推測と仮眠と

六弥太オロア

文字の大きさ
上 下
130 / 136
  無を以て追跡と

18.

しおりを挟む
散弾銃。
その他、銃身の長い武器を手に手に数名が、釆原うねはらたちのいる階の床を踏みしめる。

数登すとうたちの様子を伺い身を潜めていた階段部分から、上がって来たのだ。






辺りの帯電は強くなっていった。

掴みかかったというより、レブラは数登に飛び掛かったと言っていい。

殴ってはいないが組み伏せ合っている。


下の騒ぎも大きいものになった。






今いる数名だけではない数の人々が上がってきそうな勢い。

釆原と僚稀は息を詰めていたが見つかるのは、時間の問題だ。






やっぱり、と釆原は思った。



数名のうち一人がこちらへ来たのだ。

ついでにこっちも火花が散るのか。






釆原は少し用意したが、相手は声を掛けてくる。



「あなたも追って来たんですか」

少々面食らう。

「追って来たというかまあ……。僕は成り行きですけれどね」

僚稀は苦笑しながら言った。

「盗みがあったのは御存知でしょう」

ということは捜査員か。

「レブラは香炉を下にいる仲間へ投げて渡しちゃったみたいですよ。今この階にはないっぽいです」

僚稀の言葉に捜査員は動揺の色を見せる。

「どうやら複数だったようですよ」

釆原は言った。






何やらエンジン音のようなものも激しくなってくる。



数登すとうとレブラは素手。
一方捜査員は武器携帯。
釆原うねはらと僚稀は丸腰だ。






数登とレブラは捜査員には気付かない。

レブラは数登の襟首を掴んでいる。数登が劣勢のようだ。

「偽物だと言いたいんだな」

「ええ」

「では本物はどこにある」

数登はレブラの腕を掴んで体勢を立て直した。

「今は、恐らく会場へ」

「言わせておけば」

「事実です。九十九つくも社の仲間に運んでいただきました。定金さだかねさんです。あなたも御存知のはずでは」






定金さだかね」と聞いて釆原と僚稀は顔を見合わせた。

レブラが飛び掛かるのを数登は避けるように、そして脚でレブラを倒した。

スーツから何か取り出す。

「いくつか持ち合わせていた贋造品です」

その手から零れ落ちたのは宝石の粒。

「あの金の香炉は一部が本物でした。装飾のスピネルがそうです。途中で抜き取って換えておきました。定金さんには本物のスピネルをお渡しして、それを運んでいただけるように」






「僕の受け取ったケースって……」

「そういうことだな」



定金が僚稀から受け取ったケースには数登が抜いたスピネルが入っていたのだろう。

ドームを出てきた途端に定金が戻った理由がようやく分かった。



レブラは数登の脚を打って組み伏せた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて

white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。 彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。 ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。 良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。 実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。 ━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。 登場人物 遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。 遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。 島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。 工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。 伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。 島津守… 良子の父親。 島津佐奈…良子の母親。 島津孝之…良子の祖父。守の父親。 島津香菜…良子の祖母。守の母親。 進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。 桂恵…  整形外科医。伊藤一正の同級生。 秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ミステリH

hamiru
ミステリー
ハミルは一通のLOVE LETTERを拾った アパートのドア前のジベタ "好きです" 礼を言わねば 恋の犯人探しが始まる *重複投稿 小説家になろう・カクヨム・NOVEL DAYS Instagram・TikTok・Youtube ・ブログ Ameba・note・はてな・goo・Jetapck・livedoor

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...