異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第九十五話 春がやってきた

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第九十五話 春がやってきた


外に出れば身を縮める程の寒さが和らいできた今日この頃。
やって来ました、種まきが!

「さぁ、今年も植えるぞぉ!」

滅多に使わない魔法で土を耕し、畝を大量生産。
各自種の入った袋を持って、それぞれの場所に散る。

「ヒナ、こっちは終わったぞ」

先日、やっと説得が終わったらしい魔王ベル・・・なんとかも、嬉しそうに参加していたりする。

「やはり、畑仕事はいい・・・説得、頑張って良かった・・・」

遠い目をしているので、そうっとしておく。
種まきが無事に終わり、水撒きはコマがやってくれるので、私はモニュナさん一家の所へやって来た。
冬の間、ナーブの所にいてもらったが、そろそろ田んぼの近くに戻るかどうか聞きにきたのだ。
ナーブとポチに挨拶をして、小屋の中を覗いてみた。

「モニュナさん、そろそろ」

冬の間、もっこもこの毛玉になっていたモニュナさん一家。
冬毛なのかは謎のままだ。

「モニュナさん?」

いつもは声を掛けると、毛玉に足が生えた見た目でトコトコと歩いてくるのだが、動かない。
寝ている?いや、いつもなら誰かが起きる。まさか、何かあった!?

「モニュナさ・・軽!?」

思わず毛玉を一つ持ち上げると、あまりの軽さに驚いた。

「グァ」

突然背後から聞こえた鳴き声に振り返ると、モニュナさんがいた。

「へ?え?」

毛玉とモニュナさんを交互に見る。

「脱皮!?」
「冬毛、だそうです」
「おぉう、セバス」

通訳が来てくれた!でもビックリする!

「冬毛?」
「グァ」
「はい」

冬毛って、もっそり抜けるにも程があるだろ!ってか、どうやって抜けたの!?見てみたかった!

「グァ」
「ヒナ様に差し上げるそうです」
「あ、ありがとう」

とりあえず、ポーチの中にいれていく。
集めたら羽毛布団でも作れそうだな。羽毛だよな?
小さい綿毛の塊みたいに見える。

「えっと、そろそろ戻るかどうかを聞きに来たんだった」
「グァ~、グァ」
「もう少し温かくなったら自分達で移動するので、お気遣いなく。だそうです」
「あ、はい」

頼もしいというか、なんというか・・・。

「さて、と。後は」

田植えにはまだ少し早いし、果樹園も問題無し。
畑を見渡せば、コマが水やりをしてくれているのが見えた。

「今年は虫が少ないと良いなぁ」

野菜を齧った小さなひつじさんは、野原に草が戻った事でこちらにまで来る事はなくなった。
だが、当然と言うか、この世界にも虫はいる。
去年も結構出て、猫達と頑張った。

「やっぱり、農薬使った方が良いか・・・」
「ヒナ様」
「ふぇい!?」

セバス、まだいたんだ。
いつもならすでに消えているから、びっくりした。

「少し早いですが・・・」

セバスがパン!パン!と手を叩いた。

「キャー、虫が出たわぁ(裏声&棒読み)」
「え、何!?」

どこから取り出したのか、マイクまで持っている。
足元には昔懐かしいラジカセが置いてあり、セバスがカチリとスイッチを押した。

『島の平和を守る為、畑の平和を守る為、ニャ種戦隊ニャゴレンニャー、参上!』

ニャた?

『皆の頼れるリーダー、ニャゴレンニャー・レッド!』
「畑をあらす虫は、ゆるさない!」

首に赤いスカーフを巻いたミケが現れた。

『皆の頭脳!冷静な判断で新芽と雑草を見分けるぞ!ニャゴレンニャー・ブルー!』
「雑草はだめ」

サシだねぇ。

『元気いっぱい!ムードメーカー、ニャゴレンニャー・イエロー!』
「畑の見回り(お散歩)大好き!」

キジだねぇ。

『果樹園の事ならお任せを!ニャゴレンニャー・グリーン!』
「くだもの、美味しいの!」

ニビだねぇ。

『魔法で畑を潤すぞ!ちょっとドジなのはチャームポイント!ニャゴレンニャー・ピンク!』
「おみず、いっぱいまく~!」

コマだねぇ。

『ニャゴレンニャーのマスコット的存在!クロ!』
「キュー!」

古龍の子供がマスコットキャラ・・・。

「「「「皆で畑を守るのだ!」」」」
「だ!」
「キュ!」

バシッと皆でポーズを取った。
小さい頃、テレビで見た戦隊物を思い出すなぁ。

「そして私、ニャゴレンニャーの隠れ家である喫茶店のマスター、セバスでございます」

セバス・・・。

「す、凄い!凄い!」

一生懸命拍手をすると、猫達が照れてクネクネしている・・・可愛い!

「隠れ家の喫茶店て?」
「神社の境内に作りました。和風喫茶です」

もしかして、子供の秘密基地的な感じかな?

「武器はクワ、鎌、薬剤散布の竹筒、ハサミ、如雨露等・・・まだ準備が」
「クワは良いとして、鎌・・・」

ぱっと見、百姓一揆なのは気のせいだろうか。

「後々合体する予定も」
「何処で仕入れた、その情報!」

まぁ、道明寺さんだろうなぁ。
皆の頭を撫でてあげると、嬉しそうに目を細めた。

「畑の平和って事は、害虫退治とかかな?」

薬剤散布の竹筒なんて言ってたし。

「はい。主には畑ですが、島に近付く害、虫、退治も目的の一つです」
「なんか今、虫って言葉に力が入っていたような?」
「はい。ですので・・・」

セバスの視線が、結界石で帰って来たジローに向いた。

「おう、ただいま。まだ手伝う事あ」
『行け、ニャゴレンニャー!悪い虫をやっつけるのです!』
「「「「「らじゃ~!」」」」」

猫達がジローに向かって行き、ポコポコとジローを叩き始めた。

「あ?何だ?ちょ」

どうやら痛くはないみたいだ。ってか、虫?

「ふぅ、一度言ってみたかったんですよねぇ」
「ああ、懲らしめておやりなさい、的な」
「ふふふ・・・」

おぉう、セバスが黒い笑顔だ!

「あはは、全然痛く、痛っ!おい、爪!爪出さないでくれ!地味に痛い!」

叩いていただけだったのが、ジローにダメージが無いのがわかったのか、猫達は自前の凶器を出し始めたらしい。
子猫の爪って、薄くて尖ってるから痛いんだよねぇ。

「あはは、もっとやれ~!」

遠くの方から、エストの援護射撃。

「煽らないの。皆、帰っておいで!写真撮ろう!」

そこからは、写真撮影が始まった。
こんなに可愛いんだもの・・・グッズとか作るか?やっぱり最初は、団扇かなぁ。
ペンライトもあると良い。

「隠れ家があるって言ってたよね?」
「はい。ご案内いたします」

どんなかなぁ?子供の隠れ家かぁ。
神社に着いて、呆然とした。

「・・・本格的」

まるっと、木造の和風喫茶が出来上がっていた。

「いつの間に・・・ってか、本当に建てたんだ」
「ちょっとだけ凝り性なのが、私のチャームポイントです」
「さいですか」

ちょっとってレベルかなぁ、これ。
中へ入ってみると、ちゃんとした喫茶店になっていた。
いや、お客さん来ないだろ。

「こちらが、隠れ家です」

案内されたのは、厨房の奥にある扉。開けると、下へと続く滑り台が・・・。
猫達が次々に降りていく。

「え、マジで?私、途中で詰まりそう」

猫達は余裕で滑れる広さがあるが、私が座るとギリギリっぽいんだけど。

「大丈夫です。私が設計いたしました故」
「わ~安心、ってならないのは、どうしてだろうねぇ」

詰まったら変身すれば良いか。

「うう、いっきまぁす!」

覚悟を決めて、滑り台へと滑り込んだ。
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