棘バラの口付け

おかだ。

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past3(ローランド)

episode43

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「・・・遅いな」

アルマとローランドの居る寝室を出て四時間ほどが経った。

扉の向こうに耳を澄ましてみてもシンとしており、中の様子は伺えない。

「いやいや、まさかな・・・」

脳裏に浮かんだ嫌な想像に一抹の不安を覚える。
あの美しいアルマの兄、ローランドに対するエドの疑念は消えきっていないのだ。

身なりを整えて扉をノックする。

「失礼します」

「ん・・・、あぁ」

振り向いた男に、一瞬エドが体を固くする。

「ふふ、俺と二人きりにさせておくのは不安か?」

「っや、いや、別にそんな訳では・・・」

よく見るとアルマはローランドの膝に頭を預けてくうくうと寝息をたてている。

スラリと長い指が少年の栗毛を優しく撫でる。

ホッと安心すると同時に心にモヤモヤとした何かが生まれ、エドが小さく首を傾げた。

「・・・お前にもたくさん迷惑をかけた」

アルマの寝顔を優しく見下ろしていた赤い瞳がポカンとしたまま立ち尽くすエドに向けられる。

ふとした優しい顔付きがアルマに似ていて、改めて二人が兄弟である繋がりを実感する。

「・・・一つ、お聞かせください」

「なんだ」

「先日のシーヴァ様の話は事実ですか?」

「・・・大方はな」

不愉快そうに歪んだローランドの表情にエドが口を噤む。

「お言葉ですが・・・お父上にご報告した方がいいのでは?」

「それは出来ない」

「何故です?何か理由が?」

顔を伏せたローランドの金髪から真っ赤に染った耳が覗く。

「・・・・っ言えない」

「ローランド様、俺はアルマ様の護衛として貴方の父上に命されています。アルマ様に危険が及んだとなれば、報告しない訳にはいきません」

「・・・父上が知ればフィルまで──」

「フィル?フィリップ理事長の事ですか?」

「っいや、俺の傲慢か・・・」

「?」

赤い瞳がエドをじっと見つめると、力なく笑う。

「・・・あと一週間待て。必ず俺から父上に報告する。アルマを頼む」 

「・・・はい」
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