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第百三十話 魔族領
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第百三十話 魔族領
「ここは王専用の畑です」
ガルシェさんに案内されて、お城の敷地内にあると言う畑に連れてきてもらった。
「‥‥‥黒い」
土は茶色く、葉っぱは緑。なのに、生ってる作物はほぼ黒い。
「これ、トマト?」
「ええ、そうですが」
「そっか」
真っ黒なトマト! いやいや! 忘れがちだが、ここは異世界! 黒いトマトだろうが、白いスイカだろうが、どんと来いってんだ!
「‥‥ナス」
まぁ、ナスは黒いよね。黒って言うか、濃い紫?
「食べてみますか?」
「是非!」
トマトを一つもらって、一口。意外(失礼)と普通のトマトだった。中身まで真っ黒だった以外は。
あ、キュウリだ‥‥キュウリだよな? 黒いからデカいカリントウにしか見えないけど。
一通り見せてもらっていると、畑を管理していると言うお爺さんがやってきた。
「ほう‥‥」
お爺さんにジッと見られた。因みに、元の姿のままである。ベルがそのままでも大丈夫って言ってたからね。
お爺さんは少し腰が曲がっているが、その眼光は鋭く、雰囲気が元の世界の祖父に少し似ている。
私はアイテムポーチから島で採れたトマトを取り出し、お爺さんに差し出した。
お爺さんはトマトを受け取ると、見た目を観察した後、ガブリとかぶり付いた。そして全て食べ終えた後、私に手を差し伸べてくれた。
「「‥‥」」
無言で握手を交わす、お爺さんと私。
そこにあるのは、野菜への‥‥‥愛!
「ここへ行くと良い」
お爺さんは私にメモを渡すと、畑の中へと去って行った。
「あの気難しいロッツに認められるとは」
「ロッツさん?」
「この畑の統括を任せています。年の事もあり、そろそろ後継ぎをとお願いしておりますが、中々‥‥それで、それは?」
渡されたメモを見ると、地図が描かれていた。
「これは‥‥ここ王都の地図ですね」
「へぇ~。じゃあ、行って来るね!」
「は? お、お待ちください! 護衛を」
「いらない、いらない」
護衛やら道案内やらを付けると言うガルシェを振り切り、町へとやって来た。
「そこのお嬢ちゃん! ボアの串焼き、美味しいよ!」
「さぁ、買ってってくんなぁ!」
勢いでそのまま来てしまったが、たまにチラ見されるくらいで普通に歩けている。
トカゲっぽい人や、ドワーフ、獣人もいる。背中に蝙蝠の翼みたいなものが生えている人もいたりと、様々な種族がいるみたいだ。
人族っぽい人もちらほらいるが、ガルシェやベルと同じように、魔族なのだろう。
「地図だとお城から近いみたいだけど」
確認してみると、市場にある小さな路地に入るようだ。
「ここかな?」
屋台と屋台の間に、私がギリギリ通れる程の幅の路地を発見した。
薄暗い道。元の世界だったら絶対に入らないその道を進んでいくと、突き当りに木製の扉があった。ノックをすると、ギィっと鈍い音がして扉が開いた。
「ん?」
扉は開いたが、一面茶色い毛が目の前に現れた。
「何の用だ」
毛が喋った⁉ 上を見上げると、強面のオッサン顔があった。
今の私よりも背が高いのも驚きだが、そのオッサンの頭の上には、長いタレ耳が・・・ロップイヤー! え、ウサギ⁉ 熊じゃないの⁉
「‥‥ロッツさんからの紹介で」
渡されたメモを見せると、茶色一面がのっそりと動いた。
部屋の中が見えるようになると、思わず息を飲んだ。
オフホワイトの壁紙。見た事が無い程大きなロッキングチェアには、可愛らしいクッションとひざ掛けが置いてある。棚には色々な大きさの瓶が置かれており、それぞれ可愛らしいリボンが‥‥予想外ファンシー!
「えっと‥‥」
「ここは種屋だ」
「種」
と言う事は、あの瓶の中身は全部種か!
「お邪魔します」
中へと進むと、ふんわりと甘い香りがした。
強面とのギャップが凄い。
棚を見せてもらうと、ビンにはそれぞれの野菜の名前が書いてあった。
「トマト、ナス‥‥花の種もあるんだ」
豊富な品揃えではあるが、残念ながら持っている物ばかりだ。どうしたもんか。
このまま何も買わずに出るのはなぁ、と考えていたら、コトンと音が聞こえた。
振り返ると、さっきの男性がカウンターにいくつか瓶を並べていた。
手招きをされたので行ってみると、並べられた瓶の一つを思わず瓶を鷲掴んだ。
「こ、これは!」
向こうの世界で、噂だけは聞いていた! スキルでも探してみたが、見つからなかったんだよ! 世界一小さいトマト! イクラサイズのトマトらしいが、実物は見た事無かった。まさか、異世界で見つけるとは。
「一粒金貨一枚」
「買った!」
カウンターに金貨を十枚置くと、種が入った小さな袋をくれた。
小躍りしそうになるのをグッと堪える。
「ありがとうございました!」
「‥‥また」
いやぁ、良い買い物をした!
路地から出ると、市はまだ大勢の人で賑わっていた。
「何かお土産でも買っていこうか」
皆には心配を掛けてしまったしなぁ。魔力の関係で普通の人はこっちには来れないらしいしが、私はちょっと身体が重いかもってくらいだ。魔力‥‥って事は、こっちで育った食べ物は止めた方が良さそうだな。
「よし。レッツ観光!」
*
皆へのお土産を選びながら、ウキウキ観光を楽しんでいたのだが‥‥。
「ねぇ、良いじゃん」
「お茶しようよぉ」
こんなテンプレに足を踏み入れる事になるとは。
目の前には、私より少し背の高い二足歩行のトカゲっぽい人と、人族っぽい人がいる。
「観光?」
「仕事探し? 俺達、両方とも伝手があって」
因みに、元の姿のままです。まさかこの姿でナンパ(?)されるとは‥‥。さてはて、どうしたもんか。
「間に合ってます」
「大丈夫、大丈夫」
「俺達が優しく」
何が優しくだ。なるべく騒ぎたくないが、グーパンで良いかな? と思っていた時、ドン! と大きな音が聞こえて来た。
「う、うわ~!」
「逃げろ!」
ナンパ達と、周りの人達が一斉に逃げ始めた。
後ろを振り返ると、町の建物の倍はありそうなプルプルした物体が見えた。
「ああ、スライムか」
黒っぽい透明なスライム。魔族領の王都は魔物も出るのか。
家にいるダイフクの方が断然可愛い! なんて考えていたら、後ろの方から大勢の足音が聞こえて来た。
「騎士団だ!」
ここにも騎士団ってあるんだ。道の隅に避けると、鎧を着た種族様々な人達が走り去って行った。
魔族の騎士団か。どんな感じなんだろう‥‥ちょっと見に行ってみようかな。
「ここは王専用の畑です」
ガルシェさんに案内されて、お城の敷地内にあると言う畑に連れてきてもらった。
「‥‥‥黒い」
土は茶色く、葉っぱは緑。なのに、生ってる作物はほぼ黒い。
「これ、トマト?」
「ええ、そうですが」
「そっか」
真っ黒なトマト! いやいや! 忘れがちだが、ここは異世界! 黒いトマトだろうが、白いスイカだろうが、どんと来いってんだ!
「‥‥ナス」
まぁ、ナスは黒いよね。黒って言うか、濃い紫?
「食べてみますか?」
「是非!」
トマトを一つもらって、一口。意外(失礼)と普通のトマトだった。中身まで真っ黒だった以外は。
あ、キュウリだ‥‥キュウリだよな? 黒いからデカいカリントウにしか見えないけど。
一通り見せてもらっていると、畑を管理していると言うお爺さんがやってきた。
「ほう‥‥」
お爺さんにジッと見られた。因みに、元の姿のままである。ベルがそのままでも大丈夫って言ってたからね。
お爺さんは少し腰が曲がっているが、その眼光は鋭く、雰囲気が元の世界の祖父に少し似ている。
私はアイテムポーチから島で採れたトマトを取り出し、お爺さんに差し出した。
お爺さんはトマトを受け取ると、見た目を観察した後、ガブリとかぶり付いた。そして全て食べ終えた後、私に手を差し伸べてくれた。
「「‥‥」」
無言で握手を交わす、お爺さんと私。
そこにあるのは、野菜への‥‥‥愛!
「ここへ行くと良い」
お爺さんは私にメモを渡すと、畑の中へと去って行った。
「あの気難しいロッツに認められるとは」
「ロッツさん?」
「この畑の統括を任せています。年の事もあり、そろそろ後継ぎをとお願いしておりますが、中々‥‥それで、それは?」
渡されたメモを見ると、地図が描かれていた。
「これは‥‥ここ王都の地図ですね」
「へぇ~。じゃあ、行って来るね!」
「は? お、お待ちください! 護衛を」
「いらない、いらない」
護衛やら道案内やらを付けると言うガルシェを振り切り、町へとやって来た。
「そこのお嬢ちゃん! ボアの串焼き、美味しいよ!」
「さぁ、買ってってくんなぁ!」
勢いでそのまま来てしまったが、たまにチラ見されるくらいで普通に歩けている。
トカゲっぽい人や、ドワーフ、獣人もいる。背中に蝙蝠の翼みたいなものが生えている人もいたりと、様々な種族がいるみたいだ。
人族っぽい人もちらほらいるが、ガルシェやベルと同じように、魔族なのだろう。
「地図だとお城から近いみたいだけど」
確認してみると、市場にある小さな路地に入るようだ。
「ここかな?」
屋台と屋台の間に、私がギリギリ通れる程の幅の路地を発見した。
薄暗い道。元の世界だったら絶対に入らないその道を進んでいくと、突き当りに木製の扉があった。ノックをすると、ギィっと鈍い音がして扉が開いた。
「ん?」
扉は開いたが、一面茶色い毛が目の前に現れた。
「何の用だ」
毛が喋った⁉ 上を見上げると、強面のオッサン顔があった。
今の私よりも背が高いのも驚きだが、そのオッサンの頭の上には、長いタレ耳が・・・ロップイヤー! え、ウサギ⁉ 熊じゃないの⁉
「‥‥ロッツさんからの紹介で」
渡されたメモを見せると、茶色一面がのっそりと動いた。
部屋の中が見えるようになると、思わず息を飲んだ。
オフホワイトの壁紙。見た事が無い程大きなロッキングチェアには、可愛らしいクッションとひざ掛けが置いてある。棚には色々な大きさの瓶が置かれており、それぞれ可愛らしいリボンが‥‥予想外ファンシー!
「えっと‥‥」
「ここは種屋だ」
「種」
と言う事は、あの瓶の中身は全部種か!
「お邪魔します」
中へと進むと、ふんわりと甘い香りがした。
強面とのギャップが凄い。
棚を見せてもらうと、ビンにはそれぞれの野菜の名前が書いてあった。
「トマト、ナス‥‥花の種もあるんだ」
豊富な品揃えではあるが、残念ながら持っている物ばかりだ。どうしたもんか。
このまま何も買わずに出るのはなぁ、と考えていたら、コトンと音が聞こえた。
振り返ると、さっきの男性がカウンターにいくつか瓶を並べていた。
手招きをされたので行ってみると、並べられた瓶の一つを思わず瓶を鷲掴んだ。
「こ、これは!」
向こうの世界で、噂だけは聞いていた! スキルでも探してみたが、見つからなかったんだよ! 世界一小さいトマト! イクラサイズのトマトらしいが、実物は見た事無かった。まさか、異世界で見つけるとは。
「一粒金貨一枚」
「買った!」
カウンターに金貨を十枚置くと、種が入った小さな袋をくれた。
小躍りしそうになるのをグッと堪える。
「ありがとうございました!」
「‥‥また」
いやぁ、良い買い物をした!
路地から出ると、市はまだ大勢の人で賑わっていた。
「何かお土産でも買っていこうか」
皆には心配を掛けてしまったしなぁ。魔力の関係で普通の人はこっちには来れないらしいしが、私はちょっと身体が重いかもってくらいだ。魔力‥‥って事は、こっちで育った食べ物は止めた方が良さそうだな。
「よし。レッツ観光!」
*
皆へのお土産を選びながら、ウキウキ観光を楽しんでいたのだが‥‥。
「ねぇ、良いじゃん」
「お茶しようよぉ」
こんなテンプレに足を踏み入れる事になるとは。
目の前には、私より少し背の高い二足歩行のトカゲっぽい人と、人族っぽい人がいる。
「観光?」
「仕事探し? 俺達、両方とも伝手があって」
因みに、元の姿のままです。まさかこの姿でナンパ(?)されるとは‥‥。さてはて、どうしたもんか。
「間に合ってます」
「大丈夫、大丈夫」
「俺達が優しく」
何が優しくだ。なるべく騒ぎたくないが、グーパンで良いかな? と思っていた時、ドン! と大きな音が聞こえて来た。
「う、うわ~!」
「逃げろ!」
ナンパ達と、周りの人達が一斉に逃げ始めた。
後ろを振り返ると、町の建物の倍はありそうなプルプルした物体が見えた。
「ああ、スライムか」
黒っぽい透明なスライム。魔族領の王都は魔物も出るのか。
家にいるダイフクの方が断然可愛い! なんて考えていたら、後ろの方から大勢の足音が聞こえて来た。
「騎士団だ!」
ここにも騎士団ってあるんだ。道の隅に避けると、鎧を着た種族様々な人達が走り去って行った。
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