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past1(アルマ)
episode37
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「・・・エディ、大丈夫?」
心配そうに眉を下げたアルマが隣を歩く少年の手を握る。
「ヘーキ。立派な騎士はこれくらい我慢しなきゃなれないんだ」
涙目を乱暴に擦ってアルマの手を引く。
勝手に王都に向かったのをエルドに叱られ、三発もゲンコツを食らったのだ。
「いいか、危険な人物が居ないか常に見張れ」
「はっ」
アルマとエドの後ろには王家直属の近衛兵が三人、小さなふたりの後に続いていた。
「何あれ、どこかの貴族の方?なんで城下なんかに居るんだ?」
「王宮に行くんだろ?」
「いやいや!大通りを馬車で行けばいいだろう」
「可愛らしい子ね。ふふ、隣の小さな護衛さんも可愛いわ」
王宮からほとんど出たことの無い小さな少年の顔を知る国民などいない。
街頭から好き勝手に声が聞こえ、気付くといつの間にか人だかりができていた
「・・・」
「・・・どうした?」
「人が多くて」
エドの手を握るアルマの手に力が入り、小さく震える。
エルドと残りの二人の近衛兵達は周囲を睨みこちらの小さな異変には気づいていないようだった。
「王子様、こっち」
「え?」
グンっとアルマの腕を引っ張り、驚く少年を細い路地に押し込む。
「エルド達が目立ってるんだ。あんなのと一緒に歩いてたら人混みに飲まれちまう」
エドが悪戯っぽくニッと笑った。
「でもっ、エルドが怒るんじゃ」
「だいじょーぶ!その時は王子様の分も俺が殴られてやるよ」
アルマの手を引き細い路地を歩きはじめる。
一本路地にはいるだけで少し薄暗く、子供二人にとっては歩くのも心細い。
「エディ、どこ行くの?」
「んー?分からないけど、探検だと思えば楽しいだろ?」
あっけらかんとした少年の声に恐る恐る周囲を見てみると、確かにアルマにとって初めての世界が広がっている。
キュッと手を繋いで前を行く少年を見る。
エルドに比べると小さいが、立派な剣を腰に差し自分を先導するエドはとても頼もしく見えた。
❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋
「ねえ、エディ」
「んー?」
ふとアルマが脚を止め、エドもアルマに従って脚をとめた。
アルマの見つめる先にエドが目を向ける。
「あ、・・・っ」
エドより少し年上のまだ幼さの残る少女が、中年の男の腰に顔を埋めていた。
小枝のように細い少女の腕が苦しそうに男の太ももを押し返している。
「あの子、何してるんだろう。髪の毛掴まれて痛そうだね・・・」
まだ六歳のアルマは不思議そうに二人を見つめるが、十四歳になるエドは二人が何をしているのか理解していた。
少女の頭がゆっくりと揺れ始め、それと同時に男の腰もユラユラと揺れる。
少女が男から離れ、口からボタボタと液体が垂れる。
口元を拭った少女の濁った瞳とエドの視線がぶつかる。
「・・・エディ?」
「・・・ッ行こう」
体が熱くなり、訳の分からない焦りが湧き上がる。
状況を理解出来ていないアルマがエドに手を引かれるままに駆け出す。
「えどっ!さっきの女の子大丈夫かな?」
「大丈夫っ!もうエルドの所に戻るぞ!」
「っでもあの女の子、泣いてた」
寂しそうなアルマの声にエドの足が止まる。
「?」
「・・・王子様は危ないからここに居るんだ。俺、」
「あっ、エディ!」
アルマを置いて元いた場所に駆け出した。
かっこいい父親に憧れた。
兄に憧れた。
護るべき者の為に戦える騎士に憧れた。
なのに今の自分は認めて欲しいと足掻いて駄々をこねるだけの子供だ。
何て恵まれた幸せものだろう。
「・・・ッおい!」
腰の剣に手をかけ声を張る。
「あ?」
振り向いた男はエドの倍はある長身で、怯えた表情の少女は驚いた顔で少年を見つめていた。
「今すぐそこから離れろっ!」
震える手で剣を引き抜き、切っ先を男に向ける。
ヴァルアロでは学年でトップの腕前も、目の前の男を見据えると情けなく手が震えてしまう。
「・・・なんだお前。ごっこ遊びか?」
「違うっ!俺は──!」
エドが反論をしようと口を開いた刹那、後頭部に鈍痛が走り、その場に崩れ落ちた。
「あ''っ───!?ぐ、ぅ・・・」
剣が手から離れ、背後から現れたもう一人の男が剣を蹴り飛ばす。
「ガキが物騒なもん持ってんじゃねぇよ。・・・ん?」
「あ?どうした」
「ハハッ!コイツ、その女のフェラ見て興奮してるぜ」
痛みでうずくまるエドの股間を男の一人が握る。
緩く反応したソコを男に握られ、頭が真っ白になり顔が耳まで真っ赤になる。
「うぁッ、やめっ!・・・ちがっ、触るな!!」
「ははは、こりゃ笑えるな。ヒーロー所かとんだエロガキじゃねぇか!おい、お前遊んでやれよ」
「はぁ?俺男のガキにゃ興味ねぇよ!」
少女の脚を持ち上げた男がもう一人の男に目配せをする。
「俺がこの女ヤッてる間の暇つぶしくらいにはなるだろ?」
「んー、まぁ。顔は悪くねぇな」
じっとりとエドを見下ろした男の目線が顔から下半身に移り、ニヤリと笑う。
「なんだよ、お前案外何でもイけるのか?」
「んな訳ねぇだろ!これで我慢してやってんだから早く終わらせろ!」
エドが後頭部に手を回すとぬるりとした嫌な感覚があり、一気に血の気が引く。
唯一反撃できそうな剣も蹴り飛ばされて手が届かない。
「へへ、大人にちょっかい出すからこうなったんだぜ!キョーイク的シドーってやつだ」
男の手がエドの足首を掴み、暗がりに引き摺りこむ。
「クソっ!離せ離せっ!」
脚をバタつかせて抵抗を試みるが、血が流れているせいか思う様に体を動かせられない。
「いいか、暴れたらさっきみたいに容赦なくこれで殴ってやる。痛くされたくなきゃ、分かるよな?」
息巻く男の手に握られていたのは血が付いたレンガだった。
あんなもので何度も殴られればどうなるか分からない。きっと、ひとたまりもないだろう。
「・・・っ」
「よしよし。静かにしてればすぐ終わるからな」
乱暴にエドの頭を撫でた男が少年の体を抱き上げてボロボロのブランケットの上に寝かせると、下卑た笑みを浮かべた。
心配そうに眉を下げたアルマが隣を歩く少年の手を握る。
「ヘーキ。立派な騎士はこれくらい我慢しなきゃなれないんだ」
涙目を乱暴に擦ってアルマの手を引く。
勝手に王都に向かったのをエルドに叱られ、三発もゲンコツを食らったのだ。
「いいか、危険な人物が居ないか常に見張れ」
「はっ」
アルマとエドの後ろには王家直属の近衛兵が三人、小さなふたりの後に続いていた。
「何あれ、どこかの貴族の方?なんで城下なんかに居るんだ?」
「王宮に行くんだろ?」
「いやいや!大通りを馬車で行けばいいだろう」
「可愛らしい子ね。ふふ、隣の小さな護衛さんも可愛いわ」
王宮からほとんど出たことの無い小さな少年の顔を知る国民などいない。
街頭から好き勝手に声が聞こえ、気付くといつの間にか人だかりができていた
「・・・」
「・・・どうした?」
「人が多くて」
エドの手を握るアルマの手に力が入り、小さく震える。
エルドと残りの二人の近衛兵達は周囲を睨みこちらの小さな異変には気づいていないようだった。
「王子様、こっち」
「え?」
グンっとアルマの腕を引っ張り、驚く少年を細い路地に押し込む。
「エルド達が目立ってるんだ。あんなのと一緒に歩いてたら人混みに飲まれちまう」
エドが悪戯っぽくニッと笑った。
「でもっ、エルドが怒るんじゃ」
「だいじょーぶ!その時は王子様の分も俺が殴られてやるよ」
アルマの手を引き細い路地を歩きはじめる。
一本路地にはいるだけで少し薄暗く、子供二人にとっては歩くのも心細い。
「エディ、どこ行くの?」
「んー?分からないけど、探検だと思えば楽しいだろ?」
あっけらかんとした少年の声に恐る恐る周囲を見てみると、確かにアルマにとって初めての世界が広がっている。
キュッと手を繋いで前を行く少年を見る。
エルドに比べると小さいが、立派な剣を腰に差し自分を先導するエドはとても頼もしく見えた。
❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋
「ねえ、エディ」
「んー?」
ふとアルマが脚を止め、エドもアルマに従って脚をとめた。
アルマの見つめる先にエドが目を向ける。
「あ、・・・っ」
エドより少し年上のまだ幼さの残る少女が、中年の男の腰に顔を埋めていた。
小枝のように細い少女の腕が苦しそうに男の太ももを押し返している。
「あの子、何してるんだろう。髪の毛掴まれて痛そうだね・・・」
まだ六歳のアルマは不思議そうに二人を見つめるが、十四歳になるエドは二人が何をしているのか理解していた。
少女の頭がゆっくりと揺れ始め、それと同時に男の腰もユラユラと揺れる。
少女が男から離れ、口からボタボタと液体が垂れる。
口元を拭った少女の濁った瞳とエドの視線がぶつかる。
「・・・エディ?」
「・・・ッ行こう」
体が熱くなり、訳の分からない焦りが湧き上がる。
状況を理解出来ていないアルマがエドに手を引かれるままに駆け出す。
「えどっ!さっきの女の子大丈夫かな?」
「大丈夫っ!もうエルドの所に戻るぞ!」
「っでもあの女の子、泣いてた」
寂しそうなアルマの声にエドの足が止まる。
「?」
「・・・王子様は危ないからここに居るんだ。俺、」
「あっ、エディ!」
アルマを置いて元いた場所に駆け出した。
かっこいい父親に憧れた。
兄に憧れた。
護るべき者の為に戦える騎士に憧れた。
なのに今の自分は認めて欲しいと足掻いて駄々をこねるだけの子供だ。
何て恵まれた幸せものだろう。
「・・・ッおい!」
腰の剣に手をかけ声を張る。
「あ?」
振り向いた男はエドの倍はある長身で、怯えた表情の少女は驚いた顔で少年を見つめていた。
「今すぐそこから離れろっ!」
震える手で剣を引き抜き、切っ先を男に向ける。
ヴァルアロでは学年でトップの腕前も、目の前の男を見据えると情けなく手が震えてしまう。
「・・・なんだお前。ごっこ遊びか?」
「違うっ!俺は──!」
エドが反論をしようと口を開いた刹那、後頭部に鈍痛が走り、その場に崩れ落ちた。
「あ''っ───!?ぐ、ぅ・・・」
剣が手から離れ、背後から現れたもう一人の男が剣を蹴り飛ばす。
「ガキが物騒なもん持ってんじゃねぇよ。・・・ん?」
「あ?どうした」
「ハハッ!コイツ、その女のフェラ見て興奮してるぜ」
痛みでうずくまるエドの股間を男の一人が握る。
緩く反応したソコを男に握られ、頭が真っ白になり顔が耳まで真っ赤になる。
「うぁッ、やめっ!・・・ちがっ、触るな!!」
「ははは、こりゃ笑えるな。ヒーロー所かとんだエロガキじゃねぇか!おい、お前遊んでやれよ」
「はぁ?俺男のガキにゃ興味ねぇよ!」
少女の脚を持ち上げた男がもう一人の男に目配せをする。
「俺がこの女ヤッてる間の暇つぶしくらいにはなるだろ?」
「んー、まぁ。顔は悪くねぇな」
じっとりとエドを見下ろした男の目線が顔から下半身に移り、ニヤリと笑う。
「なんだよ、お前案外何でもイけるのか?」
「んな訳ねぇだろ!これで我慢してやってんだから早く終わらせろ!」
エドが後頭部に手を回すとぬるりとした嫌な感覚があり、一気に血の気が引く。
唯一反撃できそうな剣も蹴り飛ばされて手が届かない。
「へへ、大人にちょっかい出すからこうなったんだぜ!キョーイク的シドーってやつだ」
男の手がエドの足首を掴み、暗がりに引き摺りこむ。
「クソっ!離せ離せっ!」
脚をバタつかせて抵抗を試みるが、血が流れているせいか思う様に体を動かせられない。
「いいか、暴れたらさっきみたいに容赦なくこれで殴ってやる。痛くされたくなきゃ、分かるよな?」
息巻く男の手に握られていたのは血が付いたレンガだった。
あんなもので何度も殴られればどうなるか分からない。きっと、ひとたまりもないだろう。
「・・・っ」
「よしよし。静かにしてればすぐ終わるからな」
乱暴にエドの頭を撫でた男が少年の体を抱き上げてボロボロのブランケットの上に寝かせると、下卑た笑みを浮かべた。
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よろしくおねがいします
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考えやすく
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大衆娯楽
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