棘バラの口付け

おかだ。

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past1(アルマ)

episode38

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「あ''、ぅぐ・・・っ」

血が流れすぎたせいで頭がぼうっとする。

「だからぁ!抵抗したら殴るって言ったろ!」

男が感情的に怒鳴りエドの体を揺するが、少年は苦しそうに呻くだけでぐったりとしていた。

「なんだぁ?おい、起きろ!!」

男がエドの剥き出しになった腹を叩く。

「あ''ぁっ!!」

「ハハ、お前なかなか唆る顔するじゃねぇか。清潔だし、いい匂いがする。ここら辺の人間じゃねぇだろ?・・・とすると貴族の子か?」

エドが着ていたベストとシャツに鼻をつけて匂いを嗅ぐ。

真新しい服は刺繍など細部にこだわりがあり、ふんわりと花の香りがする。

「まあでも、身分の高いやつがこんな所一人でほっつき歩いたりしねぇか」

ぐったりとするエドの横に服を投げ捨て、上裸状態の少年に覆い被さる。

「やめ、ろっ」

何度も殴られて口の中が数カ所切れているのが分かる。
男がペタペタ触る腹も所々赤黒く内出血になっていた。

「ん?あはは!泣いてんのか?」

声を殺してぼろぼろ涙を流すエドを男が馬鹿にするように笑う。

情けない。
少女を助ける所か、自分の事すらままならない。その上自分がこの男にこれから何をされるのかが怖くて怖くて頭が真っ白になる。

男の視線から逃れるようにエドが顔を背け、涙で濡れた目を驚きで見開いた。

「・・・っある、ま」

ボロボロの体で大きな男に組み敷かれるエドをアルマが呆然と見つめていた。

「え、エディ?・・・っエディ!」

「あ?知り合いか?」

「っ!」

男がアルマの姿を見ようと後ろを振り返ったタイミングで、余力を振り絞って男に体当たりをする。

「エディ!」

「アルマッ!にげろ!!」

弾かれたように走り出したアルマが建物の影に消えてゆき、男と一緒に地面に倒れ込んだエドが小さく呻いた。

「ってぇなクソ!」

「ッぐ、」

「あーくそ、もういいや。ゆっくり解してからにしてやろうと思ってたけど──」

エドの腹に男の熱棒が宛てがわれ、少年の腰がビクリと震える。

「お前、自分は男だから関係ないと思ってただろ」

「え、、ぁ?!」

「そこまでの知識はなかったか?・・・男はな、ケツにぶち込むんだよ」

カチャカチャと金具が擦れる音がして、膝下あたりまでズボンがずり下ろされる。

男がエドの両脚を上に持ち上げ肩に乗せ、少年が為す術なく呆然と男を見上げる。

「気持ちよくさせてやるよ」

男がニヤリと笑い尻に宛てがわれた熱棒に力が入る。

「エドウィンッ!!!」

悲鳴にも似た男の怒声が響き、その瞬間エドの体を弄んでいた男が崩れ落ちた。

「・・・ぇ、え」

エドの上に重なる様に倒れた男の胸からは大量の血が流れ、ビクビクと体を痙攣させていた。

赤黒くドロドロとした血がエドの胸を流れ落ち、視界いっぱいに赤が広がる。

「っ来なさい」

「・・・父さ、」

駆けつけたエルドが倒れた男から剣を引き抜き、血の海の中のエドを抱き上げた。

「・・・父さん、ごめんなさい。俺・・・、アルマ、様は?女の子が・・・」

「女の子も、アルマ様も無事だ。お前、怪我は?!」

痣だらけの体にべっとりと付いた血をエルドが夢中で拭い落とす。

「・・・ぃッ、た」

奥を見るとローブですっぽりと体を覆ったアルマが他の近衛兵に抱き上げられていた。

兵にしがみつくアルマの後姿は酷く不安げで、また叱られてしまうなと心の中で呟いた。



「エド、大丈夫だからな。父が居るぞ。大丈夫だ」

目の前のエルドは力なく膝を着き、涙を流してエドを抱えていた。

「・・・・・」

朦朧とする意識の中で父親がずっと口にしていた言葉。
まるで自分に言い聞かせるように両腕の中のエドに言い続けた。

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