガルメの中の人について。
とあるバーチャルアイドルとしているが。
賀籠六絢月咲の話がメインになって来るだろう。
そうすればまあ、ティー・ガルメは絢月咲だという話に自然となる。

「つまり」

と桶結。

「そうです。今聞いているユーオロテの声はこんな感じです」

と言って依杏は画面に触れる。

「そしてティー・ガルメ」

指。
滑らせて切り替わる画面。

「こっちの声は、その人そのままの声ではないそうです」

「そのままの声でない。つまり加工か何かか」

「私も直接、演じているご本人と会って聞いたことでして。ただ、この加工という方法では、声紋を崩すことは難しいそうです。声紋が分かりにくくなるというだけで」

歯朶尾はかぶりを振っている。

依杏。

「言い換えれば。同一人物かどうかを分析する余地はまだある。ということです」

桶結おけゆいは歯朶尾を見つめた。

「シダさんもこの音声。聞いていたな」

「ええ。あの時ね。桶結さんもそうでしたが」

歯朶尾は画面を見ずに言う。

「同一人物かどうかを測る余地。か。なるほど」

軸丸じくまる

「つまりだ。歯朶尾さんと同一人物の音声だって。この中に見つかるかもしれないとね。大きな予想で言えば」

歯朶尾は軸丸を見つめる。

依杏。

「資料は私に戻って来て、それを皆さんに見てもらっています。だから」

と依杏。

「アバターの声として出力されているのだから、分かりにくいとは思います。機密もあるのかもしれない。ティー・ガルメ、ユーオロテ」

指で動かしていく。

「シーアトレック。そして彼女の声紋も教授には数値化していただいた。そして資料の音声と照らしました」

画面。
依杏。
並べた波と数値。

「教授から。声紋は数値的にも。歯朶尾さんととても近いという分析結果を」

「それが分かったとして、どうする」

と歯朶尾。
数登と依杏へ。

「裏側を知ってどうなる。お前らただの葬儀屋だろうが」

歯朶尾。

「事実。活動が減ってとても困り果てている。それはさ。アイドル側なんだよね。そのティー・ガルメだってそうだろう。取調を受けている彼女もそうかもしれないしな」

「声紋は変えられない。か」

と清水。

「ある意味。シーアトレックが地域課勤務だったっていうのは。嘘じゃなかったっていうことになる。だろうシダ」

歯朶尾は肩をすくめた。

「でも」

と軸丸。

「全然違う人のように聴こえる」

歯朶尾は応えない。
だが言った。

「だから、さ」

「今は数値とか声紋とかそういう話なので、あまり説得力がないかもしれませんが」

と依杏。

「歯朶尾さんがもし、シーアトレックだとするなら。そこからいくつか辻褄つじつまの合う点が出てくるんです」

「例えば」

と歯朶尾。

依杏は肯いた。

「エクセレと西耒路さいらいじ署のつながりを、説明しやすくなります」

「説明しなくていいよ」

「では」

数登すとう

「ではおもて側の説明ではどうでしょう」

「あのさ」

「一点」

と数登。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて

white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。 彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。 ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。 良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。 実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。 ━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。 登場人物 遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。 遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。 島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。 工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。 伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。 島津守… 良子の父親。 島津佐奈…良子の母親。 島津孝之…良子の祖父。守の父親。 島津香菜…良子の祖母。守の母親。 進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。 桂恵…  整形外科医。伊藤一正の同級生。 秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

無限の迷路

葉羽
ミステリー
豪華なパーティーが開催された大邸宅で、一人の招待客が密室の中で死亡して発見される。部屋は内側から完全に施錠されており、窓も塞がれている。調査を進める中、次々と現れる証拠品や証言が事件をますます複雑にしていく。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ミステリH

hamiru
ミステリー
ハミルは一通のLOVE LETTERを拾った アパートのドア前のジベタ "好きです" 礼を言わねば 恋の犯人探しが始まる *重複投稿 小説家になろう・カクヨム・NOVEL DAYS Instagram・TikTok・Youtube ・ブログ Ameba・note・はてな・goo・Jetapck・livedoor

処理中です...