異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第五十一話 なんか捕れた

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第五十一話 なんか捕れた


嵐が去った次の日、外は快晴!畑も無事だった。

「さてはて、何処に着いたかなぁ」

島の端から下を見てみると、広がる海と地平線が見えた。

「ヒナちゃ~ん、おっはよ!」
「ツバキ、おはよう」
「島のある場所を、伝えに来たの」

ツバキが世界地図を出してくれた。

「昨日までいたのが、ここ。そこから風に流されて・・・今はここよ」

クレッセリア王国やアレストロ王国のある大陸上空から出て、今は海のど真ん中。
下には小さな島がポツポツと点在しているみたいだ。

「ありがとう」
「どういたしまして!偶には遊びに来てね~」

ツバキが帰った後も海を見ていると、クロと猫達が起きて来た。

「おっきな水たまり~」
「おっきいね~」
「キュ~!」

港町の時はここまで見えなかったからか、皆大はしゃぎだ。

「これは海って言って、水たまりみたいになくならないんだよ。それに、すっごくしょっぱい」
「うみ」
「うみ~」
「しょっぱいの?」
「ちょっと待ってね」

魔法が届くかな?
海水をすくい上げて、上まで持って来た。

「これが海水で・・・あれ?」

一緒に魚もすくっちゃったか・・・も・・・え?

「えっと・・・」

大きな球体の海水の中、キラキラと光る藍色の鱗。
下半身が魚で、上半身が・・・無表情の男性だった。
正直、怖い。
そっと戻そう。そうしよう!
この高さから落とすわけにもいかないからね!
ゆっくりと男性の頭が地面の下まで行った瞬間、ガッ!と手が島の端を掴んだ。

「うわぁ!?」
「「「「「ひゃ!」」」」」
「キュ!」

どっかのホラー映画か!
このままではいかん!
とりあえず海水を引き戻して男性を包み、そのまま島にあげた。

「どうしたら良いんだろう?あ、島から距離を離して下げるか」

手の届かない距離まで離してから、下げて行こう。

「ゆっくり・・・ゆっくり・・・ちょ、おいおい、何を」

男性が身体を縮め、こっちを見据えた。
そして水球から飛び出し、私の目の前の地面へダイブ。

「うわぁぁあ!?」

ドン引きである。
クロと猫達は完全に私の後ろへと隠れている。トラウマになったらどうすんだ!

「何を騒いでいるんだ」
「ノナさん!」
「おや、人魚じゃないか。水に入れてやらねば、死ぬぞ?」
「自分から飛び出てきたんですけど!」

とりあえず大きな木桶を出して、海水と一緒に入れてあげた。

「ふぅ・・・」

やれやれだ。

「それで、どうしてお帰りいただけないんでしょうかね?釣っちゃった?事は申し訳ないとは思うけど、じっとしていてくれればそのまま海に帰れますよ?」

私がそう言うと、海水から顔を出した男性がフルフルと顔を横に振った。

「・・・猫・・・初めて見た」

まぁ、海の中にはいないからね。

「・・・可愛い」

猫好きか!

「猫が好きな人魚ねぇ。本来なら、猫は人魚の天敵さね」
「そうなの?」
「人魚の歌は船を惑わし、沈める。だから、船に猫を乗せる。何故か猫にだけは、人魚の歌が効かないからね」

猫が嫌いな人魚は、船に猫の姿を見つけると海へと逃げていく・・・らしい。
ところが、目の前の人魚はじっとこっちを凝視している。猫達が怯えるので、止めて欲しい。

「それで、どうしたら良いと思う?帰ってくれないんだけど」
「そうさのぉ・・・塩焼きが美味いらしいが・・・」
「いやいやいや!それは止めておこうよ!」

オークでも無理なのに、半分人間の身体してるんだから、もっと無理!
人魚さんも震えてるし!

「冗談じゃ」

本当かなぁ・・・捕食者の目をしている気がする。

「・・・帰らない」
「帰らないって言われてもなぁ」
「家族、いない。帰っても、誰もいない」
「う・・・う~ん・・・」

そんな事言われると・・・うぅ・・・。

「ヒナ、流されとるぞ。待っている者がおらぬでも、そもそもお主達人魚は陸では暮らせぬじゃろうて」
「そ、そう、それ!」

ノナさん、ナイス!

「・・・問題無い」

人魚がどこからか小さな瓶を取り出した。入っていた液体を飲み干す。

「う・・・」

一瞬呻くと、木桶の中が光った。
これ、もしかして・・・。

「足。これで、陸でも大丈夫」

そう言うと、桶の縁に手をかけて立ち上がろうとする人魚(元?)。
いや、その状態で立ち上がるのは駄目だろう!

「ちょ、ま」

止めようとした瞬間、ザバァ!と音がしたと思ったらセバスがバスタオルで男性の腰回りを隠してくれた。

「ふぅ・・・」

流石というか、何と言うか・・・。

「その様な姿で女性の前に出るものではありません」
「そうなのか?」
「少々失礼いたします」

お!出た、試着室。あれって、外から見るとこうなってるんだ。
待つ事五分。お茶が美味しい。

「お待たせいたしました」

カーテンが開き、セバスと元人魚の男性が出てきた。もちろん、服を着て。
ジローがガチムチマッチョだったのに比べると、この人は細マッチョってやつか。
背は・・・おお、私より少し大きい!

「人間になったの?」
「種族は変わってない。薬で見た目を変えただけ」

私が人型になるのと同じ感じ?

「じゃあ、戻る時は人魚に戻る薬を飲むの?」
「いや、七日くらいで戻る」
「そっかぁ」

人魚になる薬があるなら、ちょっと飲んでみたかった。
人魚っぽくなれるアイテムならあるけど、見た目が微妙なんだよねぇ。

「人魚、なりたい?」
「ちょっとね」
「薬、作れる。でも、材料がない」
「材料って?」
「満月の夜にだけ咲く、月夜草。七色スズラン。紅色サンゴの吐息」
「ふむふむ」
「それと・・・人魚の涙」
「ふむふむふむ・・・全部、あるね」

アイテムバッグから取り出して並べると、人魚が少しだけ驚いた顔をした。
頑張ったもの!ゲームの中の私が!

「でも、七日も人魚のままってのも困る。数時間だけとか、好きな時に変身~なんて事が出来ると一番良いんだけど」

となると、やっぱりアイテムかなぁ。

「分かった。やってみる」

最初は「怖っ」と思ったけど、意外と良い人魚みたいだ。
まぁ、顔の怖さだけならジローも負けてないからね。
七日間は海に戻れない。
それまでには、諦めるか飽きるでしょ。

「あ、そう言えば名前聞いてなかった。私はヒナ」
「・・・ネネル」
「よろしくね、ネネル」
「ああ」





ネネルが島に来て二日が経った。
猫達はまだ少し警戒しているが、畑を手伝ってくれたり、ノナさん達と喋ったりと、意外と馴染み始めている。
陸に上がるのは初めてだと言っていたネネル。
見るもの全てが新鮮で、楽しいらしい。
食べ物の違いを心配していたが、それも大丈夫だった。
人魚は元々雑食らしく、私が作った食事も完食してくれた。

「魚も、貝も、食べる」

と聞いた時は驚いたが、よく考えてみたら、魚って魚食べるよなと思い至った。
なので、人魚が焼き魚を食べても、何も問題はない。
ただ、料理はしない。海の中だし。初めて台所に入って火に触ろうとした時は、全力で止めた。
朝の体操も一緒にやって、畑仕事を終えた今は、作業場の中だ。

「ノナさん、どう思う?」
「陸を選んだ人魚か。おらん事も無いが、陸にしかない物を買いに出るくらいだろうな。種族を永遠に変える薬やマジックアイテムなんぞ、この世に存在せん。ネネルとて、七日後には薬を飲まねば人魚に戻る」
「う~ん・・・」
「じゃが、どこにでも変わり者はおる。猫好きな人魚も、こんな空の上で畑をやっとる猫も、の」
「そんな猫の背中に張り付いてついて来た、エルフとかね」
「ほっほっ」

まぁ、何にしても、あと五日だ。
それよりも・・・ノナさんって何歳なんだろう。
始祖に会った事があるみたいだったし。

「ヒナ、一つ忠告しておく」
「はい?」
「ドラゴンの逆鱗と女の年齢には、触れない方が長生きできるぞ」
「・・・はい」

肝に銘じます
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