異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百三話 これだから冒険者は

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第百三話 これだから冒険者は


今日は、田植えです!
今年もやって来ましたよ。

「では皆さん、よろしくお願いします!」

猫達とエストに加え、今年からノアや魔王も参加する事になった。そして、冒険者組も。

「うぅ、腰痛いぃ」
「頑張れ!美味しいお米の為に!」

初農作業のキャロルは既に腰に来たようだ。

「ははははははははは!」

笑顔全開、物凄いスピードで苗を植えるのは、魔王ベルだ。
よほど嬉しかったのか、前日入りと言う気合の入りよう。
自分用にも欲しいと言われたので、今年は田圃を増やした。
猫達は手慣れたもので、丁寧ながらも速い。

「キュ」
「「「「「あい!」」」」」
「キュ」
「「「「「あい!」」」」」

と、クロが音頭を取りながら、テンポ良く進んでいる。

「あぁ、ヒナ様と共同作業!この米は国宝に」
「腐る。食べろ」

アヌリは相変わらず元気だ。
お昼時には地面にゴザを敷き、皆で休憩。
青空の下で食べるおにぎりは、やっぱり格別!

「そろそろお花見の季節だね」
「桜、そろそろ咲きそうだった」
「今年は賑やかになるね!」

神社の方を見ると、桜は三分咲きと言ったところだ。

「その前に、まだあと半分あるけどな」

この人数でやって、まだ半分。
ちょっと広げ過ぎたかも?
否!お米は絶対だ!

「あ、そう言えば!ヒナ!」
「ん?」
「私、もうすぐBランクになれそうなの!」
「おお!凄いね!」

キャロルは元々パーティに所属していたが、追い出されてしまった。
それからはずっとソロでやっているようだ。

「それもこれも、ヒナと師匠のおかげだよぉ」

キャロルが抱き着いてきた。
彼女が言う師匠とは、エストの事だ。
今でもお休みの日に、二人で鍛錬しているのを見かける。

「よしよし、よく頑張ったねぇ」
「えへへ~」

キャロルの頭を撫でてあげた。

「今度のお花見は、昇格のお祝いもしようね」
「やったぁ!」
「まぁ、その為にも・・・もう半分頑張ろうね」
「うぐっ・・・は~い」

頑張れ、美味しいお米の為に!





「ふぃ~、生き返る~」

お湯の中で、手足を広げて寛ぐキャロル。

「こら、年頃の女の子が真っ裸でそんな恰好しない」
「良いじゃん、今日は私とヒナの二人っきりなんだから」

そう。今日はキャロルと二人で離れにある露天風呂に来ている。人型で。

「それで?お湯はどう?」
「ん~、気持ちいい」
「それは最初に聞いた」

今日は入浴剤のお試しをお願いしてみた。
魔力や体力回復ならいつもの姿でも十分分かるが、今日試すのは美容効果。
なので、私も肌面積の多い人型で入る。

「髪長いのちょっと面倒だな」

人型になると、髪が腰まで長い。

「ぶった切るか?」
「駄目!絶対駄目!」
「元の姿の方に影響が出るかな?」
「それは分かんないけど、そんな綺麗な髪を切るなんて絶対反対!」
「まぁ、勿体ないか」

扱いやすい長さまで切って、元の姿に戻ったらプードルみたいになりました・・・は嫌だしな。
マンチカンのプードルカット・・・ちょっと見てみたい気もしないでもない。

「さて、と」

洗い終わった髪をヘアクリップで留め、お湯に浸かる。

「あ~、気持ち良ぃ・・・」
「ふふふ」
「どうしたの?」
「いつもの姿も可愛くて好きだけど、その姿も良いなって」
「そう?こっちだと目線が低いし、棚の上の物とか取れなくて不便」

いつもの感じで手を伸ばしても届かない等、遠近間隔に慣れるまで不思議な感じがする。

「人型の方がお洒落できる~とかじゃないのが、ヒナっぽいと言うか」
「いつもの姿でも洋服は着てるからね」

お、何か肌がツルツルになって来た気がする。お湯も柔らかい。
これならリシュナも喜んでくれそうだ。

「わぁ!つるっつるになった!それに、小さい傷も消えてる」
「え、怪我してたの?ポーション飲めば良いのに」

下宿の冒険者組には、ポーションを渡してある。
使ったら言ってねと言ってあるんだけど、今のところ使ったと聞いた事がない。

「あのねぇ。ヒナのポーションは、放っておけば消えるような傷に使う物じゃないの!それこそ、腕が千切れるとかしないと使わないよぉ」
「いっぱいあるよ?」
「熟練の治癒魔法師でも治せない欠損を治す薬なんて、死ぬかも!って時にしか使わない」
「そういうもん?」
「そういうもんです」

ふむ、命綱みたいだな。

「じゃあ、今度塗り薬作ろうか?切り傷とかに使えるように」
「あ、それ欲しい!魔物と戦うのもそうだけど、森の中とか洞窟の中って、歩いているだけで小さな傷がつくんだよね。そこから魔物の毒が入って亡くなった人もいるって聞いた事ある」
「よし、作ろう」

小さな傷から菌が入って化膿する事もある。
こっちの世界は向こう程衛生面も良くないし、冒険者ならばなおさら。毒もそれほど珍しくないらしい。
勢いよく立ち上がると、キャロルに止められた。

「ちょ、そんなに急がなくても!今はバスぷに?の検証中でしょう!?」
「・・・そうでした」

またお湯に浸かる。
思い付きで行動しちゃうんだよなぁ。

「ぷっ、あはははは!ヒナらしい!」
「うぅ」
「私達の事を心配してくれるのは、凄く嬉しいよ。でも、冒険者の私達よりもヒナの方がなぁ」
「ん?この島には危険な魔物はいないよ?そんな無茶をした覚えは・・・無いはず」
「これだもの。魔王とかヤマタノオロチとかは?」
「・・・無茶はしてないよ?」

思わず目を逸らした。
無茶をしたような、しなかったような?魔王もヤマタノオロチも、ゲームとかではラスボスとして出る事もあるもんなぁ。

「魔王とヤマタノオロチを、無茶しないで倒せるってのもどうかと思うけどね。ヒナが冒険者になったら、あっという間にSランクになっちゃいそう!」
「やりませんよぉ」
「ふふふ」

キャロルが、何故か嬉しそうに笑った。

「ヒナが冒険者になって魔物を狩る・・・なんか、想像できなくて。魔物どころかヤマタノオロチなんて倒しちゃうのに。ヒナは、畑の方が似合うなぁって」
「まぁ、私が魔物と戦ってたら、私まで討伐されそうだしね」
「あはははは!確かに!」
「そこは、そんな事ないよって言う所でしょう」
「そんな事ないよ」
「遅い!」

結局バスぷにの事はすっかり忘れ、のぼせる寸前まで二人で話した。
そして数日後、出来上がった塗り薬を冒険者組に渡しておいたのだが・・・。

「ヒナ!」
「ふぇい!?」

塗り薬の作り置きを作っていた所に、突然キャロルがやってきた。

「これ!」
「へ?ああ、使ったんだ。どうだった?」

キャロルの手には、塗り薬の入ったガラス容器がある。

「どうだった?じゃないよ!」

彼女曰く、結構ザックリ行った傷があっという間に治ったらしい。

「いや、そこまで行ったらポーション飲もうよ」
「別に腕が取れかかったとかじゃなかったし」
「飲め」

これだから冒険者は!
怪我に慣れ過ぎるのも危険なんだぞ!

「ヒナ!これ、凄いぞ!半分切れた指が引っ付いた!」

ジローまでやって来て、アホな事を言い始めた。

「二人とも、ちょっとそこに座りなさい」
「「へ?」」

それから小一時間、命と身体の大切さについて説教した。
まったく・・・やれやれだ。
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