異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第八十三話 冬のお客様

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第八十三話 冬のお客様


ノアが来てから、数日が経った。
クロと猫達はすっかり馴染み、ノアは無表情ではあるものの、身体を縮める事は無くなった。
食べる物も甘酒からお粥になって、少しずつ食べられる量も増えて来た。
今は猫達と一緒にこたつに入り、絵本を読んでいる。
アニマルセラピー的な感じだろうか。まぁ、うちの子達は皆超かわいいしね!

「さぁ、そろそろ寝る時間だよ」
「「「「は~い、ヒナしゃま」」」」
「キュ」
「あい」

皆で一つのお布団に入る。一番端っこは私だ。
最初、ノアは部屋の隅で縮こまって寝ようとしていた。いつもそうしていたかのように。
なので、抱えて布団の中へと入れ込んだ。今は猫達に手を引かれ、戸惑いながらも自分から入るようになってくれたんだよね。
私の隣は毎回違う子が来るが、ノアが来てからはずっとノアが隣で寝ている。

「おやすみぃ」

布団を掛け、軽くポンポンと叩く。
ノアは暫くぼんやりと天井を見つめると、ゆっくりと目を閉じた。
少し経つと、穏やかな寝息が聞こえてくる。だが・・・。

「う・・・ぐ・・・」

真夜中頃、ノアは必ずうなされる。

「大丈夫、大丈夫」

涙をぬぐってあげると、少し落ち着く。
こういう時は・・・そうだ、お祖母ちゃんが小さい頃に歌ってくれた歌があったな。

「ねんねこころりん、ころりんよ♪」

両親を亡くした頃、私も夜泣きをした頃があったらしい。
その度にお祖母ちゃんが寝かしつけてくれた。

「フワフワ小鳥はまん丸で、日向ぼっこが大好きで♪」

ポンポンとリズムに合わせて軽く布団を叩く。
ノアの顔色が段々と良くなっていき、穏やかな寝息が聞こえて来た。
さて、私も寝ますかね。





「うわぁ、つもったねぇ」

朝起きると、外は一面雪景色。
家の中にいても、少し寒い。完全防寒も出来たけど、この方が季節を感じられるから好きだ。
食堂にあるこたつとストーブのスイッチを入れ、玄関から外に出た。

「おぉ、寒いなぁ」

吐いた息が白くなって風に流されていく。

「ヒナひゃま!」

声のした方を見ると、ポチだった。
ん?「ひゃま」?
よく見ると、何かを銜えているみたいだ。

「おはよう、ポチ」
「ふふぁふぉうふぉふぁいまふ」

何言ってるか分かんないけど、とりあえず可愛いので良し。
頭をなでてあげると、凄い勢いで尻尾を振るポチ。
フェンリルらしいが、どう見ても白いちょっと大きな犬にしか見えない。

「ところで、何を銜えているの?」

雪玉かと思ったけど、フワフワしているようにも見える。

「ふぉふぇふぁ」
「ごめん、私が悪かった」

私がそう言うと、ポチが銜えていた物を離した。
それはやっぱりフワフワで・・・宙に浮いた。

「あ・・・」

白いフワフワが風に乗って行ってしまった。

「ごめん、私のせいで」
「問題ありません。まだあちらに沢山いますので」
「います?」

生き物なのか?
ポチが見た先には、ナーブの木がある。
ポチと一緒に近付くと、ナーブがフワフワに囲まれていた。

「凄いねぇ。ポチの抜け毛みたい」
「抜け毛・・・」

今は冬の真っ最中だから、少し早いか。

「ヒナ」
「おはよう、ナーブ。それって、何?」
「冬の精霊」
「へぇ~、冬の精霊・・・精霊?」

異世界っぽいのが来たなぁ。

「ふふ、ヒナも気に入られたみたいだ」
「へ?」

いつの間にか、私の周りにもフワフワがいる!
指でつついてみると、フワっとしていた。

「意外と可愛いね」
「冬の精霊が訪れた土地は、肥沃になるよ」
「可愛い上に、凄いんだねぇ」

雪の上にいたら、見失いそうなくらいに真っ白。

「ここが気に入ったみたい」
「そっか、良かった。でも、ずっと冬のままだと困るなぁ」
「大丈夫。少ししたら風に乗って、また別の地に冬を運ぶ」

さっき飛んで行った子みたいな感じか。
上を見ると、数十個のフワフワが風に乗って飛んでいた。
向こうの世界で言う、冬将軍みたいな感じだろうか。
少し風が吹くと、綿毛の様に飛んでいく冬の精霊。

「綺麗」

もう少し浸っていたいから、その銜えた精霊さんを放してあげようね、ポチ。





「そろそろ食べごろかな」

縁側に吊るしておいた柿が、いい感じにしわしわになっている。
一口齧ると、優しい甘さが広がる。

「んん~、懐かしい。ん?」

視線を感じたので見ると、ノアだった。
おいで、おいでをすると、ゆっくりと近寄って来た。

「食べてみる?」

一つ見せると、おずおずとだが頷いて受け取ってくれた。
ノアは一口食べると、味わう様にゆっくりと噛む。
気に入ったのかな?

「・・・美味しい」

久しぶりに聞いたノアの声は、男の子とも女の子とも言える声だ。

「来年の秋は、ノアも一緒に作ろうね」
「・・・来年・・・秋・・・ここにいて、良いの?」
「もちろん。お正月には、皆で沢山ご飯食べて、お餅をつくの。春には種を撒いて、田んぼも広げようか。夏には皆で泳ぎに行くのも良いね。花火もしようね。秋になったらキノコも作って、干し柿に焼き芋・・・ああ、来年は干し芋も作ろう」
「うっ・・・ひっく・・・」
「いっぱい遊んで、いっぱい食べて、そしたら皆でお風呂に入って、寝よう」

ノアの目から、大粒の涙がポロポロと零れる。

「・・・うん」

初めて見たノアの笑顔。まだどこかぎこちなさが残っているが、笑ってくれた。

「こんなに泣いてぇ。おめめが真っ赤」
「・・・ふふ、元から真っ赤です」
「確かに」

私が真剣な顔で言うと、ノアがまた笑ってくれた。

その日の夜から、ノアは夜泣きをしなくなった。
しっかりとご飯を食べるようになり、少しずつ話す言葉も増えていった。
まだ大人は少し怖いみたいだが、時折ポチやナーブ達とも話すようになったらしい。
ノナさんや三婆とも、少しずつ話すようになった。

「元気なのは、良い事なんだけどねぇ・・・」

夜、お腹に衝撃を受けて目が覚めた。
見ると、ノアの足がクリーンヒットしていた。どうやら、寝相まで元気になったらしい。
ベッドを広げるか、分けるか・・・もう少し、このままでも・・・。

「ぐふっ」

今度は頭突きが脇腹へ!?
よし、明日にでも皆に聞いてみよう!
とりあえず、ミケのお腹の上に乗ったノアの足をそっと戻した。
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